2016/12/09(金) - 08:54
11月19日から20日にかけて開催された南アルプスロングライド。今回のレポートでは、2日間での最長種目となるツール・ド・富士川ステージの様子をお伝えします。
南アルプスと天子山塊の間、日本を東西に分ける大断層である糸魚川静岡構造線を山梨県から太平洋へと向かって流れる富士川。その流域を舞台として開催される2日間のロングライドイベントが「南アルプスロングライド」だ。
2日間にわたって、3つの種目が開催されるなかでもっとも長い距離、そして獲得標高を誇るのが2日目に開催される「ツール・ド・富士川ステージ」である。全長107kmのなかに3つの峠が含まれる、本格山岳ライドを楽しめるコースとなっている。
1日目は雨が降ったり止んだりを繰り返すあいにくの空模様となったが、2日目の天気予報は晴れということで、前日から期待も高まろうというもの。晴れ渡った青空を期待して、会場となる増穂IC近くの道の駅富士川へと向かった。
しかし、残念ながら濃い霧が発生しており、南アルプスの山々の姿は隠されてしまっていた。どうやら、この時期は富士川から霧が発生してしまい、朝方はこのようにガスがたまりやすいよう。しかし、雨は降っておらず、路面コンディションは完全にドライ。寒さに凍えることもなく、安心してライドを楽しめそうだ。
この日も前日同様に、メイン会場には「いきなりエイド」が登場。暖かいコーヒーとねじり菓子がこれからスタートする参加者たちに振る舞われ、スタートへ向けて身体と心を温めてくれる。スタート前に行われるセレモニーでは、やまなしサイクルプロジェクトの青木理事長が、熱のこもったトークで今日も会場を沸かせており、スタート待機列のテンションは既に最高潮に。
晴天でこそなかったものの、霧に覆われた幻想的な光景の中、400名のライダー達がスタートしていく。15名ほどのライダー達がグループを形成し、そのそれぞれにサポートライダー達が2人以上帯同するという形式は参加人数の多いこの「ツール・ド・富士川ステージ」でも同じ。
正直、これだけの数のサポートライダー達が集まり、参加者をケアしてくれる手厚い大会は全国を見渡してもあまりないだろう。地元を良く知るライダー達が集まり、試走を重ねた後にこの大会を手伝ってくれるというのだから、心強い事この上ない。いわば、サイクリングガイド付きのツアーに参加しているようなものなので、初心者や女性が1人で参加しても安心して楽しめる、珍しいロングライドイベントとなっているのだ。
さて、道の駅富士川を出発した集団は、一路南へ進んで行く。昨年の大会では、河川敷を進んでいったが今年は工事中とのことで、一旦街中の交通量の少ないルートをたどり、富士橋を東岸へと渡っていく。そのまま、この日初の登り区間となる割石峠へと進んでいく。
新割石トンネルまでの登りはそこまで斜度もきつくなく、どの集団もほとんど一つで進んでいく。トンネルを抜けたあとは、久那土へ向けて下っていく。ここは8の字状にされたコースのちょうど交差する部分にあたり、お昼ごはんが振る舞われる第3エイドも設置されているのだが、朝はいったん通り過ぎる。
そして、常葉トンネルへの登りへとアプローチ。久那土のまちなみを眼下に見下ろしつつ、少しづつ標高を上げていく。結構本格的な登りなのだが、実はコースのキャッチコピーである「3つの激坂」には含まれていないというのだから、驚きである。
さて、トンネルを越えれば第一エイドとなる金山博物館まではすぐそこだ。武田信玄の隠し湯として知られ下部温泉の温泉街の中に設置されたエイドステーションでは、朝ごはんとして様々な種類のパンが用意されていた。
あんぱんにメロンパンやクリームパンといった定番の品から、サイクリングイベントでは珍しいカレーパン、チョココロネなどが用意され、好きなパンを選べるという方式。ここまで約23kmをこなしてきたが、先はまだまだ長い。3つの激坂も待ち受けるとあって、ここでしっかりカロリーをとれる補給は嬉しい。
また、身延駅前で80年以上の歴史を誇る栄昇堂の「みのぶまんじゅう」も。塩味の効いた餡がもっちりとした皮に包まれた一品で、腹もちも良い。個包装でジャージのポケットにも入れやすいので、エイドを出てから食べてもよし、もちろんその場で食べてもよし。
ちなみに下部温泉の近くの毛無山には湯之奥金山という、武田信玄の財政を支えた金山があったのだとか。エイドとなる金山博物館では砂金採りの体験なども出来るとのこと。さて、準備を済ませたら、更に富士川沿いに南へと向かう。
