2015/05/19(火) - 09:07
アマチュアビルダーツヨシさんによるNAHBSレポートも今回が最終回。ブースに出展されていたユニークなバイクの中からとくにツヨシさんがピックアップした珠玉の作品たちを紹介していきます。
前回は新進気鋭のニュービルダーテーブルの出展を特集したが、今回は真打ちともいえるブース出展から、自分なりの基準で選んだ興味深かったバイクとビルダー達を紹介していこう。
RepeteのMikolas VoverkaとRobin Fiser
RepeteのMikolas VoverkaとRobin Fiserはチェコ、プラハの若者ビルダー二人組だ。かなりお金をかけたのだろうと想像に難くない高級感のあるブースに仕上がっていた。若さと高級感のチグハグな印象には多少違和感を感じたが、濃いグレーで統一されているブースの中にマットダークのバイクが展示されており、お洒落にまとまっていて好印象。
3つのシリーズがあり、それぞれ、ロードの“Reborn”、ピストの“Falcon”、CXの“Grizzly”となっていた。ロードの“Reborn”が“Best Road Bike”を受賞していたが、ビシッとした質感がある流石の出来だった。彼らによるとコロンバスのパイプを銀ロウで組み立てるとの事で、それを聞いた時はいったい幾らくらいなのだろう?と身構えた。ところがロードバイクは2000USDもしなかったし、チェコは物価が安いのかもしれない。CXの“Grizzly”は例のマットブラウンだった。
Groovy CycleworksのRody Walter
Groovy Cycleworksは、とにかくてんこ盛りという印象。アルミからチタンまで金属ならなら何でもやるし、どんなジャンルの自転車でも作ると言った貪欲さを感じた。色使いもカラフルで、地味から蛍光までが同居していて統一感が無い。それは人を楽しませようとするサービス精神の表れかと思った。とにかくカラッとして明るい雰囲気があるブランドだ。
それぞれのバイクを個別に見ると手数がかかっていて意外とイイモノ感があるし、工作も上手い。ただオシャレかと言うと好みの話になってしまうだろう。アメリカ人はこういうのが好きなのかも知れない。結構手広くビジネス展開しているようだ。どんな人が作っているのかと思ったら、Rody Walterも脱力系の人だった。話してみたら、まったく飾る所が無く長い付き合いの友達と話をしているようだった。
自身のバイクの話は少しもせずに、締め切りに追われて、20年やってきて始めて怪我をして縫ったんだよ、、と指の事ばかり言っていた。器用で、頭の回転は非常に早そうな人だと思えた。“Best in Show”を受賞したバイクは、後からジワジワ来る趣があるシティバイクだった。
Lundbeck CyclesのMax Lundbeck
“Best Artisan Bike”を受賞していたデンマークのコペンハーゲンのLundbeck CyclesのMax Lundbeck。過去に何度も出展していた経験のあるベテランビルダーだ。イメージカラーのブラックに身を包んだ変わった形のバイクで、ハンドルやブレーキといった部分まで自作というかなりの力作だった。
ブースも凝っていたし、真剣に接客応対をしていたMaxだが、どことなく神経質な印象を受けた。何度目かの正直と言う事で、今回のバイクにはことさらチカラが入っていたのかも知れない。よほど受賞が嬉しかったのだろう、パーティーではフラフラになるまで飲んではしゃいでいたのが印象的だった。
Dinucci CyclesのMark Dinucci
Dinucci CyclesのMark Dinucciは一言でいえば「面白いオジサン」だ。元々スペシャライズドでエンジニアを務めていた経歴を持つ有名人だとの事だったが、当の本人は非常にフランクで、肩の力が完全に抜けていてイイ感じの人だった。根っからの職人と言う風情でとにかく飾らない人だというのが強く印象に残っている。
ブースにはフレームだけを何本か無造作に並べていたのだが、接客応対なんてする気も無さげにその辺をウロウロしていた。でも、良く見るとフレームはオーソドックスなラグ方式のスチールフレームでビシッとイイ仕事がしてある。無塗装だったから、よほど自信があったのだろう、“Best Lugged Frame”を受賞していた。質問には懇切丁寧に答えてくれたし、誠実な人だと思ったが、話が終わると「昼飯食ってくる」と言い残し、ブースを無人にして去って行った。
Peacock GroovekのErik Noren
