2017/01/11(水) - 09:04
常夏の島サイパンで開催されたロードレース「ヘルオブマリアナ」に参戦した中村龍太郎さん。連覇を果たすべく出場したレースだったが、序盤に落車に巻き込まれてしまう。中村さんはレースに復帰できるのだろうか、優勝できるのだろうか? 中村さんによるレポートの後編をお届けします。
僕の前を走るフィリピン人選手NAVY(NAVYと書かれたビブショーツを履いていたから)が、停車中の車に向かってスリップ。身体だけは僕の前に流れてきてしまい、僕も前輪をすくわれ落車してしまう。レース前夜の雨によって濡れた路面は、未だ乾かずスリッピーだったこともあり、僕は左手をピンと上げた状態で寝そべって3mくらい滑っていく。コーナーということもあってスピードは遅かったのだけど、あまりに長い時間滑るので逆に「長くね?」と笑えてくる。
長い滑走時間が終わり、被害状況の確認。腰を強打しているけど立てるし足は動く。自転車もブラケットの曲がり程度で問題なし。チームカーが走っていない(体。実際にはメディアの車がそばにいる)ので自力で復帰しないといけない。最初に落車したNAVYを見るとまだ寝転がってる。見捨てることに。
僕はボトルを拾って再出発。レース後、車載映像を確認したら落車から再出発まで驚くほど早かった。走り出してSUNVOLT製リラックマのエンドキャップが取れていることに気づき、僕を落車に巻き込んだNAVYに対する怒りが込み上げる(笑)
先頭集団は森本さんとセブイレ、アレックスだろうか。FAST氏が脱落し1人になったロシア勢のアレックスは恐らく最後まで金魚の糞だろうし、森本さんとセブイレは後続を待つだろうと考え前を追う。踏んだかいあり、バンザイクリフの折り返し地点で追いつくことができた。ここから再びスタート地点のマリアナリゾート&スパ前を通り、南下する。
先頭を牽くのは当然2人いる日本チーム。1人のセブイレやアレックスは牽いてくれない。海外選手はそういうところを徹底してくる。島の南端までは追い風基調の平坦なので、森本さんと軽く回そうと声を掛け合い力を使わないように40km/hで走る。
落車以降、後ろに見えなかったNAVYがいきなり追いついてきた。どうやら魔法の絨毯(カーペーサー)を使ったらしい。NAVYが追いつきフィリピン勢が2人になったので、セブイレに先頭交代を促す。
ガラパンの繁華街からススペを抜けて空港へ。短い登りに入るが特に誰もアタックする気配はない。この時、変速機が壊れていたNAVYはいつの間にか消えて、いつの間にか直して戻ってきた。ライトブルーに彩られた教会からの名もなき二車線の登りでアタック合戦は始まる。残り30kmだ。
登り口で意識的にペースを上げたが、そこからセブイレがアタック。森本さんがアタックに反応するが落ちてくる。森本さんには空港の辺りで「どこかで抜け出してください」と言ってあったが、この登りで「そんなに調子良くないわ」と言われる。
セブイレと森本さんに追い付きざまに僕がアタック。しかし、インナーに入ったアタックはキレがなく、引き離せない。追いつかれた後、もう一度アタックしたが、やはり全員ついてくる。流石にプロである。僕の足から最後までもたないサインがではじめた。
アタックと牽制を繰り返し、名も無き2車線の登りを終える。アレックスはマイペースに登ってきて食らいついている。ラオラオベイ・ゴルフ&リゾートに向かう下りで離れた差を利用してセブイレがそのまま独走を仕掛ける。少し気が緩んでいたタイミングだったので、慌てて追いかけ、吸収。
ラオラオベイ・ゴルフ&リゾートで折り返し、セブイレが先行した下りを登り直す。これは精神的に辛い。足が攣りそうになりながらもセブイレのペースアップに、足に水をかけてごまかしながらついていく。次のキングフィッシャーの登りで千切れることは目に見えていた。
