2017/02/10(金) - 09:02
1月15日に行われた美ら島オキナワセンチュリーラン。イベント初の試みとして、その翌日にアフターサイクリングが行われた。歴史と文化に触れ、よりディープな沖縄を楽しめたやんばる・羽地周遊コースのレポートをお届けしよう。
恩納村からはクルマで30分ほど。美ら島オキナワセンチュリーランの興奮冷めやらぬまま、名護市の羽地(はねじ)支所に集合したのは、事前にやんばる・羽地周遊コースへ申込みをしていた10名の参加者の皆さん。そこに地元ガイドとしてツール・ド・おきなわ協会の宮里武志さんと、名護市羽地支所の宮里力さんのお二方(名字が同じなのは偶然だそうです)、そして筆者を加えた13名が今日のライドメンバーだ。
イベント走行中にはさらっと通過してしまう場所に焦点を当て、まだまだたくさんある地元沖縄の魅力を、より深く見て知ってもらいたいというのがこのアフターサイクリングの目的。沖縄の昔ながらの景観や文化を色濃く残す、名護市羽地地区を回るこのコース。車ではなかなか行きづらい集落の細い道も、自転車ならスイスイっと見て回れると言う訳だ。20kmに満たない短めなコースを、地元ガイドの話を聞きつつ半日かけてゆったりポタリングする企画である。
羽地支所をスタートしてまず走るのは、沖縄本島と屋我地島との間に挟まれた「羽地内海」を望める道。青々とした海に数々の小島が浮かび、「沖縄の松島」とも言われる景観をつくっている。別の場所には羽地内海を一望できる嵐山展望休憩所という展望台もあり、羽地内海を挟んで屋我地島、その奥に古宇利島を、そして160kmコースで走ったワルミ大橋もここから眺めることができるそうだ。
少し走って到着するは、真喜屋ダムいこいの広場。羽地地区は水が豊富なことでも知られ、この真喜屋ダムは農業用水を湛え、羽地の農業を支えているという。同じく羽地地区に建設されるツール・ド・おきなわでもお馴染みの羽地ダムは、その豊富な水量を以て名護市だけでなく沖縄本島各地に水を供給している。ダム周りはきれいに整備され、林道をウォーキングしたり、これからの時期には山桜も見られたりと沖縄の自然を楽しめる穴場といえるだろう。
海方面へ下ると、海岸線に沿って稲嶺のフクギ並木が広がる。亜熱帯地域に生息するフクギは、真っ直ぐ上に向かって成長し防風や防潮の役目を果たす沖縄特有の樹木だ。青々とした肉厚の葉をつけるため、防火の役割も担っている。
そのフクギを家の塀として活用した、沖縄伝統の瓦屋根家屋が軒を連ねる稲嶺、真喜屋の集落。ここは一旦自転車を降りて散策だ。沖縄の昔ながらの風景が残る集落内を、ガイドのおふたりのお話を聞きつつ、ゆったりと進む。小道の曲がり角には必ずと言っていいほど表札のように「石敢當(いしがんとう)」の文字が見られるが、これは中国由来の魔除けだそうだ。本州では見ることのない珍しい風習である。
集落を抜け休憩地に訪れたのは地元の産物の直売施設となっている道の駅「羽地の駅」。養鶏が盛んだという羽地地区だけあって、地元のやんばるたまごがたくさん並び、羽地鶏料理も楽しめる場所だ。ここでは10時のおやつに、羽地の駅名物「ニューハーフ」を頂く。だが安心してほしい、ニューハーフとは魚のすり身と羽地鶏のミンチ、それに野菜を加えて仕上げた沖縄風かまぼこのこと。異なる2種類の肉がミックスしたことでその名称になったと言う。なんともインパクトのある名前だが、味は抜群。羽地に寄った際はぜひ食べてみてほしい。
「沖縄と言えば泡盛でしょう」ということで、お次は戦前から代々続く地元の酒蔵「龍泉(りゅうせん)酒造」へ。ちょうど米を蒸す作業に移る過程を見られたり、巨大なタンクにてもろみの発酵段階を覗けたりしながら、泡盛ができるまでを一から順に説明していただいた。また泡盛も少し寝かせた方が美味しいのだとか。お店で購入する際は、製造日が少し古いものをチョイスするとより深みのある味が楽しめるそうだ。
羽地内海を望みながらしばし走ると、突如現れたのは自由の女神。リサイクルショップ&カフェの敷地内に建てられたこちらは、名護市の隠れた記念撮影スポット。アメリカとの深い関わりを感じられるところだ。調べてみると沖縄本島には各地に自由の女神像を発見できるらしい。すべて見つけると幸せになれるかも!?
