昨シーズンに初開催ながら多くの参加者を集め、関東における冬季の定番トレーニングレースとして定着した「大磯クリテリウム」。2シーズン目を迎えた今季はより安全でより楽しめるイベントを目指してブラッシュアップが図られている。今回は1月18日に行われた第3戦の模様をお伝えしよう。



今シーズンも好評開催中の大磯クリテリウム今シーズンも好評開催中の大磯クリテリウム
バックストレートは小田原の山々を背後に走るバックストレートは小田原の山々を背後に走る 会場を提供している大磯プリンスホテルと、真っ白に雪化粧した富士山会場を提供している大磯プリンスホテルと、真っ白に雪化粧した富士山


昨年に引き続き大磯クリテリウムの会場となっているのは大磯プリンスホテルの敷地内、大磯ロングビーチの駐車場。大磯から小田原を結ぶ西湘バイパスを挟んだ隣には太平洋を臨み、太陽が燦々と降り注ぐリゾートらしいロケーションで、都心よりも気温は高め。日差しさえあれば分厚い冬用ジャケットを着こまずとも薄着で走ることができ、「これが大磯クリテの魅力の1つ」と言う参加者も多い。

コースは1周約900mで、西側のヘアピンと東側の2回の直角コーナーを2つのストレートで結ぶというシンプルなもの。安全性を第一に、集団走行のスキル向上や、純粋な脚力で競うセーフティなレースの進め方の習得・意識付けを狙ったレイアウトだ。なお、昨シーズンは東側が大きなRの高速コーナーであったが、安全性向上のために変更が加えられている。

毎回多くのキッズレーサーが参戦する地元チームの湘南ベルマーレ毎回多くのキッズレーサーが参戦する地元チームの湘南ベルマーレ 大きな声援が選手の力になる大きな声援が選手の力になる

安全上の観点から東側レイアウトは2連続の直角コーナーに変更された安全上の観点から東側レイアウトは2連続の直角コーナーに変更された スポーツクラスまではトップカテゴリーのライダー(写真左)が指導役として伴走スポーツクラスまではトップカテゴリーのライダー(写真左)が指導役として伴走


加えて、安全性向上の試みはレース以外でも行われている。先ず、脚力差を最小限にするためにカテゴリーを更に増加。レース前にはブリーフィングや簡易的なバイクチェックを実施。初~中級者クラスのレース中にはモトに加え、国内最高峰カテゴリーを走る現役ライダーによるレースコントロールが行われる様になった。

他にも、事前のコース清掃や、レース初参加のビギナーを対象にした集団走行スクールの開催、救護スタッフの常駐など、他のどのレース・イベントよりも安全対策に注意が払われている。そして、毎回審判を行っているのはJBCF等でもレース運営を行っているスタッフの皆さん。実際に参加してみれば、多くの方に「安心」を感じてもらうことができるだろう。実際に今回取材した第3戦では大怪我を負う様な大落車は発生しなかった。

プロレースの様にスタート前にはサインを行うプロレースの様にスタート前にはサインを行う 簡易的な車検も導入された簡易的な車検も導入された

トレーニングレースながら計測体制もしっかりとしているトレーニングレースながら計測体制もしっかりとしている レース前のブリーフィングの様子レース前のブリーフィングの様子

各レースの様子を抑えたムービーはYouTube上で公開され、毎回参加者から好評を博している各レースの様子を抑えたムービーはYouTube上で公開され、毎回参加者から好評を博している フランスのレース文化に倣い、ゼッケンを回収。少しでも参加費を抑えるための工夫だフランスのレース文化に倣い、ゼッケンを回収。少しでも参加費を抑えるための工夫だ


さて、大磯クリテリウムを主催するのは株式会社Walk Ride(ウォークライド)で、その中心人物が湘南ベルマーレなどで選手として活躍した山根理史さんである。国内はもとよりフランスでも競技活動を行っていたという山根さんの経験は各所に活かされており、出走サインやゼッケンの回収など、本場のレース運営が取入れられている辺りはユニークで、とても心憎い演出だ。実際に筆者もレースに参加したが、レース前の出走サインは「プロのレースでよく見るやつだ!」とついつい気分が高まってしまった(レースの結果は散々だったが…)。

