2016/12/17(土) - 09:00
昨年と変わらない走り応えのあるコースが迎えてくれた南アルプスロングライドの「ツール・ド・富士川ステージ」。コース中でもっとも斜度のキツイ難所、身延山を越えた集団は一路北上していきます。
さて、身延山大学エイドでは、地元の名産品、身延茶を使ったあまーいフィナンシェやバナナなどを頂き、激坂に打ちのめされた身体を休ませることが出来る。難所を越えたとはいえ、実はまだ37km地点。距離としては半分も来ていないのだ。
曇っていた空も、段々と明るくなってきており少しづつ気温も高くなっている。サイクリング日和となってきた天候のもと、先を急いでいく。この先はテクニカルな下りが現れる。前日の雨と落ち葉によって、ところどころスリッピーな路面が現れるので注意が必要だ。
途中には視界が開け富士川の雄大な流れに飛びこんでいくような絶景スポットも現れる、走りがいのある下りを終えると、しばし国道52号線を走っていった後、交通量の多い道を避けて、富士川の支流である早川沿いを走りつつ、身延町を北上していく。
そして、富士川橋で再び左岸へと戻るころには、雲もすっかりと晴れ渡り、ぽかぽか陽気に。快適な晩秋のサイクリングを楽しみながら、丘を一つ越えると三つめのエイドステーションである久那土中学校へと到着する。
久那土中学校で振る舞われるのは富士川流域名物の「こしべんと」。「田舎料理は旅をしない」をモットーに地元産の食材のみで作られた3種類のお弁当が用意され、その中から好きなものを食べることが出来るのだ。今年のメニューは、サツキマスのフライが入った五十バーガーがメインのこしべんと、無農薬野菜をたっぷり使ったヘルシーなこしべんと、安納芋の炊き込みご飯に地鶏をメインにしたこしべんとの3つ。
ちなみに今中さんは五十バーガー、日向さんは安納芋の炊き込みご飯、エース栗原さんは無農薬野菜の普ヘルシーこしべんとをそれぞれチョイス。参加者のみなさんもそれぞれ好きなこしべんとを選び、体育館の中で腰を落ち着けてお昼のひと時を楽しんでいた。
さて、こしべんとでお腹を満たしたら、後半戦に出発だ。ここからは2つ目の本格山岳ポイントが始まる。全長7km、約400mを登る本格的な峠は、身延町から市川三郷町へと繋がるもの。斜度が厳しい一方で距離は短かった久遠寺の坂がパンチャー向けだとすれば、こちらの峠はかなりクライマー向けの峠となっている。
峠を登り切るころには空も晴れ渡り、遠目には富士山を望むことが出来るポイントも。ちなみにこのエリアは、山を一つ越えれば富士五湖の一つである本栖湖へとアプローチすることもできるロケーション。富士山からも意外に近いのだ。
淡々とペースで登り切り、いざ下りだそう!としたところに広がっていたのは眼下に広がる雲の海。白く染め上げられた下界の光景はとても幻想的で、おもわず記念撮影する方が続出。ここまで登ってこなければ、この絶景は見ることも出来なかったことを考えれば、ヒルクライムの苦しみに耐えてきた甲斐もあろうというもの。
そして、一路市川三郷方面へと爽快なダウンヒルを楽しみながら進んでいく。下り切った交差点を右折し、4つ目のエイドステーションであるみたまの湯へと再び登り返していく。高台に位置するみたまの湯は、南アルプスや八ヶ岳をはじめとした山々と甲府盆地のまちなみの大パノラマを堪能できる人気の温泉施設なのだが、逆に言えばまたそれだけ登るという事でもある。
今年新たに追加されたこの登り、距離や斜度はそれほどまでではないものの、脚が無くなってきた終盤に現れることもあり、体感的にはかなりのきつさ。ひーこら言いながら登りつめた先に待っているのは、高級キウイのレインボーレッド。酸味が少なく、糖度が高い品種で、一般的なキウイに比べると別の果物?と思うほどの甘さが特徴的。ちなみに価格も普通のキウイの2倍ほどするのだとか。
そして、みたまの湯周辺は「のっぷい」と呼ばれる肥沃な土壌が広がっており、そこで栽培されたスペシャルな人参である「大塚にんじん」を使用した羊羹や饅頭も振る舞われていた。しかも大塚にんじん饅頭はなんと大会前日に発売したばかり、できたてほやほやの新商品というのだから驚きだ。こちらも、人参の甘さが際立つ独特な味が病みつきになりそうな一品だった。