アップダウン区間でNAVYが抜けだす。チェックしようと腰を上げると森本さんが「ええよ」と言ってくれて追ってくれる。後ろに残ったセブイレが踏むのをやめたので、勝負を森本さんに託すことにする(正直僕もきつかった)。
先行グループに森本さんとNAVY(フィリピン)、後続グループに僕とセブイレ(フィリピン)、アレックス(ロシア)。こうなるとアレックスが牽かないといけない展開だが、金魚の糞。一度行われたセブイレのアタックには反応したが、後続グループは完全に牽制状態。
キングフィッシャーの下りに入る前、完全に未舗装路を走る。昨年よりも未舗装路が長くなっている。ビビっているとセブイレと間が開いてしまった。キングフィッシャーの下りは両側に草が生えていて見通しが悪い。どうしてもスピードが遅くなってしまうので、少なくとも先頭で入りたかったところ。これは失敗。セブイレの先行を許してしまう。
セブイレは、してやったりという表情でコチラを振り返り、全力で踏む。キングフィッシャー・ゴルフリンクスの折り返しで20秒くらいの差だったが、これまでのツケが回ってくる。折り返した後は、勾配が厳しい登りのため、インナーローでもケイデンスが60/rpm近くまで落ちる。
登りが終わるまでに何度STIレバーのスイッチを触ったことか。首の裏を容赦なく照らす太陽にも体力を奪われる。「まさにヘルだね」と田村正和が頭の中で何度も言う、しょうもないことを考えていたら、アレックスにも置いていかれてしまった。
勾配の厳しさのあまりフラフラ走っていたら、早々にレースをやめて車で伴走していたFAST氏からボトルをもらう。後で洗って返そうと思って中身を出したら紫色だった。でもおいしかった。
やっとのことで登り切り、後は下りと平坦を残すのみ。しかし下りは工事中の未舗装路で気を抜けず、ゴールに続く一直線の道は向かい風で心を折る。それでもゴールが見えてきたときはホッとして、完走できたことが素直に嬉しくなる。
結果5位でゴール。勝ったのはNAVYで、森本さんは千切れて2位だった。チームジャパンとしては惜敗に終わったため、森本さんと来年のリベンジを誓う。森本さんはツール・ド・おきなわとHOMを1セットとして暑さ対策を講じるとのこと。僕は…結局レースいっぱい入れてしまいそうだ。
ゴール後は、部屋にすぐに戻ってシャワーを浴びる。この時点でまだ10時前だから驚きだ。朝が早くレースが過酷なだけに、すでに夕方になっているような感覚でいたので、得した気がする。何か楽しいことをしたかったが、疲れすぎて体は動かないからベットに沈む…。
ホテルの受付会場に行くとマッサージを無料で受けられる。マッサージを受ける部分は足か背中かを選べ、かなり強めにやってくれる。お昼のパーティーも参加費に含まれており、ビュッフェ形式。ビールも飲み放題だ。8年連続出場のイシム(石松)さんは、ゴール後にビールを開けるために二週間摂生していたようで、テーブルに缶を積みあげていた。
お昼のパーティと同時に表彰式も行われる。今年は年齢別表彰が10歳刻みから5歳刻みに変更されたので表彰対象者が多い。加えてMTBとロード、男女、チーム、マナティ(100kg以上)など細かく表彰されるため、セレモニーは長い。メインのオープンカテゴリーは最後なので、待ちくたびれたのか森本さんは椅子で就寝。
イシムさんは1回目の表彰では2位だったのに、2回目に呼ばれた時は1位の表彰だったなど、表彰も適当だ。そこが笑える。表彰者に渡されるメダルは、昨年までの金属板に荒い加工で作ったメダル兼栓抜きから、しっかりとしたメダルに変わっていた。
やっとこさオープンの表彰がはじまり僕の名前も呼ばれる。なんで?と思っていたけど、5位にもメダルをくれるようだ。賞金は1~3位まで。それでも表彰台に立たせてもらえるのは嬉しい。過酷なレースだけど、メダルや登壇など何か形として渡されると来年も出ようかと思うものだ。飴と鞭の鞭が強すぎる気がするけど。