続いて県指定の有形民俗文化財「我部祖河の高倉」を見学。亜熱帯地域らしく、収穫した穀物を湿気から守るために風通しを良くした高床式の倉となる。現存するものは数少なく、昔の生活文化に触れられる貴重な経験である。沖縄特有の石灰岩による石垣もまた、昔からある沖縄の風景として楽しめるものだ。
コースの最後に向かったのは、沖縄では1月から2月にかけて見頃を迎える「ターブックヮー」のコスモス畑。稲作地帯でも知られる羽地の水田を休耕時期に有効活用したもので、訪れた際は時期もぴったり。赤、白、ピンクの色とりどりの花々が華やかに広がっていた。ただ、場所によってはもう桜も開花する沖縄。秋の花と春の花が同じ季節に見られる、独特の気候を感じられるワンシーンとなった。
スタート地点である羽地支所に戻ってきて全行程が終了。時間はちょうど12時過ぎ、お待ちかねの昼ごはんである。沖縄といえばご飯はじゅーしぃに、地元羽地鶏でダシを取った鶏汁。さらにはバーベキュースタイルで炭火焼きしてくれた鶏肉と、羽地のフルコースを堪能できた。半日かけた軽めのサイクリングはお腹を空かせるにはちょうど良く、みな箸が止まることなく参加者同士の会話にも花を咲かせていた。
イベント初の試みだったものの、普通に観光に来るだけでは触れることのない、沖縄の深いところまで知ることができ、満足いく企画となったのではないだろうか。参加者も少人数でみんなの距離が近く、アットホームな雰囲気でライドを楽しめたおかげで、各場面が大変印象に残るものとなった。このアフターサイクリングは今後も毎年開催予定とのことなので、美ら島オキナワセンチュリーランに応募する方はエントリーの際に要チェックだ。
text&photo:Yuto.MURATA
photo:Makoto.AYANO
恩納村からはクルマで30分ほど。美ら島オキナワセンチュリーランの興奮冷めやらぬまま、名護市の羽地(はねじ)支所に集合したのは、事前にやんばる・羽地周遊コースへ申込みをしていた10名の参加者の皆さん。そこに地元ガイドとしてツール・ド・おきなわ協会の宮里武志さんと、名護市羽地支所の宮里力さんのお二方(名字が同じなのは偶然だそうです)、そして筆者を加えた13名が今日のライドメンバーだ。
イベント走行中にはさらっと通過してしまう場所に焦点を当て、まだまだたくさんある地元沖縄の魅力を、より深く見て知ってもらいたいというのがこのアフターサイクリングの目的。沖縄の昔ながらの景観や文化を色濃く残す、名護市羽地地区を回るこのコース。車ではなかなか行きづらい集落の細い道も、自転車ならスイスイっと見て回れると言う訳だ。20kmに満たない短めなコースを、地元ガイドの話を聞きつつ半日かけてゆったりポタリングする企画である。
羽地支所をスタートしてまず走るのは、沖縄本島と屋我地島との間に挟まれた「羽地内海」を望める道。青々とした海に数々の小島が浮かび、「沖縄の松島」とも言われる景観をつくっている。別の場所には羽地内海を一望できる嵐山展望休憩所という展望台もあり、羽地内海を挟んで屋我地島、その奥に古宇利島を、そして160kmコースで走ったワルミ大橋もここから眺めることができるそうだ。
少し走って到着するは、真喜屋ダムいこいの広場。羽地地区は水が豊富なことでも知られ、この真喜屋ダムは農業用水を湛え、羽地の農業を支えているという。同じく羽地地区に建設されるツール・ド・おきなわでもお馴染みの羽地ダムは、その豊富な水量を以て名護市だけでなく沖縄本島各地に水を供給している。ダム周りはきれいに整備され、林道をウォーキングしたり、これからの時期には山桜も見られたりと沖縄の自然を楽しめる穴場といえるだろう。
海方面へ下ると、海岸線に沿って稲嶺のフクギ並木が広がる。亜熱帯地域に生息するフクギは、真っ直ぐ上に向かって成長し防風や防潮の役目を果たす沖縄特有の樹木だ。青々とした肉厚の葉をつけるため、防火の役割も担っている。
