2015/02/01(日) - 09:00
1月24日・25日に東京・科学技術館にて開催されたハンドメイドバイシクル展。その名の通り、日本中からハンドメイドビルダーが集まった、ちょっぴりコアな展示会の様子を紹介しよう。
東京の中心にありながらも、静寂を保つ皇居近辺。そんな北の丸公園の中にある科学技術館で、今年も開催されたハンドメイドバイシクル展。日本各地から個性的なフレームビルダーが集結し、ハンドメイドバイクの魅力とその深遠な世界を紹介してくれる貴重な展示会だ。
はじまりは1988年に遡るこの展示会。競輪へと供給するビルダーが中心となって始まったが、今年は過去最多となる43ブースが出展し、オリジナリティあふれるフレームやパーツを展示していた。昨今のスチールバイクブームの影響か来場者も増加し、2日間にわたって約2400名が訪れた。
各ブースによって、展示している自転車はさまざまなジャンルに及ぶ。現代的なメガチューブを使用したピュアレーサーから、伝統的な様式美に身を包んだランドナー、見ているだけで普段の生活を1歩高いクオリティへと押し上げてくれそうなシティバイクに、果ては競技用車いすなど出展者それぞれの個性がにじみ出る展示会となっていた。
さて、科学技術館に到着してまず気付いたのは、会場が昨年の2フロアから増床し3フロアとなっていたこと。出展者数自体も昨年の27ブースから43ブースへと大幅に増えていたこともあり、非常に高い盛り上がりを見せていた。
出展者の大幅な増加は若いビルダー達の進出によるもの。今年が初出展となるのが、なんと14ブース。CORNER BIKESやSchmittといった多くの気鋭のブランドが、それぞれのスタイルを表現したバイクを出展し、新たな世界観を提案していた。
そういった若手のビルダーの代表者であり、ブームの火付け役となったのは、Sunrise cyclesの高井さん。複雑に切りだされたステンレス板を組み合わせて作られたディテールが圧倒的な存在感を醸し出すDixieを持って、NAHBSに出展し注目を集めたビルダーだ。同時に、各種の治具や溶接機材などが揃えられ、誰でもバイクビルディングが可能なレンタルスペース「BYOB Factory」の中心的人物でもある。
日本のフレームビルディング界に新たな風を吹き込んだ高井さんは語る。「これまでの日本のハンドメイド業界にあった、『フレームを作ることができるのは、特別な技術をもった限られた人』という思い込みを払しょくしたかったんですよ。僕自身、どこかの工房で修業したわけではなく、自宅のベランダで治具を作って初めてのバイクを完成させました。そういうフレームビルディングの始め方があってもいいんだよ、ということを伝えたいんです。
僕自身、自転車の作り方が分からなかったので最初は試行錯誤で進めていました。その経験をもとに立ち上げたのがBYOB Factryなんです。最初の1歩を踏み出すために、安心して踏み出せる場所としてBYOBを作ったら、たくさんの人が集まってきました。溶接機材といったハード面もそうなのですが、BYOBの強みはビルディングに対しての知識が蓄積されていくということ。誰かが作ったフレームが、どうすればうまくいったとか、こういう方法はうまくいかないとか。
多くの新しいビルダーが日本に生まれてきているのは、フレーム製作に対してより自由な発想がNHABSを中心とした北米から、日本に届いてきた結果だと思います。2年前に比べても出展者も来場者も右肩上がりで、若い人も増えています。かといって、トラディショナルなビルダーさんへのリスペクトは絶対なくなりません。むしろ、歴史に裏打ちされた知識を惜しみなく教えてくださったりして、本当に勉強になるんです。」
こうした活動を中心として、既存の枠にとらわれない自由な発想を持ったフレームビルダーが日本にも多く増えてきていることが、ひしひしと感じられる一方、老舗ブランドも負けてはいない。たとえば、今回の展示ブースの中でも、最もトラディショナルバイクの極北ともいえるTOEI。奇をてらわず、オーソドックスな分割式ランドナーを展示していたが、そこには多くのこだわりが詰め込まれていた。
全てのパーツがあるべき位置に、あるべき角度で美しく収まるための最後のパーツ。それがTOEIの考えるフレームの役割だ。部品点数が少ないロードレーサーとは異なり、フェンダーやキャリアといったパーツが装着されるツーリング車を美しくまとめ上げるために必要なのは、余計な線を増やさないこと。
タイヤとフェンダーの描く孤、ダウンチューブとフロントキャリアステー、ヘッドチューブとブレーキワイヤーとフロントキャリアのバッグ止め、シートステーとブレーキワイヤー。それらすべてが平行に揃えられ、余計な線が散らからないように整えられた1台は、どの角度から見ても破綻のない端正な佇まいで見ている人の胸に訴えかける美しさを秘めている。
新進ブランドと老舗ブランド。アプローチは異なるものの、造られた自転車はそれぞれの美学が込められているのが、見ているだけでも伝わってきた。この会場に並べられていたフレーム1本1本に込められた思いの濃さを感じたのは、きっと私だけではないはずだ。
