2017/03/26(日) - 09:17
3月12日(日)に開催された「明治神宮外苑大学クリテリウム」に出場した、各校エースのバイクを中心に紹介していきます。それではこだわりの愛車を見て行きましょう。
岡本隼(日本大学3年)
「(クラス1に出場する)メンバーは3人いるので、全員で連携しながら大学対抗と、自分の上位成績を狙っていきたい」と事前に語り、中盤では積極的に逃げを打ち、最後は圧巻のスプリントで神宮クリテ2連覇を飾った3年生の岡本隼(日本大学)。つい先日、バーレーンで開催されていたアジア選手権でもスプリントに競り勝った新U23アジア王者だ。
今シーズンは愛三工業レーシングに加入し、学連レースと並行しながらUCIアジアツアーへと参戦していく予定という岡本が駆るのは、三浦恭資氏がプロディースするMUUR ZERO(ミュール・ゼロ)のエアロロードバイクであるDB2。ちょうど1年になるというこのバイクについて、「シャキッとした感じですね。ただ硬いだけではなく、反発がちょうど良くて踏み心地が心地良いんです。BORAとの相性も良くて気に入っています」とコメント。
セッティングとして特徴的なのは、できるだけ低いポジションにするべくこだわったハンドル周りだろう。STIレバーを低い位置に取り付けできるハンドルを選び、スプリンターお約束のスプリンタースイッチも完備している。日常的なメンテナンスは自分で行っていると言い、愛情が伝わるほどに駆動系周りはピカピカで、クランクの回転が驚くほど軽かったことも付け加えておきたい。ちなみにフロントフォークの「隼」ステッカー、ダウンチューブの「走り屋」、「TURBO」ステッカーは自分で貼ったものだそう(クルマ好きの岡本選手、愛車はSW20III型MR2とビートとのこと)。
そんな岡本選手の今後の目標は、「とりあえず目の前のレースに全力を尽くすだけです」とシンプルだ。もっとスプリント力と登坂力を身につけて、登りレースでも勝てていけるようにレベルアップしていきたい、とも。「アジア選手権でUCIポイントを取ったので世界選手権も近い存在になってきました。そこで成績を残していくことと、そしてインカレが目標です。インカレではまだ成績を残せていないので、大学生としてそこは大事にしたいですね」。
黒枝咲哉(鹿屋体育大学3年)
愛三工業レーシング所属の黒枝士揮選手の弟で、2013年のジュニア全日本王者、ジャパンカップオープンレース優勝、世界選手権代表メンバー入り、アジア学生選手権クリテリウム優勝など、持ち前のスプリント力でジュニア時代から戦績を残してきた黒枝咲哉選手。今大会は優勝にはとどかずも2位に入り、非凡さを見せつけた。
そんな彼のスプリントを支えるバイクは、キャノンデールのフラッグシップモデルであるSUPERSIX EVO Hi-Modだ。「一つ前のSUPERSIX EVOから乗り換えたのですが、フレームが硬くなったのでスプリンターとしては嬉しいし、フォーク角度が立ったのでコーナリングや集団内の動きがより機敏になりましたね。もっと大柄ならフレーム剛性がもっと欲しくなると思うのですが、小柄ですし、登りもこなさなければいけないことを考えると適度な硬さなので自分に合っていますね。軽さには助けられていますよ」と太鼓判だ。
セッティングで特徴的な部分は、スプリント勝負を踏まえたハンドル周りだろう。マイナス17度ステムを用いてポジションを下げ、ドロップ部分にはお約束のスプリンタースイッチを装備。小柄であることを考慮して落差の小さいショートリーチハンドルを用い、さらにスペーサーを用いてブレーキレバーを近く位置させている辺りも参考になりそうだ。ギアは漢の53-39/11-23。BORA ULTRAにセットしたタイヤはパナレーサーのRace D Evo3で、耐久性と走りの安定性を重視した上でのチョイスだと言う。
岡本選手や孫崎選手と同じく大会翌日からナショナルチームのメンバーとしてヨーロッパ遠征に向かう黒枝選手の目標は、もうすぐに迫っている東京オリンピックだ。それまでに海外チームに入って経験を積み、どんな状況でも勝てるようにスプリント力を上げ、エーススプリンターとして定着したい、とも。兄の士揮選手は先日のツール・ド・ランカウイでは途中アジアンライダージャージを着用するなど今シーズンすでに成績を出しており、兄弟での活躍に是非期待したいところだ。ちなみに、趣味はピアノ。
今村駿介(中央大学2年)
2015年のジュニア世界選手権ポイントレース優勝、2016年全日本選手権ポイントレース優勝と中長距離系トラック種目において輝かしい戦績を持つ中央大学2年生の今村駿介選手。そんな彼の愛車は、フェルトのロードラインナップの中核であるオールラウンダー、Fシリーズの高級モデル「F1」の先代モデルだ。