途中、何度も建設中の中部横断道をくぐり抜けたり、横目に見たりしつつ走っていくこととなる。昨年に比べても工事が進んでいる様子が分かるのもまた面白い。波高島駅のあたりでは眼下に富士川を見渡すことが出来る絶景ポイントも現れる。
そして、コース最南端となる身延橋で富士川を右岸へと渡り、最初の激坂ポイントとなる身延山へと向かっていく。昨年は総門を入ったあたりにエイドが設置されていたが、今年は登り切った後の地点へと移動しているので、そのまま身延山の激坂へと挑むことになる。
1281年に日蓮聖人によって開かれた身延山。日蓮宗の総本山として、全国から多くの信徒を集める聖地を、息を切らせながら登っていく。身延まんじゅうの蒸し機から出てくる蒸気が立ちこめる門前町を過ぎると、荘厳な三門が迎えてくれる。
しかし、真の激坂はこの先に待っている。三門の前は踊り場のような広場になっており、記念撮影に立ち止まる人も沢山いるが、この先の激坂に挑む前に脚を休めるという意味においても、ここで一旦止まっていくのは悪い選択ではないはずだ。
そして、いざ身延山境内へと続く激坂へと挑むことに。ライダー達の目の前に立ちはだかるのは、最大斜度18%、距離1kmの直登区間。インナーローで何とか登り切る人、諦めて押して歩く人、それぞれの脚力に合わせてこの難所を攻略していく。
押し歩く参加者たちが連なっている様は練習というよりも、まさしく修行である。身延山というロケーションも相まって、巡礼者が列を成しているようにも。苦行を終えて身延山の境内へ辿りつくと荘厳な建築が迎えてくれる。この日だけは特別な許可が出されており、境内を自転車を押して通過することができるのだ。
2500人の法要を執り行うことができる本堂や祖師堂、報恩閣などが立ち並ぶ境内を歩き、少し下ると第2エイドである身延山大学へ到着。日蓮宗の僧侶を養成するための大学の敷地内で、しばしの休憩タイムとなった。
今年も変わらずハードなルートを辿るツール・ド・富士川ステージ。しかし、後半のコースが更にパワーアップしていることを私たちはまだ知らないのであった。南アルプスロングライドレポートの最後を締めくくるレポートはしばしお待ちください。
Report:Naoki Yasuoka
Photo:Naoki Yasuoka, Makoto Ayano
南アルプスと天子山塊の間、日本を東西に分ける大断層である糸魚川静岡構造線を山梨県から太平洋へと向かって流れる富士川。その流域を舞台として開催される2日間のロングライドイベントが「南アルプスロングライド」だ。
2日間にわたって、3つの種目が開催されるなかでもっとも長い距離、そして獲得標高を誇るのが2日目に開催される「ツール・ド・富士川ステージ」である。全長107kmのなかに3つの峠が含まれる、本格山岳ライドを楽しめるコースとなっている。
1日目は雨が降ったり止んだりを繰り返すあいにくの空模様となったが、2日目の天気予報は晴れということで、前日から期待も高まろうというもの。晴れ渡った青空を期待して、会場となる増穂IC近くの道の駅富士川へと向かった。
しかし、残念ながら濃い霧が発生しており、南アルプスの山々の姿は隠されてしまっていた。どうやら、この時期は富士川から霧が発生してしまい、朝方はこのようにガスがたまりやすいよう。しかし、雨は降っておらず、路面コンディションは完全にドライ。寒さに凍えることもなく、安心してライドを楽しめそうだ。
この日も前日同様に、メイン会場には「いきなりエイド」が登場。暖かいコーヒーとねじり菓子がこれからスタートする参加者たちに振る舞われ、スタートへ向けて身体と心を温めてくれる。スタート前に行われるセレモニーでは、やまなしサイクルプロジェクトの青木理事長が、熱のこもったトークで今日も会場を沸かせており、スタート待機列のテンションは既に最高潮に。
晴天でこそなかったものの、霧に覆われた幻想的な光景の中、400名のライダー達がスタートしていく。15名ほどのライダー達がグループを形成し、そのそれぞれにサポートライダー達が2人以上帯同するという形式は参加人数の多いこの「ツール・ド・富士川ステージ」でも同じ。
正直、これだけの数のサポートライダー達が集まり、参加者をケアしてくれる手厚い大会は全国を見渡してもあまりないだろう。地元を良く知るライダー達が集まり、試走を重ねた後にこの大会を手伝ってくれるというのだから、心強い事この上ない。いわば、サイクリングガイド付きのツアーに参加しているようなものなので、初心者や女性が1人で参加しても安心して楽しめる、珍しいロングライドイベントとなっているのだ。
