2017/05/06(土) - 14:07
走る場所がない!と言われるMTB。そんな悩みを解消してくれる、画期的なフィールドが東京都稲城市にオープン。スマイルバイクパークと名付けられたパークは、小さいながらもXCとDH、両方の楽しみを詰め込んだ魅力的なフィールドになっていました。
MTBって買っても乗る場所が無いし、面白そうなのはわかるけど手が出ない、という人はきっととても多いだろう。少なくとも筆者の周りには何人もいる。特に緑の少ない都心に住むサイクリストにとっては、MTBという魅力溢れる乗り物を遠ざけてしまう最も大きな原因だろう。
往時のブームが過ぎ去り、下火になって久しいと言われるMTB界。しかし、シクロクロスやグラベルライド界隈が盛り上がる今、「オフロードバイク」という括りで見れば、注目が集まるカテゴリーであることは間違いないし、世界的に見ればスポーツバイクを牽引しているジャンルでもある。
実際、シクロクロスに強いショップなどでは、クロスカントリーからオールマウンテン系のMTBが徐々にではあるが売り上げを伸ばしている、という話も耳にする。MTBイベントとしては最大手となるシマノバイカーズフェスティバルも参加人数が盛り返してきているとも。ただ、やはりそこで出てくるのは「普段はどこを走ればいいの?」という問題だ。
シクロクロスやグラベルバイクなら、平坦なダートロードがあればかなり楽しむことができる。それはバイクの限界性能が低く、ロードから移行してきたサイクリストにとっては、舗装されていないというだけで十分に刺激的だからだ。河川敷の脇を走るだけでも冒険になるのは、こちらのレポートが伝えてくれている。
だけど、MTBではそうはいかない。もちろん、楽しいことは楽しいのだけれど、どうしたって物足りなくなってしまう。技術の進歩は凄まじく、今時はXC用のサスでも100mmのストローク量はスタンダードになっている。つまり、ただ平坦なダートロードでは、バイクの性能を持て余してしまうのだ。
ロードバイクとMTBの最大の違い、そしてMTBの醍醐味は縦軸の動きの有無、そこからくる重力感の増減による浮遊感だ。そのためには路面に凹凸がなければいけないし、ある程度スピードに乗せることが出来る下り区間も必要になる。そうなると選択肢は2つになる。オープンなトレイルを見つけるか、クローズドのMTBコースで遊ぶか。
前者はとてもダイナミックなライドが楽しめるが、初心者にはどこが走れる場所なのかがわからないし、他の登山客などとのコンフリクトもあり、気を使いながら走る必要がある。これが「MTBって走る場所がないよね」というイメージの元凶となるものだろう。
一方、クローズドのMTBコース、たとえば関東近郊では富士見パノラマやふじてんリゾートといったMTBパークは、有料ではあるもののしっかりと整備されたコースを誰はばかることなく楽しめるというメリットがある。そして何よりも大きいのは「走ることができるコースがそこにあることが分かっている」ということだろう。
ただ、アクセスがすこし遠く、車が必須ということで足が遠のいている人もいたはずだ。都内在住であれば、車を保有していないという人も多いことだろう。前置きが長くなってしまったが、そんなあなたに朗報だ。この4月23日から、東京都下に、新たなMTBパークがオープンした。「スマイルバイクパーク」と名付けられた新コースがオープンしたのは、多摩地区のロードレーサーにはなじみ深い稲城市だ。
都心から、相模湖や宮ケ瀬湖といった方面へ向かうために多くのサイクリストが利用するだろう「尾根幹」の起点である稲城市一帯は、起伏に富んだ多摩丘陵が広がり、都会と自然とが融和したユニークなエリアである。ジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」の舞台ともなったエリアといえば、都心に隣接しつつも自然が豊かに残る一帯であることが伝わるだろうか。
今回スマイルバイクパークがオープンしたのは、よみうりランドの西側に広がる向原地区、東京よみうりカントリークラブの南側にある一角だ。都内であれば、自走で訪れることも可能だろうし、小田急の新百合ヶ丘まで輪行しても良いだろう。車にしても高速道路などを使う必要もないので気軽に遊びに行けるはず。駐車場も完備されており、23区内からであれば、45分程度でアクセスできるはずだ。
そんな交通至便な土地に誕生したスマイルバイクパークは、以前より同じエリアでサバイバルゲームフィールドを運営しているOPSサバイバルゲーム場に隣接する形で開設された。メインとなるコースは3種類で、1周約220mの初心者コース、1周約530mの本格的なXCコース、そしてスラロームコースが用意されている。
