2012/07/22(日) - 14:47
TARMACの弟分ともいえるレーシングバイク、フルアルミフレームのALLEZ(アレー)も2年ぶりにフルモデルチェンジ。2013年モデルで一気に戦闘力を上げ、存在感を増してきた。注目は、スマートウェルディングを採用し、スペシャライズド技術陣が「ベストなアルミバイクを目指した」という限定モデル、S-WORKS ALLEZである。
スマートウェルディング採用で戦闘力を増したALLEZ photo:Yukio Yasui
「世界最高のアルミバイクを!」を合言葉に
スマートウェルディング採用で戦闘力を増したALLEZ photo:Yukio YasuiTARMACとROUBAIX、VENGEという3大カーボンモデルで有名なスペシャライズドだが、アルミの技術でロード界を牽引するブランドでもある。フルアルミのロードフレームはトッププロチームにも供給され、グランツールで総合優勝争いにからむなど、レースシーンで鍛えられてきた。
その流れをくむエントリー~ミドルグレードのフルアルミバイクが、ALLEZシリーズである。2013年モデルでは、そのALLEZにスペシャライズド社の最高峰グレードを意味する「S-WORKS」モデルが登場し、注目を集めている。
今では「スペシャライズド=カーボン」というイメージがあるが、社内には非常に高いアルミ製造技術を有する開発チームがある。最初は、「どこまでクオリティの高いフルアルミバイクを作ることができるか」「世界最高のアルミバイクを作ろう」というプロジェクトとして始まったというALLEZのモデルチェンジ。それが2013年のS-WORKS ALLEZというモデルで結実した。
特許のスマートウェルディングをヘッドに採用
通常のフレームとは溶接痕の位置が異なることに注目。ビードの盛り上がりも少ない photo:Yukio Yasuiフレームのシルエットは前作とさほど変わらないように見えるが、新型ALLEZ最大の特徴はヘッドチューブの構造にある。
通常の円柱形のヘッドチューブではなく、あらかじめハイドロフォーミングによってトップチューブとダウンチューブの前端をヘッドチューブと一体に形成してある。さらに、チューブ同士の接合部に谷間ができるようにチューブ端にテーパーをつけておき、接合時にその谷間を埋めるように溶接している。
こうすることで、パイプ同士の接合部が非常に薄く仕上がる(通常の溶接では接合部が盛り上がり重量増となる)。軽量化に加えて強度も高めることができ、通常のフレームなら壊れてしまうような過酷なテストも楽々とクリアしているのだという。また、溶接時にかかる熱も低く抑えられている。この溶接法はスマートウェルディングと呼ばれ、スペシャライズドが特許をとっている技術とのこと。
なお、このスマートウェルディングが採用されるのはヘッドチューブのみ。非常にコストがかかる工法であることに加え、他の接合部は溶接跡が短いため軽量化の効果が少ないからである。
オーバーサイズBBを採用。RACEのクランクはFSA・SL-KライトBB30 photo:Specialized
リアのブレーキワイヤーはトップチューブ内蔵。アルミフレームには珍しい工作 photo:Specialized
S-WORKSとほぼ同じフレームを手に入れたRACE
世界限定50本という貴重なモデルとなるS-WORKS ALLEZ photo:Specializedスマートウェルディングだけでなく、フレーム全体が入念に軽量化されているというS-WORKS ALLEZのフレーム重量は1190g。50本しか作られない超限定モデルとなる。
非S-WORKS モデルでは最高グレードとなるALLEZ RACEは、細部の軽量化工程の簡略化により20gほど重くなっていることを除けば、S-WORKSとほぼ同じフレームを採用。カラーはブラックアノダイズドのみ。この塗装が最も軽く仕上がるという理由により採用されたものだ。
どうしても高価になってしまうスマートウェルディング技術が採用されるのは、S-WORKSとこのRACEのみ。COMPとEXPERTは、S-WORKSやRACEと同じE5アルミを採用しつつ、通常の溶接となる。SPORTとELITEは従来通りA1アルミだが、いずれも2012モデルより軽量化されているという。
これぞアルミだ!と喝采を送りたくなる走り
カーボンモデルと同様に湾曲するトップチューブ。マット/グロスブラックのカラーリングが精悍 photo:Yukio Yasuiパワフルに進み、パワフルに曲がり、パワフルに止まる。新型ルーベの洗練されつくした走りとは異なる、野性味溢れた力強い魅力がある。いい意味でバンカラ。反応性は非常によく、ホイールなどの条件を同じにすれば加速感はターマックに迫るレベルになっていると感じる。
カーボンばかりというイメージの強かったスペシャライズドが、アルミをここまで正しく進化させてきたことに、アルミ好きは喜ぶべきである。アルミがカーボンの後を追いかけてもしょうがない。アルミらしさを磨き上げて独自の進化を遂げることが、アルミバイクの正しい未来だろう。レース系フルアルミロードバイクとして正常進化を遂げた新型アレー。どんな場面でもとにかくガンガン進んで欲しいというライダーに乗ってほしい。
photo&text:Yukio Yasui in Snowbird, USA
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「世界最高のアルミバイクを!」を合言葉に
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今では「スペシャライズド=カーボン」というイメージがあるが、社内には非常に高いアルミ製造技術を有する開発チームがある。最初は、「どこまでクオリティの高いフルアルミバイクを作ることができるか」「世界最高のアルミバイクを作ろう」というプロジェクトとして始まったというALLEZのモデルチェンジ。それが2013年のS-WORKS ALLEZというモデルで結実した。
特許のスマートウェルディングをヘッドに採用
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通常の円柱形のヘッドチューブではなく、あらかじめハイドロフォーミングによってトップチューブとダウンチューブの前端をヘッドチューブと一体に形成してある。さらに、チューブ同士の接合部に谷間ができるようにチューブ端にテーパーをつけておき、接合時にその谷間を埋めるように溶接している。
こうすることで、パイプ同士の接合部が非常に薄く仕上がる(通常の溶接では接合部が盛り上がり重量増となる)。軽量化に加えて強度も高めることができ、通常のフレームなら壊れてしまうような過酷なテストも楽々とクリアしているのだという。また、溶接時にかかる熱も低く抑えられている。この溶接法はスマートウェルディングと呼ばれ、スペシャライズドが特許をとっている技術とのこと。
なお、このスマートウェルディングが採用されるのはヘッドチューブのみ。非常にコストがかかる工法であることに加え、他の接合部は溶接跡が短いため軽量化の効果が少ないからである。
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S-WORKSとほぼ同じフレームを手に入れたRACE
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どうしても高価になってしまうスマートウェルディング技術が採用されるのは、S-WORKSとこのRACEのみ。COMPとEXPERTは、S-WORKSやRACEと同じE5アルミを採用しつつ、通常の溶接となる。SPORTとELITEは従来通りA1アルミだが、いずれも2012モデルより軽量化されているという。
これぞアルミだ!と喝采を送りたくなる走り
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photo&text:Yukio Yasui in Snowbird, USA