2016/11/21(月) - 08:55
自転車の町として名高い大阪府堺市。ツアー・オブ・ジャパンのスタート地点でもあり、シマノをはじめとした多くの自転車関連企業が集う町の魅力を堪能できる「散走体験会」のレポートをお届けします。
世界最大の自転車部品メーカーであるシマノが運営するLife Creation Space OVEの協力のもと、堺市で初となるイベント「散走体験会」が10月29日、堺市役所を拠点に開催された。堺市職員とOVE、シマノの社員を含む地元市民ら36名が集結し、堺の魅力を再発見できる5つの散走コースを楽しみ、交流した。
今回の大きなポイントはOVEと堺市が初めて公式に連携したイベントが開催されたという点だ。 堺は世間一般的にはかつて鉄砲業で栄えた職人気質の街であり、歴史的には千利休、与謝野晶子ら生誕の地でもある。彼らが築いた文化が色濃く残る土地として知られている。
自転車との関わりとしてはシマノ本社の所在地であり、日本最大級の国際自転車ロードレース、ツアー・オブ・ジャパンの開幕戦、堺ステージの開催地。そして国内外から来場者が訪れる「自転車博物館サイクルセンター」があり、シマノレーシングの活動拠点でもあり、自転車に深くかかわる人々の地元でもある。
きっかけはOVE南青山の地域交流会
今回のイベントを開催したきっかけは堺市建設局自転車まちづくり部の貝塚耕一部長らがOVE南青山で2月17日に開催された「第5回地域交流会」に参加したことから。
散歩のようにゆっくりと自転車で走る「散走」という言葉を知らなかった貝塚部長。「訪れる土地の魅力をゆったりと体感できる。まちづくりでの移動ツールとして活用すれば地域活性化にもつながっていくという観点から、今の部署で活かすことができると思った」と、その時を振り返った。
そして、「堺市には歴史文化のある魅力的なスポットがたくさんある。それらを自転車でつなげれば、堺の魅力がもっと引き出せるし、自転車を活かしたまちづくりにつながると思った。」というアイディアへつながったという。
ディスカッション交流会の中で「堺市でも散走イベントフォーラムを開催したい!」と話したところ、たまたま、そのグループの中にOVE中之島の当時の店長白石さんが同席していたという。「ぜひやりましょう」とその場でOVEと堺市が「つながった」というなんとも運命的な出会いとなったのだ。
その場に同席していた白石店長は異動になってしまったが、意思を引き継いだのがOVEの宮脇恒太副店長。「以前からOVEの運営母体であるシマノの地元である堺で地域に密着したイベントや取り組みをしたいと思っていた。
そんな中でたまたま貝塚部長を白石元前店長から紹介してもらい堺市の自転車への取り組みを知って感心した。そして、何よりも決め手となったのは貝塚部長がトライアスロンの選手でロードバイクに乗っているということ。自転車の楽しさだけでなく、メカニカルな部分や走り方の部分、道路などいろいろな意味で意思疎通を行いやすいというところは非常に大きなポイントだった」と話す。
その後は散走であればお手の物であるOVE側からの積極的な働きかけもあり、何度も協議を重ねとんとん拍子で今回の散走イベントの開催に至ったという。
いざ! 堺の魅力が詰まったコースを散走
散走フォーラムは10月1日に一般公募で集めた市民とOVEやシマノの社員、堺市の職員が一堂に集まってディスカッションを交えながらコースを作成。
結果、堺の魅力を思いっきり楽しめる5コースが決定した。地元や隣接地域も含め全員が堺をよく知る人たち。千利休屋敷跡、大和川、旧堺港といった名所やスイーツ・グルメ巡り、あまり知られていないけれど実はすごいお店など地元の人でも知らなかったスポットなどが組み込まれた。
そして、当日筆者も貝塚部長と5コースの1つ「堺今ドキ♡現代職人(マイスター)に会いに」に参加してみた。すっきりとした秋晴れの中、堺合同庁舎前に集合したのは上は70代、下は20代まで老若男女の参加者たち。自転車もママチャリ、ミニベロ、ロードバイクなどさまざまだ。
距離をたくさん走るというよりも自転車を移動ツールとして堺の魅力を再発見する「散走」。グループメンバーの中には今回のイベントの立役者である貝塚部長にシマノのバイシクルコンポーネンツ事業部の阿部竜士係長。先導は堺を地元とする自転車店、エンドゥドゥの遠藤克彦さんと自転車に理解のある面々ばかりだ。
たまたま、コースルートが通勤で使う道だったという阿部係長。「このお店はいつも通勤途中で通っていて気になっていたんです。今まで素通りするだけだったけど、今日のイベントで訪れることができて嬉しい」ととても楽しそうだ。
最初に会いにいった職人はスポテッドホース・クラフトの代表でデニム職人の大園英樹さん。店舗だけでなく、作っている様子や工房なども見学できた。貝塚部長と阿部係長はしまなみ海道を訪れたときに尾道デニムを知り、岡山で修業した大園さんとは男同士の会話で盛り上がった。
