2016/09/09(金) - 09:06
新たな自転車の聖地として歩み始めた島根県松江市。ジャイアントストアがオープンし(ジャイアントストアのレポート記事はこちら)、サイクリスト目線にたった街づくりを進めようとしている松江市で行われたサイクリングの様子を目黒誠子さんによるレポートでお届けします。
「しまね・出雲」は八百万(やおろず)の神々が縁結びのための集まる「ご縁の国」。「ご縁」とは恋愛だけではありません。自然、人、もの、仕事、お金などなど… あらゆる「良縁」にご利益があると言われています。そのため、「福の国」とも。そんな有数のパワースポットである島根県にジャイアントストアがオープン! 私も「Liv」の自転車を輪行、サイクリングしてきました!その様子をお届けします。
東京からは毎日JALが5往復 自転車輪行フライトでレッツゴー!
東京から「出雲縁結び空港」まではJALでひとっ飛び! JALは毎日5往復運行、泊まりでも日帰りでも可能な時間設定です。ですがせっかくなので泊まって島根を満喫したいところです。今回は私も二泊三日することにしました。
チェックインカウンターで自転車を預けます。「大切な自転車、大丈夫かな・・・・・・」と不安がつきまといますが、JALカウンターに行ってみれば不安は吹き飛びました。「どちらが上ですか?」、「梱包で心配なところはありませんか?」等確認され、不安なところにはなんとパッキン材とテープを貸してくれました。
梱包は自己責任になりますが、このようなお声がけは不安を取り除いてくれます。不安はない方がいいです。さぁ、納得がいくまで梱包したら、念の為の同意書にサイン。荷物を預けます。約1時間20分のフライトを経て、いざ、出雲へ!
出雲空港からジャイアントストア松江店がある松江しんじ湖温泉駅までは連絡バスで40分。宿泊は駅から徒歩一分の「ホテル一畑」です。ホテル一畑では、ロビーに自転車を預けられるので安心。とっても便利なサイクリストフレンドリーなお宿です。
ジャイアントストア松江店は、「松江しんじ湖温泉駅」から目と鼻の先の徒歩2分。松江しんじ湖温泉駅は、「やまなみ街道サイクリングロード」の島根県側の発着点となっています。
本格的運用に伴い、島根県溝口知事や松江商工会議所古瀬会頭、ジャイアントジャパン中村社長など、オープニングセレモニーの出席者でサイクリング試走会が行われました。自転車振興に対する島根県の力の入れようが伝わってきます。そして島根県にはそれだけの環境が整っている、ということが、サイクリングをしてみて改めてわかりました。
さあ、ジャイアントストア松江店からすいてんかく前駐車場へ移動、ここが本日のスタート地点です!ここから約4.2km、宍道湖沿いに走ります。この日は晴れ、気温は32度。気温は暑いですが、自転車を走らせて受ける風と宍道湖からの風ですごく気持ちがいい!宍道湖を見ながらのサイクリングは、心も雄大になりそうです。
一畑鉄道が展開するサイクルトレイン「レール&サイクル」
松江しんじ湖温泉駅を出発してから最初の目的地、「松江イングリッシュガーデン」までは約4.2km。一畑鉄道、通称「ばたでん」に乗ればひと駅目。知事はここからサイクルトレインに乗り込み、松江しんじ湖温泉駅へ戻ります。たくさんのメディアが訪れそのインパクトは大きかったと言えるでしょう。
一畑鉄道が展開する「レール&サイクル」は、終日全区間で車両内に自転車を持ち込むことができるほか、一日フリー乗車券を購入すれば、丸一日乗り降り自由。今回は時間がなくて中に入ることはできませんでしたが、「松江イングリッシュガーデン」は何と、日本で初めての本格的な英国式庭園を取り入れたところ。宍道湖を背景とした豊かな自然の中に、バラやスイレン、ハーブが咲き誇ります。(駐輪場はありますが自己責任になります)
日本百景の美しき湖・宍道湖を自転車で堪能
一畑鉄道は、宍道湖の北側から西方面に向かって、沿うように走っています。宍道湖は島根県北東部に位置し、東西約17km、南北約6km、周囲47kmの横に長い長方形で、面積は日本国内で7番目の大きさ。その美しさに、日本百景にも選ばれています。
すがすがしい空気とマイナスイオンに満ち溢れ、多くの散歩客でにぎわう朝の宍道湖、まぶしいほどにキラキラの太陽が光る昼の宍道湖、夕日が湖面に反射し、あたり一帯幻想的な光景が広がる夕暮れの宍道湖。夕暮れ時の宍道湖は、日本百景のほかに「日本夕陽百選」にも選ばれるほど。
小泉八雲など多くの文人に愛されてきたのも納得です。そんな宍道湖の美しさを体いっぱいに感じながらのサイクリングはこのうえない贅沢な経験です。しかも、縁結びの神・福の神として名高い出雲大社に向かって走っている!
