ゴール23km手前の3級山岳で集団に生き残り、横風と狭いコースを攻略した44名によるゴールスプリントに持ち込まれたツール・ド・フランス第13ステージ。白熱の平坦バトルは、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)の3勝目で幕を閉じた。

色とりどりのジャージが南フランスの太陽に照らされる色とりどりのジャージが南フランスの太陽に照らされる photo:A.S.O.フランス革命記念日の7月14日に行なわれた第13ステージ。南フランスのサンポール・トロワシャトーからルキャプ・ダグドまでの217kmを駆け抜ける。「平坦ステージ」に分類されているが、ゴールの23km手前に急勾配の3級山岳モンサンクレールが設定され、横風が吹きやすい海沿いを走るなど、トラップがいくつも仕掛けられている。

レース序盤のアタック合戦をくぐり抜け、平坦コースで逃げを試みたのは以下の8名。

ペースの上がった集団が縦に長く伸びるペースの上がった集団が縦に長く伸びる photo:A.S.O.マキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)、ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフバンク)、ジェローム・ピノー(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)、マチュー・ラダニュ(フランス、FDJ・ビッグマット)、サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)、ロイ・カーヴァス(オランダ、アルゴス・シマノ)、パブロ・ウルタスン(スペイン、エウスカルテル)、ジミー・アングルヴァン(フランス、ソール・ソジャサン)。

逃げるロイ・カーヴァス(オランダ、アルゴス・シマノ)やマチュー・ラダニュ(フランス、FDJ・ビッグマット)逃げるロイ・カーヴァス(オランダ、アルゴス・シマノ)やマチュー・ラダニュ(フランス、FDJ・ビッグマット) photo:Cor Vos上記8名は35km地点で最大9分20秒のリードを得たが、中間スプリントならびにゴールスプリントに興味を示すオリカ・グリーンエッジの集団コントロールによってタイム差は縮小傾向に。ゴール91km手前の中間スプリントに差し掛かる頃には、タイム差は3分40秒まで縮まった。

オリカ・グリーンエッジはトレインを組んでマシュー・ゴス(オーストラリア)を解き放つも、登り勾配のスプリントはペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)に軍配。この中間スプリントでサガンは7ポイント(9番手通過)獲得する。

メイン集団をコントロールするオリカ・グリーンエッジメイン集団をコントロールするオリカ・グリーンエッジ photo:Cor Vosその後もオリカ・グリーンエッジが継続的に集団をコントロール。タイム差が2分に差し掛かると、逃げグループのなかに不協和音が流れ始める。ピノーのアタックを皮切りに協調体制は崩壊。ちょうど5年前のこの日に亡くなった父親に勝利を捧げたいモルコフが、単独で飛び出した。

追い風に乗るモルコフは、出遅れた7名を置き去りにして独走。一方、ゴールまで35kmを切って地中海の海岸線が近づくと、BMCレーシングチームがメイン集団のペースアップを開始する。ここでアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)らが中切れの餌食となった。

先頭モルコフは、1分リードをキープして3級山岳モンサンクレールに突入。追走グループは登りに入ってすぐ吸収される。平均勾配が10%を超えるこの登りで、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)やマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)らは脱落した。

第13ステージは晴れ時々曇り第13ステージは晴れ時々曇り photo:A.S.O.3級山岳モンサンクレールでペースを上げるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)3級山岳モンサンクレールでペースを上げるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vos

レース終盤に逃げたミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)とアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)レース終盤に逃げたミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)とアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) photo:Cor Vosあまりにも急勾配の登りを、ふらつきながら進む先頭モルコフ。勢い良くメイン集団から飛び出したジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)がモルコフを追い抜き、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)やユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)が続く。

観客が詰めかけたこのモンサンクレールの登りでメイン集団が30名ほどに絞り込まれると、続く海沿いの狭い平坦路でアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)とミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)がアタック。実力者2人が20秒リードしてラスト10kmのアーチをくぐる。

