2017/11/14(火) - 08:54
1万人に届くサイクリストたちが集まる真夏のロードレースの祭典「シマノ鈴鹿ロード」。2日間を通して様々な種目が行われる中、今年初の試みとして開催された「ディスクブレーキロードの部」へと参戦したレポートをお届けしましょう。
ここ最近、各社が力を入れているディスクブレーキロードバイク。シマノを筆頭にスラム、カンパニョーロも対応するコンポーネントを発売し、フラットマウントやフロント10×100mm/リア12mm×142mmスルーアクスルと、メインストリームとなりそうな規格も定まってきた中で、これからますます大きな存在感を示すだろうことは間違いないだろう。
ただ、一方でロードレースにおいてはまだまだ普及が進んでいないということも事実。ディスクブレーキロードでレースに出ようと思ったら、ヒルクライムやサーキットエンデューロくらいしか選択肢がないのが、現在のディスクブレーキロードを取り巻く状況だ。
そんな中で、シマノ鈴鹿ロードが新たに開催した「ディスクブレーキロードの部」はそのような環境に置かれているディスクブレーキロードのオーナーにとって、福音とも呼ぶべき種目となったはずだ。ちなみに混走可の種目ではなく、ディスクブレーキロード専用種目として設定されたのは、「リムブレーキと混走すると、制動力の差から落車を誘発する恐れがあるから」とのこと。
さて、そんなディスクブレーキロードの部が行われたのは、シマノ鈴鹿ロード初日となる土曜日。体験レースや小学生の部が行われるお昼時の時間帯だ。今年が初めての開催となる種目ということもあり、5.8kmのフルコースを1周するショートレースとして行われることに。スタートラインには30名を超える参加者が集まった。
きっと、ディスクブレーキロードが主流となった暁には、「はじまりの30人」と呼ばれて神格化されたり、はしないだろうけれど、50年後くらいに「ディスクブレーキロードは俺が育てた(ドヤ!)」と枕もとのお孫さんに話して「おじいちゃんその話はもう聞き飽きたよ!」と言われる権利くらいはあるのではないだろうか。
そんなアーリーアダプターなみなさんの愛車は、ハイエンドなレースバイクの姿もちらほらあるが、メインは普段乗りのミドルからエントリーグレードのバイクが多いような印象だった。ちなみに私はジャイアントジャパンの厚意でTCR ADVANCED PRO DISCをレンタルし、機材だけなら確実に入賞レベルである。
スタート前招集エリアに並んでいると、他の自転車メディアの編集部員も集まってくる。どれだけこのクラスの注目度が高いのか、それだけでも分かろうというもの。しかし、同業他社とのレースとあっては、手を抜けない……。しかも、JPTで走るメディアきっての健脚、バイシクルクラブ山口副編集長の姿まで。「雰囲気を取材するために本気では行かないですよね??」と問う私の弱気をあざ笑うかのように、「いや、普通に走りますよ!」と爽やかなお返事。これはアカン。
隣にいたサイクルスポーツの江里口君と「え、マジで?」「どうすんの」と顔を見合わせていると、号砲が!スタート直後からダッシュを決めるのはもちろん前言にたがわずバイクラ山口副編集長。そこにサイスポ江里口くんが食らいつく、ところに反射的に乗っかる私。この時点で後ろを見ると既に6人程度に集団は絞られている。
え、取材になんなくない?これどーすんのよ?という思いと、いや、メディアで一人だけ遅れるわけにはいかない、という謎のプライドがせめぎ合っていると、ホームストレートの終わり辺りでさらにペースアップするバイクラ山口副編集長。これについていけたのは、一人の一般参加者だけ。自分とサイスポ江里口くんは2人で仲良く第2集団を形成する。松野四万十バイクレースで共に走った経験からすれば、江里口くんは自分の3倍速い。
ということで、「7:3でならローテできるよ!」と提案し、前を追う。ちなみにバイクラ山口副編集長は最後まで一本引きだったとのことだが、追い付かないどころか、差は広がるばかり。学連でブイブイ言わせていたという江里口くんだが、校了前で力が出ない、とのことで結局半々くらいで回していく。しかしこちとらエブリデイ校了前のようなwebメディアである、どんどん脚が無くなり、ペースが落ちていった結果、デグナーコーナー出口で後ろから一人が合流し三名に。
ダンロップコーナーへの登りで千切れかけるも、そこからの下りで復帰。クラウチングしながら1コーナーを抜ける。スプリントということで、腰を上げたら脚が無かった。まあ、成績もつかないオープン参加なので、通常参加の方々の邪魔にならないよう、コースのすみっこへよってよろよろと登り、フィニッシュ。だ、出し切った……。
