2017/05/09(火) - 09:09
マウンテンバイクの歴史を切り開いた量産モデル、スタンプジャンパーを手掛けたスペシャライズド。近年エンスーなマウンテンバイカーから注目を集めているファットバイク「Fatboy」をインプレッションする。
トム・リッチーやゲイリー・フィッシャーらにより生み出され、スペシャライズドによる量産型の発売により歴史がスタートしたマウンテンバイク。スポーツバイクの一種として定着すると、クロスカントリーやダウンヒルをはじめ多彩な種目が編み出されると同時に、用途別に特化した自転車が開発され続けられてきた分野である。
遊び方と自転車タイプが細分化されたマウンテンバイクにおいて極地的な発展を遂げたのが、今回紹介するファットバイクだろう。起源はミネソタやアラスカといった寒冷地にあると言われており、雪上を走るために、ホイールを2~3本並列させたバイクが生み出されたことに端を発するという。
一般的なXCバイクは通常2インチ程のタイヤを装着することに対し、リムをつなぎ合わせてまでタイヤの接地面積を大きくする理由は、タイヤの沈下抵抗力が向上するため。通常幅ではタイヤが沈み込むようなコンディションの路面、雪上や砂浜でも何事もないかのように走破することが可能となるのだ。
もちろんタイヤの接地面積が広く、グリップ力、ハンドリングの安定性という面も特筆すべきメリットだ。スリップしにくく、段差でもハンドルが取られにくいということは、マウンテンバイクに乗ったことのないビギナーでも安心できるだろう。マウンテンバイクに乗り慣れたサイクリストは思い切り攻めることが可能となる。
また、エアボリュームが大きくタイヤの空気圧を低めに設定することができ、荒れた路面からの振動をタイヤが吸収してくれるというメリットも持つ。リアリジットフレームが主流のファットバイクにおいて、タイヤの振動吸収性は快適な走行性能に大きな恩恵をもたらしてくれる。
このようなメリットを持つファットバイクが、世界中の目に届いたのは、専用のフレームとホイールの完成車が販売された2004年。徐々に製造を行うビルダーが増え続け、2014モデルイヤーでマスプロメーカーがファットバイクに着手したことで、一気にその存在が多くのサイクリストに知られることに。
スペシャライズドも2014年モデルからファットバイク「Fatboy」をラインアップに並べた。フレームからフォーク、リム、タイヤに至るまでスペシャライズドが独自に開発を行ったオリジナル品で構成されることが特徴の1台だ。
ファットバイクをファットバイクたらしめるタイヤは、26×4.6インチというサイズ。スペシャライズドが30年以上ラインアップし続ける定番モデルのGround Controlのファット版が採用されているため、タイヤの信頼性は折り紙付きだ。
M5というバテッド加工を施した軽量アルミチューブを素材としたリアリジットフレームとカーボン製のリジットフォークのセット。フロントシングル、リア10速というドライブトレインとなっている。
シャカリキな走りを求めるクロスカントリーレースモデルとは一線を画するファットバイク。山遊びに特化したマウンテンバイクを、自身もファットバイクで遊ぶライズライド店主の鈴木祐一さんに評価してもらった。それではインプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「アドベンチャーライドで活きるスタンダードなファットバイク」鈴木祐一(RiseRide)
4.6インチのタイヤ、フルリジッド、アルミフレームと「ザ・スタンダード」なファットバイクですね。やっぱりファットバイクの強みって、一般的なMTBに乗っている方からしても信じられないくらい圧倒的なグリップ力にあります。例えば今まで滑って登れない、下れないような急勾配でも余裕を持ってクリアできてしまうくらいですし、そこを引き出す上でもストッピングパワーの強い油圧ディスクブレーキが搭載されているFatboyのパッケージは安心できますよね。
完成車としてはフロントシングルスピードの設定ですが、もっと幅広く遊びたい方にはダブルギアにできる台座があらかじめ用意されているのも良い部分。ダブルにしてしまえばギア比1.0以下で激坂に挑むこともできるし、反対に大きなギアを付ければロングツーリングをよりイージーにしてくれます。
そういう意味ではリアにキャリア用のネジ穴が用意されていることも面白いですよね。ファットバイクでキャンプツーリングに行くなんてアドベンチャー感全開で見た目にも趣的にも楽しいものですし、タイヤボリュームがものすごいから、荷物をどれだけ積んだって空気圧の調整をする必要もないんですね。そういう部分でもファットバイクのメリットはありますね。