そのフクギを家の塀として活用した、沖縄伝統の瓦屋根家屋が軒を連ねる稲嶺、真喜屋の集落。ここは一旦自転車を降りて散策だ。沖縄の昔ながらの風景が残る集落内を、ガイドのおふたりのお話を聞きつつ、ゆったりと進む。小道の曲がり角には必ずと言っていいほど表札のように「石敢當(いしがんとう)」の文字が見られるが、これは中国由来の魔除けだそうだ。本州では見ることのない珍しい風習である。
集落を抜け休憩地に訪れたのは地元の産物の直売施設となっている道の駅「羽地の駅」。養鶏が盛んだという羽地地区だけあって、地元のやんばるたまごがたくさん並び、羽地鶏料理も楽しめる場所だ。ここでは10時のおやつに、羽地の駅名物「ニューハーフ」を頂く。だが安心してほしい、ニューハーフとは魚のすり身と羽地鶏のミンチ、それに野菜を加えて仕上げた沖縄風かまぼこのこと。異なる2種類の肉がミックスしたことでその名称になったと言う。なんともインパクトのある名前だが、味は抜群。羽地に寄った際はぜひ食べてみてほしい。
「沖縄と言えば泡盛でしょう」ということで、お次は戦前から代々続く地元の酒蔵「龍泉(りゅうせん)酒造」へ。ちょうど米を蒸す作業に移る過程を見られたり、巨大なタンクにてもろみの発酵段階を覗けたりしながら、泡盛ができるまでを一から順に説明していただいた。また泡盛も少し寝かせた方が美味しいのだとか。お店で購入する際は、製造日が少し古いものをチョイスするとより深みのある味が楽しめるそうだ。
羽地内海を望みながらしばし走ると、突如現れたのは自由の女神。リサイクルショップ&カフェの敷地内に建てられたこちらは、名護市の隠れた記念撮影スポット。アメリカとの深い関わりを感じられるところだ。調べてみると沖縄本島には各地に自由の女神像を発見できるらしい。すべて見つけると幸せになれるかも!?
続いて県指定の有形民俗文化財「我部祖河の高倉」を見学。亜熱帯地域らしく、収穫した穀物を湿気から守るために風通しを良くした高床式の倉となる。現存するものは数少なく、昔の生活文化に触れられる貴重な経験である。沖縄特有の石灰岩による石垣もまた、昔からある沖縄の風景として楽しめるものだ。
コースの最後に向かったのは、沖縄では1月から2月にかけて見頃を迎える「ターブックヮー」のコスモス畑。稲作地帯でも知られる羽地の水田を休耕時期に有効活用したもので、訪れた際は時期もぴったり。赤、白、ピンクの色とりどりの花々が華やかに広がっていた。ただ、場所によってはもう桜も開花する沖縄。秋の花と春の花が同じ季節に見られる、独特の気候を感じられるワンシーンとなった。
スタート地点である羽地支所に戻ってきて全行程が終了。時間はちょうど12時過ぎ、お待ちかねの昼ごはんである。沖縄といえばご飯はじゅーしぃに、地元羽地鶏でダシを取った鶏汁。さらにはバーベキュースタイルで炭火焼きしてくれた鶏肉と、羽地のフルコースを堪能できた。半日かけた軽めのサイクリングはお腹を空かせるにはちょうど良く、みな箸が止まることなく参加者同士の会話にも花を咲かせていた。
イベント初の試みだったものの、普通に観光に来るだけでは触れることのない、沖縄の深いところまで知ることができ、満足いく企画となったのではないだろうか。参加者も少人数でみんなの距離が近く、アットホームな雰囲気でライドを楽しめたおかげで、各場面が大変印象に残るものとなった。このアフターサイクリングは今後も毎年開催予定とのことなので、美ら島オキナワセンチュリーランに応募する方はエントリーの際に要チェックだ。
text&photo:Yuto.MURATA
photo:Makoto.AYANO
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