2014/10/11(土) - 09:08
さて、今年もシクロワイアードが密着取材を行った、トップツアーによるホノルルセンチュリーライドツアー。海外大会初取材となる編集部員安岡によるレポートをお届けします。まずは準備&前日編から。
「安岡、ホノルルいける?」そう編集長に告げられたのは確か、7月ごろ。「いや、パスポート無いんでちょっと無理ですね、ハハハ。」と乾いた笑いで答える私。何を隠そう、13才の時分に一度海外に行ったきり、日本の外へと出る機会とは縁遠く、卒業旅行や交換留学で海外に楽しげに旅立つ同級生を横目にカーボンフレームを磨く毎日を送っていた学生時代。
お金がないから行かない訳じゃない。自分は海外に行きたくないのだ。羨ましくなんかないもん!そう言い聞かせてはや幾年。自分についた嘘は大きく、強固になり、いつしか海外に行かないということがアイデンティティの一部になっていたのだ。
高校~大学と自我の形成時期に強固に築かれた価値観である。働いたら負けかなと思っている、という言葉が少し昔に流行ったが、海外へ行ったら負けかなと思っている、というような屈折した私にとって、とりあえず曖昧に答えておくしかなかった。そうでもしなければ、「今日はホストファミリーとBBQです!海外最高!」みたいなFacebookの書き込みを映すたびに廃品回収に引き取られていったPCモニター達が浮かばれないじゃないか。
しかし、悲しいけどこれ仕事なのよね、ということで、8月下旬にあえなくホノルルセンチュリーライドの取材要員として正式に指名されてしまい、パスポートの取得はもはや業務命令。サラリーをいただいている身にとっては、業務命令は絶対である。まだ路頭に迷うわけにはいかない。何とか期限内にパスポートを発行し、14ドル徴収したいだけじゃないかとESTAの申請に毒づきながらも渡航準備を進めた。
もはや、個人的には羽田の国際線に到着した時から、いや、パスポート申請に立川のルミネ9階へと行った瞬間からがホノルルセンチュリーライド。これほどの悲壮感と緊張感でホノルルセンチュリーライドに参加する人はこれからもそうそういないだろう。普通は行きたくて参加するのだから当然である。
それでも、やっぱり海外へ自転車を運んで、現地のイベントに参加して、となると初めての人は少々緊張するはず。そういったハードルがあって、興味はあるけど一歩踏み出せないというそこのあなた。結論から言うとトップツアーのホノルルセンチュリーライドツアーは一切の不安を感じることなく、楽しめるものだった。こんな海外コンプレックスギリギリの私が言うのだから、間違いない。
飛行機への自転車の積み込みや、ホノルル空港からの送り迎えといった旅行会社としての基本的な業務もしっかりと遂行している一方で、自転車イベントツアーならではの数々の企画が用意されている。今中大介さんと絹代さんのコンビによる前日講習会や、プラクティスライドが用意されており日本とは勝手が違うホノルルの交通事情や気候に慣れることができる。
また、今中さんと絹代さんに加え、鶴見さんご夫妻をゲストに迎えて共に走ることができることや、これらゲストの普段は見れない顔も見ることができる後夜祭が催されるなど、一人で参加するだけでは味わえない楽しみが多くあるのがトップツアー流なのだ。さて、まずは前日の講習会とプラクティスライドの様子からレポートしよう。
羽田空港国際ターミナルに到着した私たち取材班。トップツアー専用のツアーデスクへ行き、受付を済ますと早速自転車を預けることに。ちなみに空港へ自転車を詰めた箱を持っていくには、車で運ぶか事前に専用の宅配便で送る必要があるので注意されたい。
自転車と荷物を無事に預け終えれば、ついに出国手続き。ここは既に勝手知ったる日本ではないのか、という感慨を抱きながら飛行機のチェックインを待つ。初めて味わう長距離フライトに備えて、大量に文庫本を持ち込んだが、機内食を食べてしばらくするといつの間にか寝ていた。(もったいないので帰国後に読みました)
気付けば着陸態勢に入っていた飛行機で、リクライニングを起こすようにCAさんに促されて起きた私。文明って偉大だな、なんて月並みな感想を抱きながら降り立ったホノルル。機内からでた途端にまず感じたのは、暑い!ということ。夜、羽田では20度くらいの気温で少し肌寒いくらいだったのが、2か月ほど巻き戻されたような空気。