宍道湖を走っていると、シロサギやカモなどたくさんの鳥に出会いました。なんと白鳥も!優雅に泳ぐ白鳥を見ながら走ることができるなんて、まさにサイクリングの醍醐味です。
この宍道湖は、湿地の保全を目的とした国際湿地条約である『ラムサール条約』に登録されています。国際的にも有数の水鳥の渡来地で、240種以上の鳥類が生息しているそうです。「宍道湖グリーンパーク」ではバードウォッチングもできちゃいます。
宍道湖名物天然ウナギで贅沢ランチ!
宍道湖は、淡水に海水が入り混じった「汽水湖」としても知られています。「水木しげる記念館」がある堺港から中海、大橋川を介し、隔たりはあるものの日本海とつながっているためです。そのため、淡水魚と海の魚が共存し魚種も豊富!天然ウナギが捕れる、数少ない産地の一つです。というわけでお昼は宍道湖天然うなぎを食せる、「福吉」さんへ。
ウナギを食べたあとは、宍道湖湖北自転車道に沿って西へ走り、「出雲路自転車道」へ。しばらくは斐伊川(ひいがわ)沿いを走ります。斐伊川は、出雲平野を流れ、宍道湖、そして日本海へと注ぎ込み、神話「ヤマタノオロチ伝説」で有名な川。
今は穏やかであるものの、古代においてはたびたび氾濫し、人々からたびたび恐れられていました。独特の砂州(さす)模様と氾濫とで、斐伊川自体が「オロチ」と比喩されていたのでは?と言われているそうですが、その真相はいかに?そんな古代ロマンへの想像をめぐらせながらのサイクリングはまた違った趣があります。
斐伊川下流には、「築地松(ついじまつ)」と呼ばれる防風林に囲まれた民家が点在します。クロマツで作られたこの地方独特の風よけで、出雲平野ならではの景観です。上空からもところどころ見えていた緑はこれだったんですね!
斐伊川河川敷公園を左手に見、JR山陰線が通るトンネルを抜けます。そして出雲市へ。やなぎ並木が美しい高瀬川沿いのサイクリングロードは涼やかで清々しく、そして雅な雰囲気。どこを取っても絵になります。この高瀬川は、「大梶七兵衛」が私財を投じてつくった、灌漑用の用水路だそう。高瀬川は、「藍染め」のノリ落とし用としても使われていたそうです。高瀬川沿いを走っていくと行き当たる「長田染工場」は創業1887年(明治20年)。島根県指定無形文化財にも指定されており、工場見学もできます。
日本海へつながる秘密の小道へ
ここから先は一気に日本海へ!と行きたいところですが、自転車道は日本海の手前で右折します。今まで走ってきた高瀬川は、内藤川と立体交差、神戸川と合流、日本海にそそいでいきますが、私たちは右折。海を左手に見ながらまるで秘密の小道のようなサイクリングロードを走っていきます。
途中には、天然記念物の「フランス海岸松」が。この松から出る樹皮エキスは「ピクノジェノール」と言って驚きの抗酸化パワーを持っています。美肌効果や健康維持、紫外線による肌の老化を防ぐ魅力的な成分!周りの男性陣に言っても「??」でしたが、私は大興奮!(笑)。
ここぞとばかりにふか~い深呼吸を! 効いているかどうかはわかりませんが、ペダルをこぎながらの大自然の中での深呼吸はそれだけでもよいはずです。
神話の舞台、稲佐の浜
さあ、日本海!日本海に出たら「出雲路自転車道」の終点ももうすぐです。日本海を左手に見ながらそのまま北へ進むと、神話の舞台となりパワースポットで知られる小さな島が見えてきます(弁天島)。弁天島には鳥居が立ち、独特のオーラが漂います。この島の周りにひろがるのが「稲佐の浜」です。