「自転車を始める時に、フェルトが一番カッコイイなと思って選びました」とエアロロードのAR4を購入して以来、ずっとフェルト一筋の今村選手。キツい登りも含まれる学連レースに向けて、進学の際にF1へとアップグレードしたのだそう。「軽くて、剛性もあるので平坦もしっかりと進んでくれて気持ちが良いですね」とは本人の談。以前落車でダウンチューブを割ってしまったそうだが、アラヤにて補修してもらい、乗り続けているそうだ。
コンポーネントは9000系デュラエース、パワーメーターはパイオニアと非常に機材としてまとまった印象で、もともと使っていたサドルに合わせて、ステムやハンドル、シートポスト、シートポストマーカーは全てフィジークのアルミパーツでまとめている。BORA ULTRA TWOは、元法政大学でRCSリーダーを取った相本祥政さん(この写真に写っているホイールですね)→中央大学の先輩である宮本隼輔さん→今村選手と代々受け継がれているものなんだとか。車体の差し色は中央大学のスクールカラーである赤だ。
「トラックレースで国内ではトップで走れているのですが、海外に出てしまうと全ての力が足りていないことを痛感しますね。トラックを走るにはロードも走れていないといけないので、しっかりと練習を重ねてレベルアップしたい」と豊富を語る今村選手。ずっと競輪選手を目指していたものの、海外ではロードと兼業している選手も多いため、最近はロード選手としての道へも興味が出てきたとのこと。今後に期待したいスピードスターだ。
安田京介(京都産業大学3年)
京都産業大学自転車競技部の主将を務める安田選手は、昨年トラック学生選手権マディソン優勝、学生選手権個人ロード2位、チームTT2位などの戦績を誇るスピードマン。バイクは脚質を表すかのようなガノーのエアロロードGENNIX A1だ。
見るからに空力性能重視のフレームだが、重量は昨年乗っていたGENNIXA R1とほぼ変わらず、エアロロードらしい直進安定性が特徴ながら、思った以上に登って下れるバイクだと言う。変速系は機械式アルテグラで統一されているが、練習を重ねたため駆動系が消耗したので、チェーンリングのみより硬いデュラエースに交換しているという。
基本的には真新しいバイクだが、サドルだけは長年使い続けているもの。年季の入ったSLRは練習量を表しているようだ。それからシャフト部分が4mmプラスされたロングバージョンのデュラエースペダルを用いており、Qファクターを広めてより踏みやすくしている。ホイールはフルクラムのRACING ZEROだ。
選手として今後も自分の強みであるスピードを更に強化しつつ、登りもこなせるオールラウンドな選手になりたいとのことだが、就職活動が始まるため練習量の確保が課題だそう。自転車競技を続けるかどうかは未定だそうだが、就職後も趣味として続けていきたいと語ってくれた。
貫名将人(東京大学2年)
デローザやミシュランを取り扱う日直商会からサポートを受けている東京大学。数名がデローザのフルカーボンバイク「NICK(ニック)」を使用しており、ご登場頂いたクラス1レーサー、貫名将人選手もそんな一人だ。
デローザのラインアップではエントリーモデルに当たるNICKだが、貫名選手は「あまり剛性が高かったり、軽かったりという部分はありませんが、路面の振動を上手くいなしてくれるので長距離レースでも疲れにくいのが良いですね。勝負所まで脚を貯められる気がします」とインプレッション。距離をこなした後でも”落ち”が少ない脚質だけに、バイクの性格も合っているんだとか。
工学部に籍を置き、将来はエンジニアを目指している理系派レーサーらしく、「パーツ選びは数値を基準に選ぶようにしています。何のデータも無しに”速いよ”と言われても信用できませんので…(笑)」と客観的で、国内では珍しいFLOホイールも、公式サイトに掲載されていた空力や剛性値を参考に選んだという。組み合わせるタイヤはミシュランのフラッグシップモデルであるPOWER COMPETITIONの25cであり、ちょっとピーキーながらものすごく転がり抵抗が軽く気に入っているそう(以前は7気圧ほどだったが、最近は前5.0気圧、後5.5気圧が多いそう。東京大学自転車部競技班の練習日記より)。
変速系はその昔マイクロシフトを使っていたため、シマノの左右に動くブレーキレバーが何となく不安だったためスラム(FORCE)を使い、パイオニアのパワーメーターを使うため、クランクはシマノに換装している。アウターワイヤーは引きを軽くするためにシフト、ブレーキ共に全てノコンだ。
