2013年の全日本インカレにて史上初の男女総合優勝を決め、自転車競技界において確固たる存在感を見せつける鹿屋体育大学。その自転車競技部と関係も深い「鹿屋アスリート食堂」1号店が鹿屋体育大学前にオープンした。その名の通り、アスリートを支える質の高い食事を提供する「鹿屋アスリート食堂」を同競技部3年・橋本直さんのレポートで紹介しよう。



自転車関係者の発案による「鹿屋アスリート食堂」1号店が堂々オープン!
4月7日(月)、鹿児島県鹿屋市の鹿屋体育大学前にスポーツ栄養学に基づいたアスリート向けの食事を提供する「鹿屋アスリート食堂」本店(1号店)がオープンした。鹿屋体育大学自転車競技部と深い関わりを持つ「鹿屋アスリート食堂」には、鹿屋体育大学の学生アスリートは勿論のこと、健康志向が強い市民の注目も集めており、オープン以来入店待ちの列が出来るほどの人気を誇る。

オープンした鹿屋アスリート食堂オープンした鹿屋アスリート食堂 photo:Hideaki.Takagi
食堂内での一コマ。自転車競技部のメンバーの姿も食堂内での一コマ。自転車競技部のメンバーの姿も photo:Hideaki.Takagiバイクラックの準備も万全だバイクラックの準備も万全だ photo:Hideaki.Takagi


「鹿屋アスリート食堂」は、鹿屋体育大学でスポーツ栄養学を教える長島未央子講師の「世界を目指す鹿屋体育大学のアスリート達に良い食事を摂らせてあげたい」という素朴で熱い想いからスタートした。将来的には全国展開し全国のアスリートの役に立ちたいとの夢を持ちながら、まずは同大学自転車競技部黒川剛監督らと大学近辺の空き家などを探し、改装してオープンさせるための情報収集や資金及び人材確保を目指していたが構想は思うように進まなかった。

しかし、長島講師は鹿屋市が同大学と連携して行うプロ野球選手等の合宿誘致活動において、食事面でのサポートをしており、鹿屋市職員との面識があった。長嶋講師による鹿屋アスリート食堂の構想を知った市役所職員らの仲介により、一度行き詰まりかけた構想は急展開を迎えた。

産学官連携プロジェクトとして動き出す
救世主として現れたのは大阪に本社機能を持つ、バルニバービ社の佐藤裕久社長である。大阪と東京を中心にカフェ等を手広く経営している同社は、東京・代々木において「本家かのや」という鹿屋市の食材を使った居酒屋を展開し、鹿屋市と深い付き合いのある企業。

オープニングセレモニーオープニングセレモニー バルニバービ社の佐藤社長(中)と塚越さくら選手(左)、上野みなみ選手(右)バルニバービ社の佐藤社長(中)と塚越さくら選手(左)、上野みなみ選手(右)


自らも自転車を愛する佐藤社長が打合せのために鹿屋を訪れた際、自転車部メンバーとサイクリングを楽しむ機会が設けられることで、両者の距離は縮まり構想は一気に実現にむけて走り出した。こうして鹿屋体育大学の構想、全国へ鹿屋の食材を売り込みたい鹿屋市、そして食堂として事業を展開できるバルニバービ社による前例の無い「産学官連携プロジェクト」が立ち上がった。

お洒落な店舗は市民と学生のふれあいの場にも
オープニングセレモニーには多くの関係者や報道陣が集い、注目や期待の大きさを物語っていた。テープカットはバルニバービ社の佐藤裕久社長、中西茂鹿屋市長、長島講師らが行ったほか、くす玉割りには自転車部の上野みなみ、塚越さくらも参加した。また、オープン記念パーティには同大学出身でアテネオリンピック競泳女子800m金メダリストの柴田亜衣さんらも駆けつけ祝辞を述べた。

佐藤社長は「東京オリンピック・パラリンピックが決まり、今後スポーツの全てに関心が集まってくる。食を通じてアスリートの体を作るだけで無く、健康になりたい市民の皆様にも体に良い食事を提供していく。鹿屋で獲れた農畜水産物にも注目が集まるようなお店にしていきたい」と語ってくれた。

マルシェも併設され、地元の人も訪れるマルシェも併設され、地元の人も訪れる 店内での食事の様子店内での食事の様子


東京や大阪でお洒落なカフェを多数運営する同社のこだわりにより、店内の調度品の多くはヨーロッパからの輸入品で揃えられる。またオープンカフェやマルシェ(野菜市場)も併設され、食事だけで無く食堂という空間そのものを楽しめるように工夫されている。