30年くらい前までは、島の前まで波が打ち寄せていたそうです。「昔はこの島まで泳いで行ってたんですよ!」と教えてくれたのは、NPOサイクリングビューの森脇さん。今は砂浜が広がり、歩いていけるようになりました。昔は「弁財天」が祀られていましたが、今は豊玉毘古命(トヨタマヒコノミコト)が祀られています。
旧暦の10月10日、出雲大社に集まる全国の神々は、この浜を通って出雲へ上陸すると伝えられ、今なお神迎えの神事が行われています。天照大神(アマテラスオオミカミ)より「国譲り」の使命を受けた建御雷神(タケミカヅチ)が、大国主神(オオクニヌシノカミ)と対面した場所です。自転車で到達したこの感動は格別のものがあります。
自転車で訪れる出雲大社は格別!
出雲路自転車道は稲佐の浜で終点となりますが、今回の目的地は出雲大社。東へ向かいましょう。(*稲佐の浜で夕日を見てしまうと出雲大社は見れませんので注意が必要です)緩やかな坂をのぼってくだれば、そこにはドーンとそびえ立つ壮大で荘厳な立派な鳥居。
着きました~!!
出雲大社の鳥居です。境内に入らずとも、すでに空気が違っているのが感じられます。万物に神様が宿ると考えた日本人。八雲山を背にした出雲大社の神域には厳かな空気が流れ、巨大なものが立つ気配を感じ取れます。厳粛な緊張感と同時に、大きな包容力も感じます。それは、数千年の歴史からなのでしょうか。それとも、万物に宿る神様からなのでしょうか。しばしこの大きな鳥居に見とれながら、ここに来れたことへの感謝の気持ちを込めて、手を合わせました。
帰路はサイクルトレインで
出雲大社で手を合わせたあとは、「ぜんざい餅」を補給食に買って、「出雲大社前駅」へ!ちなみに「ぜんざい」とは出雲地方の「神在(じんざい)餅」が由来だそうです。旧暦の十月、全国から神々が集まり、「神在祭(かみありさい)」と呼ばれる神事が執り行われます。そのお祭りで振る舞われたのが「神在餅(じんざいもち)」、ということで、ありがたくいただきました。出雲大社前駅で「自転車持ち込み券」も購入、サイクルトレインに乗り込みます。
自転車持ち込み丸ごとOK!な「レール&サイクル」サービスは、「自転車をそのまま電車に乗せたい」という市民の声からはじまりました。ヨーロッパでは当たり前のことですが、日本では珍しいですよね。この神的サービスをはじめた一畑鉄道はあっぱれ! 素晴らしいです。
車内では、ゴム紐で固定してもよし、座席のそばに持って行ってもよし、特に決まりはありませんが、ほかに乗客の方がいらしたら、きちんとゴム紐で固定、マナーは守りたいですね。自転車を愛する人は、交通ルールもマナーも守れる人ばかりと信じています。日本中の電車がこうなればよいのになぁと思います。
自転車先進国であった神話の国・島根
自転車は、自分の足で動くことができる「一番身近な交通手段」になります。乗れば乗るほど持続可能であり、CO2削減、エコ、環境問題の緩和となります。心身ともに健康になり、美容にもとってもいい。ジャイアントジャパンの中村社長は言っていました。
「地元の方々を応援していきたい。一人でも多くの方に自転車に乗ってもらいたい。」 地元の方々が自転車に乗っているからこそ、一畑電車の「サイクルトレイン」が生れました。県知事などの首長、そして経済界や地域のリーダーも自転車に乗っているからこそ、やまなみ街道サイクリングロードの本格的運用がはじまり、ジャイアントストアのオープンにつながりました。
