2016/06/23(木) - 09:10
カレラ社の輸入代理店を務めるポディウムが、千葉・館山で同社初となるブランドキャンプを開催。ゲストに往年の名選手クラウディオ・キアプッチ氏ら豪華ゲストを迎え、注目の2017年モデル発表やゲストとのライドなどが催された。
今回ポディウム初のブランドキャンプが開催されたのは、サイクリストやトライアスリートにとって絶好の環境が広がる千葉県は館山市。カレラを筆頭に、タイムやオルベア、チネリといったヨーロッパブランドを得意とするポディウムは、例年各ブランドの新製品を一挙に集めた展示会を開催していたが、今年から見せ方を方向転換。「それぞれのブランドについてより深く知ってもらいたい」という思いから、ワンブランドにフォーカスした小規模展示試乗会を年に数回開き、メディアや販売店、一般ユーザーを招くことになった。その第一弾として選ばれたのがイタリアの名門ブランド、カレラ。今回レポートする「カレラキャンプ」は、全世界に先駆けて同社の2017年モデルを発表するワールドプレミアの場ともなった。
ブランドキャンプのレポートを行う前に、まずはカレラ社の歴史について触れておこうと思う。イタリアはロンバルディア州を本拠地に、1989年にスタートしたカレラ・ポディウム社。メルクスやジモンディといった伝説的な選手たちと共にヨーロッパのロードレース黄金期を支え、引退後もカレラやLPRブレーキなどのチームマネージャーを務めてきた名選手、ダヴィデ・ボイファーヴァ氏が中心となって設立されたブランドだ。
歴史が浅いながらも一流ブランドへと上り詰めた大きな理由の一つに、クラウディオ・キアプッチやマルコ・パンターニ、ミケーレ・バルトリなど当時のトップ選手がカレラチームに在籍するなど、密接なフィードバックを得ることのできる環境があった。「勝つための機材作り」で養われたノウハウと情熱は今も変わらず、その独創性や硬派なブランドイメージに惚れ込むユーザーは少なくない。
そんなカレラのラインナップは、2017年モデルでミドルグレードを中心に刷新が行われることに。軽量を売りにしたSLシリーズの後継機としてブラッシュアップを図った「SL7」と、フレームセット9万8千円という衝撃的なプライスを実現したブランド初となるエントリーエンデュランスモデル「ER-01」という2つの新モデルが大きく会場の注目を集めた。
製品版が間に合わず、未塗装のプロトタイプが持ち込まれたSL7。「オーソドックスな乗り味を好む方に贈るバイク」というそのルックスは2016年モデルのSL730、SL950と同様だが、新カーボン素材の投入とレイアップの工夫によって耐久性とコストパフォーマンスを上げている。フレーム重量は900gで、価格は1万円ダウンの25万円ジャスト。カラーバリエーションもブルー、ホワイト、レッドと鮮やかな3色が揃い、ミドルグレードとして人気が出そうなモデルだ。
圧倒的なバリュープライスで会場を驚かせたのがER-01だ。E(エンデュランス)R(レーシング)という意味合い通り、乗り心地と運動性能の両立を図ったT-700カーボンベースの意欲作だ。見ての通り長いヘッドチューブや、大きくスローピングした短めのトップチューブ、長いシートステーといったエンデュランスジオメトリーが採用されており、タイヤクリアランスは幅広リムに装着した28cまで考慮されている。
機械式・電動コンポーネント両対応であるフレームはブラックとホワイトの2カラーが用意され、いずれも鮮やかな差し色が入るなど、10万円以下と思えない艶やかな仕上がりだ。フレームサイズもXXSが新たに登場しており、エントリーバイク戦線に殴り込みを掛けるカレラ渾身のモデルと言えるだろう。
