2013/09/25(水) - 08:55
都心から近く、サイクリストにとって魅力的な環境が広がる千葉県・房総エリア。地元自治体と協力しながらこの地域で数々のローカルイベントを運営し、房総の魅力を伝えているKSインターナショナル代表・白熊宏一さんに話を聞いた。
用意されたチェックポイントを巡り、マップを頼りに南房総を自分のペースで走る「Bo-So- サイクルオリエンテーリング」。9月15日に行われた本イベントだが、折しも台風18号接近の影響により、規模を大幅に縮小しての開催となった。
今回開催された「Bo-So- サイクルオリエンテーリング」は、KSインターナショナル(以下KSI)が運営するサイクルイベントシリーズの一環として位置づけられる大会だ。KSIでは2007年に富津市内で行われた耐久レースを皮切りに、「Bo-So-ツーリング」や「Bo-So-センチュリーライド」、そして地元鉄道会社と連携した「サイクルトレイン」など、多くのローカルイベントを運営し、房総の魅力的な環境を広める活動を行ってきた。
今回はKSIの代表を務める白熊宏一さんを中心に、イベントにゲスト参加した千葉県出身のモデル・RENさん、南房総市商工観光部・本間真理さんへ、座談形式でのインタビューを行った。房総ローカルイベントのキーパーソン・白熊さんが考える房総の魅力、イベント開催の意味とは。当日の様子、そして房総の知られざる魅力を撮影した写真と共に読み進めて頂きたい。
CW編集部:白熊さんはいつから房総でのイベントを開催しているのですか?また、なぜ房総なのでしょうか?
白熊さん:なぜ房総か、というと、私が生まれ育った場所だから、という答えで終わってしまいます(笑)。地元が好きですし、地元でサイクルイベントをできたらいいな、という思いで、富津公園内の公道を借り切った耐久レースを開催したのが7年前のことです。ほとんど房総エリアでは初となるロードレースイベントだったため、その際は都内近郊の方はもちろん、地元の方からも大きな注目を集めました。
ですが、エンデューロイベントでは同じところをグルグル走るだけ。もっとあちこちに点在する房総の魅力を知ってもらいたい、そして地域振興に繋げたいと思い、房総ツーリングと房総サイクルツーリングをスタートさせたんです。
CW編集部:白熊さんの考える、房総の魅力とはなんでしょうか?
白熊さん:最初から言ってしまうと、房総にはアルプスのようなダイナミックな自然はありません(笑)。標高1000m級の山なんかとんでもないですし、最高標高地点は400mほど。ですが低山であるため山の奥まで道があり、しかも大体が舗装されているためロードバイクで楽しめます。ある程度広い道でも信号が少なく、おまけに交通量も都会に比べたら無いに等しいですね。
山が低いために長い坂こそありませんが、適度な勾配のある、適度な坂が多い。つまり初心者にもちょうど良いし、レース派にはトレーニング環境として絶好の道が多くあるんです。また、地図を一見したでは分からないレベルの林道が縦横無尽に敷設され、素堀りのトンネルもとても多い。探求する楽しみや、ルートを引いて走りきる楽しみも存分に味わう事ができますね。
房総は非常に温暖ですから、他のエリアが雪で閉ざされてしまう場合でも路面凍結の心配はほとんどありません。更に行く先々でサイクリング中の立寄りにベストなB級グルメスポットが多いんです。特にソフトクリームはバリエーション豊富で、どれも美味しいですよ。ピーナツソフトや枇杷ソフト…。房総は全国酪農発祥の地でもあります。
加えて、地元の千葉県サイクリング協会が地道な活動を行ってきたため、自転車に対する地元の認知度も高いレベルにあります。ですから、多くのクルマがサイクリストを尊重してくれる。訪れやすい、走りやすい環境と、地元の理解。この要素が揃った地域は以外にも少ないのです。
CW編集部:RENさんはいかがですか?