ここ島根は、すべてが揃っています。 まだまだ整備することはたくさんあるかもしれませんが、ご縁の国、出雲で出会った自転車の可能性。それは幸福につながるものばかり。ぜひ、島根に来て、その足で感じてみてください。
番外編!八重垣神社と松江城、サイクルカフェ「ボテッキア」
出雲まで来たら、ぜひもう一泊して松江市もサイクリングしてみましょう。まず私が向かったのは、「最強の縁結びの神様」として知られる「八重垣神社」。ホテル一畑からは約7キロのところにある神社です。その後、「ボテッキア」カフェで休憩し、松江城へと自転車を走らせました。
八重垣神社は、古代「結婚式発祥の地」と言われているところ。神社の裏山が「奥の院 佐久佐女(さくさめ)の森」で、「ご縁占い」で有名な「鏡の池」があります。社務所で占い用の紙を買い、お願いごとを心の中で1つだけして、10円か100円を浮かべ、紙が沈むのを待ちます。15分以内に沈めばご縁が早く、30分以上かかればご縁が遅い、というもの!また、手前で沈めば近くの人と、流れて遠くで沈めば遠くの人と縁があるとも言われています。
ドキドキの瞬間です! 紙を池に浮かべると浮かび上がる文字……これが大切なメッセージ。「望みが叶う」と出たではありませんか!さあ、そして、待つこと数分……安心してください、15分以内で沈みました。しかも!ヤモリがスイスイと泳いできました。このヤモリ、イナタ姫のお使いと言われていて、現れたら超ラッキーと言われています。
八重垣神社から約4キロのサイクルカフェ「ボテッキア」。ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアの期間中は、国際コミッセールの菊池氏による解説つきライブビューイングも開かれています。リーダージャージや、オーナー坂本氏の自転車が壁面に飾られ、なんとカフェの一角では本格的な「サイクルシュミュレーター」が!
ドリンクとシュミュレーションでお得なセットもあります。こちらに来たら、ぜひ、カプチーノを!イタリアで100年の歴史を持つ「魔法のエスプレッソ・カフェ カリアーリ」が飲めるのは日本でも30か所のみ。アガベシロップたっぷりのあま~いワッフルを添えてどうぞ♪
text:Seiko.Meguro
「しまね・出雲」は八百万(やおろず)の神々が縁結びのための集まる「ご縁の国」。「ご縁」とは恋愛だけではありません。自然、人、もの、仕事、お金などなど… あらゆる「良縁」にご利益があると言われています。そのため、「福の国」とも。そんな有数のパワースポットである島根県にジャイアントストアがオープン! 私も「Liv」の自転車を輪行、サイクリングしてきました!その様子をお届けします。
東京からは毎日JALが5往復 自転車輪行フライトでレッツゴー!
東京から「出雲縁結び空港」まではJALでひとっ飛び! JALは毎日5往復運行、泊まりでも日帰りでも可能な時間設定です。ですがせっかくなので泊まって島根を満喫したいところです。今回は私も二泊三日することにしました。
チェックインカウンターで自転車を預けます。「大切な自転車、大丈夫かな・・・・・・」と不安がつきまといますが、JALカウンターに行ってみれば不安は吹き飛びました。「どちらが上ですか?」、「梱包で心配なところはありませんか?」等確認され、不安なところにはなんとパッキン材とテープを貸してくれました。
梱包は自己責任になりますが、このようなお声がけは不安を取り除いてくれます。不安はない方がいいです。さぁ、納得がいくまで梱包したら、念の為の同意書にサイン。荷物を預けます。約1時間20分のフライトを経て、いざ、出雲へ!