そしてセラ・サンマルコからはCEOのルイージ・ジラルディ氏が来日し、スポーツサドルの変遷や、7月に発表を予定しているという新モデルの概要も説明された。新モデルはコンコール、ロールス、リーガルに新素材を投入しブラッシュアップしたもので、幅広いニーズに対応した製品になるという。
このカレラキャンプにはカレラチーム在籍時代に黄金期を築いたクラウディオ・キアプッチ氏が特別ゲストとして迎えられ、ディナータイムでは熱心なファンを前にトークショーを行った。現在53歳のキアプッチ氏は今でも年間2万kmを乗り込む熱心なサイクリストで、食事にも気を使い体重は現役時の4kg増しで抑えているんだとか。
現役時代は1mm単位でジオメトリーオーダーするほど人一倍機材にうるさく、かつ新しもの好きで知られていたキアプッチ氏。「175mmクランクを試してみたが、パワーは出るものの加速には対応しづらく使わなかった」など、本人でなければ知りえないストーリーも披露され、伝説的な200kmの独走逃げ切りを決めた、1992年ツール第13ステージの映像を自ら解説するという、贅沢な時間も設けられた。
カレラキャンプ2日目は海沿いのフラットコースをゆったりと走るサイクリングが設定され、キアプッチ氏らゲストも一般参加のファンと共にライドを楽しんだ。力強いキアプッチ氏のフォームは現役と全く変わらず、縁石にジャンプしてみたり、アタックを仕掛けてみたりと、自転車に乗ることを心から楽しんでいる様子。沿道には当時ジャパンカップに出場したキアプッチ氏を応援するために作った応援バナーを持ったファンも駆けつけたり、参加者それぞれのフォームを見てアドバイスをするマンツーマン指導など、わずか30kmという距離ながら、とても密度の濃い時間を過ごすことができた。
クラウディオ・キアプッチ氏インタビュー:「カレラとの関わり」
キアプッチ氏:カレラとの関わりを持ったのは、チームの監督を務めていたダヴィデ・ボイファーバ氏に憧れを持っていたからです。念願叶って1985年にカレラチームと契約してプロとなり、1989年に自転車ブランドとしてのカレラが生まれたため、使用する機材もカレラに変わりました。他の強豪チームからのオファーも多数ありましたが、居心地が良かったこと、私の自転車に対する細かい注文にも柔軟に対応してくれたことが気に入っていたので、断っていたのです。12年間という長期間にわたって所属していたので、現役を退いてから現在までもカレラ社とは良い関係を築けています。こうして日本に来れたことも嬉しいですね。
当時、カレラの自転車には何を要求していたのですか?
一番に重要視していたのはジオメトリー。レースの種類によってジオメトリーの異なるフレームを使用してました。平坦や登りでは必要とされる筋肉が違い、それに合わせて最適化した自転車に乗りたいと考えていたのです。そしてもちろんクライマーだったので、軽さも大切でした。それもただ軽いだけではなく、剛性が出ていないと意味がありません。シーズン中は10本ほどのフレームを乗り換えながら使っていました。
新しい機材や素材にも熱心だったそうですね。
常に新しいものが好きですし、ちょうど現役時代にはフレーム素材の転換期が訪れ、スチール、アルミ、チタンと当時あった素材は全て試しました。フィードバックが製品化に繋がる流れも見ていたし、開発ライダーとしての仕事も楽しかったですね。うるさいだけあって機材の差には敏感なんです。今はそういった仕事から離れていますが、オファーがあれば受けてみたいですね(笑)。
今と昔でカレラの変わった部分は感じますか?