Peacock GroovekのErik Norenはサービス精神満点の人で、とにかく人を楽しませる。会場内で何度も出会ったが、必ず表情を作ってくれた。なかなかビジネスには熱心なようで、誰彼構わず頑張って説明をしていた姿をよく見かけた。Don Walkerとはすごく仲が良さそうで“NAHBS”の主役の風格があるが、もう賞には興味が無いように見えた。
この人も脱力系で、靴こそ履いているものの服装には無頓着なようす。自身のブランドのTシャツとジーパン姿なのだが、どちらもヨレヨレになっていた。とにかくアイデアを形にしないと気が済まない性質らしくジャンルにこだわらない印象だ。今年、彼のこだわっているバイクは金色の電動アシストバイクでモーターバイクの様なフロントサスペンションがついていた。
そして、タンクにあたる部分にバッテリーが収納されている。重そうだ。それでもクランクは付いていて、あくまでも“自転車”なのだそうだ。必死に製作の苦労話を説明してくれる。はたして自転車である必要はあるのかとも思ったが、大真面目に取り組んでいる辺りが、いかにもアメリカ人らしいと感じた。それだけ大雑把に見えても、どこかでしたたかな大人の計算をしているようにも見えた。
CHERUBIMの今野真一
日本では業界のカリスマとして随分と有名だし、アメリカでも同様なのがCHERUBIMの今野真一氏。でも、全然飾らないのは他の多くのビルダー達と同じで、アマチュアの言うたわ言を辛抱強く聞いてくれた。メイン会場、パーティといたる所で出会うのだが、その印象はいつも変わらない。“NAHBS”での受賞経験は何度もあり、今回の“NAHBS2015”では“Sticy Premium Edition”が“Campagnolo award”を受賞していた。
Della Santa CyclesのRoland Della Santa
一言でいえば大御所。70年代にはGreg LeMondらのフレームを作っていた事で有名なRoland Della Santa。彼がDustin Hoffmanが乗る自分の作ったフレームを見て、「それどうしたの?」と聞いたら、「Greg LeMondにもらった」と答えたと言う逸話がある。
“Theクロモリフレームmade in USA”と言った所か。彼も飾らない。一見するとただのオジサンだった(失礼)。チェーンステーに穴の沢山開いたフレームがあったので「剛性が高いんですか?」と聞いたら「試しにやってみたけど重くなるだけで性能には影響無かったから失敗だ」と言っていた。それをわざわざ展示するあたり余裕がある。
Bilenky Cycle WorksのStephen Bilenky
ヒゲのオジサン。左利き。カーハートのオーバーオールにNITTOのサイクルキャップが“NAHBS2015”でのトレードマークだった。スタッフのThomasも同じズボンをはいていたからイメージ戦略なのだろう。他にNITTOのTシャツを着ていることもあったから日本が好きなのかも知れない。
もうかれこれ40年以上自転車を作ってる大御所だ。Retrofitと言う技術を盛んにPRしていた。Retrofitは顧客のバイクを預かってカップラを追加してフレームを分解可能にすると言う技術を売り物にしている。もちろん新品も作るが、他のメーカーの自転車を持ち込んで改造をしてもらっても性能は10年を保障すると言っていた。Bilenky Cycleは“NAHBS”とは別に“Philadelphia Bike Expo”と言う自転車ショウをプロデュースしているからオマエも出展しないかと誘われた。2015年の会期は11月7日と8日との事だった。
“NAHBS 2015”を振り返って思う事は、ハンドメイドと言うからにはそれを作った人達が居る訳で、製作に携わった人の顔がストレートに見えて来る作品には強く惹かれたと言う事。オシャレ過ぎたりキレイ過ぎると、なんだか味気ない感じがしてしまって印象が薄くなってしまう(個人の感想です)。
垢抜けいなくても、アイツが作ったんだな、と思える濃い作品が良いなと感じた。これは自分が自転車を単なる機能一辺倒のスポーツ機材と思っていないからだろうか。そういえば私のバイクにダメ出しをする人には出会わなかったような気がする。Don Walkerを始めみんなプロ中のプロだと思うけど、いい所を探して寛容に褒めてくれた。もちろん、アマチュアに対するリップサービスだと思う。でも嫌悪や蔑みの表情は見なかった。それには感謝しているし、たとえ仕事でも「これでイイのだ」と言えるモノ作りが出来たら楽しいだろうなと思った。それにはアーチストとして認知されなくてはならないだろう。