一緒にレースに参加した相方は、きっちりと表情台を確保して賞金貰い喜んでいた。まぁ、まず無事に帰ってきてくれてホッとしている。異国の地で落車して入院とかは正直キツイし、いい思い出を持って帰ってほしかったので良かった。
夕暮れ時、表彰式が終わり、チームジャパンは一度解散したので、再び部屋のベットに沈む……。晩御飯のためにガラパンにあるチャロモ料理のお店「salty's」へ。店員さんは日本語が堪能で安心。振る舞われた料理は、日本人に合わせた味付けなのか、どれも美味しい。食後はsaltの隣りにある「I love SAIPAN」でお土産を購入し、帰路へ。三度目の沈み…。自転車梱包してねぇ…。
次の日は案の定朝からバタバタ片づけ。午前中はフリーとなっていたので一昨年訪れたグロット(海の洞窟)へ。グロットまでの案内は、ホテルのすぐ隣にあるMARIANAS TREKKINGにお願いすることに。朝一で予約を入れておいたのでロビーに陽気な兄ちゃんが迎えに来てくれた。
兄ちゃんは陽気すぎて、連れて行くのは僕らだとわかっているのにロータリーをグルグル回るほど。「早く来てよ」と涙目の僕ら。ようやく車に乗り込むことができたが、車には窓がなく、ぼろい。途中で降り出した雨は徐々に雨足を強め、土砂降りに。窓が全開というか無いので当然僕らはびしょびしょになり、寒い。テンションあがっているのは、奇声を発するドライバーだけで、後ろの僕らは涙目だ。
グロットに到着しても雨はやまず、体はさらにびしょびしょになり寒くなる一方。シュノーケリングのためにライフジャケットを着ると意外にも暖かい。ライフジャケットが暖かいなんて、人生初めて知る。グロットは海の中にできた巨大な洞窟で、外の光が中の海面を青く照らし、青く光った海と魚たちをみることができる、サイパンで一番人気のシュノーケリングスポット。
土砂降りだった雨は、洞窟に向かう階段を降り始めるころにやみ、晴れ間が見えるほどに。サイパンでは、スコールのような雨が降ることは日常茶飯事で、昨日降らなくて本当に良かったと心から思った。ちなみに三年出ているが、雨に降られたことはない。どうやら晴れ男のようだ。
洞窟に到着し、岩の上から一人一人海に飛び込む。高さは3mほどだったが、体感としてはかなり高い。自分が飛び込んだ後、上で相方がビビってるのを見て、そういえば絶叫系がダメなことを思い出し、飛び込むことも伝えていなかったことに気付く。忘れてました、ゴメンナサイ。でも三回目にして無事に飛んでた。
30分ほどグロットを堪能。観光客が多く、間違えて知らない韓国人のおねぇさんの手を牽いていた。グロットに立ち寄るのは二回目だけど今回も美しかった。何度行っても癒される。陸に上がってそのままバードアイランドへ。ここは立ち寄るだけの観光スポットなので、記念として写真を撮ってくれた。グロットとバードアイランドで撮ってくれた写真はSDカードに入れてもらえる(30ドル)。
空港へ移動し、一倉さんのおかげでスムーズにチェックイン。実際はマヌカハニーのせいで手荷物検査引っ掛かり、出国審査を二度通る羽目に。17時前の便でサイパンを出発。19時30分に成田について、年に一度のお楽しみは終了だ。
成田空港のP1駐車場は金曜の7時から日曜の19時30分で4000円ちょいだった。マリアナ政府観光局の一倉さんを始め、多くの方にお世話になりました。来年もまた表彰台の一番上を目指して帰ってきたいと思います。
優勝を果たすことはできなかったが、波乱万丈のレースを無事に終えることができた中村さん。共に参加した森本さんと来年のリベンジを誓ったという。常夏の島サイパンで行われる地獄のロードレース「ヘルオブマリアナ」。来年の開催は12月2日(土)を予定しているとのこと。ロードシーズンの締めくくりレースをサイパンにしてみてはいかがだろうか。
