2016/09/12(月) - 08:56
9月5日、北信州の山々を舞台に「信越自然郷・五高原ロングライド」が開催された。30℃を越す季節外れの暑さの中、脚に覚えのある260名のサイクリストが、120kmで獲得標高2,730mというハードなコースにチャレンジ。地元のおもてなしグルメも嬉しい今大会の実走レポートをお届けします。
新潟県妙高市と長野県北東部の8市町村からなり、冬にはウィンタースポーツのメッカとして賑わう「信越自然郷」。深くて荘厳な大自然が広がるこの地を舞台に開催されるのが「信越自然郷・五高原ロングライド(以下、信越五高原ロングライド)」だ。首都圏からはそれなりに距離があるものの、北陸新幹線とレンタカーを組み合わせれば、東京駅から2~3時間ほどでアクセス可能だ。
山と湯の神が鎮座する「妙高高原」、森に妖精が飛ぶ「黒姫高原」、パワースポットとして知られる神々降臨の地「戸隠高原」、豊穣な農を育む「飯綱高原」、そして曼荼羅伝説の「斑尾高原」。信越自然郷に位置する5つの高原を巡る大会のメインコースは距離120kmで獲得標高2,730mにも達する。また、戸隠高原を除いた4高原を巡る95kmコースさえも獲得標高は2,120mと走りごたえ充分。参加者が200名を越すロングライドイベントとしては国内屈指の難易度といえるだろう。
7回目の開催となった今大会には、120kmコースに258名が、95kmコースには37名がエントリー。東は仙台から西は京都まで、更には香港や台湾からも、脚に覚えのあるサイクリストが集結した。一方で、近隣からの参加者も少なくは無い。日本海沿岸の地域に住んでいるサイクリストにとって、信越自然郷は「未開の地」というのがその理由らしい。実際に地元の方に聞いてみても「サイクリストを見かけるようになったのはここ数年」。飯山市(長野県)が昨年のシクロクロス全日本選手権の舞台にも選ばれ、付近ではMTBレースも数多く行われているだけに、少々意外ではある。
さて、大会前日。コースから至近の「妙高高原ビール園タトラ館」では、前夜祭が開催された。妙高高原の湧き水を使った地ビールで喉を潤しながら、鉄板焼きや郷土料理も振る舞われたバイキングで、エネルギーを充填。機材や翌日走るコースなど、自転車談義に花が咲くと、前夜祭はあっと言う間にお開きの時間に。
信越五高原ロングライドでは、斑尾高原と池の平(妙高高原)の2地点にスタートを設置。これは、安全なイベント運営と走りやすさを提供するための工夫であり、第3回大会から導入された。筆者は、これまで参加した2回はいずれも斑尾高原スタートだったが、今回は池の平スタートに変更。結論だけ述べておくと、同じコースでもスタート地点が違うだけで「この登りって、こんなにキツかったけ?」と感じる箇所もあれば、その逆も然りだ。
各スタート地点の周辺に大会協力宿を用意しており、参加者は格安で泊まることができる。筆者が今回泊まったのは、妙高高原にある「宿 なごみ荘」さん。黒い湯花が浮いた100%源泉かけ流しの天然温泉が、疲れの溜まった身体にまぁ沁みること。翌日への準備は万全だ。
一晩明けて、迎えた大会当日の朝。就寝時に強く吹いていた風は収まり、あたりは朝焼けに包まれている。朝食をとっている時に、宿の女将さんが「朝焼けだから、雨が心配」とつぶやいたが、筆者も出場した昨年の大会は冷たい雨に降られ続けただけに、雨はご勘弁願いたく。取材する立場としてはカメラは壊れるし、写真も暗い雰囲気になりがちなので、なおさら。幸いなことに、雨を降らしそうな雲はなさそう。
朝7時のスタートを前に、スタート地点の池の平イベント広場に参加者が集まってくる。前々回、前回と朝は15℃ほどで、ウォーマー類が必要なぐらい肌寒かったが、今年は「高原の朝」ならではの凛とした空気は全く感じられない。盛夏の日差しが、ジリジリと肌に照りつけてくる。それでも、日陰に入れば快適で、広場を覆う芝生の上でのんびりとストレッチする参加者の姿も。とても気持ちよさそうだ。開会式を終え、定刻を少し過ぎてからスタート。タイムトライアルの様に1人ずつコースへと飛び出していく。
