8月9日(土)、茨城県下妻市にあるつくばサーキットにて開催された、エンデューロイベント「全日本9時間耐久サイクリングinつくば」。今年で19回目を迎える伝統のイベントの様子をお伝えしよう。



走りやすい天候だった「つくば9耐」走りやすい天候だった「つくば9耐」
「つくば9耐」と聞いて、首をかしげる人もいるだろう。昨年までは10時間の耐久イベントとして開催されていたので、「つくば10耐」という略称のほうが耳慣れているという方も多いはず。例年、最後の1時間は陽の長い夏場でも暗くなってしまうため、1時間の短縮となったのだ。

舞台となるのは、普段はクルマやオートバイのレースや走行会が多く開催されている筑波サーキット。つくば9耐のほかにも、多くの自転車イベントが定期的に開始され、多くの参加者を集める人気の会場だ。都内からのアクセスも至便で、都心からは2時間以内でアクセスできる。

オートバイに先導されてスタートしていくオートバイに先導されてスタートしていく スタートラインに並ぶ参加者たちスタートラインに並ぶ参加者たち


今回コースとなった本コースは2つの長いストレートと大小8つのコーナーで構成される、1周2070mのコース。他の関東近郊のサーキットである富士スピードウェイやツインリンクもてぎに比べると、非常にコンパクトな設計で、ピットインのチャンスが多く、ライダーチェンジや応援もしやすい。加えてほとんど高低差がないので、レースデビューのビギナーでも楽しめるサーキットだ。

今年のテーマとなったのは、「9極の耐9」。少々洒落の効いたイベントに関東近郊から多くのチームが集まった。
試走開始の7時までに待機エリアには各チームがテントを張り、長い一日を快適に過ごすためも準備を着々と進めていく。ほとんど全てのチームが暑さ対策としてテントとクーラーボックスを持参しており、中には猛暑を想定し、プールを用意するチームまであるほど。

7時45分の試走終了時間とともに、スタート地点へと第一出走者たちが並び始めていく。これから9時間という長丁場のレースに挑むチームの先鋒たちが揃い、競技説明が終わるとスタートが切られる。最初の一周は車列を整えるためにローリングスタートとされ、2周目からリアルスタートが切られる。

ローリングスタートとなるので先導バイクの合図を待つ集団ローリングスタートとなるので先導バイクの合図を待つ集団
チップをつけていってきますチップをつけていってきます ゲストライダーの那須ブラーゼン普久原奨選手と清水良之選手、大会MCの白戸太郎さんゲストライダーの那須ブラーゼン普久原奨選手と清水良之選手、大会MCの白戸太郎さん


一気に速度が上がる先頭集団と、それぞれのペースで走る小集団にわかれてレースは進んでいく。猛暑となった昨年とは異なり、曇り気味で気温も25度程度と、この時期にしては非常に走りやすいコンディションの中レースは進んでいく。

フラットなレイアウトであるのでイージーなコースだと思っていると、実は奥が深いのが筑波サーキット。風向きの影響で、コースの勝負どころが変わってくるという性質もあるのだ。年ごとによって、南風が強かったり、西風が強かったりとまちまちなのだが、今年は東風が強く、ダンロップブリッジ付近での位置取りが重要だったよう。

速報を見て戦略を立てるチームも速報を見て戦略を立てるチームも コースから参加者を見守るAED隊員コースから参加者を見守るAED隊員

ワコーズブースのメンテナンス講座は満員御礼ワコーズブースのメンテナンス講座は満員御礼 フレームが当たる抽選会フレームが当たる抽選会


一方で、もっとも長い最終ストレートは若干の追い風となっていたこともあり、全体としては高速な展開となっていたのではないだろうか。途中、45分のお昼休みが挟まれる。これは4時間の部のゴールに必要なのと、参加者の安全面を配慮してのこと。

例年に比べれば涼しいとはいえ、やはり走っていると身体は熱く火照ってしまうもの。会場には、水をかぶるためのプールや冷感スプレーが常備されていたほか、シロップかけ放題(!)のかき氷が食べられるケータリングカーも出展しており人気を集めていた。他にもサーキット内の食堂も営業しており、お昼休み中にご飯を食べようとして外に買い出しに行く必要も無いのはうれしい。

名物のダンロップブリッジをくぐりぬける名物のダンロップブリッジをくぐりぬける
S字の下りを走るS字の下りを走る 塀の外から応援中!塀の外から応援中!


休憩時間が終わると、もう一度熱い戦いの火蓋が切って落とされる。4時間の部の参加者が抜けることで集団の規模が縮小しているのと疲労の蓄積とで、午前中ほどはペースが上がりきらない午後。そんな状況でも、いや、そんな状況だからこそ、少しでも上の順位を狙うチームたちは様々な工夫をしていたようだ。

ピットボードを掲げて走っているライダーに状況を知らせたり、無線機によるチームオーダーといった連絡手段の工夫や、ピットでのチップ付け替え作業の高速化、果ては挨拶という名のライバルチームへの偵察(?)が行われるなど、戦いはコースを飛び出してピットエリアでも行われていたようだ。

レースを終えた選手たちレースを終えた選手たち ゴールシーンは応援も大盛り上がりゴールシーンは応援も大盛り上がり

薄暮の中、パレード走行する最終走者とハイタッチ薄暮の中、パレード走行する最終走者とハイタッチ ゴールした最終走者を迎えるチームメイトゴールした最終走者を迎えるチームメイト


さて、そんな骨肉の争いも日が傾いてくると同時に終わりを迎える。ピットクローズとなる18時10分を前に、多くのチームがライダーチェンジを行おうと一斉にピットに戻って来る。疲労困憊ながらも達成感に満ち溢れたライダーからチップを受け取って、最終ライダーがコースに入っていく。さあ、最後の勝負の時。ピットロードが開放され、コースのフェンス際までチーム員が応援に押し寄せる。

競技終了時刻となる18時15分を過ぎ、続々とゴールに最終走者たちが帰ってくる。チームメイトたちが見守るなか、スプリントで熱い順位争いを最後まで繰り広げる人、9時間の長丁場に精根尽き果てた様子の人、一緒に集団を形成した「仲間」と健闘を称え合う人、それぞれの思いを胸にゴールラインに入ってくる。1時間短くなった競技時間のおかげで陽が沈む前に競技終了となり、スプリント争いでも安心できたのではないだろうか。

撤収を終え、駐車場へと向かっていく撤収を終え、駐車場へと向かっていく
陽が落ちた中行われた表彰式陽が落ちた中行われた表彰式 走り切った記念に集合写真をとるチームも多かった走り切った記念に集合写真をとるチームも多かった


ゴールを切ってからは、恒例の最終走者達によるサーキット1周のパレードラン。最後はコースサイドで仲間に迎えられ、全てのライダーがピットへと戻っていった。最後に、シャンパンファイト付きの表彰式が行われ、つくば9耐は終了。参加者たちは、設営したテントを片づけて駐車場へと向かっていく。

夏祭りで遊び疲れた子どもの頃と、同じ空気を醸し出していた夜の筑波サーキット。参加者たちが駐車場へと戻っていく背中には、興奮の余韻と、一抹の寂しさ、そして来年への期待が見えた。つくば9耐、来年も熱いドラマが繰り広げられる予感に満ちた大会だ。

photo&text: Naoki.Yasuoka, So.Isobe

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