2013/10/14(月) - 10:47
多くのサイクリストに親しまれる荒川サイクリングロードを使用し、東京23区で開催される唯一のロングライドイベントが「東京センチュリーライド」だ。だんだんと秋の足音が聞こえてきた9月23日・秋分の日に開催されたこのイベントの模様をレポートする。
「荒川」と聞いてどんなイメージを思い浮かべるだろうか。東京近郊在住のサイクリストにとっては単に普段使いの自転車道でしかないと考える方がほとんどだろう。一方で、近年では事故などでテレビや新聞に登場する危険な場所と考える方も少なくないはず。
しかし、東京センチュリーライドは荒川を舞台に5年前から開催され、今大会でも約1,000名ものエントリーを集める大人気イベントだ。北海道など遠方から上京した方や仕事で来日した海外のサイクリスト、スポーツサイクルをはじめて間もないビギナー、荒川をホームコースとするライダーまで参加者の顔触れは様々だった。
大会の発着地点に設定されたのは荒川の河口付近にある葛西臨海公園。東京都が管理する公園の中では水元公園や小金井公園と並び最大規模の公園で、自然豊かな園内水族館や大観覧車、鳥類園がある他にBBQ広場が併設されており、大会当日も大勢の来園者で賑わっていた。
午前8時半のスタートを前に、集合場所である「汐風の広場」には続々と参加者が集まってくる。因みに汐風の広の目の前に位置する海浜公園事務所は憩いの場として多くのサイクリストが利用しており、元旦には初日の出を見ようと100人以上のサイクリストが集まる名物スポットである。交通手段を問わずアクセスが良いため、自転車で荒川を自走してきたり、京葉線や東西線を使って輪行などアプローチは多種多様だ。
コースは「荒川沿い」を通り、東京都江戸川区の葛西臨海公園から埼玉県さいたま市の秋ヶ瀬桜草公園までの40kmを往復する80kmが設定された。つまりハーフセンチュリーライドということだ。一般的には荒川サイクリングロード、通称荒サイと呼ばれる道を走るが、正式には都県境までは自転車道では無く「荒川下流の緊急用河川敷道路」である。
開会式では管理を行う国土交通省や地元警察から、しきりに「時速20kmの制限速度を守って、マナー良く走りましょう」と注意が促された。大会側の安全対策にも余念はなく、2分間隔で50台ずつスタートするウェイブスタート方式を採用し、各ウェーブには先導ライダーを走らせ、危険箇所には立哨員を配置するなど、万全を尽くす。
スタート後、すぐに荒川に沿って流れる中川沿いを走り、折り返し地点まで30以上存在する橋の中で最も新しい清砂大橋を渡る。時期によっては強風に曝されるため、自転車の場合にはハンドルを取られない様に注意が必要である。急勾配の下りとなっている橋の出口では自転車から降りて通過するなど、ここでも万全の安全対策が行われていた。橋を降りた後は普段であれば閉鎖されている土手の外側の作業用道路から土手に入る。
開会式のころこそ晴れていたものの、スタートしてみれば厚い雲が空を覆い、半袖では肌寒いと感じる程度に。風向きは普段から走り慣れていれば気にならないほどの向かい風だが、少々辛そうな参加者もいた。そして、早くもパンクする参加者が多数見受けられたが、サポートとして参加している現役メッセンジャーがフロアポンプを持って助けに入るため、非常に安心感が高い。
葛西臨海公園を後にして30分ほどで最初のエイドステーションで平井運動公園に到着する。今大会では、エイドが10kmごとに設置されており、初めてのロングライドにする参加者には嬉しいポイントだ。各地点でバナナや、協賛のロッテから「コアラのマーチ」や「ガーナチョコレート」、「パイの実」、「クランキー」の定番のお菓子など、ユニークな補給食を思う存分楽しむことが出来た。また往路の第1エイドのみ、メロンパンとアンパンが提供された。
