2015/04/18(土) - 09:27
2005年にテキサス州ヒューストンで開催されて以来、今では世界最大のハンドメイドバイクショーとして確固たる地位を得た、North American Handmade Bicycle Show(通称NAHBS)。モダンスチールバイクシーンを牽引するNAHBSの様子を、日本から参加したアマチュアフレームビルダーこと石津毅さんのレポートでお届けします。
今年はアメリカの中東部の東の外れ(中西部との境目くらい)ケンタッキー州、ルイビルの“ケンタッキーインターナショナルコンベンションセンター”で開催された“NAHBS 2015”。3月6日(金)から3月8日(日)の3日間開催された、ハンドメイドバイクの祭典にお邪魔してきた見聞録をお届けしようと思う。
お恥ずかしながら旅行の計画が立つまで、“NAHBS”の過去についての知識はほとんど無かった。今回の機会を受けて予習をしようとしたのだけれど、この歳になっての言葉の壁は高かった。結局、物見遊山なのだから楽しめば良い、突撃あるのみと腹を固めたのだった。だから今回のリポートはただのアメリカ旅行記だと思っていただけるとありがたい。事ここに至るまでの過程は自身のブログ“ツヨブログ( https://tsuyoblog.wordpress.com/1-2/ )”で延々と書き綴ってきているので、そちらを参照していただけると合点が行くだろうと思う。
ミシガン州から“NAHBS 2015”の開催地へ向かう
“NAHBS 2015”の開催地、ケンタッキー州、ルイビルへは、陸路で北から入った。ミシガン州を午前中に発ち、ハイウェイをおよそ600km走ってルイビルへと到着したのは20時頃。旅の道連れは、縁あって最近知り合ったティム(52)、レニー(68)とジャック(64)というアメリカ人のオジサン3人に自分を入れての4人。レニーとジャックは初対面だったけれど、600kmの道のりでよく知った友達のように仲良くなれた。
ホテルもスイートルームを4人でシェアするということで、部屋に入ると巨大なベッドが二つある。とはいえ人は4人いるのだ。さてどうしようと思う間もなく、レニーが、「オレはイビキをかくから独りで寝る」と言い、カウチでさっさと寝てしまった。ベッドの1つを年長者のジャックに譲り、ティムと寝た。男同士で一つのベッドで寝るのは、オトナになって初めての事だった。アメリカでは初めての事がよく起こるのだ。
その規模に圧倒された“NAHBS 2015” 1日目
ホテルのレストランで朝食をとりながら辺りを見回すと、Donを始めイベントの関係者らしき人が多い。彼らとは、昨晩とはうって変わって目配せで挨拶をする。ルイビルの朝はテンション控えめにスタートするのだった。部屋から会場へは直通の回廊を通って自転車を押して歩いて行く。ホテル内で自転車を押して歩く事も新鮮な体験だ。
会場入り口に着いて受付をすると、2日分のリストバンドをくれた。ちなみに2デイズパスは38ドル。入り口周辺では、自分の自転車に注目する視線をヒシヒシと感じたし、多くの人が写真に撮っていき、手ごたえを感じる瞬間だった。
声をかけられることも多く、大概のパターンは「Cool!!」「Thank you.」「Are you a builder?」「Yes」「Where?」「Japan」「Exhibitor?」「No」「Nice bike.」「Thank you」というもの。そして、自分で色まで塗ったと言えば、その賛辞は最高のものになる。それは相手がビルダーでも同じ。気を良くしてティムに会場への自転車持ち込みについて担当氏に問い合わせてもらったところ、観客は自転車の持ち込みについてはNGとのことだった....。
あわよくば自転車を会場内に持って入る計画だったのだが、その日は別室のBICYCLE PARKINGに預ける事に。自転車を預けた後、ティムとメディアセンターへ。ティムはメディアボランティアに登録をしていて入場料は免除されるというのだ。メディアボランティアになるには、“ブログなどを執筆している”…などの幾つかの実績要件を満たす必要があるそうなのだが、メディアディレクターのMattは、「日本でブログ書くだろう?」とか言って、記念にツヨシ用のメディアパスを作ってくれた。サンキューMatt。
さて、ついに“NAHBS 2015”イベント会場内に立った。感慨深い、思えば遠く来たもんだ……。会場はビッグサイトや幕張メッセのような屋内の見本市会場で、出展は150ブース以上あるだろうか。一つのブースの大きさの単位は基本が10×10フィートだから、およそ3m四方。さらに大きなブースは幅が倍、その次は、幅奥行き共に倍と、倍々で大きくなっていく。
また、小規模のビルダー向けにニューフレームビルダーテーブルというエリアがある。テーブル上にバイクを置く展示方式で、ブースに比べてお値段はお手軽となっている。ただし、バイク1台につき400ドルなので3台以上置くならブースを借りた方が安い。