Report&Photo:Ryutaro.Nakamura
Photo:Gakuto.Fujiwara、Hell of Marianas
僕の前を走るフィリピン人選手NAVY(NAVYと書かれたビブショーツを履いていたから)が、停車中の車に向かってスリップ。身体だけは僕の前に流れてきてしまい、僕も前輪をすくわれ落車してしまう。レース前夜の雨によって濡れた路面は、未だ乾かずスリッピーだったこともあり、僕は左手をピンと上げた状態で寝そべって3mくらい滑っていく。コーナーということもあってスピードは遅かったのだけど、あまりに長い時間滑るので逆に「長くね?」と笑えてくる。
長い滑走時間が終わり、被害状況の確認。腰を強打しているけど立てるし足は動く。自転車もブラケットの曲がり程度で問題なし。チームカーが走っていない(体。実際にはメディアの車がそばにいる)ので自力で復帰しないといけない。最初に落車したNAVYを見るとまだ寝転がってる。見捨てることに。
僕はボトルを拾って再出発。レース後、車載映像を確認したら落車から再出発まで驚くほど早かった。走り出してSUNVOLT製リラックマのエンドキャップが取れていることに気づき、僕を落車に巻き込んだNAVYに対する怒りが込み上げる(笑)
先頭集団は森本さんとセブイレ、アレックスだろうか。FAST氏が脱落し1人になったロシア勢のアレックスは恐らく最後まで金魚の糞だろうし、森本さんとセブイレは後続を待つだろうと考え前を追う。踏んだかいあり、バンザイクリフの折り返し地点で追いつくことができた。ここから再びスタート地点のマリアナリゾート&スパ前を通り、南下する。
先頭を牽くのは当然2人いる日本チーム。1人のセブイレやアレックスは牽いてくれない。海外選手はそういうところを徹底してくる。島の南端までは追い風基調の平坦なので、森本さんと軽く回そうと声を掛け合い力を使わないように40km/hで走る。
落車以降、後ろに見えなかったNAVYがいきなり追いついてきた。どうやら魔法の絨毯(カーペーサー)を使ったらしい。NAVYが追いつきフィリピン勢が2人になったので、セブイレに先頭交代を促す。
ガラパンの繁華街からススペを抜けて空港へ。短い登りに入るが特に誰もアタックする気配はない。この時、変速機が壊れていたNAVYはいつの間にか消えて、いつの間にか直して戻ってきた。ライトブルーに彩られた教会からの名もなき二車線の登りでアタック合戦は始まる。残り30kmだ。
登り口で意識的にペースを上げたが、そこからセブイレがアタック。森本さんがアタックに反応するが落ちてくる。森本さんには空港の辺りで「どこかで抜け出してください」と言ってあったが、この登りで「そんなに調子良くないわ」と言われる。
セブイレと森本さんに追い付きざまに僕がアタック。しかし、インナーに入ったアタックはキレがなく、引き離せない。追いつかれた後、もう一度アタックしたが、やはり全員ついてくる。流石にプロである。僕の足から最後までもたないサインがではじめた。
アタックと牽制を繰り返し、名も無き2車線の登りを終える。アレックスはマイペースに登ってきて食らいついている。ラオラオベイ・ゴルフ&リゾートに向かう下りで離れた差を利用してセブイレがそのまま独走を仕掛ける。少し気が緩んでいたタイミングだったので、慌てて追いかけ、吸収。
ラオラオベイ・ゴルフ&リゾートで折り返し、セブイレが先行した下りを登り直す。これは精神的に辛い。足が攣りそうになりながらもセブイレのペースアップに、足に水をかけてごまかしながらついていく。次のキングフィッシャーの登りで千切れることは目に見えていた。
アップダウン区間でNAVYが抜けだす。チェックしようと腰を上げると森本さんが「ええよ」と言ってくれて追ってくれる。後ろに残ったセブイレが踏むのをやめたので、勝負を森本さんに託すことにする(正直僕もきつかった)。