その後も、木工家具のお店、日根野屋やちんちん電車のある阪堺電車沿い、千利休屋敷跡と名所をめぐる。昼食はお茶文化が色濃く残る堺だけに地元の人気店、つぼ市製茶本舗でお茶づくしの茶粥セットを堪能。女性の参加者たちはセットのスイーツをシェアするなど女子トークで盛り上がった。
OVE、地域、市民、堺市が連携して「堺 SAKAI散走」を確立
ルート途中には自転車レーンや特に違法駐車が多い区画を目の前に貝塚部長が阿部係長に現況と地域状況を説明したり、意見交換するシーンも多かった。自然な雰囲気でお互いの意見交換ができたことは大きな収穫だろう。
他のグループが訪れたコースは下記のとおり。どのコースもそれぞれに思い入れがあり、終了後の晴れやかな様子を見ると「散走」をとても楽しんでいた様子だった。
散走終了後はコースの振り返り。堺に30年住んでいて普段は自転車博物館が主催する90kmのサイクリングもこなすという70代の男性は「長年住んでいるけれど、初めて訪れたところばかり。イベントを通して新しい発見や人と出会って交流できとても楽しかった」と話す。
今後、堺市では、地場産業の自転車を活かした特色のある「まちづくり」 をOVEとともに進めていく。その柱 キーワードとなるのが「散走」。「SAKAI散走フォーラム」をOVEの協力を得ながら継続的に実施し、世間一般的には知られていない「散走」を民間や市民、地域の協力を得ながら、「堺版の「SAKAI散走」を広く発信していく予定だ。
散走で訪れた店舗情報
スポテッドホース・クラフト
住所:大阪府堺市堺区二条通2-17
TEL:072-229-8155
URL: http://www.spottedhorsecraft.co.jp/index.html
木工舎 日根野屋
住所:堺市堺区五条通3-3
TEL:072-233-3668
URL: http://hinenoya.biz/
茶寮 つぼ市製茶本舗 堺店
住所:大阪府堺市堺区九間町東1丁1-2
TEL:072-227-7809
URL: http://www.tsuboichi.co.jp/
堺市立町屋歴史館 山口家住宅
住所:堺市堺区錦之町東1丁2-31
TEL:072-224-1155
URL: http://www.city.sakai.lg.jp/kanko/rekishi/bunkazai/bunkazai/yamaguchike…
元祖肉桂餅本舗八百源・来弘堂
住所:大阪府堺市堺区車之町東2丁1-11
TEL:072-232-3835
URL: http://www.yaogen.com/
text:Yukako.Okada
世界最大の自転車部品メーカーであるシマノが運営するLife Creation Space OVEの協力のもと、堺市で初となるイベント「散走体験会」が10月29日、堺市役所を拠点に開催された。堺市職員とOVE、シマノの社員を含む地元市民ら36名が集結し、堺の魅力を再発見できる5つの散走コースを楽しみ、交流した。
今回の大きなポイントはOVEと堺市が初めて公式に連携したイベントが開催されたという点だ。 堺は世間一般的にはかつて鉄砲業で栄えた職人気質の街であり、歴史的には千利休、与謝野晶子ら生誕の地でもある。彼らが築いた文化が色濃く残る土地として知られている。
自転車との関わりとしてはシマノ本社の所在地であり、日本最大級の国際自転車ロードレース、ツアー・オブ・ジャパンの開幕戦、堺ステージの開催地。そして国内外から来場者が訪れる「自転車博物館サイクルセンター」があり、シマノレーシングの活動拠点でもあり、自転車に深くかかわる人々の地元でもある。
きっかけはOVE南青山の地域交流会
今回のイベントを開催したきっかけは堺市建設局自転車まちづくり部の貝塚耕一部長らがOVE南青山で2月17日に開催された「第5回地域交流会」に参加したことから。
散歩のようにゆっくりと自転車で走る「散走」という言葉を知らなかった貝塚部長。「訪れる土地の魅力をゆったりと体感できる。まちづくりでの移動ツールとして活用すれば地域活性化にもつながっていくという観点から、今の部署で活かすことができると思った」と、その時を振り返った。
そして、「堺市には歴史文化のある魅力的なスポットがたくさんある。それらを自転車でつなげれば、堺の魅力がもっと引き出せるし、自転車を活かしたまちづくりにつながると思った。」というアイディアへつながったという。
ディスカッション交流会の中で「堺市でも散走イベントフォーラムを開催したい!」と話したところ、たまたま、そのグループの中にOVE中之島の当時の店長白石さんが同席していたという。「ぜひやりましょう」とその場でOVEと堺市が「つながった」というなんとも運命的な出会いとなったのだ。
その場に同席していた白石店長は異動になってしまったが、意思を引き継いだのがOVEの宮脇恒太副店長。「以前からOVEの運営母体であるシマノの地元である堺で地域に密着したイベントや取り組みをしたいと思っていた。