みたまの湯からの絶景を楽しんだ後は、一旦スタート地点である道の駅富士川の横を通り過ぎ、最後の登り区間であるみさき耕舎へのヒルクライムへと挑むことに。ここで脚がいっぱいだという人は、そのままゴールしても良いというルールなので、その日の調子によって最後の登りに挑むかどうかを決めることができるのも嬉しいポイント。
そして、みさき耕舎への登りはヒルクライムチャレンジ区間ということで、タイム計測区間となっている。計測区間といっても、チップを用意するような大掛かりなものではなく、自分のサイクルコンピューターでタイムを計測、自己申告するというゆるーいルールなので、目を三角にして登る必要はない。もちろん、脚自慢にとっては全力を出し切るに相応しいコースでもあるのだが。
スタート地点で、参加者は一旦停止しあらためてスタッフからルールの説明を受ける。サイコンのラップをリセットし、スタートボタンを押せば、いつでも自分のタイミングでスタートできる。最初こそ比較的緩めの勾配が続くものの、しばらく走ると森の中の本格的な峠へ入る。
九十九折れを超えると森が開け集落が現れるのだが、最も厳しいのはこの区間。100kmを走ってきた参加者たちの脚にとどめを差すように、最大で15%を超える傾斜が現れる。あまりのつらさに下を向きがちになってしまうが、そのタイミングを見計らっていたように富士山が雄大な姿を見せる。
その美しい稜線を目に焼き付けるために顔を上げると、胸郭が開いたのかいくぶん息が楽になる。沿道の応援にも背中を押されながら、ペダルを回し続けていく。すると、「もう少し!踏め―!」という激励の言葉が聞こえてくる。フィニッシュ地点で参加者たちを迎えてくれる青木理事長だ。ずっと叫び続けていたのであろう、声がかすれ気味になっている。
その頑張りに触発され、最後の一踏みに力を込めフィニッシュラインを越える。倒れこむ前に、なんとかサイコンのストップボタンを押し、記録を残す。テントにてスタッフさんに記録を申告したら、用意されたラ・フランスとゆず湯をいただき、ほっと一息。
富士山を眺めながら休憩していると、次々と参加者たちがフィニッシュラインを越えてくる。息も絶え絶えで登ってくる人もいれば、仲間と競い合いながらスプリントを決める人達も。それぞれの体力に合った楽しみ方で、最後の登りをこなしていたようだ。
後は登ってきた道を引き返し、ゴール地点の道の駅富士川へと向かうだけだ。この下りでもしっかりとサポートライダー達が下山グループを作り、安全に下っていく。108kmの旅路を終え、フィニッシュゲートをくぐった参加者たちを迎えてくれるのは、スタッフたちの温かい拍手。しかも、サポートライダーが帰ってくるにつれ、より賑やかになっていくので、遅く帰ってくるほど出迎えが豪華になるのだ。
そして、最後のエイドでもある道の駅富士川では、「みみ」が振る舞われる。山梨の名物であるほうとうの生地を脱穀などに使う箕(み)の形にしていることが名前の由来である。暖かい味噌味のみみは、最後の下りで冷えた身体に優しく沁み渡る。
みみほうとうで内側から身体をあっためて一息つけば、汗を流したいところ。会場の近くには「まほらの湯」という温泉もあるし、もちろんエイドステーションとして登場した「みたまの湯」へと足を延ばしてもいいだろう。とにかく周りには温泉がたくさんあるので、選びたい放題だ。
走って良し、食べて良し、浸かって良しと、三拍子そろった南アルプスロングライド。グルメやスイーツ中心の「プチ」、これまでとは全く異なるエリアの魅力を楽しめる「白州・韮崎ステージ」、そして新コースで更に走り応えが増した「ツール・ド・富士川ステージ」と、2日間開催となり魅力倍増となった。
自転車乗りにとっては、たまらない魅力が詰まった山梨県をたっぷり堪能できるこの大会。いくいくは「ツール・ド・山梨」として、県全域を回るような大規模イベントを目指しているという。まだまだ進化を止めない南アルプスロングライド、そしてやまなしサイクルプロジェクトの今後に要注目だ。
report:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANO、Naoki.YASUOKA、Yuto.MURATA