先行グループに森本さんとNAVY(フィリピン)、後続グループに僕とセブイレ(フィリピン)、アレックス(ロシア)。こうなるとアレックスが牽かないといけない展開だが、金魚の糞。一度行われたセブイレのアタックには反応したが、後続グループは完全に牽制状態。
キングフィッシャーの下りに入る前、完全に未舗装路を走る。昨年よりも未舗装路が長くなっている。ビビっているとセブイレと間が開いてしまった。キングフィッシャーの下りは両側に草が生えていて見通しが悪い。どうしてもスピードが遅くなってしまうので、少なくとも先頭で入りたかったところ。これは失敗。セブイレの先行を許してしまう。
セブイレは、してやったりという表情でコチラを振り返り、全力で踏む。キングフィッシャー・ゴルフリンクスの折り返しで20秒くらいの差だったが、これまでのツケが回ってくる。折り返した後は、勾配が厳しい登りのため、インナーローでもケイデンスが60/rpm近くまで落ちる。
登りが終わるまでに何度STIレバーのスイッチを触ったことか。首の裏を容赦なく照らす太陽にも体力を奪われる。「まさにヘルだね」と田村正和が頭の中で何度も言う、しょうもないことを考えていたら、アレックスにも置いていかれてしまった。
勾配の厳しさのあまりフラフラ走っていたら、早々にレースをやめて車で伴走していたFAST氏からボトルをもらう。後で洗って返そうと思って中身を出したら紫色だった。でもおいしかった。
やっとのことで登り切り、後は下りと平坦を残すのみ。しかし下りは工事中の未舗装路で気を抜けず、ゴールに続く一直線の道は向かい風で心を折る。それでもゴールが見えてきたときはホッとして、完走できたことが素直に嬉しくなる。
結果5位でゴール。勝ったのはNAVYで、森本さんは千切れて2位だった。チームジャパンとしては惜敗に終わったため、森本さんと来年のリベンジを誓う。森本さんはツール・ド・おきなわとHOMを1セットとして暑さ対策を講じるとのこと。僕は…結局レースいっぱい入れてしまいそうだ。
ゴール後は、部屋にすぐに戻ってシャワーを浴びる。この時点でまだ10時前だから驚きだ。朝が早くレースが過酷なだけに、すでに夕方になっているような感覚でいたので、得した気がする。何か楽しいことをしたかったが、疲れすぎて体は動かないからベットに沈む…。
ホテルの受付会場に行くとマッサージを無料で受けられる。マッサージを受ける部分は足か背中かを選べ、かなり強めにやってくれる。お昼のパーティーも参加費に含まれており、ビュッフェ形式。ビールも飲み放題だ。8年連続出場のイシム(石松)さんは、ゴール後にビールを開けるために二週間摂生していたようで、テーブルに缶を積みあげていた。
お昼のパーティと同時に表彰式も行われる。今年は年齢別表彰が10歳刻みから5歳刻みに変更されたので表彰対象者が多い。加えてMTBとロード、男女、チーム、マナティ(100kg以上)など細かく表彰されるため、セレモニーは長い。メインのオープンカテゴリーは最後なので、待ちくたびれたのか森本さんは椅子で就寝。
イシムさんは1回目の表彰では2位だったのに、2回目に呼ばれた時は1位の表彰だったなど、表彰も適当だ。そこが笑える。表彰者に渡されるメダルは、昨年までの金属板に荒い加工で作ったメダル兼栓抜きから、しっかりとしたメダルに変わっていた。
やっとこさオープンの表彰がはじまり僕の名前も呼ばれる。なんで?と思っていたけど、5位にもメダルをくれるようだ。賞金は1~3位まで。それでも表彰台に立たせてもらえるのは嬉しい。過酷なレースだけど、メダルや登壇など何か形として渡されると来年も出ようかと思うものだ。飴と鞭の鞭が強すぎる気がするけど。
一緒にレースに参加した相方は、きっちりと表情台を確保して賞金貰い喜んでいた。まぁ、まず無事に帰ってきてくれてホッとしている。異国の地で落車して入院とかは正直キツイし、いい思い出を持って帰ってほしかったので良かった。