text:Naoki.YASUOKA
photo:So.Isobe
東京の中心にありながらも、静寂を保つ皇居近辺。そんな北の丸公園の中にある科学技術館で、今年も開催されたハンドメイドバイシクル展。日本各地から個性的なフレームビルダーが集結し、ハンドメイドバイクの魅力とその深遠な世界を紹介してくれる貴重な展示会だ。
はじまりは1988年に遡るこの展示会。競輪へと供給するビルダーが中心となって始まったが、今年は過去最多となる43ブースが出展し、オリジナリティあふれるフレームやパーツを展示していた。昨今のスチールバイクブームの影響か来場者も増加し、2日間にわたって約2400名が訪れた。
各ブースによって、展示している自転車はさまざまなジャンルに及ぶ。現代的なメガチューブを使用したピュアレーサーから、伝統的な様式美に身を包んだランドナー、見ているだけで普段の生活を1歩高いクオリティへと押し上げてくれそうなシティバイクに、果ては競技用車いすなど出展者それぞれの個性がにじみ出る展示会となっていた。
さて、科学技術館に到着してまず気付いたのは、会場が昨年の2フロアから増床し3フロアとなっていたこと。出展者数自体も昨年の27ブースから43ブースへと大幅に増えていたこともあり、非常に高い盛り上がりを見せていた。
出展者の大幅な増加は若いビルダー達の進出によるもの。今年が初出展となるのが、なんと14ブース。CORNER BIKESやSchmittといった多くの気鋭のブランドが、それぞれのスタイルを表現したバイクを出展し、新たな世界観を提案していた。
そういった若手のビルダーの代表者であり、ブームの火付け役となったのは、Sunrise cyclesの高井さん。複雑に切りだされたステンレス板を組み合わせて作られたディテールが圧倒的な存在感を醸し出すDixieを持って、NAHBSに出展し注目を集めたビルダーだ。同時に、各種の治具や溶接機材などが揃えられ、誰でもバイクビルディングが可能なレンタルスペース「BYOB Factory」の中心的人物でもある。
日本のフレームビルディング界に新たな風を吹き込んだ高井さんは語る。「これまでの日本のハンドメイド業界にあった、『フレームを作ることができるのは、特別な技術をもった限られた人』という思い込みを払しょくしたかったんですよ。僕自身、どこかの工房で修業したわけではなく、自宅のベランダで治具を作って初めてのバイクを完成させました。そういうフレームビルディングの始め方があってもいいんだよ、ということを伝えたいんです。
僕自身、自転車の作り方が分からなかったので最初は試行錯誤で進めていました。その経験をもとに立ち上げたのがBYOB Factryなんです。最初の1歩を踏み出すために、安心して踏み出せる場所としてBYOBを作ったら、たくさんの人が集まってきました。溶接機材といったハード面もそうなのですが、BYOBの強みはビルディングに対しての知識が蓄積されていくということ。誰かが作ったフレームが、どうすればうまくいったとか、こういう方法はうまくいかないとか。
多くの新しいビルダーが日本に生まれてきているのは、フレーム製作に対してより自由な発想がNHABSを中心とした北米から、日本に届いてきた結果だと思います。2年前に比べても出展者も来場者も右肩上がりで、若い人も増えています。かといって、トラディショナルなビルダーさんへのリスペクトは絶対なくなりません。むしろ、歴史に裏打ちされた知識を惜しみなく教えてくださったりして、本当に勉強になるんです。」
こうした活動を中心として、既存の枠にとらわれない自由な発想を持ったフレームビルダーが日本にも多く増えてきていることが、ひしひしと感じられる一方、老舗ブランドも負けてはいない。たとえば、今回の展示ブースの中でも、最もトラディショナルバイクの極北ともいえるTOEI。奇をてらわず、オーソドックスな分割式ランドナーを展示していたが、そこには多くのこだわりが詰め込まれていた。
全てのパーツがあるべき位置に、あるべき角度で美しく収まるための最後のパーツ。それがTOEIの考えるフレームの役割だ。部品点数が少ないロードレーサーとは異なり、フェンダーやキャリアといったパーツが装着されるツーリング車を美しくまとめ上げるために必要なのは、余計な線を増やさないこと。
タイヤとフェンダーの描く孤、ダウンチューブとフロントキャリアステー、ヘッドチューブとブレーキワイヤーとフロントキャリアのバッグ止め、シートステーとブレーキワイヤー。それらすべてが平行に揃えられ、余計な線が散らからないように整えられた1台は、どの角度から見ても破綻のない端正な佇まいで見ている人の胸に訴えかける美しさを秘めている。
新進ブランドと老舗ブランド。アプローチは異なるものの、造られた自転車はそれぞれの美学が込められているのが、見ているだけでも伝わってきた。この会場に並べられていたフレーム1本1本に込められた思いの濃さを感じたのは、きっと私だけではないはずだ。
text:Naoki.YASUOKA
photo:So.Isobe
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