さて、結論を言おう。正直、ディスクブレーキロードだからといって何が変わる、ということは無かった。今回はぎっしりとした集団で走るタイミングも無かったし、天気も良く、コースに対して参加人数も少なかったのでブレーキをかける箇所もほとんど無かった。だからディスクブレーキはやはりコントローラブルだとか、悪天候でも安定しているだとか、急な動きにも高い制動力で対応できる、だとかそういった通り一遍のメリットは語れない。
でも、それは逆の視座からとらえれば、そういった状況でのメリットは確実に存在する一方で、既存のロードバイクに対するデメリットは何一つない、ということでもある。確かに、例えば雨天時にリムブレーキと混走することで、大きな制動力の差が生まれれば、集団の中で落車が起きる原因になるかもしれない。だが、それはディスクブレーキロードのデメリットではなく、雨天時に制動力が落ちるというリムブレーキロードが持つデメリットに起因するものだ。
ロードレーサーが、速く走るための機材であるならば、あらゆる天候で安定した制動力を発揮するディスクブレーキロードは正常進化といえるはず。これまでのリムブレーキロードで走ってきたレースと何ら変わりのない体験をより安全な状態で味わうことが出来るなら、ディスクブレーキロードの導入は待ったなしだろう。
そして、少ない力で制動できるというのも油圧ディスクブレーキの大きなメリットだ。レース後、お話を伺う機会のあった佐藤さんは、過去にロードバイクでの事故で腕の筋力が大幅に落ちてしまったという。一時はロードバイクから遠ざかっていたというが、そんなところに現れたのが、ディスクブレーキロードだった。「これなら、自分でも操れるかもしれない」そう思った佐藤さんは、迷わず一台を注文。「本当に軽い力でブレーキが掛けられるので、これで自転車を続けることが出来る!ととても嬉しかったんですよ。このバイクは本当に最高の相棒です」と、もう一度自転車の世界の扉を開いてくれたディスクブレーキロードへの思いを語ってくれた。
きっと、これからディスクブレーキロードは年を追うごとにありふれた存在になっていくだろう。レースには使えないという状況もここ数年で解決されるはず。ディスクブレーキロードに興味のある方は、迷わず踏み出すことをオススメする。きっと、先見の明をアピールできるはずだ。
text:Naoki.YASUOKA
ここ最近、各社が力を入れているディスクブレーキロードバイク。シマノを筆頭にスラム、カンパニョーロも対応するコンポーネントを発売し、フラットマウントやフロント10×100mm/リア12mm×142mmスルーアクスルと、メインストリームとなりそうな規格も定まってきた中で、これからますます大きな存在感を示すだろうことは間違いないだろう。
ただ、一方でロードレースにおいてはまだまだ普及が進んでいないということも事実。ディスクブレーキロードでレースに出ようと思ったら、ヒルクライムやサーキットエンデューロくらいしか選択肢がないのが、現在のディスクブレーキロードを取り巻く状況だ。
そんな中で、シマノ鈴鹿ロードが新たに開催した「ディスクブレーキロードの部」はそのような環境に置かれているディスクブレーキロードのオーナーにとって、福音とも呼ぶべき種目となったはずだ。ちなみに混走可の種目ではなく、ディスクブレーキロード専用種目として設定されたのは、「リムブレーキと混走すると、制動力の差から落車を誘発する恐れがあるから」とのこと。
さて、そんなディスクブレーキロードの部が行われたのは、シマノ鈴鹿ロード初日となる土曜日。体験レースや小学生の部が行われるお昼時の時間帯だ。今年が初めての開催となる種目ということもあり、5.8kmのフルコースを1周するショートレースとして行われることに。スタートラインには30名を超える参加者が集まった。
きっと、ディスクブレーキロードが主流となった暁には、「はじまりの30人」と呼ばれて神格化されたり、はしないだろうけれど、50年後くらいに「ディスクブレーキロードは俺が育てた(ドヤ!)」と枕もとのお孫さんに話して「おじいちゃんその話はもう聞き飽きたよ!」と言われる権利くらいはあるのではないだろうか。
そんなアーリーアダプターなみなさんの愛車は、ハイエンドなレースバイクの姿もちらほらあるが、メインは普段乗りのミドルからエントリーグレードのバイクが多いような印象だった。ちなみに私はジャイアントジャパンの厚意でTCR ADVANCED PRO DISCをレンタルし、機材だけなら確実に入賞レベルである。