夕暮れ時、表彰式が終わり、チームジャパンは一度解散したので、再び部屋のベットに沈む……。晩御飯のためにガラパンにあるチャロモ料理のお店「salty's」へ。店員さんは日本語が堪能で安心。振る舞われた料理は、日本人に合わせた味付けなのか、どれも美味しい。食後はsaltの隣りにある「I love SAIPAN」でお土産を購入し、帰路へ。三度目の沈み…。自転車梱包してねぇ…。
次の日は案の定朝からバタバタ片づけ。午前中はフリーとなっていたので一昨年訪れたグロット(海の洞窟)へ。グロットまでの案内は、ホテルのすぐ隣にあるMARIANAS TREKKINGにお願いすることに。朝一で予約を入れておいたのでロビーに陽気な兄ちゃんが迎えに来てくれた。
兄ちゃんは陽気すぎて、連れて行くのは僕らだとわかっているのにロータリーをグルグル回るほど。「早く来てよ」と涙目の僕ら。ようやく車に乗り込むことができたが、車には窓がなく、ぼろい。途中で降り出した雨は徐々に雨足を強め、土砂降りに。窓が全開というか無いので当然僕らはびしょびしょになり、寒い。テンションあがっているのは、奇声を発するドライバーだけで、後ろの僕らは涙目だ。
グロットに到着しても雨はやまず、体はさらにびしょびしょになり寒くなる一方。シュノーケリングのためにライフジャケットを着ると意外にも暖かい。ライフジャケットが暖かいなんて、人生初めて知る。グロットは海の中にできた巨大な洞窟で、外の光が中の海面を青く照らし、青く光った海と魚たちをみることができる、サイパンで一番人気のシュノーケリングスポット。
土砂降りだった雨は、洞窟に向かう階段を降り始めるころにやみ、晴れ間が見えるほどに。サイパンでは、スコールのような雨が降ることは日常茶飯事で、昨日降らなくて本当に良かったと心から思った。ちなみに三年出ているが、雨に降られたことはない。どうやら晴れ男のようだ。
洞窟に到着し、岩の上から一人一人海に飛び込む。高さは3mほどだったが、体感としてはかなり高い。自分が飛び込んだ後、上で相方がビビってるのを見て、そういえば絶叫系がダメなことを思い出し、飛び込むことも伝えていなかったことに気付く。忘れてました、ゴメンナサイ。でも三回目にして無事に飛んでた。
30分ほどグロットを堪能。観光客が多く、間違えて知らない韓国人のおねぇさんの手を牽いていた。グロットに立ち寄るのは二回目だけど今回も美しかった。何度行っても癒される。陸に上がってそのままバードアイランドへ。ここは立ち寄るだけの観光スポットなので、記念として写真を撮ってくれた。グロットとバードアイランドで撮ってくれた写真はSDカードに入れてもらえる(30ドル)。
空港へ移動し、一倉さんのおかげでスムーズにチェックイン。実際はマヌカハニーのせいで手荷物検査引っ掛かり、出国審査を二度通る羽目に。17時前の便でサイパンを出発。19時30分に成田について、年に一度のお楽しみは終了だ。
成田空港のP1駐車場は金曜の7時から日曜の19時30分で4000円ちょいだった。マリアナ政府観光局の一倉さんを始め、多くの方にお世話になりました。来年もまた表彰台の一番上を目指して帰ってきたいと思います。
優勝を果たすことはできなかったが、波乱万丈のレースを無事に終えることができた中村さん。共に参加した森本さんと来年のリベンジを誓ったという。常夏の島サイパンで行われる地獄のロードレース「ヘルオブマリアナ」。来年の開催は12月2日(土)を予定しているとのこと。ロードシーズンの締めくくりレースをサイパンにしてみてはいかがだろうか。
Report&Photo:Ryutaro.Nakamura
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