デフォルトのタイヤは比較的オーソドックスなタイヤパターンで、ノブは若干高め。だから挙動もニュートラルで、若干ウェットな路面でもノブが刺さってくれるだろうと思います。アスファルトメインならば変更する必要もあるでしょうが、トレイルや林道に頻繁に遊びに行く方でしたらグッド。雪国でファットバイクに乗る方は4.8インチだったり、5インチという超ファットタイヤを使うことが多いのですが、Fatboyもその程度のクリアランスを有しているため、タイヤを変更すればスノーライドも安全に楽しめそうです。
フレームはよく言えばオーソドックスなアルミ製ですが、こういうアドベンチャーライドで活きる自転車って、普通であることが大事なんです。欲を言えばスルーアクスルが良いし、当然走りの軽さで言えばカーボンフレームが勝ちますが、Fatboyだったら多分どんなことをしてもフレームが割れたりすることって無いはずなんです。ホイール、タイヤ、コンポーネントまで含めて、雪や砂浜だったり、そういうシチュエーションを気軽に楽しむ上では良いパッケージングだと思いますし、買って損の無いバイクでしょう。
スペシャライズド Fatboy
フレーム:M5 Aluminum, fully butted w/smooth welding, 197x12mm thru-axle rear
フォーク:Carbon, 46mm offset, tapered steerer, 150mm axle spacing
クランクセット:RaceFace Aeffect Cinch, 28T chainring
シフター:SRAM X7
ブレーキ:Tektro Gemini, hydraulic disc(フロント180mm、リア160mm)
タイヤ:Ground Control Fat, 26x4.6"
価 格:200,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木祐一(RiseRide)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライドHP
ウェア協力:アソス
トム・リッチーやゲイリー・フィッシャーらにより生み出され、スペシャライズドによる量産型の発売により歴史がスタートしたマウンテンバイク。スポーツバイクの一種として定着すると、クロスカントリーやダウンヒルをはじめ多彩な種目が編み出されると同時に、用途別に特化した自転車が開発され続けられてきた分野である。
遊び方と自転車タイプが細分化されたマウンテンバイクにおいて極地的な発展を遂げたのが、今回紹介するファットバイクだろう。起源はミネソタやアラスカといった寒冷地にあると言われており、雪上を走るために、ホイールを2~3本並列させたバイクが生み出されたことに端を発するという。
一般的なXCバイクは通常2インチ程のタイヤを装着することに対し、リムをつなぎ合わせてまでタイヤの接地面積を大きくする理由は、タイヤの沈下抵抗力が向上するため。通常幅ではタイヤが沈み込むようなコンディションの路面、雪上や砂浜でも何事もないかのように走破することが可能となるのだ。
もちろんタイヤの接地面積が広く、グリップ力、ハンドリングの安定性という面も特筆すべきメリットだ。スリップしにくく、段差でもハンドルが取られにくいということは、マウンテンバイクに乗ったことのないビギナーでも安心できるだろう。マウンテンバイクに乗り慣れたサイクリストは思い切り攻めることが可能となる。
また、エアボリュームが大きくタイヤの空気圧を低めに設定することができ、荒れた路面からの振動をタイヤが吸収してくれるというメリットも持つ。リアリジットフレームが主流のファットバイクにおいて、タイヤの振動吸収性は快適な走行性能に大きな恩恵をもたらしてくれる。
このようなメリットを持つファットバイクが、世界中の目に届いたのは、専用のフレームとホイールの完成車が販売された2004年。徐々に製造を行うビルダーが増え続け、2014モデルイヤーでマスプロメーカーがファットバイクに着手したことで、一気にその存在が多くのサイクリストに知られることに。
スペシャライズドも2014年モデルからファットバイク「Fatboy」をラインアップに並べた。フレームからフォーク、リム、タイヤに至るまでスペシャライズドが独自に開発を行ったオリジナル品で構成されることが特徴の1台だ。
