2013/02/19(火) - 08:05
昨シーズンから盛り上がりを見せるシクロクロス人気。これに乗ってCW編集部でも2台のマシンが組み上がった。今回は編集部・磯部が組んだハンドメイドバイクの制作レポートをお届けする。
私を含めたシクロクロスビギナーにとって、転倒やクラッシュによるバイクの破損は大きな心配材料。ロードバイクで乗っているだけに軽量かつ最新トレンドのカーボンバイクは魅力だけれど、そんな不安も(実際にレースに参加したことがないだけに)大きい。
その点で言えば、金属フレームは安心が大きいところ。シクロクロスレースの取材をしても昔の金属フレームが未だに走っているし、細身のフレームワークはいつの時代でも古く感じない。ロードバイクはパリパリのカーボンバイクに乗っているため、何となく次のバイクは金属にしようかなとも思っていた。
そこで今回、私のバイクは積極的にレースに参加することも踏まえ「しっかりとレース機材として走る金属バイク」というテーマでフレーム選びとパーツ選択をすることに。フルカーボンディスクブレーキ仕様のバイクを組んだ編集長に対して、その真逆を行くチョイスだ。
構想を練っていたのはRapha Koshin Gentleman's Raceに参加した時期。そのイベントにはHunter CyclesやDobbat's、SpeedVagenなど、いかにもRaphaな雰囲気漂うお洒落なバイクが多く参加していて、すっかりハンドメイドバイクの持つ独特の世界に魅了されてしまった。
そこでこの企画を機に、オーダーメイドバイクを作ることを決意。選んだブランドはアメリカのビルダーブランドの中心に位置するIndependent Fabrication(インディペンデント・ファブリケーション、通称IF)だ。Raphaとの関係も深く、互いにタッグを組んでブランディングするIF。
その「お洒落感」と豊富なバリエーション、納期の短さという理由からチョイスした。八ヶ岳バイシクルスタジオの矢野大介さんが国内販売代理店の総轄を務めることもあり、氏のアドバイスを受けながらバイクの構想を練った。
Independent Fabricationというブランドは、MTB最初期に活躍したビルダー達が工房の移転などを機に1995年に立ち上げられた。長らくマサチューセッツ州を拠点としていたが、現在はニューハンプシャー州のニューマーケットに工房を移転して活動している。
お洒落なブランドと言えど懐古主義には走らず、しっかりレース機材として"走るバイク"を作りたい。かつ一応にはメディアとしての立場もあるので、何かエピックなものを。そんな思いに矢野さんは、通常ラインナップに無いパイプを使ってフレームを作るという提案をしてくれた。
現在IFのCXバイクラインナップは通常のクロモリ仕様と、チタン仕様の2つ。しかし私のバイクに使ったチューブはレイノルズの853 Pro Team。これはロードモデルのFactory Lightweightに使われているもので、通常CXバイクには使われない超軽量パイプだ。
ライダーの好みに合わせてカスタムも行うことができ、カタログモデルとは異なるオンリーワンのスペシャル仕様を、アドバイスを受けながら思案して、作り上げることができる。
私の仕様はかなりレース志向に振ったオーダーとなったが、使い方や乗り味の好みを具現化できるとは、なんと幸せなことだろう。この辺りはオーダーメイドの大きな魅力。ちなみに私の仕様はカタログには無いが、アップチャージ次第で誰にでもオーダー可能だ。
折角だからとことん軽量化を突き進めるため、フォークはエンヴィのカーボンで、ケーブル長を短くするためにワイヤー類は下引きに設定した。
オーダーだけに私の体型を矢野さんに採寸して頂き、カラーやグラフィックは私のような素人がやおら行うのは危険極まりないので全て経験豊富な矢野さんにオマカセ。後は発注を掛けてもらい、フレームが到着するのを待った。
「どんなフレーム?走りは軽いんだろうか?パーツはどうしよう!」
そう考えている時が一番楽しくてワクワクするのは、読者諸兄は皆経験済みだと思うが、いかがだろう。
レース志向に振ったフレームだけに、パーツも実戦に則したものをなるべくアメリカンブランドで統一してチョイス。パーツ類は(無理すれば)いくらでもマニアックな味付けに出来てしまうので、ここらのさじ加減は重要だ。
コンポーネントはSRAM、ベアリング類はクリスキングとアメリカンブランドの定番コースを地で行くパーツ構成としたが、BBだけはReset Racing Components(リセットレーシング)というジャーマンブランドを選択した。セラミックパーツは使わないが、卓越したCNC加工による精度の高い製品だ。全て定番コースでバイクを作るのは嫌だったので、ちょっとここは外し技を。