出雲空港からジャイアントストア松江店がある松江しんじ湖温泉駅までは連絡バスで40分。宿泊は駅から徒歩一分の「ホテル一畑」です。ホテル一畑では、ロビーに自転車を預けられるので安心。とっても便利なサイクリストフレンドリーなお宿です。
ジャイアントストア松江店は、「松江しんじ湖温泉駅」から目と鼻の先の徒歩2分。松江しんじ湖温泉駅は、「やまなみ街道サイクリングロード」の島根県側の発着点となっています。
本格的運用に伴い、島根県溝口知事や松江商工会議所古瀬会頭、ジャイアントジャパン中村社長など、オープニングセレモニーの出席者でサイクリング試走会が行われました。自転車振興に対する島根県の力の入れようが伝わってきます。そして島根県にはそれだけの環境が整っている、ということが、サイクリングをしてみて改めてわかりました。
さあ、ジャイアントストア松江店からすいてんかく前駐車場へ移動、ここが本日のスタート地点です!ここから約4.2km、宍道湖沿いに走ります。この日は晴れ、気温は32度。気温は暑いですが、自転車を走らせて受ける風と宍道湖からの風ですごく気持ちがいい!宍道湖を見ながらのサイクリングは、心も雄大になりそうです。
一畑鉄道が展開するサイクルトレイン「レール&サイクル」
松江しんじ湖温泉駅を出発してから最初の目的地、「松江イングリッシュガーデン」までは約4.2km。一畑鉄道、通称「ばたでん」に乗ればひと駅目。知事はここからサイクルトレインに乗り込み、松江しんじ湖温泉駅へ戻ります。たくさんのメディアが訪れそのインパクトは大きかったと言えるでしょう。
一畑鉄道が展開する「レール&サイクル」は、終日全区間で車両内に自転車を持ち込むことができるほか、一日フリー乗車券を購入すれば、丸一日乗り降り自由。今回は時間がなくて中に入ることはできませんでしたが、「松江イングリッシュガーデン」は何と、日本で初めての本格的な英国式庭園を取り入れたところ。宍道湖を背景とした豊かな自然の中に、バラやスイレン、ハーブが咲き誇ります。(駐輪場はありますが自己責任になります)
日本百景の美しき湖・宍道湖を自転車で堪能
一畑鉄道は、宍道湖の北側から西方面に向かって、沿うように走っています。宍道湖は島根県北東部に位置し、東西約17km、南北約6km、周囲47kmの横に長い長方形で、面積は日本国内で7番目の大きさ。その美しさに、日本百景にも選ばれています。
すがすがしい空気とマイナスイオンに満ち溢れ、多くの散歩客でにぎわう朝の宍道湖、まぶしいほどにキラキラの太陽が光る昼の宍道湖、夕日が湖面に反射し、あたり一帯幻想的な光景が広がる夕暮れの宍道湖。夕暮れ時の宍道湖は、日本百景のほかに「日本夕陽百選」にも選ばれるほど。
小泉八雲など多くの文人に愛されてきたのも納得です。そんな宍道湖の美しさを体いっぱいに感じながらのサイクリングはこのうえない贅沢な経験です。しかも、縁結びの神・福の神として名高い出雲大社に向かって走っている!
宍道湖を走っていると、シロサギやカモなどたくさんの鳥に出会いました。なんと白鳥も!優雅に泳ぐ白鳥を見ながら走ることができるなんて、まさにサイクリングの醍醐味です。
この宍道湖は、湿地の保全を目的とした国際湿地条約である『ラムサール条約』に登録されています。国際的にも有数の水鳥の渡来地で、240種以上の鳥類が生息しているそうです。「宍道湖グリーンパーク」ではバードウォッチングもできちゃいます。
宍道湖名物天然ウナギで贅沢ランチ!
宍道湖は、淡水に海水が入り混じった「汽水湖」としても知られています。「水木しげる記念館」がある堺港から中海、大橋川を介し、隔たりはあるものの日本海とつながっているためです。そのため、淡水魚と海の魚が共存し魚種も豊富!天然ウナギが捕れる、数少ない産地の一つです。というわけでお昼は宍道湖天然うなぎを食せる、「福吉」さんへ。
ウナギを食べたあとは、宍道湖湖北自転車道に沿って西へ走り、「出雲路自転車道」へ。しばらくは斐伊川(ひいがわ)沿いを走ります。斐伊川は、出雲平野を流れ、宍道湖、そして日本海へと注ぎ込み、神話「ヤマタノオロチ伝説」で有名な川。
今は穏やかであるものの、古代においてはたびたび氾濫し、人々からたびたび恐れられていました。独特の砂州(さす)模様と氾濫とで、斐伊川自体が「オロチ」と比喩されていたのでは?と言われているそうですが、その真相はいかに?そんな古代ロマンへの想像をめぐらせながらのサイクリングはまた違った趣があります。
斐伊川下流には、「築地松(ついじまつ)」と呼ばれる防風林に囲まれた民家が点在します。クロマツで作られたこの地方独特の風よけで、出雲平野ならではの景観です。上空からもところどころ見えていた緑はこれだったんですね!