カレラとの付き合いは私の人生そのものでした。当時は、キアプッチと言えばカレラだし、カレラと言えばキアプッチというほど密接な繋がりがあった。それから言わせてもらえば、創業当初も現在も、カレラ社の製品に対する情熱は何一つ変わっていません。もちろん素材がカーボンになり、バリエーションも増えていますが、まず性能ありきという姿勢は昔も今も一緒です。
例えば今回発表されたER-01はとてもリーズナブルなのに、塗装も手抜きが無く、しかも良く走るのでとても驚きました。他ブランドでここまでこだわったバイクは見ませんし、大規模ブランドではないカレラがここまでできたのは大きな意味があると思っています。このように、どのモデルに乗っても、私の時代から息づくカレラならではの情熱や個性を感じることはできるはずですよ。
豪華ゲストを招いて開催されたポディウム初のブランドキャンプ。今後は秋頃までにタイム、チネリ、オルベアという3ブランドを紹介する同様の企画を順次開催していく予定で、詳細は決まり次第告知されるという。各ブランドのファンであれば、毎年見逃せないイベントになりそうだ。
text&photo:So.Isobe
今回ポディウム初のブランドキャンプが開催されたのは、サイクリストやトライアスリートにとって絶好の環境が広がる千葉県は館山市。カレラを筆頭に、タイムやオルベア、チネリといったヨーロッパブランドを得意とするポディウムは、例年各ブランドの新製品を一挙に集めた展示会を開催していたが、今年から見せ方を方向転換。「それぞれのブランドについてより深く知ってもらいたい」という思いから、ワンブランドにフォーカスした小規模展示試乗会を年に数回開き、メディアや販売店、一般ユーザーを招くことになった。その第一弾として選ばれたのがイタリアの名門ブランド、カレラ。今回レポートする「カレラキャンプ」は、全世界に先駆けて同社の2017年モデルを発表するワールドプレミアの場ともなった。
ブランドキャンプのレポートを行う前に、まずはカレラ社の歴史について触れておこうと思う。イタリアはロンバルディア州を本拠地に、1989年にスタートしたカレラ・ポディウム社。メルクスやジモンディといった伝説的な選手たちと共にヨーロッパのロードレース黄金期を支え、引退後もカレラやLPRブレーキなどのチームマネージャーを務めてきた名選手、ダヴィデ・ボイファーヴァ氏が中心となって設立されたブランドだ。
歴史が浅いながらも一流ブランドへと上り詰めた大きな理由の一つに、クラウディオ・キアプッチやマルコ・パンターニ、ミケーレ・バルトリなど当時のトップ選手がカレラチームに在籍するなど、密接なフィードバックを得ることのできる環境があった。「勝つための機材作り」で養われたノウハウと情熱は今も変わらず、その独創性や硬派なブランドイメージに惚れ込むユーザーは少なくない。
そんなカレラのラインナップは、2017年モデルでミドルグレードを中心に刷新が行われることに。軽量を売りにしたSLシリーズの後継機としてブラッシュアップを図った「SL7」と、フレームセット9万8千円という衝撃的なプライスを実現したブランド初となるエントリーエンデュランスモデル「ER-01」という2つの新モデルが大きく会場の注目を集めた。
製品版が間に合わず、未塗装のプロトタイプが持ち込まれたSL7。「オーソドックスな乗り味を好む方に贈るバイク」というそのルックスは2016年モデルのSL730、SL950と同様だが、新カーボン素材の投入とレイアップの工夫によって耐久性とコストパフォーマンスを上げている。フレーム重量は900gで、価格は1万円ダウンの25万円ジャスト。カラーバリエーションもブルー、ホワイト、レッドと鮮やかな3色が揃い、ミドルグレードとして人気が出そうなモデルだ。
圧倒的なバリュープライスで会場を驚かせたのがER-01だ。E(エンデュランス)R(レーシング)という意味合い通り、乗り心地と運動性能の両立を図ったT-700カーボンベースの意欲作だ。見ての通り長いヘッドチューブや、大きくスローピングした短めのトップチューブ、長いシートステーといったエンデュランスジオメトリーが採用されており、タイヤクリアランスは幅広リムに装着した28cまで考慮されている。
機械式・電動コンポーネント両対応であるフレームはブラックとホワイトの2カラーが用意され、いずれも鮮やかな差し色が入るなど、10万円以下と思えない艶やかな仕上がりだ。フレームサイズもXXSが新たに登場しており、エントリーバイク戦線に殴り込みを掛けるカレラ渾身のモデルと言えるだろう。