出展ブースの値段の方は、現在のレートだと日本円にして12万円から40万円といったところ。日本国内での開催であれば「10万程なら何とか」とも思うだろうが、アメリカとなると付帯経費を入れると小さな自動車が買える金額になるだろう。個人商店的なビルダーが費用対効果を考えたらちょっと手が出ないかもしれない。
賞でも取れば注目度は別だろうが、果たして出展するだけでいったいどれほどの経済効果があるものなのか分からない。明確なビジョンがないと、出展は徒労に終わると言う事だろう。実際に空いているスペースもあり、全体の印象として出展者、観客共に日本で想像してきたよりも少ないと感じた。
もちろん開催地によってもイベントの盛り上がりは相当違う事が予想される。他の大都市ではもっと賑わうものなのかもしれないし、出展に際しての競争などもあるのかもしれない。だから、なおさらこの都市での出展についての収支は興味深く、出展者に後日の結果を聞いてみたくなった。
各ブースの売り込みのスタイルは様々で、中にはビール瓶片手に接客している人も。かといって、良く言われる“アメリカ人は不真面目で不器用”などとステレオタイプなイメージも違うと思う。ビルダー達は誠実で物静かな印象が強かったし、展示されているバイクを見ても、器用・不器用ということではなく、気にするかしないかという要求レベルの違いがあると理解した。細かい仕上げよりも全体のコンセプトなのであって、装飾よりも機能が優先するのがアメリカ式のモノ作りなのだろうと感じたのだった。
実際、初日のことは興奮していたのか、あまりよく覚えていない。とにかく全てのブースを何度か回っているうちに一日が終わってしまった。途中何度かDonに出会ったのだが、その度に私の名前を呼んで自分のブースに招くと、「これをM嬢に」と言いながら彼のノベルティグッズを持たせてくれた。よほどM嬢の“フレーム製作記録アルバム”の事が気に入ったようだ。だが、結局最後まで私には何もくれる事はなかった。
さて、怒涛の一日目を過ごしたツヨシさん。しかし、実はある大きな目的をもって、このNAHBSに渡ったという。次回はその目的を実現すべく奮闘した2日目のレポートをお届けする予定です。お楽しみに。
石津毅さんプロフィール
1967年滋賀県大津市出身。ものづくりの会社に務める傍ら、地元琵琶湖を盛り上げるべくオリジナルのゆるキャラ「びわこぐま」を制作し、ホームページやFacebookページを立ち上げてじわじわと人気上昇中。勢い余って自転車クラブ「チームびわこぐま」も立ち上げ、仲間どうしで自転車制作にも乗り出す。記事中に登場する「M嬢」もそのメンバーの一人で、自作フレームを駆り昨年のRapha Prestageに出場、完走した。
びわこぐま公式サイト: http://www.biwakoguma.com/
今年はアメリカの中東部の東の外れ(中西部との境目くらい)ケンタッキー州、ルイビルの“ケンタッキーインターナショナルコンベンションセンター”で開催された“NAHBS 2015”。3月6日(金)から3月8日(日)の3日間開催された、ハンドメイドバイクの祭典にお邪魔してきた見聞録をお届けしようと思う。
お恥ずかしながら旅行の計画が立つまで、“NAHBS”の過去についての知識はほとんど無かった。今回の機会を受けて予習をしようとしたのだけれど、この歳になっての言葉の壁は高かった。結局、物見遊山なのだから楽しめば良い、突撃あるのみと腹を固めたのだった。だから今回のリポートはただのアメリカ旅行記だと思っていただけるとありがたい。事ここに至るまでの過程は自身のブログ“ツヨブログ( https://tsuyoblog.wordpress.com/1-2/ )”で延々と書き綴ってきているので、そちらを参照していただけると合点が行くだろうと思う。
ミシガン州から“NAHBS 2015”の開催地へ向かう
“NAHBS 2015”の開催地、ケンタッキー州、ルイビルへは、陸路で北から入った。ミシガン州を午前中に発ち、ハイウェイをおよそ600km走ってルイビルへと到着したのは20時頃。旅の道連れは、縁あって最近知り合ったティム(52)、レニー(68)とジャック(64)というアメリカ人のオジサン3人に自分を入れての4人。レニーとジャックは初対面だったけれど、600kmの道のりでよく知った友達のように仲良くなれた。
ホテルもスイートルームを4人でシェアするということで、部屋に入ると巨大なベッドが二つある。とはいえ人は4人いるのだ。さてどうしようと思う間もなく、レニーが、「オレはイビキをかくから独りで寝る」と言い、カウチでさっさと寝てしまった。ベッドの1つを年長者のジャックに譲り、ティムと寝た。男同士で一つのベッドで寝るのは、オトナになって初めての事だった。アメリカでは初めての事がよく起こるのだ。
その規模に圧倒された“NAHBS 2015” 1日目
ホテルのレストランで朝食をとりながら辺りを見回すと、Donを始めイベントの関係者らしき人が多い。彼らとは、昨晩とはうって変わって目配せで挨拶をする。ルイビルの朝はテンション控えめにスタートするのだった。部屋から会場へは直通の回廊を通って自転車を押して歩いて行く。ホテル内で自転車を押して歩く事も新鮮な体験だ。