さて、身延山大学エイドでは、地元の名産品、身延茶を使ったあまーいフィナンシェやバナナなどを頂き、激坂に打ちのめされた身体を休ませることが出来る。難所を越えたとはいえ、実はまだ37km地点。距離としては半分も来ていないのだ。
曇っていた空も、段々と明るくなってきており少しづつ気温も高くなっている。サイクリング日和となってきた天候のもと、先を急いでいく。この先はテクニカルな下りが現れる。前日の雨と落ち葉によって、ところどころスリッピーな路面が現れるので注意が必要だ。
途中には視界が開け富士川の雄大な流れに飛びこんでいくような絶景スポットも現れる、走りがいのある下りを終えると、しばし国道52号線を走っていった後、交通量の多い道を避けて、富士川の支流である早川沿いを走りつつ、身延町を北上していく。
そして、富士川橋で再び左岸へと戻るころには、雲もすっかりと晴れ渡り、ぽかぽか陽気に。快適な晩秋のサイクリングを楽しみながら、丘を一つ越えると三つめのエイドステーションである久那土中学校へと到着する。
久那土中学校で振る舞われるのは富士川流域名物の「こしべんと」。「田舎料理は旅をしない」をモットーに地元産の食材のみで作られた3種類のお弁当が用意され、その中から好きなものを食べることが出来るのだ。今年のメニューは、サツキマスのフライが入った五十バーガーがメインのこしべんと、無農薬野菜をたっぷり使ったヘルシーなこしべんと、安納芋の炊き込みご飯に地鶏をメインにしたこしべんとの3つ。
ちなみに今中さんは五十バーガー、日向さんは安納芋の炊き込みご飯、エース栗原さんは無農薬野菜の普ヘルシーこしべんとをそれぞれチョイス。参加者のみなさんもそれぞれ好きなこしべんとを選び、体育館の中で腰を落ち着けてお昼のひと時を楽しんでいた。
さて、こしべんとでお腹を満たしたら、後半戦に出発だ。ここからは2つ目の本格山岳ポイントが始まる。全長7km、約400mを登る本格的な峠は、身延町から市川三郷町へと繋がるもの。斜度が厳しい一方で距離は短かった久遠寺の坂がパンチャー向けだとすれば、こちらの峠はかなりクライマー向けの峠となっている。
峠を登り切るころには空も晴れ渡り、遠目には富士山を望むことが出来るポイントも。ちなみにこのエリアは、山を一つ越えれば富士五湖の一つである本栖湖へとアプローチすることもできるロケーション。富士山からも意外に近いのだ。
淡々とペースで登り切り、いざ下りだそう!としたところに広がっていたのは眼下に広がる雲の海。白く染め上げられた下界の光景はとても幻想的で、おもわず記念撮影する方が続出。ここまで登ってこなければ、この絶景は見ることも出来なかったことを考えれば、ヒルクライムの苦しみに耐えてきた甲斐もあろうというもの。
そして、一路市川三郷方面へと爽快なダウンヒルを楽しみながら進んでいく。下り切った交差点を右折し、4つ目のエイドステーションであるみたまの湯へと再び登り返していく。高台に位置するみたまの湯は、南アルプスや八ヶ岳をはじめとした山々と甲府盆地のまちなみの大パノラマを堪能できる人気の温泉施設なのだが、逆に言えばまたそれだけ登るという事でもある。
今年新たに追加されたこの登り、距離や斜度はそれほどまでではないものの、脚が無くなってきた終盤に現れることもあり、体感的にはかなりのきつさ。ひーこら言いながら登りつめた先に待っているのは、高級キウイのレインボーレッド。酸味が少なく、糖度が高い品種で、一般的なキウイに比べると別の果物?と思うほどの甘さが特徴的。ちなみに価格も普通のキウイの2倍ほどするのだとか。
そして、みたまの湯周辺は「のっぷい」と呼ばれる肥沃な土壌が広がっており、そこで栽培されたスペシャルな人参である「大塚にんじん」を使用した羊羹や饅頭も振る舞われていた。しかも大塚にんじん饅頭はなんと大会前日に発売したばかり、できたてほやほやの新商品というのだから驚きだ。こちらも、人参の甘さが際立つ独特な味が病みつきになりそうな一品だった。