そして、大磯クリテがユニークな点は他にもある。その1つが全てのカテゴリーをムービーで撮影し、レースの模様は後日YouTubeにアップするというサービス。これは参加者からの声に応えたもので「好評を頂いています!」とはWalk Rideの須田晋太郎さんの談。集団内での位置取りなどが復習でき、レーススキルの向上にもつながるはずだ。

手作りのサイクルキャップを販売するChunadon Cycle Chapsなどユニークな出展も手作りのサイクルキャップを販売するChunadon Cycle Chapsなどユニークな出展も 各サイクルイベントで盛況のワコーズブース各サイクルイベントで盛況のワコーズブース

JR大磯駅前のベーカリー、パンの蔵は毎回大好評だJR大磯駅前のベーカリー、パンの蔵は毎回大好評だ パイオニアのペダリングモニターに試乗することもできたパイオニアのペダリングモニターに試乗することもできた


また、ローカルレースながら出展ブースが充実しているのも大磯クリテのユニークな点の1つ。お隣の小田原市を本拠地とするケミカルブランドのワコーズや、Walk Rideとタッグを組みペダリングセミナー等を開催しているパイオニアなど自転車乗りにはお馴染みの企業がブースを出展し、多くの来場者で賑わった。

一方で、JR大磯駅前にある人気ベーカリー「パンの蔵」や、手作りのサイクルキャップが一部のコアなサイクリストに評判の「Chunadon Cycle Chaps」など大磯クリテならではの出展も。これらは「レースに出ない方も楽しめる」というコンセプトに基づいたもので、実際に来場者の1/3程度がレースを観戦しに来た方という印象だ。もちろん、レース参加者にも好評で、午前中のレースに参加した後も最後まで残っている方も少なくない。国内でも多くのレースが開催されているが、最後まで居たくなる雰囲気のよいレースはそう多くないだろう。

エリートともなるとコーナリングスピードが非常に高いエリートともなるとコーナリングスピードが非常に高い プロさながらのチームプレーも随所で見られたプロさながらのチームプレーも随所で見られた

一日を締めくくるレースはアタックが頻発する白熱の展開に一日を締めくくるレースはアタックが頻発する白熱の展開に
エリートを制したのは、昨シーズンのJBCF E1クラスタ年間王者の川田優作選手エリートを制したのは、昨シーズンのJBCF E1クラスタ年間王者の川田優作選手 スペシャライズドのエアアーチの下で表彰式は行われたスペシャライズドのエアアーチの下で表彰式は行われた


そんな1日の最後を締めくくるのが、国内トップレベルのアマチュアレーサーが鎬を削るエリートクラスのレースだ。グループをつくって果敢に逃げたり、その後方ではチームプレーで集団をけん引して吸収を試みたりとスピーディーな展開は迫力満点。それまでのカテゴリーも他のレースより大きな声援が飛んでくるが、エリートクラスの盛り上がりはやはり別格。そんな第3戦のエリートレースを制したのは川田優作選手(Honda 栃木)。昨年のJBCF E1クラスタ年間王者の実力を遺憾なく発揮し、先頭でゴールラインに飛び込んだ。



大磯クリテリウム次戦は2月15日 箱根ターンパイクでのヒルクライム開催も決定

大磯クリテリウムを主催する山根理史さんと須田晋太郎さん大磯クリテリウムを主催する山根理史さんと須田晋太郎さん 大磯クリテリウムの次戦となる第4戦は2月15日(日)にワコーズカップとして開催される。現在参加者を募集中で、申込みはスポーツエントリーより行うことができる。締め切りは2月7日(土)。ビギナーから上級者まで、春からの本格的なシーズンを楽しく迎えたいというレーサーは是非とも参加してみては?

またWalkRideでは5月24日(日)にMAZDAターンパイク箱根を舞台としたヒルクライムを初開催する。詳細は順次発表されていく予定だ。「小田原市とのご縁があり、かつて人気を博した箱根ターンパイクでのヒルクライムを復活させることができました。従来は寒い時期でしたが、今回は暖かな5月下旬の開催になります。是非ご参加下さい。」(Walk Ride 山根さん)



text&photo:Yuya.Yamamoto

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