地元ではメディア各社で取り上げられたことも手伝い、オープンした週の来店者は1,000名を超え、受付には長蛇の列が出来た。その事によって、鹿屋体育大学生と市民との語らいの場としても機能しており、あちこちでプチ交流が始まっており、市民にも喜ばれているようだ。

サイクリスト向けに日曜も営業
店員のみなさん店員のみなさん 夜は10時30分までの営業となり、遅くまでトレーニングするアスリートをサポート夜は10時30分までの営業となり、遅くまでトレーニングするアスリートをサポート 鹿屋アスリート食堂のメニューはは長島講師の監修により「一汁、一飯、三主菜」のバランス定食が基本となっている。三主菜のおかずは「肉・魚・卵メイン」五品、「野菜+タンパク質メイン」五品、「野菜メイン」五品の三つのカテゴリーから、増量、減量、貧血対策など自分の抱えるテーマについて自分の考えで選べる方式。どうしても悩んだときには管理栄養士の田畑綾美さんをはじめ、明るい店員さんがアドバイスしてくれる。

鹿屋アスリート食堂本店女将の野中直美さんも鹿屋体育大学カヌー部出身だ。野中さんは清水都貴選手(チームブリヂストン・アンカー)や内間康平選手(チームブリヂストン・アンカー)らが所属した山本正嘉教授のゼミでトレーニング科学を学んでいて、体育会系の話題には十分対応出来る体制を整えている。

営業時間は昼が午前11時30分~午後2時、夜は午後5時30分~10時30分(ラストオーダー)となっており、夜遅くまで過酷なトレーニングに励む学生らの心強い味方となるだろう。勿論一般の人も利用可能で、定食が850円、鹿屋体育大生のみ500円と超格安料金が設定されている。夜には宴会コースも用意され、地元鹿屋産の素材を活かした料理が食べられる。

当初、日曜日を休業にする予定だったが、黒川監督の「日曜日は沢山のサイクリストのたまり場にしたい」との申し入れに、佐藤社長が快諾。その結果、自転車部のOFF日と合わせて月曜日が休業日となった。勿論店先にはバイクラックが完備されており、スタンドのない自転車でも気兼ねなく駐輪できるのは自転車好きにはたまらない。

上野みなみ&塚越さくらのスポンサードも
もちろんバイクラックも用意されるもちろんバイクラックも用意される 同食堂をオープンするに当たり佐藤社長のもう一つの取り組みが始まっている。10OVER9(テンオーバーナイン)というプログラムは、「今の自分を超えるために特別な時間を過ごす」という考え方のもと、未来あるアスリートをサポートすることを目指す。

鹿屋体育大学自転車競技部から今春大学院に進学しリオデジャネイロ五輪、そして東京五輪を目指す塚越さくら、上野みなみの2名もアスプロ・アスリート1期生として選ばれており、合わせて自転車部も新スポンサーとして支援を受けることとなった。

佐藤社長の熱意は地域の支援者の輪も広げている。鹿屋アスリート食堂に食材を納入し、軒先でマルシェ(野菜市場)を運営する、農業生産法人(株)オキスの岡本孝志社長も、自社ブランド「薩摩の恵」で自転車競技の新しいスポンサーとなった。岡本社長は「佐藤社長の熱意に賛同した。準備段階で出会った自転車部員達も爽やかで、迷わず応援することにした」と語る。

「一汁、一飯、三主菜」のコンセプトを示す「鹿屋アスリート食堂」「一汁、一飯、三主菜」のコンセプトを示す「鹿屋アスリート食堂」
全国展開する「鹿屋アスリート食堂」
「鹿屋」と言えばスポーツ界では知られた名前、特に自転車関係者で知らない人はいないだろう。しかし一般的には「かや」「しかや」と呼ばれるなど残念ながら認知度は今ひとつである。嬉しいことに「鹿屋」の名前を冠した「鹿屋アスリート食堂」は全国展開計画を持つ。

年度内に東京都内で3店舗程度の出店計画があり、既に夏までには鹿屋本店に続く二号店が神田に開店予定、両国、品川などにも出店計画しているという。東京などの都心での事業には、同じビル内にトレーニングジム併設の構想も有り、健康な体をスポーツと食事の両面からサポートする予定。鹿屋体育大学自転車競技部関係者は、全国展開する「鹿屋アスリート食堂」が自転車選手らの交流拠点になればと期待している。


photo&text:橋本直(鹿屋体育大学自転車競技部3年)


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