前回は新進気鋭のニュービルダーテーブルの出展を特集したが、今回は真打ちともいえるブース出展から、自分なりの基準で選んだ興味深かったバイクとビルダー達を紹介していこう。
RepeteのMikolas VoverkaとRobin Fiser
RepeteのMikolas VoverkaとRobin Fiserはチェコ、プラハの若者ビルダー二人組だ。かなりお金をかけたのだろうと想像に難くない高級感のあるブースに仕上がっていた。若さと高級感のチグハグな印象には多少違和感を感じたが、濃いグレーで統一されているブースの中にマットダークのバイクが展示されており、お洒落にまとまっていて好印象。
3つのシリーズがあり、それぞれ、ロードの“Reborn”、ピストの“Falcon”、CXの“Grizzly”となっていた。ロードの“Reborn”が“Best Road Bike”を受賞していたが、ビシッとした質感がある流石の出来だった。彼らによるとコロンバスのパイプを銀ロウで組み立てるとの事で、それを聞いた時はいったい幾らくらいなのだろう?と身構えた。ところがロードバイクは2000USDもしなかったし、チェコは物価が安いのかもしれない。CXの“Grizzly”は例のマットブラウンだった。
Groovy CycleworksのRody Walter
Groovy Cycleworksは、とにかくてんこ盛りという印象。アルミからチタンまで金属ならなら何でもやるし、どんなジャンルの自転車でも作ると言った貪欲さを感じた。色使いもカラフルで、地味から蛍光までが同居していて統一感が無い。それは人を楽しませようとするサービス精神の表れかと思った。とにかくカラッとして明るい雰囲気があるブランドだ。
それぞれのバイクを個別に見ると手数がかかっていて意外とイイモノ感があるし、工作も上手い。ただオシャレかと言うと好みの話になってしまうだろう。アメリカ人はこういうのが好きなのかも知れない。結構手広くビジネス展開しているようだ。どんな人が作っているのかと思ったら、Rody Walterも脱力系の人だった。話してみたら、まったく飾る所が無く長い付き合いの友達と話をしているようだった。
自身のバイクの話は少しもせずに、締め切りに追われて、20年やってきて始めて怪我をして縫ったんだよ、、と指の事ばかり言っていた。器用で、頭の回転は非常に早そうな人だと思えた。“Best in Show”を受賞したバイクは、後からジワジワ来る趣があるシティバイクだった。
Lundbeck CyclesのMax Lundbeck
“Best Artisan Bike”を受賞していたデンマークのコペンハーゲンのLundbeck CyclesのMax Lundbeck。過去に何度も出展していた経験のあるベテランビルダーだ。イメージカラーのブラックに身を包んだ変わった形のバイクで、ハンドルやブレーキといった部分まで自作というかなりの力作だった。
ブースも凝っていたし、真剣に接客応対をしていたMaxだが、どことなく神経質な印象を受けた。何度目かの正直と言う事で、今回のバイクにはことさらチカラが入っていたのかも知れない。よほど受賞が嬉しかったのだろう、パーティーではフラフラになるまで飲んではしゃいでいたのが印象的だった。
Dinucci CyclesのMark Dinucci
Dinucci CyclesのMark Dinucciは一言でいえば「面白いオジサン」だ。元々スペシャライズドでエンジニアを務めていた経歴を持つ有名人だとの事だったが、当の本人は非常にフランクで、肩の力が完全に抜けていてイイ感じの人だった。根っからの職人と言う風情でとにかく飾らない人だというのが強く印象に残っている。
ブースにはフレームだけを何本か無造作に並べていたのだが、接客応対なんてする気も無さげにその辺をウロウロしていた。でも、良く見るとフレームはオーソドックスなラグ方式のスチールフレームでビシッとイイ仕事がしてある。無塗装だったから、よほど自信があったのだろう、“Best Lugged Frame”を受賞していた。質問には懇切丁寧に答えてくれたし、誠実な人だと思ったが、話が終わると「昼飯食ってくる」と言い残し、ブースを無人にして去って行った。
Peacock GroovekのErik Noren