RENさん:僕はもともと木更津の高校に通っていて、モデル業を始める以前からKSインターナショナルと縁の深い自転車ショップに通っていました。ですから自転車歴は相当に長いですね。その関係でゲストライダーとして協力させて頂いています。
房総の魅力とは、やはり圧倒的に車の台数が少ないことが魅力でしょう。いわゆる自転車の「気持ちいいゾーン」で走る事ができる。もちろん安全には気を遣うけれど、みんなと一緒に、プロ選手のように走れる。そんな一体感を味わう事ができるのが房総です。
最近は全国のいろいろなイベントに呼んで頂いているが、実際のところ、どこも結構遠いのが現実です。しまなみ海道は飛行機か新幹線が必要だし、日光も房総に比べたら凄く遠い。南房総に輪行で来るのも東京から特急で1本だし、各駅停車や快速を使っても乗り換えが1回で済む。鉄道マニア的な目線(注:RENさんはきっての鉄である)で見ると、東京湾沿いのダイナミックな車窓も魅力だし、駅弁も美味しい。ローカル線もあるし、旅派、輪行派のサイクリストも充分に満足できる環境がありますね。
CW編集部:白熊さんが運営するイベントはあくまでも小規模ですね。大人数のイベントとしないのは何故でしょうか。
白熊さん:例えば1000人規模のイベントにしてしまうと、走るルートも相当に制限されてしまい、前述したような「本当の房総の魅力を感じられる場所」を走れなくなってしまいます。例え地元の方が参加しても「こんな場所初めて来たよ!」と言われるような林道だったり、冒険心をくすぐるような場所を案内したいんですよ。
100人程度なら、参加者一人一人の顔を見る事ができます。一回に呼べる人数は少ないですが、それならば開催回数を増やしてしまえば良いじゃないかと。2013年は計8回のイベントをスケジュールし、進めています。お客さんからも「参加者の顔が見えるから安心」「手作り感が感じられて良い」という声を頂いています。
CW編集部:自治体として、サイクリストにどう房総を楽しんで欲しいのでしょうか。
本間さん:今南房総市ではスポーツでの町づくりを目指し、スポーツ振興を通じて新たな需要を生み出していきたいと考えています。南房総はたくさんの自然が魅力で、サイクリストのみなさんにもメリットと感じてもらえる部分は少なくないはずです。
去年はサイクルステーションを整備しました。ほとんどが駐車場も無料ですから、そこを拠点にいろいろなスポットを巡り、友達やお仲間に広めて頂きたいですね。
また、KSインターナショナルさんの協力を頂き、旧三芳村周辺の公道を使ったコースを提案し、来年度の全日本ロード選手権開催地にも立候補しました。来年は残念ながら外れてしまいましたが、今後もこうしたプロレースの誘致には動いていきたい、と思います。
白熊さん:実は今、JCFでは2015年の全日本選手権の開催地を公募中なんです。南房総では市町村合併以前の旧三芳村で千葉国体でのロードレース競技を誘致した実績があるため、開催への障害も少ないのです。
しかし大きなレースを誘致するためにはある程度の経験を積んでおく必要があります。今年の12月にはBOSOグランプリという公道クリテリウムを開催しますが、それもその一環としての意味があります。まだ未決定ではあるのですが、房総エリアでのシクロクロスレースの準備も進めています。
都心に住むサイクリストは最近ますます走る場所が少なくなって、辛い思いをしています。だからそういった方に、こんなにもアクセスが良くって走りやすい場所ー房総ーがある、と知ってもらいたい。
最近は魅力に気づいた都内近郊のサイクリストがアクアラインを渡って走りに来ていますが、とても嬉しく感じています。私たちのイベントや、そうした仲間の情報から房総の魅力を知り、リピーターが増えてくれれば良いですね。