15km地点では、TBS系列で放映された人気ドラマの金八先生のロケ地として有名な、東武スカイツリーライン堀切駅を通過する。駅の隣接する東京未来大学は金八先生の撮影時には「桜中学校」と使用されており、辺りの河川敷もロケ地になっている。また、すぐそばには隅田水門があり、水門の向こう側には荒川に沿うように墨田川が流れている。
2008年に開業したばかりの都営舎人ライナーの真下に設けれた第2エイドなどに立ち寄りながら、再び淡々と荒川を昇ると大きな水門に到着する。この「岩淵水門」は荒川から隅田川が分岐するポイントだ。ここもサイクリストの主要な休憩場所となっており、つい先日、無料空気入れが設置される休憩所が設置された。
文具通販大手である「アスクル」の前に位置する板橋区陸上競技場前に第3エイドは設置され、60kmの参加者はここで折り返しとなる。この辺りからエイドに長居したりストレッチしたりする参加者が目に付く。エイドを出ると、すぐに都県境に掛かる「笹目橋」の下を通り抜ける。
荒川沿いは基本的に平坦であるが、水門の近くには必ずといっていいほど登り坂があり、埼玉県に入って最初の水門になる朝霞水門も例外ではなく勾配こそ緩いが少し長めの坂があり、意外と疲労させられるが平坦ばかりでコースではいいアクセントになっている。坂の頂上からみえる景色は都内とは少し異なり、高い建物が少ない替わりに工場などか多くなる。
この辺りからは河川敷にサッカーグランドや野球場が少なくなるため、のんびり気楽に走ることが出来てとても快適だ。JR武蔵野線の高架と幸魂大橋を潜り、ほんのり色づいた田んぼの中を抜けると80kmの折り返しとなる
第4エイドの秋ヶ瀬桜草公園に到着。荒川は午前と午後で風向きが真逆になることが多いが、今大会も例外なく、往路同様に復路も向かい風となった。
復路は秋ヶ瀬公園を左手にスタートする。朝霞パブリックゴルフ場や東京都の水がめである人口湖「彩湖」、荒川の流れを近くに見ながら、あっという間に東京に戻る。河川敷といえば単調なイメージがあったが、ふと周りを見渡せば、所々に咲いていた彼岸花や秋桜など秋を感じることが出来た。
スポーツの秋とあって、河川敷のグランドではサッカーや野球に励む小中学生の姿が多い。同時に子供たちやボールがコースに飛び出してくるので注意が必要であった。
岩淵水門を越え、左岸の都県境の近くに位置する鹿浜橋を潜ると東京スカイツリーが大きく見える様になり、だんだんとゴールが近くなることを実感した。橋の上には都心をぐるっと1周囲う環状7号線が通り、左岸に渡ればサイクリストが多く集まる「レストランさくら」がある。
葛西臨海公園までは左岸の上を走る首都高速川口線/中央環状線を横目に淡々と走り印象でゴールを目指す。因みに夜に荒川を走ると、高速道路を照らすために煌々と光るオレンジ色の照明が非常に綺麗な夜景を見ることが出来る。つくばエクスプレスと東武スカイツリーラインが並ぶ足立区千住付近では、国内最大規模の拘置所である「東京拘置所」の独特な造形の建物が目を引く。そして、だんだんと日が傾き、薄い雲を透けるようにして指す夕日に包まれながら発着点の葛西臨海公園にゴール。
東京センチュリーライドは、山岳グランフォンドの様な絶景も無く、サーキットエンデューロの様に思いっきり走れる訳でもない。しかし、大会として改めて注意深く走ると荒川は走り応えがあるコースで、生活に根ざす多彩な表情があり、多くの参加者が「走り易かった」という様に恵まれた環境であることに気付かされた次第だ。
現在、荒サイの在り方については、9月6日付の日本経済新聞による「事実上スポーツ走行は禁止」記事など様々な報道や賛否両論の意見がある事も事実だ。この恵まれた素晴らしい環境を放棄しない為にも、私たちサイクリスト一人一人が自覚を持って、良識とマナーを改めて見直す必要がある事だけは間違いなさそうだ。
