2014/01/24(金) - 13:56
東京・西新宿のスペシャライズド東京にて、スペシャライズド本社でプロダクト・ディレクターを務めるブレント・グレイブス氏が来日し、トークショーを行った。開発の裏事情も聞くことのできたプレミアムなイベントの模様をレポート。
「スペシャライズド・ロードバイクの最高峰 S-WORKSの神髄をあなたにも」と銘打った「S-WORKS ROAD 開発秘話」トークショーが行われたのは、西新宿にある「スペシャライズド東京」。主役はスペシャライズド・アメリカ本社所属のブレント・グレイブス氏。ロードバイク部門のロードバイクプロダクト・ディレクターその人だ。
トークショーの趣旨は、普段めったに聞くことのできない製品開発の話、S-WORKSバイクの凄さ、速さ、強さの神髄を、開発に深く携わるブレント氏から直接聞けてしまう、というもの。この貴重な機会を逃すまいと、ストアには事前応募で定員いっぱいとなる30名のコアなファンやスペシャライズドユーザーが駆けつけた。
40年以上に渡る自転車マニアであるブレント氏。BMXやロードバイク、MTBなどあらゆる種目に精力的にチャレンジする生粋のサイクリストで、スペシャライズドに加入して4年目。過去3年間はロードバイクプロダクトマネージャーを務め、現在はマーク・カヴェンディッシュやトム・ボーネンなどの名を冠した限定モデルの担当を行っている人物だ。
トークショーはブレント氏の自己紹介と、スペシャライズド社が歩んできた軌跡についての説明からスタート。トークは全て英語であったものの、時折ユーモアを交えた分かりやすい説明と日本語通訳のおかげで滞り無く進んでいった。
スペシャライズド社についての説明で面白いなと感じたのは、最近新設された風洞実験設備についてのことだ。自社で風洞を作り上げてしまうこと自体も凄いことだが、これは低速度で走る自転車に特化した施設であり、従来実験を行っていた車・飛行機用とは違いより細かな分析が可能に。更によりレース状態に近い数値を検出できるよう複数台の同時テストが可能となったこと、そしてカーボン製のファンを全て自社内部で作り上げたことなど、とても興味深い内容を聞くことができたのであった。
また、スペシャライズドの特徴の一つとして、ブレント氏をはじめ社員が昼休みに参加する「ランチライド」が挙げられるだろう。多い時には100名が参加するこのライドでは、毎週金曜日にチャンピオンジャージを懸けたレースが行われ、優勝者は1週間ジャージを着用できるというから面白い。ブレント氏の言葉を借りれば、「どこよりも社員が自転車に対する情熱を持っている」メーカーを表すのに十分なエピソードだ。
といったユニークな話を交えた説明を1時間ほど続けたあとは、詰めかけた参加者からの質問タイムへ。その中から幾つかの質問と、その答えをピックアップして紹介しよう。
—新型アレーが発売されましたが、これからのアルミバイクの将来性をどう考えているのでしょうか?
おお、良い質問ですね。私はカーボン、アルミ、スチール、チタンなど色々な素材のバイクに乗ってきました。それぞれに個性がありますが、私個人的にはレースバイクにおけるカーボン以外の素材についてはほぼ諦めていたのですが、キャノンデールがCAAD10を出したことで価値観が大きく変わりました。
やはり安価でクラッシュにも強いことは大きな魅力ですし、今やアルミはカーボンと同レベルの剛性を出すまでに至っています。私はアレーのプロトタイプに乗っていて気に入っていますし、これからのアルミの可能性に期待したいと思っています。
ースペシャライズドのターマックは年々硬くなっていると思います。剛性についてはどう考えていますか?
前置きとして、スペシャライズドが製品に対して一番大事にしていることは、剛性ももちろん、快適性や安定性などそれらを包括した「ライドクオリティ」にあります。
剛性に関しては現状かなり高いレベルにあると感じており、一定以上に高くしてしまうと荒れた路面などでの快適性が損なわれ「ライドクオリティ」を落としてしまいますね。エアロや軽量さ、デザインに特化したブランドもあります。そのことはもちろん間違いではありませんが、スペシャライズドは一歩進んだ部分を模索しています。それがスペシャライズドがスペシャライズドたる理由なのです。
ー700cのホイールサイズで小さなフレームを作ることは難しいのですが、スペシャライズドではその部分をどう捉えているのでしょうか。
小さいフレームサイズのバイクを製作する上で一番の厄介事は、各国の安全基準。ハンドルを大きく切った場合、フロントホイールと足先がヒットしがちであるため、小さいサイズのフレームの設計はかなり難しいのです。この問題を完璧に解決するためには、そもそもヘッドチューブとフォークが連続して繋がっていること自体を見直さなければならないほど根本的なもの。その苦労は一言で説明できないほどに難しいものなのですが、そうした制約の中で最良の「ライドクオリティ」を提供できるよう模索しています。
—あっと言う間に1時間の質疑応答コーナーも終了し、トークショーはお開きに。それでもブレント氏を囲む熱心な参加者達からの質問は途切れることは無かった。およそ1時間以上もプライベートタイムを削ってファンサービスに努めてくれた氏へと、最後に感想を聞いてみた。
日本のファンの熱心さに心底驚いた
日本でこのようなイベントは始めてのことだったのだけれど、皆がとても熱心だったことに驚いたよ。質問コーナーでは誰も手を挙げないかと思っていたけれど、実際は質問の嵐でびっくりしたね。質問の内容も濃くて、ベストな回答をするのには少し苦労したんだ。
特に小さいサイズのフレームを作ることに関しての質問(上記)は、普段から社内でも難儀している部分だから、答えるのも難しかったんだ。僕は普段あまり話すことは得意ではないのだけれど、話を聞いてスペシャライズドに少しでも興味を持ってもらえたら良いと思うよ。集まってくれた全ての方に感謝したいね。
