いよいよ年の瀬、今年も北は北海道から南は沖縄まで、ベテランから若手選手までが活躍した国内レースシーン。その前半5月までを振り返ってみよう。

4月の八幡平で行われた全日本選手権ロード。指差すのは増田成幸と土井雪広4月の八幡平で行われた全日本選手権ロード。指差すのは増田成幸と土井雪広 photo:Hideaki.TAKAGI
1・2月

選手の移籍などの情報の中、今年は2つのコンチネンタルチームが誕生した。ひとつは鈴木真理をエースとするキャノンデール・スペースゼロポイント。もうひとつは片山右京氏が監督を務めるチーム右京だ。この2チームは実業団JプロツアーやUCIレースに出場して互いに切磋琢磨、一年間を戦った。最終的に両チームともJプロツアーで2勝ずつを挙げることに。

キャノンデール・スペースゼロポイントキャノンデール・スペースゼロポイント photo:Hideaki.TAKAGIチーム右京チーム右京 photo:Makoto.AYANO



アジア選手権ロードでは、男子ジュニアで西村大輝(東京・昭和第一学園高校)と小橋勇利(愛媛・松山工業高校)がワン・ツー勝利。これ以降、高校生世代のロード界はこの西村・小橋の超高校生コンビを軸に展開していく。U23でも木下智裕(神奈川・EQADS/BLAGNAC)が優勝。若手選手が確かな成長の成果を見せた。
東京都心の神宮外苑で行われる学生クリテも6年目。銀杏並木を走り抜けるシーンもすっかり定着。黒枝士揮と塚越さくらのともに鹿屋体育大学勢が優勝。2011年度のシリーズチャンピオンは大中巧基(早稲田大)に決定した。

Jプロツアー開幕戦を制したのは鈴木譲(シマノレーシング)Jプロツアー開幕戦を制したのは鈴木譲(シマノレーシング) photo:Hideaki.TAKAGI3月

実業団Jプロツアーの第1戦が千葉県のしもふさフレンドリーパークで初開催。2つの新チームのスプリンターを抑えて優勝したのは鈴木譲(シマノレーシング)。新加入の入部正太朗の動きも光った。
高校1・2年生で競われる高校選抜大会ロードは熊本国際ロードのコースを中心に行われた。これを制したのは小橋勇利(愛媛・松山工業高校)。

4月

およそ1ヶ月ぶりの国内レースは、和歌山県白浜町でのJプロツアーのチームTTとクリテリウム。これを制したのはキャノンデール・スペースゼロポイントと辻善光(チーム右京)。チームTTは最初に出走したキャノンデールが最後までトップタイムで見事に優勝。クリテリウムはチームの期待を一身に背負った辻が圧倒。2チームとも1勝ずつを挙げ、歓喜の涙を流したのが印象的。

白浜チームTTで優勝のキャノンデール・スペースゼロポイント白浜チームTTで優勝のキャノンデール・スペースゼロポイント photo:Hideaki.TAKAGI白浜クリテ優勝の辻善光(チーム右京)。辻にとっては2連覇だ白浜クリテ優勝の辻善光(チーム右京)。辻にとっては2連覇だ photo:Hideaki.TAKAGI


オリンピックイヤーの2012年、全日本ロードが4月下旬に岩手県八幡平で行われた。男子エリートを制したのは大本命の土井雪広(アルゴス・シマノ)。どの場面からでも勝つことができた圧倒的な勝利だった。土井に続いたのは大怪我から復帰した増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、そして清水都貴(ブリヂストンアンカー)。
驚きは1ヶ月前まで大学生だった4位の飯野智行(宇都宮ブリッツェン)。これ以降、飯野は一躍トップシーンに躍り出る。3週間前に手首を骨折した新城幸也(ユーロップカー)は終盤まで先頭集団で走って9位。のちにオリンピック代表に選ばれた。

大本命の土井雪広(アルゴス・シマノ)が3人のスプリントを制して全日本チャンピオンに大本命の土井雪広(アルゴス・シマノ)が3人のスプリントを制して全日本チャンピオンに photo:Hideaki.TAKAGI萩原麻由子(サイクルベースあさひ)が3連覇、與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)は2位に萩原麻由子(サイクルベースあさひ)が3連覇、與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)は2位に photo:Hideaki.TAKAGI


女子エリートは萩原麻由子(サイクルベースあさひ)が3連覇を達成。のちにオリンピック代表に選ばれた。このレースでの驚きは2位の與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)だ。ゴール直前までもっとも積極的に走った與那嶺は自転車競技歴が1年にも満たない。これ以降、主要レースで力を見せることに。

NIPPOがレースを掌握する中、東京ステージ優勝で一矢を報いた西谷泰治(愛三工業)NIPPOがレースを掌握する中、東京ステージ優勝で一矢を報いた西谷泰治(愛三工業) photo:Hideaki.TAKAGI5月

震災の影響で2年ぶりの開催となったツアー・オブ・ジャパン(TOJ)。圧倒的な力でステージ3勝、個人・団体・山岳総合優勝を飾ったのはチームNIPPO。フォルッナート・バリアーニとマキシミリアーノ・リケーゼで完全にレースを掌握。西谷泰治(愛三工業)は東京ステージで優勝、個人総合ポイント賞を獲得し日本人選手として一矢を報いた。なおこのTOJは2013年はUCIの1クラスに昇格となる。
TOJに続いて熊野も完全制覇したチームNIPPOTOJに続いて熊野も完全制覇したチームNIPPO photo:Hideaki.TAKAGI
TOJから中3日で舞台は和歌山県新宮市へ。4日間のツール・ド・熊野を席巻したのはまたもやチームNIPPO。ステージ3勝、個人総合・ポイント・山岳・チーム総合の各賞を受賞。総合のバリアーニはもちろん、リケーゼ兄弟の強さもまた別格だった。NIPPOの日本人選手、佐野淳哉と内間康平の走りも目を引いた。


photo&text:高木秀彰