text&photo:So.Isobe
岡本隼(日本大学3年)
「(クラス1に出場する)メンバーは3人いるので、全員で連携しながら大学対抗と、自分の上位成績を狙っていきたい」と事前に語り、中盤では積極的に逃げを打ち、最後は圧巻のスプリントで神宮クリテ2連覇を飾った3年生の岡本隼(日本大学)。つい先日、バーレーンで開催されていたアジア選手権でもスプリントに競り勝った新U23アジア王者だ。
今シーズンは愛三工業レーシングに加入し、学連レースと並行しながらUCIアジアツアーへと参戦していく予定という岡本が駆るのは、三浦恭資氏がプロディースするMUUR ZERO(ミュール・ゼロ)のエアロロードバイクであるDB2。ちょうど1年になるというこのバイクについて、「シャキッとした感じですね。ただ硬いだけではなく、反発がちょうど良くて踏み心地が心地良いんです。BORAとの相性も良くて気に入っています」とコメント。
セッティングとして特徴的なのは、できるだけ低いポジションにするべくこだわったハンドル周りだろう。STIレバーを低い位置に取り付けできるハンドルを選び、スプリンターお約束のスプリンタースイッチも完備している。日常的なメンテナンスは自分で行っていると言い、愛情が伝わるほどに駆動系周りはピカピカで、クランクの回転が驚くほど軽かったことも付け加えておきたい。ちなみにフロントフォークの「隼」ステッカー、ダウンチューブの「走り屋」、「TURBO」ステッカーは自分で貼ったものだそう(クルマ好きの岡本選手、愛車はSW20III型MR2とビートとのこと)。
そんな岡本選手の今後の目標は、「とりあえず目の前のレースに全力を尽くすだけです」とシンプルだ。もっとスプリント力と登坂力を身につけて、登りレースでも勝てていけるようにレベルアップしていきたい、とも。「アジア選手権でUCIポイントを取ったので世界選手権も近い存在になってきました。そこで成績を残していくことと、そしてインカレが目標です。インカレではまだ成績を残せていないので、大学生としてそこは大事にしたいですね」。
黒枝咲哉(鹿屋体育大学3年)
愛三工業レーシング所属の黒枝士揮選手の弟で、2013年のジュニア全日本王者、ジャパンカップオープンレース優勝、世界選手権代表メンバー入り、アジア学生選手権クリテリウム優勝など、持ち前のスプリント力でジュニア時代から戦績を残してきた黒枝咲哉選手。今大会は優勝にはとどかずも2位に入り、非凡さを見せつけた。
そんな彼のスプリントを支えるバイクは、キャノンデールのフラッグシップモデルであるSUPERSIX EVO Hi-Modだ。「一つ前のSUPERSIX EVOから乗り換えたのですが、フレームが硬くなったのでスプリンターとしては嬉しいし、フォーク角度が立ったのでコーナリングや集団内の動きがより機敏になりましたね。もっと大柄ならフレーム剛性がもっと欲しくなると思うのですが、小柄ですし、登りもこなさなければいけないことを考えると適度な硬さなので自分に合っていますね。軽さには助けられていますよ」と太鼓判だ。
セッティングで特徴的な部分は、スプリント勝負を踏まえたハンドル周りだろう。マイナス17度ステムを用いてポジションを下げ、ドロップ部分にはお約束のスプリンタースイッチを装備。小柄であることを考慮して落差の小さいショートリーチハンドルを用い、さらにスペーサーを用いてブレーキレバーを近く位置させている辺りも参考になりそうだ。ギアは漢の53-39/11-23。BORA ULTRAにセットしたタイヤはパナレーサーのRace D Evo3で、耐久性と走りの安定性を重視した上でのチョイスだと言う。
岡本選手や孫崎選手と同じく大会翌日からナショナルチームのメンバーとしてヨーロッパ遠征に向かう黒枝選手の目標は、もうすぐに迫っている東京オリンピックだ。それまでに海外チームに入って経験を積み、どんな状況でも勝てるようにスプリント力を上げ、エーススプリンターとして定着したい、とも。兄の士揮選手は先日のツール・ド・ランカウイでは途中アジアンライダージャージを着用するなど今シーズンすでに成績を出しており、兄弟での活躍に是非期待したいところだ。ちなみに、趣味はピアノ。
今村駿介(中央大学2年)
2015年のジュニア世界選手権ポイントレース優勝、2016年全日本選手権ポイントレース優勝と中長距離系トラック種目において輝かしい戦績を持つ中央大学2年生の今村駿介選手。そんな彼の愛車は、フェルトのロードラインナップの中核であるオールラウンダー、Fシリーズの高級モデル「F1」の先代モデルだ。