text&photo:So.Isobe
「スペシャライズド・ロードバイクの最高峰 S-WORKSの神髄をあなたにも」と銘打った「S-WORKS ROAD 開発秘話」トークショーが行われたのは、西新宿にある「スペシャライズド東京」。主役はスペシャライズド・アメリカ本社所属のブレント・グレイブス氏。ロードバイク部門のロードバイクプロダクト・ディレクターその人だ。
トークショーの趣旨は、普段めったに聞くことのできない製品開発の話、S-WORKSバイクの凄さ、速さ、強さの神髄を、開発に深く携わるブレント氏から直接聞けてしまう、というもの。この貴重な機会を逃すまいと、ストアには事前応募で定員いっぱいとなる30名のコアなファンやスペシャライズドユーザーが駆けつけた。
40年以上に渡る自転車マニアであるブレント氏。BMXやロードバイク、MTBなどあらゆる種目に精力的にチャレンジする生粋のサイクリストで、スペシャライズドに加入して4年目。過去3年間はロードバイクプロダクトマネージャーを務め、現在はマーク・カヴェンディッシュやトム・ボーネンなどの名を冠した限定モデルの担当を行っている人物だ。
トークショーはブレント氏の自己紹介と、スペシャライズド社が歩んできた軌跡についての説明からスタート。トークは全て英語であったものの、時折ユーモアを交えた分かりやすい説明と日本語通訳のおかげで滞り無く進んでいった。
スペシャライズド社についての説明で面白いなと感じたのは、最近新設された風洞実験設備についてのことだ。自社で風洞を作り上げてしまうこと自体も凄いことだが、これは低速度で走る自転車に特化した施設であり、従来実験を行っていた車・飛行機用とは違いより細かな分析が可能に。更によりレース状態に近い数値を検出できるよう複数台の同時テストが可能となったこと、そしてカーボン製のファンを全て自社内部で作り上げたことなど、とても興味深い内容を聞くことができたのであった。
また、スペシャライズドの特徴の一つとして、ブレント氏をはじめ社員が昼休みに参加する「ランチライド」が挙げられるだろう。多い時には100名が参加するこのライドでは、毎週金曜日にチャンピオンジャージを懸けたレースが行われ、優勝者は1週間ジャージを着用できるというから面白い。ブレント氏の言葉を借りれば、「どこよりも社員が自転車に対する情熱を持っている」メーカーを表すのに十分なエピソードだ。
といったユニークな話を交えた説明を1時間ほど続けたあとは、詰めかけた参加者からの質問タイムへ。その中から幾つかの質問と、その答えをピックアップして紹介しよう。
—新型アレーが発売されましたが、これからのアルミバイクの将来性をどう考えているのでしょうか?
おお、良い質問ですね。私はカーボン、アルミ、スチール、チタンなど色々な素材のバイクに乗ってきました。それぞれに個性がありますが、私個人的にはレースバイクにおけるカーボン以外の素材についてはほぼ諦めていたのですが、キャノンデールがCAAD10を出したことで価値観が大きく変わりました。
やはり安価でクラッシュにも強いことは大きな魅力ですし、今やアルミはカーボンと同レベルの剛性を出すまでに至っています。私はアレーのプロトタイプに乗っていて気に入っていますし、これからのアルミの可能性に期待したいと思っています。
ースペシャライズドのターマックは年々硬くなっていると思います。剛性についてはどう考えていますか?
前置きとして、スペシャライズドが製品に対して一番大事にしていることは、剛性ももちろん、快適性や安定性などそれらを包括した「ライドクオリティ」にあります。
剛性に関しては現状かなり高いレベルにあると感じており、一定以上に高くしてしまうと荒れた路面などでの快適性が損なわれ「ライドクオリティ」を落としてしまいますね。エアロや軽量さ、デザインに特化したブランドもあります。そのことはもちろん間違いではありませんが、スペシャライズドは一歩進んだ部分を模索しています。それがスペシャライズドがスペシャライズドたる理由なのです。
ー700cのホイールサイズで小さなフレームを作ることは難しいのですが、スペシャライズドではその部分をどう捉えているのでしょうか。
小さいフレームサイズのバイクを製作する上で一番の厄介事は、各国の安全基準。ハンドルを大きく切った場合、フロントホイールと足先がヒットしがちであるため、小さいサイズのフレームの設計はかなり難しいのです。この問題を完璧に解決するためには、そもそもヘッドチューブとフォークが連続して繋がっていること自体を見直さなければならないほど根本的なもの。その苦労は一言で説明できないほどに難しいものなのですが、そうした制約の中で最良の「ライドクオリティ」を提供できるよう模索しています。
—あっと言う間に1時間の質疑応答コーナーも終了し、トークショーはお開きに。それでもブレント氏を囲む熱心な参加者達からの質問は途切れることは無かった。およそ1時間以上もプライベートタイムを削ってファンサービスに努めてくれた氏へと、最後に感想を聞いてみた。
日本のファンの熱心さに心底驚いた
日本でこのようなイベントは始めてのことだったのだけれど、皆がとても熱心だったことに驚いたよ。質問コーナーでは誰も手を挙げないかと思っていたけれど、実際は質問の嵐でびっくりしたね。質問の内容も濃くて、ベストな回答をするのには少し苦労したんだ。
特に小さいサイズのフレームを作ることに関しての質問(上記)は、普段から社内でも難儀している部分だから、答えるのも難しかったんだ。僕は普段あまり話すことは得意ではないのだけれど、話を聞いてスペシャライズドに少しでも興味を持ってもらえたら良いと思うよ。集まってくれた全ての方に感謝したいね。
text&photo:So.Isobe
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