前日の夕方から夜にかけて雨が降り続いたものの、水はけの良い土地なのかオープン当日のお昼には路面はほぼ乾いている状況。まずは初心者向けコースからコースインしたが、こちらは程よいアップダウンでコーナーにはバームが設置されているので安心できる。子供でも楽しく走れるコースだろう。
一方、XCコースは登りも下りもかなりの斜度。受付や駐車場があるエリアと、スラロームコースがあるエリアが一つの丘によって隔てられており、その丘を越えて周回するように設置されている。スラロームコースの脇を一気に下った先には3連パンプがあり、90°ターン。その先にはさらに大きな3連パンプがあるが、こちらはエスケープルートも用意されている。
その後の登り区間にはロックセクションが用意され、ただパワーだけでは押し切れないテクニカルな設定だ。登りの長さも、一気に登り切るのは無理な距離で、しっかりとXCレースに必要なインターバルの強度をかけることが出来るコースとなっている。このコースを周回しているだけでいつの間にか強くなっていそうな、考え抜かれたコースだが、それもそのはず設計にはCJ(クップ・ドゥ・ジャポン)のエリートで活躍する佐藤誠示氏が関わっているというのだから、納得だ。
そして、この日もっとも多くの人が遊んでいたスラロームコース。こちらの設計を行ったのは、ダウンヒルレースで活躍する気鋭の若手レーサー久米田昴氏だ。短めのコースながらも、縦に横に動くコースはロードバイクでは味わえない重力と遠心力をフルに感じることが出来る”らしさ”に満ちている。
「出来るだけ、いろんな人が楽しめるようなセクションを作っていきたいんですよ」とは久米田氏。メインとなるスラロームコース以外にも、オープンの朝に急きょ作られたジャンプ台や、ベンチと兼用の一本橋など、いろいろな遊び方が出来るようなセクションがみんなを待っている。そして、これからも、時期に応じて改良、増設していくとのことなので、訪れるたびに新しい楽しみ方が出来るはずだ。
オープンしたばかりということもあり、今は実施されていないものの、ゆくゆくはスクールなども開催していく予定だという。現在でもレンタルバイクやヘルメット、プロテクターなども用意されているため、初心者でも気軽にMTBの世界を味わうことが出来る。そんな貴重な場が、多くのサイクリストが集まる稲城に出来た事は、これからのスポーツバイクシーンに大きな影響を与えてくれるはずだ。
text&photo:Naoki.YASUOKA
MTBって買っても乗る場所が無いし、面白そうなのはわかるけど手が出ない、という人はきっととても多いだろう。少なくとも筆者の周りには何人もいる。特に緑の少ない都心に住むサイクリストにとっては、MTBという魅力溢れる乗り物を遠ざけてしまう最も大きな原因だろう。
往時のブームが過ぎ去り、下火になって久しいと言われるMTB界。しかし、シクロクロスやグラベルライド界隈が盛り上がる今、「オフロードバイク」という括りで見れば、注目が集まるカテゴリーであることは間違いないし、世界的に見ればスポーツバイクを牽引しているジャンルでもある。
実際、シクロクロスに強いショップなどでは、クロスカントリーからオールマウンテン系のMTBが徐々にではあるが売り上げを伸ばしている、という話も耳にする。MTBイベントとしては最大手となるシマノバイカーズフェスティバルも参加人数が盛り返してきているとも。ただ、やはりそこで出てくるのは「普段はどこを走ればいいの?」という問題だ。
シクロクロスやグラベルバイクなら、平坦なダートロードがあればかなり楽しむことができる。それはバイクの限界性能が低く、ロードから移行してきたサイクリストにとっては、舗装されていないというだけで十分に刺激的だからだ。河川敷の脇を走るだけでも冒険になるのは、こちらのレポートが伝えてくれている。
だけど、MTBではそうはいかない。もちろん、楽しいことは楽しいのだけれど、どうしたって物足りなくなってしまう。技術の進歩は凄まじく、今時はXC用のサスでも100mmのストローク量はスタンダードになっている。つまり、ただ平坦なダートロードでは、バイクの性能を持て余してしまうのだ。
ロードバイクとMTBの最大の違い、そしてMTBの醍醐味は縦軸の動きの有無、そこからくる重力感の増減による浮遊感だ。そのためには路面に凹凸がなければいけないし、ある程度スピードに乗せることが出来る下り区間も必要になる。そうなると選択肢は2つになる。オープンなトレイルを見つけるか、クローズドのMTBコースで遊ぶか。
前者はとてもダイナミックなライドが楽しめるが、初心者にはどこが走れる場所なのかがわからないし、他の登山客などとのコンフリクトもあり、気を使いながら走る必要がある。これが「MTBって走る場所がないよね」というイメージの元凶となるものだろう。
