シクロクロスイベントにずっと参加している藤原だが、一向に速くなる様子がない。テクニックは少しづつ向上しているはずなのだが、どうにも後半でバテてしまう。せめてリザルトの真ん中より上を、というのはフジワラ、そして編集部皆の総意だ。そのために、フジワラの体力レベルの把握もかねて、編集部皆でトレーニングレースとして人気の大磯クリテにお邪魔しました。



冬場のトレーニングレースとして、関東圏のホビーレーサーにすっかり根付いた大磯クリテリウム。第3戦のレポートを以前お届けしたが、実は編集部員の一人であるヤマモトはその時参戦していた。以来ことあるごとに「いやあ、大磯クリテホント楽しいですよ、最高ですよ!」と、やたらと大磯クリテの良さを力説してくる。

数々の熱いバトルが繰り広げられた大磯クリテリウム第4戦数々の熱いバトルが繰り広げられた大磯クリテリウム第4戦
そこまで言うのだったらよっぽど良い結果を残せたのだろうと思い、第3戦のビデオを観てみた編集部の皆。「「「ヤマモトいなくね?」」」第3戦のスポーツクラスに参加したというヤマモトだが、ゴールシーンを再生してもいつまでたっても画面に登場しない。つまりは途中で千切れてしまっていたのだ。

「い、いや。自分の結果とレースの素晴らしさは必ずしも関係しないというか、なんというか。」と定まらない目線で答えるヤマモト。確かに一理あるし、客観的な視点を持つことも大切だ。しかし、そこはやはり勝負に絡めてこそ見えてくる面白さもあるのではなかろうか。そもそも編集部ジャージを着て走るんだから、もう少しパリッとした走りを見せてほしいものである。

「いや、さすがに『ヤマモト先輩だってヘタレじゃないですか!!』」少し小言を言おうと口を開いたその時、意外な人物、フジワラが割り込んでくる。「散々人のことをヘタレだモヤシだって馬鹿にしていて、こんな走りでいいと思っているんですか!」うむ。言いたいことはよく分かるぞ。しかし、どれだけストレスをため込んでいたんだろう。普段おとなしい人こそ怒らせると怖いというのはどうやら本当らしい。

鼻息の荒いフジワラをなだめすかして語りかけるイソベ。「確かに不甲斐ない走りだけど、そういう君はもっと走れるわけ?」と言われるや急に勢いをなくすフジワラ。「だいたい、シクロクロスでもいっつも後ろから数えたほうが早いわけだけど、基礎的な体力が無いんでしょ?ここは同じようなインターバルのかかるクリテにみんなで出てみよっか。」ということで、急きょ大磯クリテ第4戦への出場が決まったわけである。

さて、当初はイソベ、フジワラ、ヤスオカ、ヤマモトの4人全員がスポーツクラスに出場する予定だったのだが、ヤマモトがまさかのボタン押し間違えでビギナークラスへ、フジワラが入金忘れ&定員満杯からのクラス変更しピュアビギナーでの出場となったというひどい事実をここに晒しておこう。



ローリングスタートから集団に埋もれるフジワラローリングスタートから集団に埋もれるフジワラ そんなこんなで、大磯クリテリウム第4戦へとやってきた編集部の4人。先陣を切ったのは、ピュアビギナークラスのフジワラだ。ピュアビギナーとは読んで字の通り、レースや集団走行の経験がほとんどない人へ向けたもので、レース走行へと習熟するために10周中5周がニュートラル周回とされるという初心者向けのクラスだ。

とはいえ、この冬シクロクロスにコンスタントに出場しているフジワラである。集団走行のレース出場経験はほぼないとはいえ、体力的には上位に入ってもおかしくないんじゃないか?という編集部員の見立ては、一言で言うと甘かった。ニュートラルが終わって、レースが始まるとコーナーの度に遅れてしまい、最後にはあっさりと千切れてしまったのである。

あまりにも酷過ぎる結果に、茫然とする編集部員たち。「え、ヘタレキャラの一環なんだよね?」「いや、限界に見えましたけど、あれが演技なら編集部員よりも俳優のほうが向いてるんじゃ。」ざわつく仲間のもとへ息を切らせながら帰ってきたフジワラが「いや、マジみんな速過ぎっすよ!」と言い訳している。ヤマモトに対して怒りを爆発させていた男は何処にいってしまったのだろうか。

アップするヤマモト その手はなに?アップするヤマモト その手はなに? スタート前には余裕を見せるヤマモトスタート前には余裕を見せるヤマモト

逃げている(と思っている)ヤマモト逃げている(と思っている)ヤマモト
どうでしたか!俺の熱い走りは!!どうでしたか!俺の熱い走りは!! えー、逃げてると思ってたわー、ないわーえー、逃げてると思ってたわー、ないわー 「ピュアビギナークラスは、完成車で35万円以下のバイクでしか出れないようにした方が良いですよ!」などと、あろうことか機材のせいにしようとするフジワラ。しかし、それはミドルグレードのバイクにインプレッション記事で、ハイエンドバイクに肉薄する性能だとか、レースでも不満がない性能だとか書いているお前が一番言ってはいけないセリフである。そんなこと言ってると席が無くなるよ?