そんな中でたまたま貝塚部長を白石元前店長から紹介してもらい堺市の自転車への取り組みを知って感心した。そして、何よりも決め手となったのは貝塚部長がトライアスロンの選手でロードバイクに乗っているということ。自転車の楽しさだけでなく、メカニカルな部分や走り方の部分、道路などいろいろな意味で意思疎通を行いやすいというところは非常に大きなポイントだった」と話す。
その後は散走であればお手の物であるOVE側からの積極的な働きかけもあり、何度も協議を重ねとんとん拍子で今回の散走イベントの開催に至ったという。
いざ! 堺の魅力が詰まったコースを散走
散走フォーラムは10月1日に一般公募で集めた市民とOVEやシマノの社員、堺市の職員が一堂に集まってディスカッションを交えながらコースを作成。
結果、堺の魅力を思いっきり楽しめる5コースが決定した。地元や隣接地域も含め全員が堺をよく知る人たち。千利休屋敷跡、大和川、旧堺港といった名所やスイーツ・グルメ巡り、あまり知られていないけれど実はすごいお店など地元の人でも知らなかったスポットなどが組み込まれた。
そして、当日筆者も貝塚部長と5コースの1つ「堺今ドキ♡現代職人(マイスター)に会いに」に参加してみた。すっきりとした秋晴れの中、堺合同庁舎前に集合したのは上は70代、下は20代まで老若男女の参加者たち。自転車もママチャリ、ミニベロ、ロードバイクなどさまざまだ。
距離をたくさん走るというよりも自転車を移動ツールとして堺の魅力を再発見する「散走」。グループメンバーの中には今回のイベントの立役者である貝塚部長にシマノのバイシクルコンポーネンツ事業部の阿部竜士係長。先導は堺を地元とする自転車店、エンドゥドゥの遠藤克彦さんと自転車に理解のある面々ばかりだ。
たまたま、コースルートが通勤で使う道だったという阿部係長。「このお店はいつも通勤途中で通っていて気になっていたんです。今まで素通りするだけだったけど、今日のイベントで訪れることができて嬉しい」ととても楽しそうだ。
最初に会いにいった職人はスポテッドホース・クラフトの代表でデニム職人の大園英樹さん。店舗だけでなく、作っている様子や工房なども見学できた。貝塚部長と阿部係長はしまなみ海道を訪れたときに尾道デニムを知り、岡山で修業した大園さんとは男同士の会話で盛り上がった。
その後も、木工家具のお店、日根野屋やちんちん電車のある阪堺電車沿い、千利休屋敷跡と名所をめぐる。昼食はお茶文化が色濃く残る堺だけに地元の人気店、つぼ市製茶本舗でお茶づくしの茶粥セットを堪能。女性の参加者たちはセットのスイーツをシェアするなど女子トークで盛り上がった。
OVE、地域、市民、堺市が連携して「堺 SAKAI散走」を確立
ルート途中には自転車レーンや特に違法駐車が多い区画を目の前に貝塚部長が阿部係長に現況と地域状況を説明したり、意見交換するシーンも多かった。自然な雰囲気でお互いの意見交換ができたことは大きな収穫だろう。
他のグループが訪れたコースは下記のとおり。どのコースもそれぞれに思い入れがあり、終了後の晴れやかな様子を見ると「散走」をとても楽しんでいた様子だった。
散走終了後はコースの振り返り。堺に30年住んでいて普段は自転車博物館が主催する90kmのサイクリングもこなすという70代の男性は「長年住んでいるけれど、初めて訪れたところばかり。イベントを通して新しい発見や人と出会って交流できとても楽しかった」と話す。
今後、堺市では、地場産業の自転車を活かした特色のある「まちづくり」 をOVEとともに進めていく。その柱 キーワードとなるのが「散走」。「SAKAI散走フォーラム」をOVEの協力を得ながら継続的に実施し、世間一般的には知られていない「散走」を民間や市民、地域の協力を得ながら、「堺版の「SAKAI散走」を広く発信していく予定だ。
散走で訪れた店舗情報
スポテッドホース・クラフト
住所:大阪府堺市堺区二条通2-17
TEL:072-229-8155
URL: http://www.spottedhorsecraft.co.jp/index.html
木工舎 日根野屋
住所:堺市堺区五条通3-3
TEL:072-233-3668
URL: http://hinenoya.biz/
茶寮 つぼ市製茶本舗 堺店
住所:大阪府堺市堺区九間町東1丁1-2
TEL:072-227-7809
URL: http://www.tsuboichi.co.jp/
堺市立町屋歴史館 山口家住宅
住所:堺市堺区錦之町東1丁2-31
TEL:072-224-1155
URL: http://www.city.sakai.lg.jp/kanko/rekishi/bunkazai/bunkazai/yamaguchike…
元祖肉桂餅本舗八百源・来弘堂
住所:大阪府堺市堺区車之町東2丁1-11
TEL:072-232-3835
URL: http://www.yaogen.com/
text:Yukako.Okada
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