ゴールスプリントを繰り広げるペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)ゴールスプリントを繰り広げるペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Cor Vosメイン集団には、モンサンクレールの登りで遅れていた15名ほどが復帰。この中には、レース前半の50km地点で落車した新城幸也(ユーロップカー)やグライペルの姿も。ここからロット・ベリソルの集団牽引が始まり、ヴィノクロフとアルバジーニのリードはラスト5kmで10秒に。

ここで再び強い横風が吹き付け、メイン集団は2つに分断される。第2集団に取り残された総合9位のピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)を引き上げるため、ユキヤは率先してメイン集団を追撃。何とかエースをメイン集団まで引き上げたユキヤは仕事を終えてペースを落とした(1分45秒遅れでゴール)。

ハンドルを投げてゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)ハンドルを投げてゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)とアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Cor Vosラスト2.5kmで先頭のアルバジーニとヴィノクロフが吸収されると、緩い登りでルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)とマチュー・スプリック(フランス、アルゴス・シマノ)がアタック。これをチームスカイが封じ込めにかかる。

ラスト1kmを切ると、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)のためにリードアウト。先行していたLLサンチェスとスプリックを捉えたマイヨジョーヌが、ボアッソンをスプリントに導く。

ガッツポーズするアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)ガッツポーズするアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル) photo:Cor Vosしかしボアッソンハーゲンのスプリントにキレはなく、後方から発進したグライペルとサガンが先頭へ。先行するグライペルと、追うサガン。伸びのあるスプリントを見せたグライペルが先着した。

第4ステージ第5ステージに続く3勝目を飾ったグライペル。シーズンの通算勝利数を、サガンと並ぶ世界最多タイの16まで伸ばしたジャーマンスプリンターは「最終コーナーが危険で、とにかくクレイジーなスプリントだった。(モンサンクレールの)登りで脱落してしまったが、スプリントの如く全開で頂上を目指した。頂上通過後はバクの働きで集団に復帰。そこからチームはヴィノクロフとアルバジーニを捕まえたんだ。でもLLサンチェスが飛び出した時は『OK。これで終わりだ』と思ったよ」と、タフレースを振り返る。

グライペルが64ポイント差のポイント賞2位に浮上。最終日パリ・シャンゼリゼまでマイヨヴェールの行方は分からない。「グリーンジャージを着ていることからも分かるように、サガンは抜群のスピードをもつ選手。自分もパリまで走りきるつもりだ」。グライペルはマイヨヴェールを視野に入れて残りのステージを闘う。

ボアッソンハーゲンのリードアウト役を務めたウィギンズは、マイヨジョーヌを着てピレネー山岳ステージに挑む。いわゆるアルプスとピレネーの「中継ぎステージ」を無事に終えたウィギンズは「プロフィールを見る限り、明日は手に負えないようなステージにならないだろう。逃げが先行して、我々が最後の1級山岳で目を配らせるような展開になる」とコメントしている。

選手コメントはレース公式サイトより。

ツール・ド・フランス2012第13ステージ結果
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)             4h57'59"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)
4位 セバスティアン・イノー(フランス、アージェードゥーゼル)
5位 ダリル・インペイ(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ジュリアン・シモン(フランス、ソール・ソジャサン)
7位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
9位 ペーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)
10位 ダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ・ISD)
48位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                      +1'45"

個人総合成績 マイヨ・ジョーヌ
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)            59h32'32"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                 +2'05"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)     +2'23"
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)         +3'19"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)         +4'48"
6位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン)       +6'15"
7位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)      +6'57"
8位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、アスタナ)              +7'30"
9位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)                +8'31"
10位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット)               +8'51"
88位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                    +1h37'33"

ポイント賞 マイヨ・ヴェール
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

山岳賞 マイヨ・ブラン・アポワ・ルージュ
フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)

新人賞 マイヨ・ブラン
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)

チーム総合成績
レディオシャック・ニッサン

敢闘賞
ミカエル・モルコフ(デンマーク、サクソバンク・ティンコフバンク)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, A.S.O.

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