「自転車を始める時に、フェルトが一番カッコイイなと思って選びました」とエアロロードのAR4を購入して以来、ずっとフェルト一筋の今村選手。キツい登りも含まれる学連レースに向けて、進学の際にF1へとアップグレードしたのだそう。「軽くて、剛性もあるので平坦もしっかりと進んでくれて気持ちが良いですね」とは本人の談。以前落車でダウンチューブを割ってしまったそうだが、アラヤにて補修してもらい、乗り続けているそうだ。
コンポーネントは9000系デュラエース、パワーメーターはパイオニアと非常に機材としてまとまった印象で、もともと使っていたサドルに合わせて、ステムやハンドル、シートポスト、シートポストマーカーは全てフィジークのアルミパーツでまとめている。BORA ULTRA TWOは、元法政大学でRCSリーダーを取った相本祥政さん(この写真に写っているホイールですね)→中央大学の先輩である宮本隼輔さん→今村選手と代々受け継がれているものなんだとか。車体の差し色は中央大学のスクールカラーである赤だ。
「トラックレースで国内ではトップで走れているのですが、海外に出てしまうと全ての力が足りていないことを痛感しますね。トラックを走るにはロードも走れていないといけないので、しっかりと練習を重ねてレベルアップしたい」と豊富を語る今村選手。ずっと競輪選手を目指していたものの、海外ではロードと兼業している選手も多いため、最近はロード選手としての道へも興味が出てきたとのこと。今後に期待したいスピードスターだ。
安田京介(京都産業大学3年)
京都産業大学自転車競技部の主将を務める安田選手は、昨年トラック学生選手権マディソン優勝、学生選手権個人ロード2位、チームTT2位などの戦績を誇るスピードマン。バイクは脚質を表すかのようなガノーのエアロロードGENNIX A1だ。
見るからに空力性能重視のフレームだが、重量は昨年乗っていたGENNIXA R1とほぼ変わらず、エアロロードらしい直進安定性が特徴ながら、思った以上に登って下れるバイクだと言う。変速系は機械式アルテグラで統一されているが、練習を重ねたため駆動系が消耗したので、チェーンリングのみより硬いデュラエースに交換しているという。
基本的には真新しいバイクだが、サドルだけは長年使い続けているもの。年季の入ったSLRは練習量を表しているようだ。それからシャフト部分が4mmプラスされたロングバージョンのデュラエースペダルを用いており、Qファクターを広めてより踏みやすくしている。ホイールはフルクラムのRACING ZEROだ。
選手として今後も自分の強みであるスピードを更に強化しつつ、登りもこなせるオールラウンドな選手になりたいとのことだが、就職活動が始まるため練習量の確保が課題だそう。自転車競技を続けるかどうかは未定だそうだが、就職後も趣味として続けていきたいと語ってくれた。
貫名将人(東京大学2年)
デローザやミシュランを取り扱う日直商会からサポートを受けている東京大学。数名がデローザのフルカーボンバイク「NICK(ニック)」を使用しており、ご登場頂いたクラス1レーサー、貫名将人選手もそんな一人だ。
デローザのラインアップではエントリーモデルに当たるNICKだが、貫名選手は「あまり剛性が高かったり、軽かったりという部分はありませんが、路面の振動を上手くいなしてくれるので長距離レースでも疲れにくいのが良いですね。勝負所まで脚を貯められる気がします」とインプレッション。距離をこなした後でも”落ち”が少ない脚質だけに、バイクの性格も合っているんだとか。
工学部に籍を置き、将来はエンジニアを目指している理系派レーサーらしく、「パーツ選びは数値を基準に選ぶようにしています。何のデータも無しに”速いよ”と言われても信用できませんので…(笑)」と客観的で、国内では珍しいFLOホイールも、公式サイトに掲載されていた空力や剛性値を参考に選んだという。組み合わせるタイヤはミシュランのフラッグシップモデルであるPOWER COMPETITIONの25cであり、ちょっとピーキーながらものすごく転がり抵抗が軽く気に入っているそう(以前は7気圧ほどだったが、最近は前5.0気圧、後5.5気圧が多いそう。東京大学自転車部競技班の練習日記より)。
変速系はその昔マイクロシフトを使っていたため、シマノの左右に動くブレーキレバーが何となく不安だったためスラム(FORCE)を使い、パイオニアのパワーメーターを使うため、クランクはシマノに換装している。アウターワイヤーは引きを軽くするためにシフト、ブレーキ共に全てノコンだ。
text&photo:So.Isobe
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