取材を行った私の周りにも、最近では車や輪行、フェリーを使って房総へと走りに行くサイクリストが増えてきた。取材時も都心からアクアラインを渡るまで1時間弱、南房総までは+30分。このくらいの移動時間であれば負担も少ないし、一日中走っても帰宅時間はあまり遅くならないはずだ。そんな身近な存在である房総で、地元を挙げて取り組むKSインターナショナルのローカルイベントは、房総の魅力を知る絶好の機会となるに違いない。
interview & text & photo:So.Isobe
用意されたチェックポイントを巡り、マップを頼りに南房総を自分のペースで走る「Bo-So- サイクルオリエンテーリング」。9月15日に行われた本イベントだが、折しも台風18号接近の影響により、規模を大幅に縮小しての開催となった。
今回開催された「Bo-So- サイクルオリエンテーリング」は、KSインターナショナル(以下KSI)が運営するサイクルイベントシリーズの一環として位置づけられる大会だ。KSIでは2007年に富津市内で行われた耐久レースを皮切りに、「Bo-So-ツーリング」や「Bo-So-センチュリーライド」、そして地元鉄道会社と連携した「サイクルトレイン」など、多くのローカルイベントを運営し、房総の魅力的な環境を広める活動を行ってきた。
今回はKSIの代表を務める白熊宏一さんを中心に、イベントにゲスト参加した千葉県出身のモデル・RENさん、南房総市商工観光部・本間真理さんへ、座談形式でのインタビューを行った。房総ローカルイベントのキーパーソン・白熊さんが考える房総の魅力、イベント開催の意味とは。当日の様子、そして房総の知られざる魅力を撮影した写真と共に読み進めて頂きたい。
CW編集部:白熊さんはいつから房総でのイベントを開催しているのですか?また、なぜ房総なのでしょうか?
白熊さん:なぜ房総か、というと、私が生まれ育った場所だから、という答えで終わってしまいます(笑)。地元が好きですし、地元でサイクルイベントをできたらいいな、という思いで、富津公園内の公道を借り切った耐久レースを開催したのが7年前のことです。ほとんど房総エリアでは初となるロードレースイベントだったため、その際は都内近郊の方はもちろん、地元の方からも大きな注目を集めました。
ですが、エンデューロイベントでは同じところをグルグル走るだけ。もっとあちこちに点在する房総の魅力を知ってもらいたい、そして地域振興に繋げたいと思い、房総ツーリングと房総サイクルツーリングをスタートさせたんです。
CW編集部:白熊さんの考える、房総の魅力とはなんでしょうか?
白熊さん:最初から言ってしまうと、房総にはアルプスのようなダイナミックな自然はありません(笑)。標高1000m級の山なんかとんでもないですし、最高標高地点は400mほど。ですが低山であるため山の奥まで道があり、しかも大体が舗装されているためロードバイクで楽しめます。ある程度広い道でも信号が少なく、おまけに交通量も都会に比べたら無いに等しいですね。
山が低いために長い坂こそありませんが、適度な勾配のある、適度な坂が多い。つまり初心者にもちょうど良いし、レース派にはトレーニング環境として絶好の道が多くあるんです。また、地図を一見したでは分からないレベルの林道が縦横無尽に敷設され、素堀りのトンネルもとても多い。探求する楽しみや、ルートを引いて走りきる楽しみも存分に味わう事ができますね。
房総は非常に温暖ですから、他のエリアが雪で閉ざされてしまう場合でも路面凍結の心配はほとんどありません。更に行く先々でサイクリング中の立寄りにベストなB級グルメスポットが多いんです。特にソフトクリームはバリエーション豊富で、どれも美味しいですよ。ピーナツソフトや枇杷ソフト…。房総は全国酪農発祥の地でもあります。
加えて、地元の千葉県サイクリング協会が地道な活動を行ってきたため、自転車に対する地元の認知度も高いレベルにあります。ですから、多くのクルマがサイクリストを尊重してくれる。訪れやすい、走りやすい環境と、地元の理解。この要素が揃った地域は以外にも少ないのです。
CW編集部:RENさんはいかがですか?