最初のエイドまでの14kmは、ウォームアップ代わりのアップダウンを繰り返す。沿道で揺れる稲穂の田舎らしい風景が目を楽しませてくれるが、例年なら既に黄色く色づいているところ、今年はまだ青々としている。そんなことを考えながらペダルを回していると、程なくして最初のエイドにたどり着く。スタートから時間も経っていないこともあり、ここでの補給食は軽め。金色に輝くとうもろこしと、ぱきっとした歯ごたえの瑞々しいりんご、こし餡たっぷりの温泉まんじゅうを頂いて、再びコースへ。
ここからは足利義満、上杉謙信、武田信玄、徳川家康ら歴代の戦国武将から尊崇を得ていたとされる霊山「飯縄山」の裾野を反時計周りに走る。今大会の最高標高地点である戸隠キャンプ場付近までの登坂は、距離15kmで獲得標高500mを稼ぐ。
この登りは、序盤に切り返しがあるものの、基本的には直線的で勾配が所々10%を越える箇所も。ただ、斑尾スタートではかなりシンドイ思いをしたが、池の平スタートではコース序盤とあって、脚が削られているという感触は少ないように感じられた(昨晩の温泉が良かったから?)。そして、木々たちが真夏の日差しを遮ってくれるのが、何よりも嬉しいところ。途中には、北側に視界の開けた場所があり、白い花が咲き乱れるそば畑と黒姫山が織りなす景色は圧巻であった。
戸隠キャンプ場を越え、アップダウンをこなすと、筆者的にはお待ちかねの35kmのダウンヒルが登場。昨年はこの辺りで雨が振り出し、タイヤの空気圧を4Barまで下げてブレーキを引き摺りながら下ったが、今年はジェットコースターの如く標高差600mを急降下していく。
下り切る少し前に、この日2つ目となる大座法師池エイドステーションへと到着する。はるか昔、巨人のデーダラ法師(ダイダラボッチ)が飯縄山に腰を下ろし、一歩足を踏み出したときの足跡に水が溜まってできたと言い伝えられる池の畔(とはいっても木々で池は見えない)ではおにぎりや蕎麦が振る舞われる。蕎麦はもちろん地元産の粉を使用して手打ちしたもので、程よいコシがGood。添えられる地元産の山菜やキノコも食感が良く、おかわりぜずにはいられないほどの美味しさであった。
コースの1/3となる40kmを走破したCW取材班は、まだまだ続く高原ならではの厳しい登りに挑んでいくのでした。信越五高原ロングライドの実走レポートは後編へと続きます。
text&photo:Yuya.Yamamoto
新潟県妙高市と長野県北東部の8市町村からなり、冬にはウィンタースポーツのメッカとして賑わう「信越自然郷」。深くて荘厳な大自然が広がるこの地を舞台に開催されるのが「信越自然郷・五高原ロングライド(以下、信越五高原ロングライド)」だ。首都圏からはそれなりに距離があるものの、北陸新幹線とレンタカーを組み合わせれば、東京駅から2~3時間ほどでアクセス可能だ。
山と湯の神が鎮座する「妙高高原」、森に妖精が飛ぶ「黒姫高原」、パワースポットとして知られる神々降臨の地「戸隠高原」、豊穣な農を育む「飯綱高原」、そして曼荼羅伝説の「斑尾高原」。信越自然郷に位置する5つの高原を巡る大会のメインコースは距離120kmで獲得標高2,730mにも達する。また、戸隠高原を除いた4高原を巡る95kmコースさえも獲得標高は2,120mと走りごたえ充分。参加者が200名を越すロングライドイベントとしては国内屈指の難易度といえるだろう。
7回目の開催となった今大会には、120kmコースに258名が、95kmコースには37名がエントリー。東は仙台から西は京都まで、更には香港や台湾からも、脚に覚えのあるサイクリストが集結した。一方で、近隣からの参加者も少なくは無い。日本海沿岸の地域に住んでいるサイクリストにとって、信越自然郷は「未開の地」というのがその理由らしい。実際に地元の方に聞いてみても「サイクリストを見かけるようになったのはここ数年」。飯山市(長野県)が昨年のシクロクロス全日本選手権の舞台にも選ばれ、付近ではMTBレースも数多く行われているだけに、少々意外ではある。
さて、大会前日。コースから至近の「妙高高原ビール園タトラ館」では、前夜祭が開催された。妙高高原の湧き水を使った地ビールで喉を潤しながら、鉄板焼きや郷土料理も振る舞われたバイキングで、エネルギーを充填。機材や翌日走るコースなど、自転車談義に花が咲くと、前夜祭はあっと言う間にお開きの時間に。