スタート前招集エリアに並んでいると、他の自転車メディアの編集部員も集まってくる。どれだけこのクラスの注目度が高いのか、それだけでも分かろうというもの。しかし、同業他社とのレースとあっては、手を抜けない……。しかも、JPTで走るメディアきっての健脚、バイシクルクラブ山口副編集長の姿まで。「雰囲気を取材するために本気では行かないですよね??」と問う私の弱気をあざ笑うかのように、「いや、普通に走りますよ!」と爽やかなお返事。これはアカン。
隣にいたサイクルスポーツの江里口君と「え、マジで?」「どうすんの」と顔を見合わせていると、号砲が!スタート直後からダッシュを決めるのはもちろん前言にたがわずバイクラ山口副編集長。そこにサイスポ江里口くんが食らいつく、ところに反射的に乗っかる私。この時点で後ろを見ると既に6人程度に集団は絞られている。
え、取材になんなくない?これどーすんのよ?という思いと、いや、メディアで一人だけ遅れるわけにはいかない、という謎のプライドがせめぎ合っていると、ホームストレートの終わり辺りでさらにペースアップするバイクラ山口副編集長。これについていけたのは、一人の一般参加者だけ。自分とサイスポ江里口くんは2人で仲良く第2集団を形成する。松野四万十バイクレースで共に走った経験からすれば、江里口くんは自分の3倍速い。
ということで、「7:3でならローテできるよ!」と提案し、前を追う。ちなみにバイクラ山口副編集長は最後まで一本引きだったとのことだが、追い付かないどころか、差は広がるばかり。学連でブイブイ言わせていたという江里口くんだが、校了前で力が出ない、とのことで結局半々くらいで回していく。しかしこちとらエブリデイ校了前のようなwebメディアである、どんどん脚が無くなり、ペースが落ちていった結果、デグナーコーナー出口で後ろから一人が合流し三名に。
ダンロップコーナーへの登りで千切れかけるも、そこからの下りで復帰。クラウチングしながら1コーナーを抜ける。スプリントということで、腰を上げたら脚が無かった。まあ、成績もつかないオープン参加なので、通常参加の方々の邪魔にならないよう、コースのすみっこへよってよろよろと登り、フィニッシュ。だ、出し切った……。
さて、結論を言おう。正直、ディスクブレーキロードだからといって何が変わる、ということは無かった。今回はぎっしりとした集団で走るタイミングも無かったし、天気も良く、コースに対して参加人数も少なかったのでブレーキをかける箇所もほとんど無かった。だからディスクブレーキはやはりコントローラブルだとか、悪天候でも安定しているだとか、急な動きにも高い制動力で対応できる、だとかそういった通り一遍のメリットは語れない。
でも、それは逆の視座からとらえれば、そういった状況でのメリットは確実に存在する一方で、既存のロードバイクに対するデメリットは何一つない、ということでもある。確かに、例えば雨天時にリムブレーキと混走することで、大きな制動力の差が生まれれば、集団の中で落車が起きる原因になるかもしれない。だが、それはディスクブレーキロードのデメリットではなく、雨天時に制動力が落ちるというリムブレーキロードが持つデメリットに起因するものだ。
ロードレーサーが、速く走るための機材であるならば、あらゆる天候で安定した制動力を発揮するディスクブレーキロードは正常進化といえるはず。これまでのリムブレーキロードで走ってきたレースと何ら変わりのない体験をより安全な状態で味わうことが出来るなら、ディスクブレーキロードの導入は待ったなしだろう。
そして、少ない力で制動できるというのも油圧ディスクブレーキの大きなメリットだ。レース後、お話を伺う機会のあった佐藤さんは、過去にロードバイクでの事故で腕の筋力が大幅に落ちてしまったという。一時はロードバイクから遠ざかっていたというが、そんなところに現れたのが、ディスクブレーキロードだった。「これなら、自分でも操れるかもしれない」そう思った佐藤さんは、迷わず一台を注文。「本当に軽い力でブレーキが掛けられるので、これで自転車を続けることが出来る!ととても嬉しかったんですよ。このバイクは本当に最高の相棒です」と、もう一度自転車の世界の扉を開いてくれたディスクブレーキロードへの思いを語ってくれた。
きっと、これからディスクブレーキロードは年を追うごとにありふれた存在になっていくだろう。レースには使えないという状況もここ数年で解決されるはず。ディスクブレーキロードに興味のある方は、迷わず踏み出すことをオススメする。きっと、先見の明をアピールできるはずだ。
text:Naoki.YASUOKA
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