みたまの湯からの絶景を楽しんだ後は、一旦スタート地点である道の駅富士川の横を通り過ぎ、最後の登り区間であるみさき耕舎へのヒルクライムへと挑むことに。ここで脚がいっぱいだという人は、そのままゴールしても良いというルールなので、その日の調子によって最後の登りに挑むかどうかを決めることができるのも嬉しいポイント。
そして、みさき耕舎への登りはヒルクライムチャレンジ区間ということで、タイム計測区間となっている。計測区間といっても、チップを用意するような大掛かりなものではなく、自分のサイクルコンピューターでタイムを計測、自己申告するというゆるーいルールなので、目を三角にして登る必要はない。もちろん、脚自慢にとっては全力を出し切るに相応しいコースでもあるのだが。
スタート地点で、参加者は一旦停止しあらためてスタッフからルールの説明を受ける。サイコンのラップをリセットし、スタートボタンを押せば、いつでも自分のタイミングでスタートできる。最初こそ比較的緩めの勾配が続くものの、しばらく走ると森の中の本格的な峠へ入る。
九十九折れを超えると森が開け集落が現れるのだが、最も厳しいのはこの区間。100kmを走ってきた参加者たちの脚にとどめを差すように、最大で15%を超える傾斜が現れる。あまりのつらさに下を向きがちになってしまうが、そのタイミングを見計らっていたように富士山が雄大な姿を見せる。
その美しい稜線を目に焼き付けるために顔を上げると、胸郭が開いたのかいくぶん息が楽になる。沿道の応援にも背中を押されながら、ペダルを回し続けていく。すると、「もう少し!踏め―!」という激励の言葉が聞こえてくる。フィニッシュ地点で参加者たちを迎えてくれる青木理事長だ。ずっと叫び続けていたのであろう、声がかすれ気味になっている。
その頑張りに触発され、最後の一踏みに力を込めフィニッシュラインを越える。倒れこむ前に、なんとかサイコンのストップボタンを押し、記録を残す。テントにてスタッフさんに記録を申告したら、用意されたラ・フランスとゆず湯をいただき、ほっと一息。
富士山を眺めながら休憩していると、次々と参加者たちがフィニッシュラインを越えてくる。息も絶え絶えで登ってくる人もいれば、仲間と競い合いながらスプリントを決める人達も。それぞれの体力に合った楽しみ方で、最後の登りをこなしていたようだ。
後は登ってきた道を引き返し、ゴール地点の道の駅富士川へと向かうだけだ。この下りでもしっかりとサポートライダー達が下山グループを作り、安全に下っていく。108kmの旅路を終え、フィニッシュゲートをくぐった参加者たちを迎えてくれるのは、スタッフたちの温かい拍手。しかも、サポートライダーが帰ってくるにつれ、より賑やかになっていくので、遅く帰ってくるほど出迎えが豪華になるのだ。
そして、最後のエイドでもある道の駅富士川では、「みみ」が振る舞われる。山梨の名物であるほうとうの生地を脱穀などに使う箕(み)の形にしていることが名前の由来である。暖かい味噌味のみみは、最後の下りで冷えた身体に優しく沁み渡る。
みみほうとうで内側から身体をあっためて一息つけば、汗を流したいところ。会場の近くには「まほらの湯」という温泉もあるし、もちろんエイドステーションとして登場した「みたまの湯」へと足を延ばしてもいいだろう。とにかく周りには温泉がたくさんあるので、選びたい放題だ。
走って良し、食べて良し、浸かって良しと、三拍子そろった南アルプスロングライド。グルメやスイーツ中心の「プチ」、これまでとは全く異なるエリアの魅力を楽しめる「白州・韮崎ステージ」、そして新コースで更に走り応えが増した「ツール・ド・富士川ステージ」と、2日間開催となり魅力倍増となった。
自転車乗りにとっては、たまらない魅力が詰まった山梨県をたっぷり堪能できるこの大会。いくいくは「ツール・ド・山梨」として、県全域を回るような大規模イベントを目指しているという。まだまだ進化を止めない南アルプスロングライド、そしてやまなしサイクルプロジェクトの今後に要注目だ。
report:Naoki.YASUOKA
photo:Makoto.AYANO、Naoki.YASUOKA、Yuto.MURATA
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