2013/09/27(金) - 09:03
Rapha Gentlemen's Race(RGR)。CWチームも参加した野辺山での第1回大会、京都での第2回大会を経て、3回目はRapha Japanのお膝元である野辺山を舞台に再び開催された。距離約130km、獲得標高3000m超という厳しいルートに追い討ちをかける、冷雨とグラベル…。ここに参加した女性のみのチームFive Continental Coffee(#fccoffee)のメンバー、石井美穂さん(通称「ちゅなどん=@chunadon」さん)による参加レポートを、全3編にてお届けします。
この前夜、5人が揃うまでがまず、ドラマの連続だった。
本来、ここではイベント当日の中身をレポートすればよいところだが、わたしたちFive Continental Coffee(#fccoffee)のストーリーはこの前夜まで遡る。
本番二日前まで38℃の熱を出して4日間寝込んでいたメンバー、激務で直前まで参加が危ぶまれていたメンバー、当日、出発直前に荷物と鍵を家に置いたまま整体にでかけてしまいそのまま家族に閉め出されたメンバー、順調に野辺山に向かっていたのにも関わらず、途中、電車が遅延して最後のローカル線への乗り継ぎができず2時間ホームで待ったーーーわたし。なんだよこれ。サザエさんか吉本新喜劇じゃないのか…というくらい、次々とトラブルに襲われるわたしたち。誰が最初に野辺山にアガるのか。果たして全員アガることができるのか。『野辺山すごろく』さながらである。
前泊の宿で5人が揃った。わたしは「もうこれで終わりでええんちゃうの」と言ったくらい、めでたいことだった。発起人でリーダーのちはるこにもやっと「はじめまして」が言えたし。
今回、RGRに参加するために仕立てられた即席チームのFive Continental Coffeeは女性ばかり5名。発起人はダブルヨシダ。リーダーちはるこ(吉田千春子/八ヶ岳CYCLING CLUBーシクロクロス)、ナツキ(吉田菜津季/盆栽自転車店バリスター街乗り)の若いヨシダたち。そこに加わったのがぬえたん(なるしまフレンドレーシングーロードレース&シクロクロス)、にゃおち(Takarazuka Lineーシクロクロス)、ちゅなどん(石井美穂/ちゅなどん・CICADA United Rideー街乗り)のおば…お姐さんたち。
平均年齢は36.1歳。若くはないが、脚がある、というわけでもない。あかんがな。
ようやく全員が揃い、まずはーーー風呂へ入った。はじめまして のち 風呂、である。なんだかよくわからないが(はじめましてから脱ぐまで、が)人生最速だった。チームFive Continetal Coffeeはこの貸し切りの狭い風呂でチームの契りを交わしたような、そんな記憶に残る最高に可笑しい入浴だった。写真がないのはご愛嬌である。
一夜明け、午前4時起床。みんなあまり良く眠れていなかったようだ。わたしもなんだか寝苦しく、深夜まで記憶があったけれど、疲労感はない。気にしていた天気は…空は曇りがちだけれど明るい。気温もそれほど低くない。風も穏やか。山々に霧が立ちこめ、雲の端が光る様が美しい。野辺山の朝だ。
今回このチームにはCYCLISM様よりSUPACAZのバーテープをご提供いただいた。その作業のため前夜からピットインしていた機材を引き取りにRapha Japanへ向かう。RGRのスタート地点である滝沢牧場のすぐ横だった。発色鮮やかなバーテープを巻かれ、シャキっとした愛機とご対面。わたしが選んだのはネオンピンク×黒。prologoのサドルのエッジと色が合っている。みんなそれぞれ、自転車に合わせた色でドレスアップだ。ゴキゲンだね。
スタート前のブリーフィングではコース変更(当初の予定より約10km短縮された)についての解説がきめ細やかに行われている。配布されたキューシートに変更個所を書き込むリーダーちはるこを囲んで、真剣な表情。だが…走ったことのないコースのことは…正直、わかるわけないだろ?、と思ったことをここで告白しておこう。もちろん受付では変更になったルートマップデータを各人のGarminに落としてくれたので、GPSがちゃんと働いていれば、正しいルートを辿ることはできる…はずだ。(わたしたちは全員Garmin Edge500を使用)
スタートは1チームずつ。5分の間隔をあけてスタートしていく。先陣を切ったのはもう1チームあった女性ばかりのチーム。当然、わたしたちはその次、2番手スタートを予想していた。だがしかし。4番目のスタートだと言うではないか。なんでやねん。
おそらくこれはーーーリーダーちはるこのシクロクロスでの戦績、実業団選手であるぬえたんの走力が評価されてのことだと思われる。初参加、街乗り専門のわたしのことなどまったく考慮されていないスタート順である。まったくもう…そういうことならやってやろうじゃん、などとまでは思わないが、完走、やるしかないのだ。
スタート位置につき、オフィシャルからの注意事項を受ける。交通ルールについての当たり前な部分はさておいて。『撮影のカメラには手を振ったりピースとかしないように』となんともRaphaらしい、というかなんというか。