ああ、本当に外国に来たのだなと思いながら入国手続きの列に並ぶ。英語通じるかなあ、とドキドキしていたら入管の担当官はフレンドリーな日本語で対応してくれた。少しばかり拍子抜けした気分と、安心した気分を味わいながらホノルルへの一歩を踏み出した。
とはいうものの、空港からは専用バスが用意されホテルまで一直線。部屋に届けられている自転車を組み立てて、明日以降の準備を整えれば、あとは明日以降に備えて身体を休めることができるのだ。
さて、一晩明けて大会前日。まず午前中には、カピオラニ公園で今中大介さんと絹代さんによる直前講習会が行われた。ロングライド初チャレンジという方も多いこの大会、しかも海外で交通事情も日本とは全く違うとくれば、自転車自体には慣れているベテランでもちょっぴり不安になるはず。
そんな不安を少しでも取り除こうと、開催されるのが直前講習会だ。補給食やパンク修理グッズなどについての解説から始まった。前日の晩御飯からきちんとカーボローディングをきっちりとすることや、給水をきっちりとすることなど、ロングライドの基本となることをきっちりと解説してくれた。
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また、パンク対策についても予備チューブや携帯ポンプをしっかりと持って走ること、そしてなるべく自分で修理できるようになっておくことなどが解説された。ちなみに、専用のメカニックがコースを巡回しているので、どうしてもリカバリーできないような場合でも、安心なのだ。
世界をプロとして走った今中さん、栄養士でもある絹代さんともに、非常にわかりやすい説明であるばかりか、上級者でもためになるような内容で、参加者の方々も真剣な表情で聞きいっておられたのがとても印象的。一通り講習会を終えた後は、往復約10kmほどの短めの練習走行を行った。右側通行が初めての人でも安心できる交通量の少ないルートが選ばれており、慣れるにはうってつけだ。
そして一旦ホテルに戻って、昼休憩をはさんだ後には、プラクティスライドが行われた。距離と難易度の異なるAコースとBコースの2種類が用意されたプラクティスライド。今回初参加となる私は、初・中級者向けのAコースを実走取材。
ホテルを出発したAコース一行は、直前講習会でも走ったダイヤモンドヘッドの海側を走りぬけ、本番のコースに沿ってハイウェイをひた走る。Aコースに同行してくれるのは、絹代さんと鶴見辰吾さん、そして奥様の和美さん。そしてサポート役の湘南ベルマーレの内山GMの4名。参加者さんのレベルもいくぶんか差があってバラけてしまうが、ゲストの皆さんはそれぞれのグループに別れて終始サポートをしてくれた。
折り返し地点であるハナウマ湾では2時間のフリータイムが設けられ、参加者たちはおのおの海に入ったり日光浴をしたり、思い思いの時を過ごした。自然保護区でもあるハナウマ湾のビーチに行くには、自然保護に関する教育ビデオを事前に見る必要がある。多少めんどくさいな、と感じるが砂浜まで降りていけば、その理由も納得するほどのきれいな碧い海が眼前に迫ってくる。
最初は仕事だから、と思って海には入らず撮影をしていた私だが、海を満喫している人たちを見ていると、もう辛抱たまらん!ということで、いつのまにやら靴と靴下を脱いで膝まで浸かりながら撮影することに。水着を持ってくれば、スノーケリングのセットをレンタルすることもできるとのことで、来年は水着を持ってこようと心に誓うのであった。
そんなこんなで、ハワイらしい海を堪能した後は再びホテルへ。自転車を組み立てて、実際に走ってみると色々な不具合が出ることもあるので、プラクティスライドが終わった後にはホテルのロビーに設けられたメカニックブースへと調整に持ち込む人もちらほら。そういった意味でも、事前に走る意義は大きい。
プロジェクトKの栗田さんがてきぱきと持ちこまれた自転車を直していき、本番に向けての準備は万端。あとは明日へのエネルギーを蓄えにハワイのおいしいものを食べるだけ。食べて、飲んで、ぐっすり寝ればきっと100マイルは完走できる。そう思わせてくれるのは前日の講習とプラクティスライドが自信をつけてくれるからだろう。
次回は大会当日編をお届けします。お楽しみに。
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO Naoki.Yasuoka
フォトギャラリー2(Facebookウェブアルバム)
