2014/04/02(水) - 09:10
3月23日、宇都宮市郊外にて初開催された「宇都宮クリテリウム」。初開催となったこのイベントはJBCFと宇都宮ブリッツェンを運営するサイクルスポーツマネージメント株式会社との共催で実施された。このイベントの仕掛け人であるブリッツェンの廣瀬GMへのインタビューを交え7,100人を集めた開幕戦の模様を振り返る。
史上初めてJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)とJプロツアーチームが共同開催した大会となった宇都宮クリテリウム。その仕掛け人の一人である宇都宮ブリッツェンの廣瀬GMは「正直なところ、昨晩まで不安でじっくりと寝ることができませんでした。1,000人ぐらいしか集まらないのではないかと思ったぐらいですから、今日は大成功ですね」と満足気ながらも少し疲労感を覗かせながら語る。
1990年に開催された世界選手権を皮切りに、20年以上に渡るジャパンカップサイクルロードレースの開催や地域密着チームとして活動するブリッツェンの活躍で、サイクリストに「自転車の街」として認知されてきた栃木県宇都宮市。ジャパンカップに次いで北関東最大の都市で開催されたのが「JBCF宇都宮クリテリウム」である。
その舞台はJR宇都宮駅から車で20分ほどの郊外にある清原工業団地。日曜日は交通量が極端に少なくいことや、碁盤状に並ぶ工場や研究施設、大型トラックの往来によって荒れた舗装、シンプルなコースレイアウトは、どことなくツアー・オブ・ジャパン最終ステージの大井ふ頭を思わせる。
レースは1周2.7kmの長方形型サーキットで行なわれ、最高峰のPクラスタから女子のFクラスタまで5クラス全てでハイスピードな展開となった。ホビーレーサーの間では本格的なラインレースの開催を望む声は少なくないが、スピードを感じやすいと言う点では、初めてレース観戦に訪れた方にもロードレースの魅力を知ってもらえた良い機会になったのではないだろうか(レースの詳しい記事はこちらから)。
当日の来場者は合計で7,100人(主催者発表)。UCIレースでは観客の数が増えつつあるものの、どこかストイックで近寄りがたい印象を持つ方が少なく無いであろうJBCFレースでは異例の数字と言っても過言ではないだろう。実際にJBCFの運営スタッフからも「ビックリ」「史上最大の規模」という声が聞こえてくる程の人が押し寄せた。そしてレースを走ったアマチュアレーサーにとっては大きな声援がきっと気持ちよかったに違いないはずだ。
来場者の中でも目立ったのはホストチームを務めた宇都宮ブリッツェンと、栃木をベースとするもう一つのチームである那須ブラーゼンのサポーターだろう。サッカーや野球などと同様にレプリカジャージに身を包み、ロードレースとは無縁の様に思える若い女性やお年寄り、小さな子どもが応援する様はこの地でロードレースが根付きつつあることを感じさせるに十分な光景であった。そして地元チームの参戦・活躍も多かったようだ。
レースや、栃木県内の自転車熱の高まりに加え、イベントブースやエンターテインメントも宇都宮クリテが大盛り上がりになった一助となったに違いない。普段のレースであれば表彰式でさえ閑散としているステージ前は、県内のスポーツチームと協力したステージイベントやとちぎテレビで放映中の自転車番組「Ride On」の公開収録などによって大勢の来場者が集まった。
そしてお昼時ともなれば、消費量日本一を奪還した餃子を筆頭に地元グルメが並んだフードコートには長蛇の列ができた。その中では昨年までブリッツェンで走り、引退後も宇都宮に居を構える中村誠さんが飲食ブースを手伝っており、それに気づいたファンが記念撮影を求めるシーンが多く見られた。これも宇都宮にブリッツェンひいてはロードレースが根付いている証拠といえるだろう。
そんな宇都宮クリテについてブリッツェンのGMで廣瀬佳正さんにインタビューを行った。この地で生まれ育ち、地元で競技生活の始まりと終わりを迎えた「宇都宮クリテリウムの仕掛け人」の熱き思いとは。
ー初めての宇都宮クリテリウムは如何だったでしょうか
予想を大幅に越える7,100人もの方に来場して頂き、非常に嬉しかったですし、まさに驚きでした。正直なところ、1,000人もいかないのではなかと思っていて、昨晩まですごくドキドキしていました。そんな状況だったので余り寝れず、今朝3時ごろから会場に来て準備を初めていました(笑)。ざっと私の感触では2~3,000人が初めてのレース観戦という方だったのではないでしょうか。
ー宇都宮クリテ開催の経緯について教えてください
サイクルスポーツマネージメント株式会社から「是非開幕戦を宇都宮で開催させて頂けないか」とJBCFに打診しました。昨年末に発表されたJBCFのスケジュールでは初戦であった伊吹山ヒルクライムでは開幕として遅すぎるため、より早い時期の開幕戦として開催しようということになりました。