text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO
フォトギャラリー(CW FaceBook)
「荒川」と聞いてどんなイメージを思い浮かべるだろうか。東京近郊在住のサイクリストにとっては単に普段使いの自転車道でしかないと考える方がほとんどだろう。一方で、近年では事故などでテレビや新聞に登場する危険な場所と考える方も少なくないはず。
しかし、東京センチュリーライドは荒川を舞台に5年前から開催され、今大会でも約1,000名ものエントリーを集める大人気イベントだ。北海道など遠方から上京した方や仕事で来日した海外のサイクリスト、スポーツサイクルをはじめて間もないビギナー、荒川をホームコースとするライダーまで参加者の顔触れは様々だった。
大会の発着地点に設定されたのは荒川の河口付近にある葛西臨海公園。東京都が管理する公園の中では水元公園や小金井公園と並び最大規模の公園で、自然豊かな園内水族館や大観覧車、鳥類園がある他にBBQ広場が併設されており、大会当日も大勢の来園者で賑わっていた。
午前8時半のスタートを前に、集合場所である「汐風の広場」には続々と参加者が集まってくる。因みに汐風の広の目の前に位置する海浜公園事務所は憩いの場として多くのサイクリストが利用しており、元旦には初日の出を見ようと100人以上のサイクリストが集まる名物スポットである。交通手段を問わずアクセスが良いため、自転車で荒川を自走してきたり、京葉線や東西線を使って輪行などアプローチは多種多様だ。
コースは「荒川沿い」を通り、東京都江戸川区の葛西臨海公園から埼玉県さいたま市の秋ヶ瀬桜草公園までの40kmを往復する80kmが設定された。つまりハーフセンチュリーライドということだ。一般的には荒川サイクリングロード、通称荒サイと呼ばれる道を走るが、正式には都県境までは自転車道では無く「荒川下流の緊急用河川敷道路」である。
開会式では管理を行う国土交通省や地元警察から、しきりに「時速20kmの制限速度を守って、マナー良く走りましょう」と注意が促された。大会側の安全対策にも余念はなく、2分間隔で50台ずつスタートするウェイブスタート方式を採用し、各ウェーブには先導ライダーを走らせ、危険箇所には立哨員を配置するなど、万全を尽くす。
スタート後、すぐに荒川に沿って流れる中川沿いを走り、折り返し地点まで30以上存在する橋の中で最も新しい清砂大橋を渡る。時期によっては強風に曝されるため、自転車の場合にはハンドルを取られない様に注意が必要である。急勾配の下りとなっている橋の出口では自転車から降りて通過するなど、ここでも万全の安全対策が行われていた。橋を降りた後は普段であれば閉鎖されている土手の外側の作業用道路から土手に入る。
開会式のころこそ晴れていたものの、スタートしてみれば厚い雲が空を覆い、半袖では肌寒いと感じる程度に。風向きは普段から走り慣れていれば気にならないほどの向かい風だが、少々辛そうな参加者もいた。そして、早くもパンクする参加者が多数見受けられたが、サポートとして参加している現役メッセンジャーがフロアポンプを持って助けに入るため、非常に安心感が高い。
葛西臨海公園を後にして30分ほどで最初のエイドステーションで平井運動公園に到着する。今大会では、エイドが10kmごとに設置されており、初めてのロングライドにする参加者には嬉しいポイントだ。各地点でバナナや、協賛のロッテから「コアラのマーチ」や「ガーナチョコレート」、「パイの実」、「クランキー」の定番のお菓子など、ユニークな補給食を思う存分楽しむことが出来た。また往路の第1エイドのみ、メロンパンとアンパンが提供された。
15km地点では、TBS系列で放映された人気ドラマの金八先生のロケ地として有名な、東武スカイツリーライン堀切駅を通過する。駅の隣接する東京未来大学は金八先生の撮影時には「桜中学校」と使用されており、辺りの河川敷もロケ地になっている。また、すぐそばには隅田水門があり、水門の向こう側には荒川に沿うように墨田川が流れている。