「ジブンガヘタレナノデチギレマシタ。タイヘンモウシワケゴザイマセン。」フジワラの目から光が無くなっているが、それでいいのだ。そもそも覇気が無いから前に上がろうとせず、気づけば集団の最後尾に。その上コーナリングが下手すぎるからどんどん遅れる。もはや何なのか。自転車乗りとしてやり直した方が良いぞ。

そんなことをしていると、ビギナークラスのヤマモトの出走が迫ってくる。「これで情けない走りしたら、へタレ2号決定な。」という先輩方の暖かい声援を受けてヤマモトが走りだす。

クラスを一つ下げたこともあってか、表彰台にこそ乗らなかったものの、途中で集団を牽引し最後まで集団に食らいついた走りは先輩たちを満足させたようだ。「途中逃げてみたんですけど吸収されちゃいましたよー。」と嬉しげに語るヤマモトだが、観戦している側としては、前を牽いていたようにしか見えなかったことは黙っておいてあげることにした。知らない方が幸せなことも世の中にはある。

さて、お昼休憩を挟んだらイソベとヤスオカがスポーツクラスへと出走する。エントリーしてからは、何やら昼に抜け出してはコソ練をしていたらしい二人。出走前も余裕そうな表情をしている。「スポーツ1組の様子を見てたら結構いけそうな気がしてきた。狙っちゃう?」「いっちゃいますか?」なんて会話を繰り広げる二人をフジワラが(千切れろー千切れろー)という目線で眺めている。

黙々とアップするイソベ 実はローラーに乗っているのはかなりレア黙々とアップするイソベ 実はローラーに乗っているのはかなりレア 自称ヒルクライマーだったとは思えない肩のヤスオカとクライマーっぽい体型のイソベ自称ヒルクライマーだったとは思えない肩のヤスオカとクライマーっぽい体型のイソベ

いきなり大逃げが決まってしまったいきなり大逃げが決まってしまった クロッサーだけあってコーナーはお手の物のイソベクロッサーだけあってコーナーはお手の物のイソベ


積極的に前を牽く編集部チーム積極的に前を牽く編集部チーム 「つらすぎでしょ、この組」「1組とゴールタイム30秒違うんですけど」「つらすぎでしょ、この組」「1組とゴールタイム30秒違うんですけど」 ファーストラップから強力な逃げが決まったスポーツ2組。なかなか先頭に立って追う選手が現れない中、ヤスオカがバックストレートでペースを上げ始め、イソベと協力しながら追走体制を組み上げ、じりじりと差を詰めることでなんとか吸収。スプリントには加われなかったものの先頭集団でゴールし、ヤスオカが6位、イソベが9位という結果を残した。

「くっそー!あんな展開なら逃げたかった!っていうか、前でスタートすればよかったー!」と騒ぐヤスオカ。もともと自称ヒルクライマーだったが、ここ最近はとんと山に登っておらず通勤でしか乗っていないというが、毎朝汗まみれで出社してくるところを見ると強度はそれなりに確保していたのだろう。

「やっぱり、ロードレースも楽しいよねー。」と久しぶりのロードレースでその楽しさを再認識したイソベ。「シクロクロスのインターバルにも近いし。」最近C2に昇格したイソベはシクロクロスでもC1を狙うだけの脚を持っているし、この二人については順当な結果だと言えるだろう。

「フジワラ帰ったら特訓な!」「フジワラ帰ったら特訓な!」 こうなってくると立つ瀬がないのがフジワラである。あわよくばピュアビギナーで表彰台に登り、上位クラスに挑んだ先輩たちの無様な走りっぷりを笑ってやろうと画策していたのだろうが、その計画は見事水泡に帰した、というより完全にブーメランとなって自分に帰ってきたわけである。

「しかし、ピュアビギナーで千切れるのは論外だよね。帰ったら特訓な。」そう話す先輩たちの影で、これから訪れるであろう地獄を思い、ガクガクト震えるフジワラガクト(フルネーム)。しかし、元はと言えば全て自分で蒔いた種。責任を持って刈り取ることもまた、強くなるための一歩なのだ。そうして翌日のランチから、フジワラを強化する地獄特訓が始まったのである。

頑張れフジワラ負けるなフジワラ。いつか先輩を見返すその日が来るまで(来ない気がする)。

text:Kenji.Degawa


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