確かに過去のRGRの写真やムービーにそんなカットは見たことが、ない。なるほど。そうやってあの自転車乗りの誇りに溢れた品位高い写真やムービーは撮影されているのだな。カメラ見たらつい手を振ってしまう習性を持つわたしは要注意。郷に入れば郷に従えだ。心にしかと刻む。カメラが来たら、笑わない、笑わないんだぞ…
午前6時40分、Five Continental CoffeeのRGRがスタートした。
両側に畑が広がる農道をゆく。キャベツ、レタスの収穫作業をしている農家さんと挨拶を交わす。わたしは普段から走りにいく先々でその地に生活する方への感謝のきもち、お邪魔します、のこころをご挨拶という形で表すのが好きだ。こちらは自転車だから、通り過ぎてしまうその一瞬でできること、といったら挨拶くらいだから、なのだけれど。
和やかにお喋りと早朝の空気感を楽しむわたしたち。
花卉(かき)農家の畑ではサルビアやマリーゴールドが満開になっていて畝が錦の帯のように彩られている。うわーっ!ここすごーいっ!と思わず声があがる。
このRGR、いくつかの『決めごと』というのがあって、その一つが写真。チームで10枚以上、Instagramを使って撮影した写真をハッシュタグをつけてアップロードする、というもの。それぞれの目線、センスでこのRGRのシーンを(カッコよく)切り取ってください、ということなのだろうと理解してはいるものの…
走っている、そのこと自体が気持ちよく楽しんでしまい、写真を撮るために脚を止めるのがどうもおっくう(面倒)になっている5人の女性たち。絶好のシャッターチャンスであろう花畑の前ですら「ほんとならこーゆーとこで写真撮るんだよねー」と素通りするFCCクオリティが成立しつつある。
女子力、という言葉がある。ときにポジティブに、時に皮肉っぽく使うことがあるのだけど、私たちは相対的に『女子力が低め』な5人なのだろう。そしてコーヒーが好き。なのである。
のどかな田園風景の中、脚的にものどか(緩やかな下り基調)な序盤。「きもちいいねー」「このままの感じで終わったらいいのにねー」「ねー」「コーヒー飲みたいねー」「ねー」勝手なことを言う我ら。景色は良いし、空気は美味しい、信号はなく、車とすれ違うと言えばトラクターばかり。自転車に乗ることを楽しむひとならば誰しもがうれしく思う条件が揃っている。本当に、このままの感じで終わったらいいのに。
だがしかし…確実に山は近づいている。
そしてその時は何の前触れも無くやってきた。突然目の前に細く緑濃い林道が現れる。「ギャー」「キター」「なにこれー」「うおぉぉ」…口々に『感想』を述べながら、手は忙しくカチャカチャとギアを軽くする。
はじまった…な。ここからだ。
text:Miho.Ishii
photo:fccoffee、Kazuhiro/Watanabe / Rapha.cc、Rapha.cc
この前夜、5人が揃うまでがまず、ドラマの連続だった。
本来、ここではイベント当日の中身をレポートすればよいところだが、わたしたちFive Continental Coffee(#fccoffee)のストーリーはこの前夜まで遡る。
本番二日前まで38℃の熱を出して4日間寝込んでいたメンバー、激務で直前まで参加が危ぶまれていたメンバー、当日、出発直前に荷物と鍵を家に置いたまま整体にでかけてしまいそのまま家族に閉め出されたメンバー、順調に野辺山に向かっていたのにも関わらず、途中、電車が遅延して最後のローカル線への乗り継ぎができず2時間ホームで待ったーーーわたし。なんだよこれ。サザエさんか吉本新喜劇じゃないのか…というくらい、次々とトラブルに襲われるわたしたち。誰が最初に野辺山にアガるのか。果たして全員アガることができるのか。『野辺山すごろく』さながらである。
前泊の宿で5人が揃った。わたしは「もうこれで終わりでええんちゃうの」と言ったくらい、めでたいことだった。発起人でリーダーのちはるこにもやっと「はじめまして」が言えたし。
今回、RGRに参加するために仕立てられた即席チームのFive Continental Coffeeは女性ばかり5名。発起人はダブルヨシダ。リーダーちはるこ(吉田千春子/八ヶ岳CYCLING CLUBーシクロクロス)、ナツキ(吉田菜津季/盆栽自転車店バリスター街乗り)の若いヨシダたち。そこに加わったのがぬえたん(なるしまフレンドレーシングーロードレース&シクロクロス)、にゃおち(Takarazuka Lineーシクロクロス)、ちゅなどん(石井美穂/ちゅなどん・CICADA United Rideー街乗り)のおば…お姐さんたち。
平均年齢は36.1歳。若くはないが、脚がある、というわけでもない。あかんがな。
ようやく全員が揃い、まずはーーー風呂へ入った。はじめまして のち 風呂、である。なんだかよくわからないが(はじめましてから脱ぐまで、が)人生最速だった。チームFive Continetal Coffeeはこの貸し切りの狭い風呂でチームの契りを交わしたような、そんな記憶に残る最高に可笑しい入浴だった。写真がないのはご愛嬌である。