レッドの下に位置するFORCEを選択したのは、レッドのカッコ良さをキープしたままお財布的にも優しいし、バイクのカラーがおおまかに分かっていたので、レッドの差し色の赤を加えたくなかったから。カラーコーディネイトは重要だ。
ルックスは性能以上のモチベーションをライダーに与える。
ギアの歯数は、シクロクロス経験が無い身には難しいところ。昨年のプロロードシーンではトップレーサーがリアに大きな歯数のカセットを入れているのが話題になったが、その時使用していたビッグカセットとロングゲージRディレイラーがちょうどデビューしていたので、競技ビギナーのため、高低差のあるコースでも乗れるよう前36×46T、後ろ12-30Tとし、しばらく様子を見ることにした。
ステムとシートポストはトムソンのアルミで信頼性を高めたが、新製品としてアメリカシクロクロス界の女王・ケイティ・コンプトンの名を冠したカーボンハンドルが発売されたのでこれをチョイス。理由は女性ライダーが使っているため手の小さい日本人にも合うかな、と思ったのと、なにより"プロモデル"というキャッチにシビレたから。ちゃんとしたリサーチはしていないが、こんな感じで良いと思う。
納期の早さや価格を度外視してしまったパーツ構成ゆえ、組んだのはシクロクロスシーズンも終わりに近づいた2月はじめ。まぁ仕方ない。こだわりとはそんなものだし、中途半端なバイクは作りたくなかった。
やがて2ヶ月という短納期でバイクが届き、実物を持って見て驚いた。超軽量パイプを使ったフレームは1300gと軽い。塗装したとは言え、エンヴィ製フォークの軽さは言わずもがなだ。
"ピンストライプ"をテーマとしたというグラフィックは、明るいグレーにブルーの細いストライプが入り、トップチューブの白い胴抜きと相まって最高にクール!マット仕上げも拍車を掛けて素晴らしい。フォークは左側だけIFの王冠ロゴが散りばめられ、落ち着いたフレームとは対照的に遊びごころたっぷり。シルバーのヘッドバッヂも渋く決まっていて、いやはや、コレは格好良い。ただただ、デザインを担当してくれた矢野さんに感謝しきりである。
フレームセットやパーツも揃い、次号はいよいよバイクの制作に入っていく。
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,So.Isobe
私を含めたシクロクロスビギナーにとって、転倒やクラッシュによるバイクの破損は大きな心配材料。ロードバイクで乗っているだけに軽量かつ最新トレンドのカーボンバイクは魅力だけれど、そんな不安も(実際にレースに参加したことがないだけに)大きい。
その点で言えば、金属フレームは安心が大きいところ。シクロクロスレースの取材をしても昔の金属フレームが未だに走っているし、細身のフレームワークはいつの時代でも古く感じない。ロードバイクはパリパリのカーボンバイクに乗っているため、何となく次のバイクは金属にしようかなとも思っていた。
そこで今回、私のバイクは積極的にレースに参加することも踏まえ「しっかりとレース機材として走る金属バイク」というテーマでフレーム選びとパーツ選択をすることに。フルカーボンディスクブレーキ仕様のバイクを組んだ編集長に対して、その真逆を行くチョイスだ。
構想を練っていたのはRapha Koshin Gentleman's Raceに参加した時期。そのイベントにはHunter CyclesやDobbat's、SpeedVagenなど、いかにもRaphaな雰囲気漂うお洒落なバイクが多く参加していて、すっかりハンドメイドバイクの持つ独特の世界に魅了されてしまった。
そこでこの企画を機に、オーダーメイドバイクを作ることを決意。選んだブランドはアメリカのビルダーブランドの中心に位置するIndependent Fabrication(インディペンデント・ファブリケーション、通称IF)だ。Raphaとの関係も深く、互いにタッグを組んでブランディングするIF。
その「お洒落感」と豊富なバリエーション、納期の短さという理由からチョイスした。八ヶ岳バイシクルスタジオの矢野大介さんが国内販売代理店の総轄を務めることもあり、氏のアドバイスを受けながらバイクの構想を練った。
Independent Fabricationというブランドは、MTB最初期に活躍したビルダー達が工房の移転などを機に1995年に立ち上げられた。長らくマサチューセッツ州を拠点としていたが、現在はニューハンプシャー州のニューマーケットに工房を移転して活動している。
