2013/01/22(火) - 16:51
「もっと他のチームが激しくアタックすると思っていた。とにかくチームメイトに助けられた」。強烈な太陽が降り注ぐロベサルの街で、後続を数メートル引き離して勝利したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)。遅れてゴールするチームメイトを最後まで待ってから表彰台に向かった。
スタート準備OKの宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) photo:Kei Tsuji「簡単な勝利に見えたかも知れない。もちろん自分のコンディションが良いことに違いはないけど、チームメイトがその“簡単な勝利”を演出してくれたんだ。一日中ずっと集団の先頭に立ち、ゴール前では最後までサポートしてくれた」(グライペル)
ロット・ベリソルがコントロールするメイン集団 photo:Kei Tsujiアデレード東部に広がる“アデレードヒルズ”と呼ばれる丘陵地帯を舞台にしたツアー・ダウンアンダー第1ステージ。アデレードの外れにある住宅街を発った選手たちは、標高400mほどの丘陵地帯へと入って行く。コース全長は135km。
この日の最高気温は30度。強烈な紫外線が降り注ぐため、どの選手もスタッフもメディアも入念に日焼け止めを塗ってUCIワールドツアー開幕を迎えた。
ロベサルの周回コースに入るジョルダン・カービー(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji2013年の記念すべきファーストエスケープは、ブリスベン出身のジョルダン・カービー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)。今年からデンマークのクリスティーナ・ウォッチズに所属する20歳は、単独で7分のリードを稼ぎ出すことに成功する。
カービーは42km地点のKOMチェッカーヒルを先頭で通過し、リードを保ったままゴール地点ロサベルの周回コースに突入。ロット・ベリソルとアルゴス・シマノが徹底的にコントロールするメイン集団は、じわりじわりとカービーとの間合いを詰めて行く。
上位3名までポイント&ボーナスタイムが与えられるスプリントポイントが近づくと、にわかにメイン集団が活性化。2番手通過のボーナスタイム2秒を巡るスプリントが繰り広げられ、ディフェンディングチャンピオンのサイモン・ゲランス(オーストラリア、チームスカイ)が合計3秒、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が合計3秒を稼ぎ出すことに成功する。
大きなタイム差がつかないツアー・ダウンアンダーでは、このスプリントポイントでのボーナスタイムが最終的な総合争いに大きく響く。ジルベールは「総合争いにおいても大事だけど、今日はチームカーの順番を上げる意味もあった」と言う。この日のBMCレーシングチームのチームカーは18番目。ジルベールの動きによって、翌日からBMCレーシングチームのチームカーはより集団に近い位置を走ることが出来る(ボトル運びが楽になる)。
内陸の貯水池を横目にプロトンは進む photo:Kei Tsuji
スカイプロサイクリングが集団ペースアップを開始 photo:Kei Tsujiやがて、カービーとの距離が近づくと、メイン集団からジェローム・ピノー(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)が飛び出して一気に先頭へ。ピノーは1分のリードを得たものの、ゴールまで20kmを残して吸収される。
平坦ステージとは言え、ワインやリンゴ畑が広がる周回コースはアップダウンの連続。「登りに強いスプリンター」を擁するスカイプロサイクリングやモビスターが強力にメイン集団のペースを上げ始めた。
ゴールスプリントを制したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsujiビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)のカウンターアタックもラスト5kmで吸収。イアン・スタナード(イギリス、スカイプロサイクリング)らが刻むハイペースによって、マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)やアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)、そしてアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・レオパード)までが脱落する。
「ダウンヒルで遅れてしまった。プロトンの中での走り方を忘れてしまっていた」と、1分19秒遅れでゴールし、早くも総合争いから脱落したシュレク。
チームスタッフと喜ぶアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsujiゴールまで3kmを切り、スカイプロサイクリングやブランコプロサイクリング、FDJとのハイスピードバトルに競り勝ったのはロット・ベリソル。最も人数を揃えたロットトレインの後ろからグライペルが発進。後続を置き去りにする圧倒的なスピードで、早々に両手を挙げる余裕の勝利を飾った。
引退したロビー・マキュアン(オーストラリア)がもつ最多勝記録ステージ通算12勝に並んだグライペル。プロトンの中で一人だけトップコンディションに近いような印象。最終日前日にオールドウィランガヒル頂上ゴールが設定されてるため総合成績は諦めているが、この先のステージで勝利を量産しそうな勢いだ。
「チームオーダーは無かった」という宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)はステージ101位 photo:Kei Tsujiステージ2位に入ったのは、2011年のロード世界選手権U23ロードレースで優勝した21歳のアルノー・デマール(フランス、FDJ)。ステージ3位に入ったマーク・レンショー(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)は「グライペルが最速なのは間違いない。でもコンディションは良く、自分にも勝つチャンスはある」と話す。
「今日はチームオーダーが特になく、ツアー後半に向けて体調を上げるように走ることを考えてスタートした」と話す宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)は、1分19秒遅れでゴール。気温が45度まで上がった前週のトレーニング中に熱中症になった影響で、体調は万全とは言えない状況。「今は落ち着いて、良いステージを作って行きたい。体調を整えて、どこかで狙えるように頑張ります」。
ステージ通算12勝目を飾ったアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Kei Tsuji
ステージ2位に入った21歳のアルノー・デマール(フランス、FDJ)が新人賞ジャージを獲得 photo:Kei Tsuji
ツアー・ダウンアンダー2013第1ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 3h35'24"
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
3位 マーク・レンショー(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)
4位 シモーネ・ポンツィ(イタリア、アスタナ)
5位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
6位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