一方、クローズドのMTBコース、たとえば関東近郊では富士見パノラマやふじてんリゾートといったMTBパークは、有料ではあるもののしっかりと整備されたコースを誰はばかることなく楽しめるというメリットがある。そして何よりも大きいのは「走ることができるコースがそこにあることが分かっている」ということだろう。
ただ、アクセスがすこし遠く、車が必須ということで足が遠のいている人もいたはずだ。都内在住であれば、車を保有していないという人も多いことだろう。前置きが長くなってしまったが、そんなあなたに朗報だ。この4月23日から、東京都下に、新たなMTBパークがオープンした。「スマイルバイクパーク」と名付けられた新コースがオープンしたのは、多摩地区のロードレーサーにはなじみ深い稲城市だ。
都心から、相模湖や宮ケ瀬湖といった方面へ向かうために多くのサイクリストが利用するだろう「尾根幹」の起点である稲城市一帯は、起伏に富んだ多摩丘陵が広がり、都会と自然とが融和したユニークなエリアである。ジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」の舞台ともなったエリアといえば、都心に隣接しつつも自然が豊かに残る一帯であることが伝わるだろうか。
今回スマイルバイクパークがオープンしたのは、よみうりランドの西側に広がる向原地区、東京よみうりカントリークラブの南側にある一角だ。都内であれば、自走で訪れることも可能だろうし、小田急の新百合ヶ丘まで輪行しても良いだろう。車にしても高速道路などを使う必要もないので気軽に遊びに行けるはず。駐車場も完備されており、23区内からであれば、45分程度でアクセスできるはずだ。
そんな交通至便な土地に誕生したスマイルバイクパークは、以前より同じエリアでサバイバルゲームフィールドを運営しているOPSサバイバルゲーム場に隣接する形で開設された。メインとなるコースは3種類で、1周約220mの初心者コース、1周約530mの本格的なXCコース、そしてスラロームコースが用意されている。
前日の夕方から夜にかけて雨が降り続いたものの、水はけの良い土地なのかオープン当日のお昼には路面はほぼ乾いている状況。まずは初心者向けコースからコースインしたが、こちらは程よいアップダウンでコーナーにはバームが設置されているので安心できる。子供でも楽しく走れるコースだろう。
一方、XCコースは登りも下りもかなりの斜度。受付や駐車場があるエリアと、スラロームコースがあるエリアが一つの丘によって隔てられており、その丘を越えて周回するように設置されている。スラロームコースの脇を一気に下った先には3連パンプがあり、90°ターン。その先にはさらに大きな3連パンプがあるが、こちらはエスケープルートも用意されている。
その後の登り区間にはロックセクションが用意され、ただパワーだけでは押し切れないテクニカルな設定だ。登りの長さも、一気に登り切るのは無理な距離で、しっかりとXCレースに必要なインターバルの強度をかけることが出来るコースとなっている。このコースを周回しているだけでいつの間にか強くなっていそうな、考え抜かれたコースだが、それもそのはず設計にはCJ(クップ・ドゥ・ジャポン)のエリートで活躍する佐藤誠示氏が関わっているというのだから、納得だ。
そして、この日もっとも多くの人が遊んでいたスラロームコース。こちらの設計を行ったのは、ダウンヒルレースで活躍する気鋭の若手レーサー久米田昴氏だ。短めのコースながらも、縦に横に動くコースはロードバイクでは味わえない重力と遠心力をフルに感じることが出来る”らしさ”に満ちている。
「出来るだけ、いろんな人が楽しめるようなセクションを作っていきたいんですよ」とは久米田氏。メインとなるスラロームコース以外にも、オープンの朝に急きょ作られたジャンプ台や、ベンチと兼用の一本橋など、いろいろな遊び方が出来るようなセクションがみんなを待っている。そして、これからも、時期に応じて改良、増設していくとのことなので、訪れるたびに新しい楽しみ方が出来るはずだ。
オープンしたばかりということもあり、今は実施されていないものの、ゆくゆくはスクールなども開催していく予定だという。現在でもレンタルバイクやヘルメット、プロテクターなども用意されているため、初心者でも気軽にMTBの世界を味わうことが出来る。そんな貴重な場が、多くのサイクリストが集まる稲城に出来た事は、これからのスポーツバイクシーンに大きな影響を与えてくれるはずだ。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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