お洒落なブランドと言えど懐古主義には走らず、しっかりレース機材として"走るバイク"を作りたい。かつ一応にはメディアとしての立場もあるので、何かエピックなものを。そんな思いに矢野さんは、通常ラインナップに無いパイプを使ってフレームを作るという提案をしてくれた。
現在IFのCXバイクラインナップは通常のクロモリ仕様と、チタン仕様の2つ。しかし私のバイクに使ったチューブはレイノルズの853 Pro Team。これはロードモデルのFactory Lightweightに使われているもので、通常CXバイクには使われない超軽量パイプだ。
ライダーの好みに合わせてカスタムも行うことができ、カタログモデルとは異なるオンリーワンのスペシャル仕様を、アドバイスを受けながら思案して、作り上げることができる。
私の仕様はかなりレース志向に振ったオーダーとなったが、使い方や乗り味の好みを具現化できるとは、なんと幸せなことだろう。この辺りはオーダーメイドの大きな魅力。ちなみに私の仕様はカタログには無いが、アップチャージ次第で誰にでもオーダー可能だ。
折角だからとことん軽量化を突き進めるため、フォークはエンヴィのカーボンで、ケーブル長を短くするためにワイヤー類は下引きに設定した。
オーダーだけに私の体型を矢野さんに採寸して頂き、カラーやグラフィックは私のような素人がやおら行うのは危険極まりないので全て経験豊富な矢野さんにオマカセ。後は発注を掛けてもらい、フレームが到着するのを待った。
「どんなフレーム?走りは軽いんだろうか?パーツはどうしよう!」
そう考えている時が一番楽しくてワクワクするのは、読者諸兄は皆経験済みだと思うが、いかがだろう。
レース志向に振ったフレームだけに、パーツも実戦に則したものをなるべくアメリカンブランドで統一してチョイス。パーツ類は(無理すれば)いくらでもマニアックな味付けに出来てしまうので、ここらのさじ加減は重要だ。
コンポーネントはSRAM、ベアリング類はクリスキングとアメリカンブランドの定番コースを地で行くパーツ構成としたが、BBだけはReset Racing Components(リセットレーシング)というジャーマンブランドを選択した。セラミックパーツは使わないが、卓越したCNC加工による精度の高い製品だ。全て定番コースでバイクを作るのは嫌だったので、ちょっとここは外し技を。
レッドの下に位置するFORCEを選択したのは、レッドのカッコ良さをキープしたままお財布的にも優しいし、バイクのカラーがおおまかに分かっていたので、レッドの差し色の赤を加えたくなかったから。カラーコーディネイトは重要だ。
ルックスは性能以上のモチベーションをライダーに与える。
ギアの歯数は、シクロクロス経験が無い身には難しいところ。昨年のプロロードシーンではトップレーサーがリアに大きな歯数のカセットを入れているのが話題になったが、その時使用していたビッグカセットとロングゲージRディレイラーがちょうどデビューしていたので、競技ビギナーのため、高低差のあるコースでも乗れるよう前36×46T、後ろ12-30Tとし、しばらく様子を見ることにした。
ステムとシートポストはトムソンのアルミで信頼性を高めたが、新製品としてアメリカシクロクロス界の女王・ケイティ・コンプトンの名を冠したカーボンハンドルが発売されたのでこれをチョイス。理由は女性ライダーが使っているため手の小さい日本人にも合うかな、と思ったのと、なにより"プロモデル"というキャッチにシビレたから。ちゃんとしたリサーチはしていないが、こんな感じで良いと思う。
納期の早さや価格を度外視してしまったパーツ構成ゆえ、組んだのはシクロクロスシーズンも終わりに近づいた2月はじめ。まぁ仕方ない。こだわりとはそんなものだし、中途半端なバイクは作りたくなかった。
やがて2ヶ月という短納期でバイクが届き、実物を持って見て驚いた。超軽量パイプを使ったフレームは1300gと軽い。塗装したとは言え、エンヴィ製フォークの軽さは言わずもがなだ。
"ピンストライプ"をテーマとしたというグラフィックは、明るいグレーにブルーの細いストライプが入り、トップチューブの白い胴抜きと相まって最高にクール!マット仕上げも拍車を掛けて素晴らしい。フォークは左側だけIFの王冠ロゴが散りばめられ、落ち着いたフレームとは対照的に遊びごころたっぷり。シルバーのヘッドバッヂも渋く決まっていて、いやはや、コレは格好良い。ただただ、デザインを担当してくれた矢野さんに感謝しきりである。
フレームセットやパーツも揃い、次号はいよいよバイクの制作に入っていく。
text:So.Isobe
photo:Makoto.Ayano,So.Isobe
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