7位 ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 ザッカリ・デンプスター(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
101位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +1'19"
個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 3h35'14"
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ) +04"
3位 マーク・レンショー(オーストラリア、ブランコプロサイクリング) +06"
4位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +07"
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
6位 ジェローム・ピノー(フランス、オメガファーマ・クイックステップ) +08"
7位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 シモーネ・ポンツィ(イタリア、アスタナ) +10"
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
101位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +1'29"
山岳賞
ジョルダン・カービー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
新人賞
アルノー・デマール(フランス、FDJ)
チーム総合成績
ランプレ・メリダ
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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この日の最高気温は30度。強烈な紫外線が降り注ぐため、どの選手もスタッフもメディアも入念に日焼け止めを塗ってUCIワールドツアー開幕を迎えた。
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カービーは42km地点のKOMチェッカーヒルを先頭で通過し、リードを保ったままゴール地点ロサベルの周回コースに突入。ロット・ベリソルとアルゴス・シマノが徹底的にコントロールするメイン集団は、じわりじわりとカービーとの間合いを詰めて行く。
上位3名までポイント&ボーナスタイムが与えられるスプリントポイントが近づくと、にわかにメイン集団が活性化。2番手通過のボーナスタイム2秒を巡るスプリントが繰り広げられ、ディフェンディングチャンピオンのサイモン・ゲランス(オーストラリア、チームスカイ)が合計3秒、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)が合計3秒を稼ぎ出すことに成功する。
大きなタイム差がつかないツアー・ダウンアンダーでは、このスプリントポイントでのボーナスタイムが最終的な総合争いに大きく響く。ジルベールは「総合争いにおいても大事だけど、今日はチームカーの順番を上げる意味もあった」と言う。この日のBMCレーシングチームのチームカーは18番目。ジルベールの動きによって、翌日からBMCレーシングチームのチームカーはより集団に近い位置を走ることが出来る(ボトル運びが楽になる)。
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平坦ステージとは言え、ワインやリンゴ畑が広がる周回コースはアップダウンの連続。「登りに強いスプリンター」を擁するスカイプロサイクリングやモビスターが強力にメイン集団のペースを上げ始めた。
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「ダウンヒルで遅れてしまった。プロトンの中での走り方を忘れてしまっていた」と、1分19秒遅れでゴールし、早くも総合争いから脱落したシュレク。
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引退したロビー・マキュアン(オーストラリア)がもつ最多勝記録ステージ通算12勝に並んだグライペル。プロトンの中で一人だけトップコンディションに近いような印象。最終日前日にオールドウィランガヒル頂上ゴールが設定されてるため総合成績は諦めているが、この先のステージで勝利を量産しそうな勢いだ。
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ツアー・ダウンアンダー2013第1ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 3h35'24"
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
3位 マーク・レンショー(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)
4位 シモーネ・ポンツィ(イタリア、アスタナ)
5位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
6位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
7位 ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
8位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 ザッカリ・デンプスター(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
101位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +1'19"
個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) 3h35'14"
2位 アルノー・デマール(フランス、FDJ) +04"
3位 マーク・レンショー(オーストラリア、ブランコプロサイクリング) +06"
4位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +07"
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
6位 ジェローム・ピノー(フランス、オメガファーマ・クイックステップ) +08"
7位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 シモーネ・ポンツィ(イタリア、アスタナ) +10"
9位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
10位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
101位 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ) +1'29"
山岳賞
ジョルダン・カービー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
新人賞
アルノー・デマール(フランス、FDJ)
チーム総合成績
ランプレ・メリダ
text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia
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