斐伊川河川敷公園を左手に見、JR山陰線が通るトンネルを抜けます。そして出雲市へ。やなぎ並木が美しい高瀬川沿いのサイクリングロードは涼やかで清々しく、そして雅な雰囲気。どこを取っても絵になります。この高瀬川は、「大梶七兵衛」が私財を投じてつくった、灌漑用の用水路だそう。高瀬川は、「藍染め」のノリ落とし用としても使われていたそうです。高瀬川沿いを走っていくと行き当たる「長田染工場」は創業1887年(明治20年)。島根県指定無形文化財にも指定されており、工場見学もできます。
日本海へつながる秘密の小道へ
ここから先は一気に日本海へ!と行きたいところですが、自転車道は日本海の手前で右折します。今まで走ってきた高瀬川は、内藤川と立体交差、神戸川と合流、日本海にそそいでいきますが、私たちは右折。海を左手に見ながらまるで秘密の小道のようなサイクリングロードを走っていきます。
途中には、天然記念物の「フランス海岸松」が。この松から出る樹皮エキスは「ピクノジェノール」と言って驚きの抗酸化パワーを持っています。美肌効果や健康維持、紫外線による肌の老化を防ぐ魅力的な成分!周りの男性陣に言っても「??」でしたが、私は大興奮!(笑)。
ここぞとばかりにふか~い深呼吸を! 効いているかどうかはわかりませんが、ペダルをこぎながらの大自然の中での深呼吸はそれだけでもよいはずです。
神話の舞台、稲佐の浜
さあ、日本海!日本海に出たら「出雲路自転車道」の終点ももうすぐです。日本海を左手に見ながらそのまま北へ進むと、神話の舞台となりパワースポットで知られる小さな島が見えてきます(弁天島)。弁天島には鳥居が立ち、独特のオーラが漂います。この島の周りにひろがるのが「稲佐の浜」です。
30年くらい前までは、島の前まで波が打ち寄せていたそうです。「昔はこの島まで泳いで行ってたんですよ!」と教えてくれたのは、NPOサイクリングビューの森脇さん。今は砂浜が広がり、歩いていけるようになりました。昔は「弁財天」が祀られていましたが、今は豊玉毘古命(トヨタマヒコノミコト)が祀られています。
旧暦の10月10日、出雲大社に集まる全国の神々は、この浜を通って出雲へ上陸すると伝えられ、今なお神迎えの神事が行われています。天照大神(アマテラスオオミカミ)より「国譲り」の使命を受けた建御雷神(タケミカヅチ)が、大国主神(オオクニヌシノカミ)と対面した場所です。自転車で到達したこの感動は格別のものがあります。
自転車で訪れる出雲大社は格別!
出雲路自転車道は稲佐の浜で終点となりますが、今回の目的地は出雲大社。東へ向かいましょう。(*稲佐の浜で夕日を見てしまうと出雲大社は見れませんので注意が必要です)緩やかな坂をのぼってくだれば、そこにはドーンとそびえ立つ壮大で荘厳な立派な鳥居。
着きました~!!