RENさん:僕はもともと木更津の高校に通っていて、モデル業を始める以前からKSインターナショナルと縁の深い自転車ショップに通っていました。ですから自転車歴は相当に長いですね。その関係でゲストライダーとして協力させて頂いています。
房総の魅力とは、やはり圧倒的に車の台数が少ないことが魅力でしょう。いわゆる自転車の「気持ちいいゾーン」で走る事ができる。もちろん安全には気を遣うけれど、みんなと一緒に、プロ選手のように走れる。そんな一体感を味わう事ができるのが房総です。
最近は全国のいろいろなイベントに呼んで頂いているが、実際のところ、どこも結構遠いのが現実です。しまなみ海道は飛行機か新幹線が必要だし、日光も房総に比べたら凄く遠い。南房総に輪行で来るのも東京から特急で1本だし、各駅停車や快速を使っても乗り換えが1回で済む。鉄道マニア的な目線(注:RENさんはきっての鉄である)で見ると、東京湾沿いのダイナミックな車窓も魅力だし、駅弁も美味しい。ローカル線もあるし、旅派、輪行派のサイクリストも充分に満足できる環境がありますね。
CW編集部:白熊さんが運営するイベントはあくまでも小規模ですね。大人数のイベントとしないのは何故でしょうか。
白熊さん:例えば1000人規模のイベントにしてしまうと、走るルートも相当に制限されてしまい、前述したような「本当の房総の魅力を感じられる場所」を走れなくなってしまいます。例え地元の方が参加しても「こんな場所初めて来たよ!」と言われるような林道だったり、冒険心をくすぐるような場所を案内したいんですよ。
100人程度なら、参加者一人一人の顔を見る事ができます。一回に呼べる人数は少ないですが、それならば開催回数を増やしてしまえば良いじゃないかと。2013年は計8回のイベントをスケジュールし、進めています。お客さんからも「参加者の顔が見えるから安心」「手作り感が感じられて良い」という声を頂いています。
CW編集部:自治体として、サイクリストにどう房総を楽しんで欲しいのでしょうか。
本間さん:今南房総市ではスポーツでの町づくりを目指し、スポーツ振興を通じて新たな需要を生み出していきたいと考えています。南房総はたくさんの自然が魅力で、サイクリストのみなさんにもメリットと感じてもらえる部分は少なくないはずです。
去年はサイクルステーションを整備しました。ほとんどが駐車場も無料ですから、そこを拠点にいろいろなスポットを巡り、友達やお仲間に広めて頂きたいですね。
また、KSインターナショナルさんの協力を頂き、旧三芳村周辺の公道を使ったコースを提案し、来年度の全日本ロード選手権開催地にも立候補しました。来年は残念ながら外れてしまいましたが、今後もこうしたプロレースの誘致には動いていきたい、と思います。
白熊さん:実は今、JCFでは2015年の全日本選手権の開催地を公募中なんです。南房総では市町村合併以前の旧三芳村で千葉国体でのロードレース競技を誘致した実績があるため、開催への障害も少ないのです。
しかし大きなレースを誘致するためにはある程度の経験を積んでおく必要があります。今年の12月にはBOSOグランプリという公道クリテリウムを開催しますが、それもその一環としての意味があります。まだ未決定ではあるのですが、房総エリアでのシクロクロスレースの準備も進めています。
都心に住むサイクリストは最近ますます走る場所が少なくなって、辛い思いをしています。だからそういった方に、こんなにもアクセスが良くって走りやすい場所ー房総ーがある、と知ってもらいたい。
最近は魅力に気づいた都内近郊のサイクリストがアクアラインを渡って走りに来ていますが、とても嬉しく感じています。私たちのイベントや、そうした仲間の情報から房総の魅力を知り、リピーターが増えてくれれば良いですね。
取材を行った私の周りにも、最近では車や輪行、フェリーを使って房総へと走りに行くサイクリストが増えてきた。取材時も都心からアクアラインを渡るまで1時間弱、南房総までは+30分。このくらいの移動時間であれば負担も少ないし、一日中走っても帰宅時間はあまり遅くならないはずだ。そんな身近な存在である房総で、地元を挙げて取り組むKSインターナショナルのローカルイベントは、房総の魅力を知る絶好の機会となるに違いない。
interview & text & photo:So.Isobe
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