会場入り口に着いて受付をすると、2日分のリストバンドをくれた。ちなみに2デイズパスは38ドル。入り口周辺では、自分の自転車に注目する視線をヒシヒシと感じたし、多くの人が写真に撮っていき、手ごたえを感じる瞬間だった。
声をかけられることも多く、大概のパターンは「Cool!!」「Thank you.」「Are you a builder?」「Yes」「Where?」「Japan」「Exhibitor?」「No」「Nice bike.」「Thank you」というもの。そして、自分で色まで塗ったと言えば、その賛辞は最高のものになる。それは相手がビルダーでも同じ。気を良くしてティムに会場への自転車持ち込みについて担当氏に問い合わせてもらったところ、観客は自転車の持ち込みについてはNGとのことだった....。
あわよくば自転車を会場内に持って入る計画だったのだが、その日は別室のBICYCLE PARKINGに預ける事に。自転車を預けた後、ティムとメディアセンターへ。ティムはメディアボランティアに登録をしていて入場料は免除されるというのだ。メディアボランティアになるには、“ブログなどを執筆している”…などの幾つかの実績要件を満たす必要があるそうなのだが、メディアディレクターのMattは、「日本でブログ書くだろう?」とか言って、記念にツヨシ用のメディアパスを作ってくれた。サンキューMatt。
さて、ついに“NAHBS 2015”イベント会場内に立った。感慨深い、思えば遠く来たもんだ……。会場はビッグサイトや幕張メッセのような屋内の見本市会場で、出展は150ブース以上あるだろうか。一つのブースの大きさの単位は基本が10×10フィートだから、およそ3m四方。さらに大きなブースは幅が倍、その次は、幅奥行き共に倍と、倍々で大きくなっていく。
また、小規模のビルダー向けにニューフレームビルダーテーブルというエリアがある。テーブル上にバイクを置く展示方式で、ブースに比べてお値段はお手軽となっている。ただし、バイク1台につき400ドルなので3台以上置くならブースを借りた方が安い。
出展ブースの値段の方は、現在のレートだと日本円にして12万円から40万円といったところ。日本国内での開催であれば「10万程なら何とか」とも思うだろうが、アメリカとなると付帯経費を入れると小さな自動車が買える金額になるだろう。個人商店的なビルダーが費用対効果を考えたらちょっと手が出ないかもしれない。
賞でも取れば注目度は別だろうが、果たして出展するだけでいったいどれほどの経済効果があるものなのか分からない。明確なビジョンがないと、出展は徒労に終わると言う事だろう。実際に空いているスペースもあり、全体の印象として出展者、観客共に日本で想像してきたよりも少ないと感じた。
もちろん開催地によってもイベントの盛り上がりは相当違う事が予想される。他の大都市ではもっと賑わうものなのかもしれないし、出展に際しての競争などもあるのかもしれない。だから、なおさらこの都市での出展についての収支は興味深く、出展者に後日の結果を聞いてみたくなった。
各ブースの売り込みのスタイルは様々で、中にはビール瓶片手に接客している人も。かといって、良く言われる“アメリカ人は不真面目で不器用”などとステレオタイプなイメージも違うと思う。ビルダー達は誠実で物静かな印象が強かったし、展示されているバイクを見ても、器用・不器用ということではなく、気にするかしないかという要求レベルの違いがあると理解した。細かい仕上げよりも全体のコンセプトなのであって、装飾よりも機能が優先するのがアメリカ式のモノ作りなのだろうと感じたのだった。
実際、初日のことは興奮していたのか、あまりよく覚えていない。とにかく全てのブースを何度か回っているうちに一日が終わってしまった。途中何度かDonに出会ったのだが、その度に私の名前を呼んで自分のブースに招くと、「これをM嬢に」と言いながら彼のノベルティグッズを持たせてくれた。よほどM嬢の“フレーム製作記録アルバム”の事が気に入ったようだ。だが、結局最後まで私には何もくれる事はなかった。
さて、怒涛の一日目を過ごしたツヨシさん。しかし、実はある大きな目的をもって、このNAHBSに渡ったという。次回はその目的を実現すべく奮闘した2日目のレポートをお届けする予定です。お楽しみに。
石津毅さんプロフィール
1967年滋賀県大津市出身。ものづくりの会社に務める傍ら、地元琵琶湖を盛り上げるべくオリジナルのゆるキャラ「びわこぐま」を制作し、ホームページやFacebookページを立ち上げてじわじわと人気上昇中。勢い余って自転車クラブ「チームびわこぐま」も立ち上げ、仲間どうしで自転車制作にも乗り出す。記事中に登場する「M嬢」もそのメンバーの一人で、自作フレームを駆り昨年のRapha Prestageに出場、完走した。
びわこぐま公式サイト: http://www.biwakoguma.com/