2008年に開業したばかりの都営舎人ライナーの真下に設けれた第2エイドなどに立ち寄りながら、再び淡々と荒川を昇ると大きな水門に到着する。この「岩淵水門」は荒川から隅田川が分岐するポイントだ。ここもサイクリストの主要な休憩場所となっており、つい先日、無料空気入れが設置される休憩所が設置された。
文具通販大手である「アスクル」の前に位置する板橋区陸上競技場前に第3エイドは設置され、60kmの参加者はここで折り返しとなる。この辺りからエイドに長居したりストレッチしたりする参加者が目に付く。エイドを出ると、すぐに都県境に掛かる「笹目橋」の下を通り抜ける。
荒川沿いは基本的に平坦であるが、水門の近くには必ずといっていいほど登り坂があり、埼玉県に入って最初の水門になる朝霞水門も例外ではなく勾配こそ緩いが少し長めの坂があり、意外と疲労させられるが平坦ばかりでコースではいいアクセントになっている。坂の頂上からみえる景色は都内とは少し異なり、高い建物が少ない替わりに工場などか多くなる。
この辺りからは河川敷にサッカーグランドや野球場が少なくなるため、のんびり気楽に走ることが出来てとても快適だ。JR武蔵野線の高架と幸魂大橋を潜り、ほんのり色づいた田んぼの中を抜けると80kmの折り返しとなる
第4エイドの秋ヶ瀬桜草公園に到着。荒川は午前と午後で風向きが真逆になることが多いが、今大会も例外なく、往路同様に復路も向かい風となった。
復路は秋ヶ瀬公園を左手にスタートする。朝霞パブリックゴルフ場や東京都の水がめである人口湖「彩湖」、荒川の流れを近くに見ながら、あっという間に東京に戻る。河川敷といえば単調なイメージがあったが、ふと周りを見渡せば、所々に咲いていた彼岸花や秋桜など秋を感じることが出来た。
スポーツの秋とあって、河川敷のグランドではサッカーや野球に励む小中学生の姿が多い。同時に子供たちやボールがコースに飛び出してくるので注意が必要であった。
岩淵水門を越え、左岸の都県境の近くに位置する鹿浜橋を潜ると東京スカイツリーが大きく見える様になり、だんだんとゴールが近くなることを実感した。橋の上には都心をぐるっと1周囲う環状7号線が通り、左岸に渡ればサイクリストが多く集まる「レストランさくら」がある。
葛西臨海公園までは左岸の上を走る首都高速川口線/中央環状線を横目に淡々と走り印象でゴールを目指す。因みに夜に荒川を走ると、高速道路を照らすために煌々と光るオレンジ色の照明が非常に綺麗な夜景を見ることが出来る。つくばエクスプレスと東武スカイツリーラインが並ぶ足立区千住付近では、国内最大規模の拘置所である「東京拘置所」の独特な造形の建物が目を引く。そして、だんだんと日が傾き、薄い雲を透けるようにして指す夕日に包まれながら発着点の葛西臨海公園にゴール。
東京センチュリーライドは、山岳グランフォンドの様な絶景も無く、サーキットエンデューロの様に思いっきり走れる訳でもない。しかし、大会として改めて注意深く走ると荒川は走り応えがあるコースで、生活に根ざす多彩な表情があり、多くの参加者が「走り易かった」という様に恵まれた環境であることに気付かされた次第だ。
現在、荒サイの在り方については、9月6日付の日本経済新聞による「事実上スポーツ走行は禁止」記事など様々な報道や賛否両論の意見がある事も事実だ。この恵まれた素晴らしい環境を放棄しない為にも、私たちサイクリスト一人一人が自覚を持って、良識とマナーを改めて見直す必要がある事だけは間違いなさそうだ。
text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO
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