出雲大社の鳥居です。境内に入らずとも、すでに空気が違っているのが感じられます。万物に神様が宿ると考えた日本人。八雲山を背にした出雲大社の神域には厳かな空気が流れ、巨大なものが立つ気配を感じ取れます。厳粛な緊張感と同時に、大きな包容力も感じます。それは、数千年の歴史からなのでしょうか。それとも、万物に宿る神様からなのでしょうか。しばしこの大きな鳥居に見とれながら、ここに来れたことへの感謝の気持ちを込めて、手を合わせました。
帰路はサイクルトレインで
出雲大社で手を合わせたあとは、「ぜんざい餅」を補給食に買って、「出雲大社前駅」へ!ちなみに「ぜんざい」とは出雲地方の「神在(じんざい)餅」が由来だそうです。旧暦の十月、全国から神々が集まり、「神在祭(かみありさい)」と呼ばれる神事が執り行われます。そのお祭りで振る舞われたのが「神在餅(じんざいもち)」、ということで、ありがたくいただきました。出雲大社前駅で「自転車持ち込み券」も購入、サイクルトレインに乗り込みます。
自転車持ち込み丸ごとOK!な「レール&サイクル」サービスは、「自転車をそのまま電車に乗せたい」という市民の声からはじまりました。ヨーロッパでは当たり前のことですが、日本では珍しいですよね。この神的サービスをはじめた一畑鉄道はあっぱれ! 素晴らしいです。
車内では、ゴム紐で固定してもよし、座席のそばに持って行ってもよし、特に決まりはありませんが、ほかに乗客の方がいらしたら、きちんとゴム紐で固定、マナーは守りたいですね。自転車を愛する人は、交通ルールもマナーも守れる人ばかりと信じています。日本中の電車がこうなればよいのになぁと思います。
自転車先進国であった神話の国・島根
自転車は、自分の足で動くことができる「一番身近な交通手段」になります。乗れば乗るほど持続可能であり、CO2削減、エコ、環境問題の緩和となります。心身ともに健康になり、美容にもとってもいい。ジャイアントジャパンの中村社長は言っていました。
「地元の方々を応援していきたい。一人でも多くの方に自転車に乗ってもらいたい。」 地元の方々が自転車に乗っているからこそ、一畑電車の「サイクルトレイン」が生れました。県知事などの首長、そして経済界や地域のリーダーも自転車に乗っているからこそ、やまなみ街道サイクリングロードの本格的運用がはじまり、ジャイアントストアのオープンにつながりました。
ここ島根は、すべてが揃っています。 まだまだ整備することはたくさんあるかもしれませんが、ご縁の国、出雲で出会った自転車の可能性。それは幸福につながるものばかり。ぜひ、島根に来て、その足で感じてみてください。
番外編!八重垣神社と松江城、サイクルカフェ「ボテッキア」
出雲まで来たら、ぜひもう一泊して松江市もサイクリングしてみましょう。まず私が向かったのは、「最強の縁結びの神様」として知られる「八重垣神社」。ホテル一畑からは約7キロのところにある神社です。その後、「ボテッキア」カフェで休憩し、松江城へと自転車を走らせました。
八重垣神社は、古代「結婚式発祥の地」と言われているところ。神社の裏山が「奥の院 佐久佐女(さくさめ)の森」で、「ご縁占い」で有名な「鏡の池」があります。社務所で占い用の紙を買い、お願いごとを心の中で1つだけして、10円か100円を浮かべ、紙が沈むのを待ちます。15分以内に沈めばご縁が早く、30分以上かかればご縁が遅い、というもの!また、手前で沈めば近くの人と、流れて遠くで沈めば遠くの人と縁があるとも言われています。
ドキドキの瞬間です! 紙を池に浮かべると浮かび上がる文字……これが大切なメッセージ。「望みが叶う」と出たではありませんか!さあ、そして、待つこと数分……安心してください、15分以内で沈みました。しかも!ヤモリがスイスイと泳いできました。このヤモリ、イナタ姫のお使いと言われていて、現れたら超ラッキーと言われています。
八重垣神社から約4キロのサイクルカフェ「ボテッキア」。ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアの期間中は、国際コミッセールの菊池氏による解説つきライブビューイングも開かれています。リーダージャージや、オーナー坂本氏の自転車が壁面に飾られ、なんとカフェの一角では本格的な「サイクルシュミュレーター」が!
ドリンクとシュミュレーションでお得なセットもあります。こちらに来たら、ぜひ、カプチーノを!イタリアで100年の歴史を持つ「魔法のエスプレッソ・カフェ カリアーリ」が飲めるのは日本でも30か所のみ。アガベシロップたっぷりのあま~いワッフルを添えてどうぞ♪
text:Seiko.Meguro
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