さて、道の駅富士川を出発した集団は、一路南へ進んで行く。昨年の大会では、河川敷を進んでいったが今年は工事中とのことで、一旦街中の交通量の少ないルートをたどり、富士橋を東岸へと渡っていく。そのまま、この日初の登り区間となる割石峠へと進んでいく。
新割石トンネルまでの登りはそこまで斜度もきつくなく、どの集団もほとんど一つで進んでいく。トンネルを抜けたあとは、久那土へ向けて下っていく。ここは8の字状にされたコースのちょうど交差する部分にあたり、お昼ごはんが振る舞われる第3エイドも設置されているのだが、朝はいったん通り過ぎる。
そして、常葉トンネルへの登りへとアプローチ。久那土のまちなみを眼下に見下ろしつつ、少しづつ標高を上げていく。結構本格的な登りなのだが、実はコースのキャッチコピーである「3つの激坂」には含まれていないというのだから、驚きである。
さて、トンネルを越えれば第一エイドとなる金山博物館まではすぐそこだ。武田信玄の隠し湯として知られ下部温泉の温泉街の中に設置されたエイドステーションでは、朝ごはんとして様々な種類のパンが用意されていた。
あんぱんにメロンパンやクリームパンといった定番の品から、サイクリングイベントでは珍しいカレーパン、チョココロネなどが用意され、好きなパンを選べるという方式。ここまで約23kmをこなしてきたが、先はまだまだ長い。3つの激坂も待ち受けるとあって、ここでしっかりカロリーをとれる補給は嬉しい。
また、身延駅前で80年以上の歴史を誇る栄昇堂の「みのぶまんじゅう」も。塩味の効いた餡がもっちりとした皮に包まれた一品で、腹もちも良い。個包装でジャージのポケットにも入れやすいので、エイドを出てから食べてもよし、もちろんその場で食べてもよし。
ちなみに下部温泉の近くの毛無山には湯之奥金山という、武田信玄の財政を支えた金山があったのだとか。エイドとなる金山博物館では砂金採りの体験なども出来るとのこと。さて、準備を済ませたら、更に富士川沿いに南へと向かう。
途中、何度も建設中の中部横断道をくぐり抜けたり、横目に見たりしつつ走っていくこととなる。昨年に比べても工事が進んでいる様子が分かるのもまた面白い。波高島駅のあたりでは眼下に富士川を見渡すことが出来る絶景ポイントも現れる。
そして、コース最南端となる身延橋で富士川を右岸へと渡り、最初の激坂ポイントとなる身延山へと向かっていく。昨年は総門を入ったあたりにエイドが設置されていたが、今年は登り切った後の地点へと移動しているので、そのまま身延山の激坂へと挑むことになる。
1281年に日蓮聖人によって開かれた身延山。日蓮宗の総本山として、全国から多くの信徒を集める聖地を、息を切らせながら登っていく。身延まんじゅうの蒸し機から出てくる蒸気が立ちこめる門前町を過ぎると、荘厳な三門が迎えてくれる。
しかし、真の激坂はこの先に待っている。三門の前は踊り場のような広場になっており、記念撮影に立ち止まる人も沢山いるが、この先の激坂に挑む前に脚を休めるという意味においても、ここで一旦止まっていくのは悪い選択ではないはずだ。
そして、いざ身延山境内へと続く激坂へと挑むことに。ライダー達の目の前に立ちはだかるのは、最大斜度18%、距離1kmの直登区間。インナーローで何とか登り切る人、諦めて押して歩く人、それぞれの脚力に合わせてこの難所を攻略していく。
押し歩く参加者たちが連なっている様は練習というよりも、まさしく修行である。身延山というロケーションも相まって、巡礼者が列を成しているようにも。苦行を終えて身延山の境内へ辿りつくと荘厳な建築が迎えてくれる。この日だけは特別な許可が出されており、境内を自転車を押して通過することができるのだ。
2500人の法要を執り行うことができる本堂や祖師堂、報恩閣などが立ち並ぶ境内を歩き、少し下ると第2エイドである身延山大学へ到着。日蓮宗の僧侶を養成するための大学の敷地内で、しばしの休憩タイムとなった。
今年も変わらずハードなルートを辿るツール・ド・富士川ステージ。しかし、後半のコースが更にパワーアップしていることを私たちはまだ知らないのであった。南アルプスロングライドレポートの最後を締めくくるレポートはしばしお待ちください。
Report:Naoki Yasuoka
Photo:Naoki Yasuoka, Makoto Ayano
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