Peacock GroovekのErik Norenはサービス精神満点の人で、とにかく人を楽しませる。会場内で何度も出会ったが、必ず表情を作ってくれた。なかなかビジネスには熱心なようで、誰彼構わず頑張って説明をしていた姿をよく見かけた。Don Walkerとはすごく仲が良さそうで“NAHBS”の主役の風格があるが、もう賞には興味が無いように見えた。
この人も脱力系で、靴こそ履いているものの服装には無頓着なようす。自身のブランドのTシャツとジーパン姿なのだが、どちらもヨレヨレになっていた。とにかくアイデアを形にしないと気が済まない性質らしくジャンルにこだわらない印象だ。今年、彼のこだわっているバイクは金色の電動アシストバイクでモーターバイクの様なフロントサスペンションがついていた。
そして、タンクにあたる部分にバッテリーが収納されている。重そうだ。それでもクランクは付いていて、あくまでも“自転車”なのだそうだ。必死に製作の苦労話を説明してくれる。はたして自転車である必要はあるのかとも思ったが、大真面目に取り組んでいる辺りが、いかにもアメリカ人らしいと感じた。それだけ大雑把に見えても、どこかでしたたかな大人の計算をしているようにも見えた。
CHERUBIMの今野真一
日本では業界のカリスマとして随分と有名だし、アメリカでも同様なのがCHERUBIMの今野真一氏。でも、全然飾らないのは他の多くのビルダー達と同じで、アマチュアの言うたわ言を辛抱強く聞いてくれた。メイン会場、パーティといたる所で出会うのだが、その印象はいつも変わらない。“NAHBS”での受賞経験は何度もあり、今回の“NAHBS2015”では“Sticy Premium Edition”が“Campagnolo award”を受賞していた。
Della Santa CyclesのRoland Della Santa
一言でいえば大御所。70年代にはGreg LeMondらのフレームを作っていた事で有名なRoland Della Santa。彼がDustin Hoffmanが乗る自分の作ったフレームを見て、「それどうしたの?」と聞いたら、「Greg LeMondにもらった」と答えたと言う逸話がある。
“Theクロモリフレームmade in USA”と言った所か。彼も飾らない。一見するとただのオジサンだった(失礼)。チェーンステーに穴の沢山開いたフレームがあったので「剛性が高いんですか?」と聞いたら「試しにやってみたけど重くなるだけで性能には影響無かったから失敗だ」と言っていた。それをわざわざ展示するあたり余裕がある。
Bilenky Cycle WorksのStephen Bilenky
ヒゲのオジサン。左利き。カーハートのオーバーオールにNITTOのサイクルキャップが“NAHBS2015”でのトレードマークだった。スタッフのThomasも同じズボンをはいていたからイメージ戦略なのだろう。他にNITTOのTシャツを着ていることもあったから日本が好きなのかも知れない。
もうかれこれ40年以上自転車を作ってる大御所だ。Retrofitと言う技術を盛んにPRしていた。Retrofitは顧客のバイクを預かってカップラを追加してフレームを分解可能にすると言う技術を売り物にしている。もちろん新品も作るが、他のメーカーの自転車を持ち込んで改造をしてもらっても性能は10年を保障すると言っていた。Bilenky Cycleは“NAHBS”とは別に“Philadelphia Bike Expo”と言う自転車ショウをプロデュースしているからオマエも出展しないかと誘われた。2015年の会期は11月7日と8日との事だった。
“NAHBS 2015”を振り返って思う事は、ハンドメイドと言うからにはそれを作った人達が居る訳で、製作に携わった人の顔がストレートに見えて来る作品には強く惹かれたと言う事。オシャレ過ぎたりキレイ過ぎると、なんだか味気ない感じがしてしまって印象が薄くなってしまう(個人の感想です)。
垢抜けいなくても、アイツが作ったんだな、と思える濃い作品が良いなと感じた。これは自分が自転車を単なる機能一辺倒のスポーツ機材と思っていないからだろうか。そういえば私のバイクにダメ出しをする人には出会わなかったような気がする。Don Walkerを始めみんなプロ中のプロだと思うけど、いい所を探して寛容に褒めてくれた。もちろん、アマチュアに対するリップサービスだと思う。でも嫌悪や蔑みの表情は見なかった。それには感謝しているし、たとえ仕事でも「これでイイのだ」と言えるモノ作りが出来たら楽しいだろうなと思った。それにはアーチストとして認知されなくてはならないだろう。
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