選手たちが普段から努力をして頑張っている姿を誰かに見てもらうことで、それが更なるパワーや練習の糧になると思うのです。それを下位カテゴリーの選手をはじめ多くのライダーに知ってもらいたいという思いがあり、今回JBCFとの共催に至りました。加えて、今日来てくれた大勢の子どもたちに、「自分もあそこで走りたい」と思って貰えればという思いも有ります。
実は計画当初はロードレースとして、今回のコースよりも長距離の周回コースで開催しようと考えていましたが、諸般の事情で実現出来ませんでした。結果的にクリテリウムを開催いたしましたが、スピーディーで迫力が有り、選手が何度も目の前を通過するという点では初めてレースを見に来たかたでも十分に楽しんで頂けたのではないでしょうか。
ー宇都宮市内の自転車熱は高まっていますか
明らかにロードバイクをはじめとしたスポーツバイクの台数が増えていますね。加えて、これからサイクルスポーツを始めたいという潜在的な層も増えてきています。喜ばしいことですが我々は今後も、他のスポーツにも負けないロードレースの魅力をもっと伝えられる様にもっと努力していかなければいけません。
宇都宮を拠点に自転車熱が全国へと伝われば、もっと競技が身近なものとなり、国内の競技力が向上すると共に世界で活躍できる選手がより多くなってくれればと思います。
ー今回の宇都宮クリテリウム以外にもレースイベントの開催は考えていますか
ブリッツェンのホームレースを増やせればと思っています。あとはツール・ド・栃木ですね。県内全土をフィールドにラインレースを行い、同時に町おこしであったり観光客の増加など自転車が持つポテンシャルを証明できればと思いますね。今回のレースで沢山の方に来場して頂き、楽しんで頂くことが出来たと思いますので、ツール・ド・栃木の実現へ向けた足掛かりになったと言えそうです。
ー来年の宇都宮クリテリウムに向けて
更にパワーアップできればと思っています。今大会が終わったばかりですが、もっとエンターテイメント性を持たせて、観客の皆さんにもっと楽しんで頂ければと。加えて、落車への配慮を含め、選手たちがもっと安全に走れる環境づくりも必須だと感じています。
JBCFとJプロツアーチームが初めて共同開催し、大成功となった第1回宇都宮クリテリウム。ライダーと観戦者、運営側の誰にとっても満足の行く大会になったのは間違いないだろう。一レースファンとして、この大会が来年以降も継続して開催されること、そして様々な土地で宇都宮クリテの様に多くの観客が訪れるレースイベントが増えることを切に願いたい。
text:Yuya.Yamamoto
photo:Yuya.Yamamoto, So.Isobe, Hideaki.Takagi
史上初めてJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)とJプロツアーチームが共同開催した大会となった宇都宮クリテリウム。その仕掛け人の一人である宇都宮ブリッツェンの廣瀬GMは「正直なところ、昨晩まで不安でじっくりと寝ることができませんでした。1,000人ぐらいしか集まらないのではないかと思ったぐらいですから、今日は大成功ですね」と満足気ながらも少し疲労感を覗かせながら語る。
1990年に開催された世界選手権を皮切りに、20年以上に渡るジャパンカップサイクルロードレースの開催や地域密着チームとして活動するブリッツェンの活躍で、サイクリストに「自転車の街」として認知されてきた栃木県宇都宮市。ジャパンカップに次いで北関東最大の都市で開催されたのが「JBCF宇都宮クリテリウム」である。
その舞台はJR宇都宮駅から車で20分ほどの郊外にある清原工業団地。日曜日は交通量が極端に少なくいことや、碁盤状に並ぶ工場や研究施設、大型トラックの往来によって荒れた舗装、シンプルなコースレイアウトは、どことなくツアー・オブ・ジャパン最終ステージの大井ふ頭を思わせる。
レースは1周2.7kmの長方形型サーキットで行なわれ、最高峰のPクラスタから女子のFクラスタまで5クラス全てでハイスピードな展開となった。ホビーレーサーの間では本格的なラインレースの開催を望む声は少なくないが、スピードを感じやすいと言う点では、初めてレース観戦に訪れた方にもロードレースの魅力を知ってもらえた良い機会になったのではないだろうか(レースの詳しい記事はこちらから)。
当日の来場者は合計で7,100人(主催者発表)。UCIレースでは観客の数が増えつつあるものの、どこかストイックで近寄りがたい印象を持つ方が少なく無いであろうJBCFレースでは異例の数字と言っても過言ではないだろう。実際にJBCFの運営スタッフからも「ビックリ」「史上最大の規模」という声が聞こえてくる程の人が押し寄せた。そしてレースを走ったアマチュアレーサーにとっては大きな声援がきっと気持ちよかったに違いないはずだ。