一夜明け、午前4時起床。みんなあまり良く眠れていなかったようだ。わたしもなんだか寝苦しく、深夜まで記憶があったけれど、疲労感はない。気にしていた天気は…空は曇りがちだけれど明るい。気温もそれほど低くない。風も穏やか。山々に霧が立ちこめ、雲の端が光る様が美しい。野辺山の朝だ。
今回このチームにはCYCLISM様よりSUPACAZのバーテープをご提供いただいた。その作業のため前夜からピットインしていた機材を引き取りにRapha Japanへ向かう。RGRのスタート地点である滝沢牧場のすぐ横だった。発色鮮やかなバーテープを巻かれ、シャキっとした愛機とご対面。わたしが選んだのはネオンピンク×黒。prologoのサドルのエッジと色が合っている。みんなそれぞれ、自転車に合わせた色でドレスアップだ。ゴキゲンだね。
スタート前のブリーフィングではコース変更(当初の予定より約10km短縮された)についての解説がきめ細やかに行われている。配布されたキューシートに変更個所を書き込むリーダーちはるこを囲んで、真剣な表情。だが…走ったことのないコースのことは…正直、わかるわけないだろ?、と思ったことをここで告白しておこう。もちろん受付では変更になったルートマップデータを各人のGarminに落としてくれたので、GPSがちゃんと働いていれば、正しいルートを辿ることはできる…はずだ。(わたしたちは全員Garmin Edge500を使用)
スタートは1チームずつ。5分の間隔をあけてスタートしていく。先陣を切ったのはもう1チームあった女性ばかりのチーム。当然、わたしたちはその次、2番手スタートを予想していた。だがしかし。4番目のスタートだと言うではないか。なんでやねん。
おそらくこれはーーーリーダーちはるこのシクロクロスでの戦績、実業団選手であるぬえたんの走力が評価されてのことだと思われる。初参加、街乗り専門のわたしのことなどまったく考慮されていないスタート順である。まったくもう…そういうことならやってやろうじゃん、などとまでは思わないが、完走、やるしかないのだ。
スタート位置につき、オフィシャルからの注意事項を受ける。交通ルールについての当たり前な部分はさておいて。『撮影のカメラには手を振ったりピースとかしないように』となんともRaphaらしい、というかなんというか。
確かに過去のRGRの写真やムービーにそんなカットは見たことが、ない。なるほど。そうやってあの自転車乗りの誇りに溢れた品位高い写真やムービーは撮影されているのだな。カメラ見たらつい手を振ってしまう習性を持つわたしは要注意。郷に入れば郷に従えだ。心にしかと刻む。カメラが来たら、笑わない、笑わないんだぞ…
午前6時40分、Five Continental CoffeeのRGRがスタートした。
両側に畑が広がる農道をゆく。キャベツ、レタスの収穫作業をしている農家さんと挨拶を交わす。わたしは普段から走りにいく先々でその地に生活する方への感謝のきもち、お邪魔します、のこころをご挨拶という形で表すのが好きだ。こちらは自転車だから、通り過ぎてしまうその一瞬でできること、といったら挨拶くらいだから、なのだけれど。
和やかにお喋りと早朝の空気感を楽しむわたしたち。
花卉(かき)農家の畑ではサルビアやマリーゴールドが満開になっていて畝が錦の帯のように彩られている。うわーっ!ここすごーいっ!と思わず声があがる。
このRGR、いくつかの『決めごと』というのがあって、その一つが写真。チームで10枚以上、Instagramを使って撮影した写真をハッシュタグをつけてアップロードする、というもの。それぞれの目線、センスでこのRGRのシーンを(カッコよく)切り取ってください、ということなのだろうと理解してはいるものの…
走っている、そのこと自体が気持ちよく楽しんでしまい、写真を撮るために脚を止めるのがどうもおっくう(面倒)になっている5人の女性たち。絶好のシャッターチャンスであろう花畑の前ですら「ほんとならこーゆーとこで写真撮るんだよねー」と素通りするFCCクオリティが成立しつつある。
女子力、という言葉がある。ときにポジティブに、時に皮肉っぽく使うことがあるのだけど、私たちは相対的に『女子力が低め』な5人なのだろう。そしてコーヒーが好き。なのである。
のどかな田園風景の中、脚的にものどか(緩やかな下り基調)な序盤。「きもちいいねー」「このままの感じで終わったらいいのにねー」「ねー」「コーヒー飲みたいねー」「ねー」勝手なことを言う我ら。景色は良いし、空気は美味しい、信号はなく、車とすれ違うと言えばトラクターばかり。自転車に乗ることを楽しむひとならば誰しもがうれしく思う条件が揃っている。本当に、このままの感じで終わったらいいのに。
だがしかし…確実に山は近づいている。
そしてその時は何の前触れも無くやってきた。突然目の前に細く緑濃い林道が現れる。「ギャー」「キター」「なにこれー」「うおぉぉ」…口々に『感想』を述べながら、手は忙しくカチャカチャとギアを軽くする。
はじまった…な。ここからだ。
text:Miho.Ishii
photo:fccoffee、Kazuhiro/Watanabe / Rapha.cc、Rapha.cc
Amazon.co.jp