プラクティスライドA ハナウマ湾ライド(Facebookウェブアルバム)
「安岡、ホノルルいける?」そう編集長に告げられたのは確か、7月ごろ。「いや、パスポート無いんでちょっと無理ですね、ハハハ。」と乾いた笑いで答える私。何を隠そう、13才の時分に一度海外に行ったきり、日本の外へと出る機会とは縁遠く、卒業旅行や交換留学で海外に楽しげに旅立つ同級生を横目にカーボンフレームを磨く毎日を送っていた学生時代。
お金がないから行かない訳じゃない。自分は海外に行きたくないのだ。羨ましくなんかないもん!そう言い聞かせてはや幾年。自分についた嘘は大きく、強固になり、いつしか海外に行かないということがアイデンティティの一部になっていたのだ。
高校~大学と自我の形成時期に強固に築かれた価値観である。働いたら負けかなと思っている、という言葉が少し昔に流行ったが、海外へ行ったら負けかなと思っている、というような屈折した私にとって、とりあえず曖昧に答えておくしかなかった。そうでもしなければ、「今日はホストファミリーとBBQです!海外最高!」みたいなFacebookの書き込みを映すたびに廃品回収に引き取られていったPCモニター達が浮かばれないじゃないか。
しかし、悲しいけどこれ仕事なのよね、ということで、8月下旬にあえなくホノルルセンチュリーライドの取材要員として正式に指名されてしまい、パスポートの取得はもはや業務命令。サラリーをいただいている身にとっては、業務命令は絶対である。まだ路頭に迷うわけにはいかない。何とか期限内にパスポートを発行し、14ドル徴収したいだけじゃないかとESTAの申請に毒づきながらも渡航準備を進めた。
もはや、個人的には羽田の国際線に到着した時から、いや、パスポート申請に立川のルミネ9階へと行った瞬間からがホノルルセンチュリーライド。これほどの悲壮感と緊張感でホノルルセンチュリーライドに参加する人はこれからもそうそういないだろう。普通は行きたくて参加するのだから当然である。
それでも、やっぱり海外へ自転車を運んで、現地のイベントに参加して、となると初めての人は少々緊張するはず。そういったハードルがあって、興味はあるけど一歩踏み出せないというそこのあなた。結論から言うとトップツアーのホノルルセンチュリーライドツアーは一切の不安を感じることなく、楽しめるものだった。こんな海外コンプレックスギリギリの私が言うのだから、間違いない。
飛行機への自転車の積み込みや、ホノルル空港からの送り迎えといった旅行会社としての基本的な業務もしっかりと遂行している一方で、自転車イベントツアーならではの数々の企画が用意されている。今中大介さんと絹代さんのコンビによる前日講習会や、プラクティスライドが用意されており日本とは勝手が違うホノルルの交通事情や気候に慣れることができる。
また、今中さんと絹代さんに加え、鶴見さんご夫妻をゲストに迎えて共に走ることができることや、これらゲストの普段は見れない顔も見ることができる後夜祭が催されるなど、一人で参加するだけでは味わえない楽しみが多くあるのがトップツアー流なのだ。さて、まずは前日の講習会とプラクティスライドの様子からレポートしよう。
羽田空港国際ターミナルに到着した私たち取材班。トップツアー専用のツアーデスクへ行き、受付を済ますと早速自転車を預けることに。ちなみに空港へ自転車を詰めた箱を持っていくには、車で運ぶか事前に専用の宅配便で送る必要があるので注意されたい。
自転車と荷物を無事に預け終えれば、ついに出国手続き。ここは既に勝手知ったる日本ではないのか、という感慨を抱きながら飛行機のチェックインを待つ。初めて味わう長距離フライトに備えて、大量に文庫本を持ち込んだが、機内食を食べてしばらくするといつの間にか寝ていた。(もったいないので帰国後に読みました)
気付けば着陸態勢に入っていた飛行機で、リクライニングを起こすようにCAさんに促されて起きた私。文明って偉大だな、なんて月並みな感想を抱きながら降り立ったホノルル。機内からでた途端にまず感じたのは、暑い!ということ。夜、羽田では20度くらいの気温で少し肌寒いくらいだったのが、2か月ほど巻き戻されたような空気。
ああ、本当に外国に来たのだなと思いながら入国手続きの列に並ぶ。英語通じるかなあ、とドキドキしていたら入管の担当官はフレンドリーな日本語で対応してくれた。少しばかり拍子抜けした気分と、安心した気分を味わいながらホノルルへの一歩を踏み出した。