そしてセラ・サンマルコからはCEOのルイージ・ジラルディ氏が来日し、スポーツサドルの変遷や、7月に発表を予定しているという新モデルの概要も説明された。新モデルはコンコール、ロールス、リーガルに新素材を投入しブラッシュアップしたもので、幅広いニーズに対応した製品になるという。
このカレラキャンプにはカレラチーム在籍時代に黄金期を築いたクラウディオ・キアプッチ氏が特別ゲストとして迎えられ、ディナータイムでは熱心なファンを前にトークショーを行った。現在53歳のキアプッチ氏は今でも年間2万kmを乗り込む熱心なサイクリストで、食事にも気を使い体重は現役時の4kg増しで抑えているんだとか。
現役時代は1mm単位でジオメトリーオーダーするほど人一倍機材にうるさく、かつ新しもの好きで知られていたキアプッチ氏。「175mmクランクを試してみたが、パワーは出るものの加速には対応しづらく使わなかった」など、本人でなければ知りえないストーリーも披露され、伝説的な200kmの独走逃げ切りを決めた、1992年ツール第13ステージの映像を自ら解説するという、贅沢な時間も設けられた。
カレラキャンプ2日目は海沿いのフラットコースをゆったりと走るサイクリングが設定され、キアプッチ氏らゲストも一般参加のファンと共にライドを楽しんだ。力強いキアプッチ氏のフォームは現役と全く変わらず、縁石にジャンプしてみたり、アタックを仕掛けてみたりと、自転車に乗ることを心から楽しんでいる様子。沿道には当時ジャパンカップに出場したキアプッチ氏を応援するために作った応援バナーを持ったファンも駆けつけたり、参加者それぞれのフォームを見てアドバイスをするマンツーマン指導など、わずか30kmという距離ながら、とても密度の濃い時間を過ごすことができた。
クラウディオ・キアプッチ氏インタビュー:「カレラとの関わり」
キアプッチ氏:カレラとの関わりを持ったのは、チームの監督を務めていたダヴィデ・ボイファーバ氏に憧れを持っていたからです。念願叶って1985年にカレラチームと契約してプロとなり、1989年に自転車ブランドとしてのカレラが生まれたため、使用する機材もカレラに変わりました。他の強豪チームからのオファーも多数ありましたが、居心地が良かったこと、私の自転車に対する細かい注文にも柔軟に対応してくれたことが気に入っていたので、断っていたのです。12年間という長期間にわたって所属していたので、現役を退いてから現在までもカレラ社とは良い関係を築けています。こうして日本に来れたことも嬉しいですね。
当時、カレラの自転車には何を要求していたのですか?
一番に重要視していたのはジオメトリー。レースの種類によってジオメトリーの異なるフレームを使用してました。平坦や登りでは必要とされる筋肉が違い、それに合わせて最適化した自転車に乗りたいと考えていたのです。そしてもちろんクライマーだったので、軽さも大切でした。それもただ軽いだけではなく、剛性が出ていないと意味がありません。シーズン中は10本ほどのフレームを乗り換えながら使っていました。
新しい機材や素材にも熱心だったそうですね。
常に新しいものが好きですし、ちょうど現役時代にはフレーム素材の転換期が訪れ、スチール、アルミ、チタンと当時あった素材は全て試しました。フィードバックが製品化に繋がる流れも見ていたし、開発ライダーとしての仕事も楽しかったですね。うるさいだけあって機材の差には敏感なんです。今はそういった仕事から離れていますが、オファーがあれば受けてみたいですね(笑)。
今と昔でカレラの変わった部分は感じますか?
カレラとの付き合いは私の人生そのものでした。当時は、キアプッチと言えばカレラだし、カレラと言えばキアプッチというほど密接な繋がりがあった。それから言わせてもらえば、創業当初も現在も、カレラ社の製品に対する情熱は何一つ変わっていません。もちろん素材がカーボンになり、バリエーションも増えていますが、まず性能ありきという姿勢は昔も今も一緒です。
例えば今回発表されたER-01はとてもリーズナブルなのに、塗装も手抜きが無く、しかも良く走るのでとても驚きました。他ブランドでここまでこだわったバイクは見ませんし、大規模ブランドではないカレラがここまでできたのは大きな意味があると思っています。このように、どのモデルに乗っても、私の時代から息づくカレラならではの情熱や個性を感じることはできるはずですよ。
豪華ゲストを招いて開催されたポディウム初のブランドキャンプ。今後は秋頃までにタイム、チネリ、オルベアという3ブランドを紹介する同様の企画を順次開催していく予定で、詳細は決まり次第告知されるという。各ブランドのファンであれば、毎年見逃せないイベントになりそうだ。
text&photo:So.Isobe
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