来場者の中でも目立ったのはホストチームを務めた宇都宮ブリッツェンと、栃木をベースとするもう一つのチームである那須ブラーゼンのサポーターだろう。サッカーや野球などと同様にレプリカジャージに身を包み、ロードレースとは無縁の様に思える若い女性やお年寄り、小さな子どもが応援する様はこの地でロードレースが根付きつつあることを感じさせるに十分な光景であった。そして地元チームの参戦・活躍も多かったようだ。
レースや、栃木県内の自転車熱の高まりに加え、イベントブースやエンターテインメントも宇都宮クリテが大盛り上がりになった一助となったに違いない。普段のレースであれば表彰式でさえ閑散としているステージ前は、県内のスポーツチームと協力したステージイベントやとちぎテレビで放映中の自転車番組「Ride On」の公開収録などによって大勢の来場者が集まった。
そしてお昼時ともなれば、消費量日本一を奪還した餃子を筆頭に地元グルメが並んだフードコートには長蛇の列ができた。その中では昨年までブリッツェンで走り、引退後も宇都宮に居を構える中村誠さんが飲食ブースを手伝っており、それに気づいたファンが記念撮影を求めるシーンが多く見られた。これも宇都宮にブリッツェンひいてはロードレースが根付いている証拠といえるだろう。
そんな宇都宮クリテについてブリッツェンのGMで廣瀬佳正さんにインタビューを行った。この地で生まれ育ち、地元で競技生活の始まりと終わりを迎えた「宇都宮クリテリウムの仕掛け人」の熱き思いとは。
ー初めての宇都宮クリテリウムは如何だったでしょうか
予想を大幅に越える7,100人もの方に来場して頂き、非常に嬉しかったですし、まさに驚きでした。正直なところ、1,000人もいかないのではなかと思っていて、昨晩まですごくドキドキしていました。そんな状況だったので余り寝れず、今朝3時ごろから会場に来て準備を初めていました(笑)。ざっと私の感触では2~3,000人が初めてのレース観戦という方だったのではないでしょうか。
ー宇都宮クリテ開催の経緯について教えてください
サイクルスポーツマネージメント株式会社から「是非開幕戦を宇都宮で開催させて頂けないか」とJBCFに打診しました。昨年末に発表されたJBCFのスケジュールでは初戦であった伊吹山ヒルクライムでは開幕として遅すぎるため、より早い時期の開幕戦として開催しようということになりました。
選手たちが普段から努力をして頑張っている姿を誰かに見てもらうことで、それが更なるパワーや練習の糧になると思うのです。それを下位カテゴリーの選手をはじめ多くのライダーに知ってもらいたいという思いがあり、今回JBCFとの共催に至りました。加えて、今日来てくれた大勢の子どもたちに、「自分もあそこで走りたい」と思って貰えればという思いも有ります。
実は計画当初はロードレースとして、今回のコースよりも長距離の周回コースで開催しようと考えていましたが、諸般の事情で実現出来ませんでした。結果的にクリテリウムを開催いたしましたが、スピーディーで迫力が有り、選手が何度も目の前を通過するという点では初めてレースを見に来たかたでも十分に楽しんで頂けたのではないでしょうか。
ー宇都宮市内の自転車熱は高まっていますか
明らかにロードバイクをはじめとしたスポーツバイクの台数が増えていますね。加えて、これからサイクルスポーツを始めたいという潜在的な層も増えてきています。喜ばしいことですが我々は今後も、他のスポーツにも負けないロードレースの魅力をもっと伝えられる様にもっと努力していかなければいけません。
宇都宮を拠点に自転車熱が全国へと伝われば、もっと競技が身近なものとなり、国内の競技力が向上すると共に世界で活躍できる選手がより多くなってくれればと思います。
ー今回の宇都宮クリテリウム以外にもレースイベントの開催は考えていますか
ブリッツェンのホームレースを増やせればと思っています。あとはツール・ド・栃木ですね。県内全土をフィールドにラインレースを行い、同時に町おこしであったり観光客の増加など自転車が持つポテンシャルを証明できればと思いますね。今回のレースで沢山の方に来場して頂き、楽しんで頂くことが出来たと思いますので、ツール・ド・栃木の実現へ向けた足掛かりになったと言えそうです。
ー来年の宇都宮クリテリウムに向けて
更にパワーアップできればと思っています。今大会が終わったばかりですが、もっとエンターテイメント性を持たせて、観客の皆さんにもっと楽しんで頂ければと。加えて、落車への配慮を含め、選手たちがもっと安全に走れる環境づくりも必須だと感じています。
JBCFとJプロツアーチームが初めて共同開催し、大成功となった第1回宇都宮クリテリウム。ライダーと観戦者、運営側の誰にとっても満足の行く大会になったのは間違いないだろう。一レースファンとして、この大会が来年以降も継続して開催されること、そして様々な土地で宇都宮クリテの様に多くの観客が訪れるレースイベントが増えることを切に願いたい。
text:Yuya.Yamamoto
photo:Yuya.Yamamoto, So.Isobe, Hideaki.Takagi
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