とはいうものの、空港からは専用バスが用意されホテルまで一直線。部屋に届けられている自転車を組み立てて、明日以降の準備を整えれば、あとは明日以降に備えて身体を休めることができるのだ。
さて、一晩明けて大会前日。まず午前中には、カピオラニ公園で今中大介さんと絹代さんによる直前講習会が行われた。ロングライド初チャレンジという方も多いこの大会、しかも海外で交通事情も日本とは全く違うとくれば、自転車自体には慣れているベテランでもちょっぴり不安になるはず。
そんな不安を少しでも取り除こうと、開催されるのが直前講習会だ。補給食やパンク修理グッズなどについての解説から始まった。前日の晩御飯からきちんとカーボローディングをきっちりとすることや、給水をきっちりとすることなど、ロングライドの基本となることをきっちりと解説してくれた。
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また、パンク対策についても予備チューブや携帯ポンプをしっかりと持って走ること、そしてなるべく自分で修理できるようになっておくことなどが解説された。ちなみに、専用のメカニックがコースを巡回しているので、どうしてもリカバリーできないような場合でも、安心なのだ。
世界をプロとして走った今中さん、栄養士でもある絹代さんともに、非常にわかりやすい説明であるばかりか、上級者でもためになるような内容で、参加者の方々も真剣な表情で聞きいっておられたのがとても印象的。一通り講習会を終えた後は、往復約10kmほどの短めの練習走行を行った。右側通行が初めての人でも安心できる交通量の少ないルートが選ばれており、慣れるにはうってつけだ。
そして一旦ホテルに戻って、昼休憩をはさんだ後には、プラクティスライドが行われた。距離と難易度の異なるAコースとBコースの2種類が用意されたプラクティスライド。今回初参加となる私は、初・中級者向けのAコースを実走取材。
ホテルを出発したAコース一行は、直前講習会でも走ったダイヤモンドヘッドの海側を走りぬけ、本番のコースに沿ってハイウェイをひた走る。Aコースに同行してくれるのは、絹代さんと鶴見辰吾さん、そして奥様の和美さん。そしてサポート役の湘南ベルマーレの内山GMの4名。参加者さんのレベルもいくぶんか差があってバラけてしまうが、ゲストの皆さんはそれぞれのグループに別れて終始サポートをしてくれた。
折り返し地点であるハナウマ湾では2時間のフリータイムが設けられ、参加者たちはおのおの海に入ったり日光浴をしたり、思い思いの時を過ごした。自然保護区でもあるハナウマ湾のビーチに行くには、自然保護に関する教育ビデオを事前に見る必要がある。多少めんどくさいな、と感じるが砂浜まで降りていけば、その理由も納得するほどのきれいな碧い海が眼前に迫ってくる。
最初は仕事だから、と思って海には入らず撮影をしていた私だが、海を満喫している人たちを見ていると、もう辛抱たまらん!ということで、いつのまにやら靴と靴下を脱いで膝まで浸かりながら撮影することに。水着を持ってくれば、スノーケリングのセットをレンタルすることもできるとのことで、来年は水着を持ってこようと心に誓うのであった。
そんなこんなで、ハワイらしい海を堪能した後は再びホテルへ。自転車を組み立てて、実際に走ってみると色々な不具合が出ることもあるので、プラクティスライドが終わった後にはホテルのロビーに設けられたメカニックブースへと調整に持ち込む人もちらほら。そういった意味でも、事前に走る意義は大きい。
プロジェクトKの栗田さんがてきぱきと持ちこまれた自転車を直していき、本番に向けての準備は万端。あとは明日へのエネルギーを蓄えにハワイのおいしいものを食べるだけ。食べて、飲んで、ぐっすり寝ればきっと100マイルは完走できる。そう思わせてくれるのは前日の講習とプラクティスライドが自信をつけてくれるからだろう。
次回は大会当日編をお届けします。お楽しみに。
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO Naoki.Yasuoka
フォトギャラリー2(Facebookウェブアルバム)
プラクティスライドA ハナウマ湾ライド(Facebookウェブアルバム)
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