信越五高原ロングライドでは、斑尾高原と池の平(妙高高原)の2地点にスタートを設置。これは、安全なイベント運営と走りやすさを提供するための工夫であり、第3回大会から導入された。筆者は、これまで参加した2回はいずれも斑尾高原スタートだったが、今回は池の平スタートに変更。結論だけ述べておくと、同じコースでもスタート地点が違うだけで「この登りって、こんなにキツかったけ?」と感じる箇所もあれば、その逆も然りだ。
各スタート地点の周辺に大会協力宿を用意しており、参加者は格安で泊まることができる。筆者が今回泊まったのは、妙高高原にある「宿 なごみ荘」さん。黒い湯花が浮いた100%源泉かけ流しの天然温泉が、疲れの溜まった身体にまぁ沁みること。翌日への準備は万全だ。
一晩明けて、迎えた大会当日の朝。就寝時に強く吹いていた風は収まり、あたりは朝焼けに包まれている。朝食をとっている時に、宿の女将さんが「朝焼けだから、雨が心配」とつぶやいたが、筆者も出場した昨年の大会は冷たい雨に降られ続けただけに、雨はご勘弁願いたく。取材する立場としてはカメラは壊れるし、写真も暗い雰囲気になりがちなので、なおさら。幸いなことに、雨を降らしそうな雲はなさそう。
朝7時のスタートを前に、スタート地点の池の平イベント広場に参加者が集まってくる。前々回、前回と朝は15℃ほどで、ウォーマー類が必要なぐらい肌寒かったが、今年は「高原の朝」ならではの凛とした空気は全く感じられない。盛夏の日差しが、ジリジリと肌に照りつけてくる。それでも、日陰に入れば快適で、広場を覆う芝生の上でのんびりとストレッチする参加者の姿も。とても気持ちよさそうだ。開会式を終え、定刻を少し過ぎてからスタート。タイムトライアルの様に1人ずつコースへと飛び出していく。
最初のエイドまでの14kmは、ウォームアップ代わりのアップダウンを繰り返す。沿道で揺れる稲穂の田舎らしい風景が目を楽しませてくれるが、例年なら既に黄色く色づいているところ、今年はまだ青々としている。そんなことを考えながらペダルを回していると、程なくして最初のエイドにたどり着く。スタートから時間も経っていないこともあり、ここでの補給食は軽め。金色に輝くとうもろこしと、ぱきっとした歯ごたえの瑞々しいりんご、こし餡たっぷりの温泉まんじゅうを頂いて、再びコースへ。
ここからは足利義満、上杉謙信、武田信玄、徳川家康ら歴代の戦国武将から尊崇を得ていたとされる霊山「飯縄山」の裾野を反時計周りに走る。今大会の最高標高地点である戸隠キャンプ場付近までの登坂は、距離15kmで獲得標高500mを稼ぐ。
この登りは、序盤に切り返しがあるものの、基本的には直線的で勾配が所々10%を越える箇所も。ただ、斑尾スタートではかなりシンドイ思いをしたが、池の平スタートではコース序盤とあって、脚が削られているという感触は少ないように感じられた(昨晩の温泉が良かったから?)。そして、木々たちが真夏の日差しを遮ってくれるのが、何よりも嬉しいところ。途中には、北側に視界の開けた場所があり、白い花が咲き乱れるそば畑と黒姫山が織りなす景色は圧巻であった。
戸隠キャンプ場を越え、アップダウンをこなすと、筆者的にはお待ちかねの35kmのダウンヒルが登場。昨年はこの辺りで雨が振り出し、タイヤの空気圧を4Barまで下げてブレーキを引き摺りながら下ったが、今年はジェットコースターの如く標高差600mを急降下していく。
下り切る少し前に、この日2つ目となる大座法師池エイドステーションへと到着する。はるか昔、巨人のデーダラ法師(ダイダラボッチ)が飯縄山に腰を下ろし、一歩足を踏み出したときの足跡に水が溜まってできたと言い伝えられる池の畔(とはいっても木々で池は見えない)ではおにぎりや蕎麦が振る舞われる。蕎麦はもちろん地元産の粉を使用して手打ちしたもので、程よいコシがGood。添えられる地元産の山菜やキノコも食感が良く、おかわりぜずにはいられないほどの美味しさであった。
コースの1/3となる40kmを走破したCW取材班は、まだまだ続く高原ならではの厳しい登りに挑んでいくのでした。信越五高原ロングライドの実走レポートは後編へと続きます。
text&photo:Yuya.Yamamoto
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