ファットバイクをファットバイクたらしめるタイヤは、26×4.6インチというサイズ。スペシャライズドが30年以上ラインアップし続ける定番モデルのGround Controlのファット版が採用されているため、タイヤの信頼性は折り紙付きだ。
M5というバテッド加工を施した軽量アルミチューブを素材としたリアリジットフレームとカーボン製のリジットフォークのセット。フロントシングル、リア10速というドライブトレインとなっている。
シャカリキな走りを求めるクロスカントリーレースモデルとは一線を画するファットバイク。山遊びに特化したマウンテンバイクを、自身もファットバイクで遊ぶライズライド店主の鈴木祐一さんに評価してもらった。それではインプレッションに移ろう。
ー インプレッション
「アドベンチャーライドで活きるスタンダードなファットバイク」鈴木祐一(RiseRide)
4.6インチのタイヤ、フルリジッド、アルミフレームと「ザ・スタンダード」なファットバイクですね。やっぱりファットバイクの強みって、一般的なMTBに乗っている方からしても信じられないくらい圧倒的なグリップ力にあります。例えば今まで滑って登れない、下れないような急勾配でも余裕を持ってクリアできてしまうくらいですし、そこを引き出す上でもストッピングパワーの強い油圧ディスクブレーキが搭載されているFatboyのパッケージは安心できますよね。
完成車としてはフロントシングルスピードの設定ですが、もっと幅広く遊びたい方にはダブルギアにできる台座があらかじめ用意されているのも良い部分。ダブルにしてしまえばギア比1.0以下で激坂に挑むこともできるし、反対に大きなギアを付ければロングツーリングをよりイージーにしてくれます。
そういう意味ではリアにキャリア用のネジ穴が用意されていることも面白いですよね。ファットバイクでキャンプツーリングに行くなんてアドベンチャー感全開で見た目にも趣的にも楽しいものですし、タイヤボリュームがものすごいから、荷物をどれだけ積んだって空気圧の調整をする必要もないんですね。そういう部分でもファットバイクのメリットはありますね。
デフォルトのタイヤは比較的オーソドックスなタイヤパターンで、ノブは若干高め。だから挙動もニュートラルで、若干ウェットな路面でもノブが刺さってくれるだろうと思います。アスファルトメインならば変更する必要もあるでしょうが、トレイルや林道に頻繁に遊びに行く方でしたらグッド。雪国でファットバイクに乗る方は4.8インチだったり、5インチという超ファットタイヤを使うことが多いのですが、Fatboyもその程度のクリアランスを有しているため、タイヤを変更すればスノーライドも安全に楽しめそうです。
フレームはよく言えばオーソドックスなアルミ製ですが、こういうアドベンチャーライドで活きる自転車って、普通であることが大事なんです。欲を言えばスルーアクスルが良いし、当然走りの軽さで言えばカーボンフレームが勝ちますが、Fatboyだったら多分どんなことをしてもフレームが割れたりすることって無いはずなんです。ホイール、タイヤ、コンポーネントまで含めて、雪や砂浜だったり、そういうシチュエーションを気軽に楽しむ上では良いパッケージングだと思いますし、買って損の無いバイクでしょう。
スペシャライズド Fatboy
フレーム:M5 Aluminum, fully butted w/smooth welding, 197x12mm thru-axle rear
フォーク:Carbon, 46mm offset, tapered steerer, 150mm axle spacing
クランクセット:RaceFace Aeffect Cinch, 28T chainring
シフター:SRAM X7
ブレーキ:Tektro Gemini, hydraulic disc(フロント180mm、リア160mm)
タイヤ:Ground Control Fat, 26x4.6"
価 格:200,000円(税抜)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木祐一(RiseRide)
サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストンMTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。シクロクロスやMTBなど、各種レースにも参戦している。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライドHP
ウェア協力:アソス