2009/02/06(金) - 01:49
比較的新しい会社でありながら、リドレーは自転車王国ベルギーを代表するブランドへと短期間のうちに成長した。今回紹介する「ダモクレス」は、そんなリドレーを代表するバイクだ。09モデルで大きく変わったダモクレスだが、果たしてその実力は?
リドレー・ダモクレス。09モデルでフルモデルチェンジした (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp
リドレーは1997年に誕生したばかりの新しいブランドだ。母体となったのは、1990年にヨキム・アールツが創業した「レースプロダクションズNV」という会社である。この会社はヨーロッパ各国の自転車店に、ショップオリジナルバイク製作用のノーブランドフレームなどを卸していた。
もちろん、アールツの夢は自分のブランドを持つこと。しかし、堅実な彼はいきなり自分のブランドを発表することはなかった。まずは会社を大きくして、下地を固める必要があると感じていたのだ。
1997年、十分な手応えを感じたアールツは「リドレー」というブランドネームでオリジナルのバイクを発表する。立ち上げ当初から、アマチュアチームを積極的にサポート。あのトム・ボーネンも、アマチュア時代にはリドレーに乗っている。
そして2005年、リドレーはついにトッププロチームにバイク供給をすることとなった。ベルギーの強豪チーム「ダヴィタモン・ロット(当時、現サイレンス・ロット)」がリドレーをチームバイクとして選んだのだ。
このダモクレスは、そんなアールツの夢が詰まった一台だ。なぜならば、先代(初代)ダモクレスこそ、ダヴィタモン・ロットへ初めて供給されたプロユースバイクであったからだ。
エッジの立った異型チューブデザイン、そして極端に太いヘッドチューブなど、デビュー当時の外観から受ける衝撃は相当のものだった。今、おとなしいカラーリングに身を包んではいるが、そのスタイリングは今でも新鮮だ。
美しいラインを描くトップチューブ
先代同様、09モデルのダモクレスもヘッドの下側のベアリングには1-1/4"のスーパーオーバーサイズを採用し、どんな悪路を走ってもビクともしない構造となっている。さすが石畳の多いベルギーのバイクだと言えよう。
驚くのはショック吸収性も高いということ。ガチガチのフレームではパヴェ(石畳)は走れないので、ショック吸収性も犠牲にしない絶妙な設計となっているのだ。
複雑な面をもつヘッドまわり。カーボンだからこそできる造形だ
「荒れた路面でもバイクが弾かれない。さすがベルギーのバイクだ」(三上和志) 剛性感が適度で、乗っていて非常に気持ちが良いバイクだ。ダウンチューブからヘッド付近にかけての剛性が高く、踏力をロスすることなく推進力にしている雰囲気が感じられる。
ハンドリングはナチュラルで、変なクセはまったくない。急なコーナーでもクイクイと曲がってくれる。ヘッド下側のベアリングが大径になっているので、フルブレーキングでもフォーク根本がしならず、グッと止まれる。下りでとても安心できるバイクだ。
ストレートフォークのオフセットが、視覚的にも逆オフセット(後方に向けて曲がっている)のように見えるが、これが効いているのかは定かでないけれど、コーナリング中のブレーキングでも確実に粘って路面を捉え続けてくれるため、不安感を感じない。
ショック吸収性の高さには、正直驚いてしまった。さすがベルギーのバイク! パヴェでしっかりと走行テストをしているのだろう。しっかりとしたフレームは往々にして路面の凹凸を拾ってしまうものだが、このダモクレスはかなり荒れた路面でも弾かれることがないのだ。乗り味に高級感があると言うか、懐の深さを感じることが出来る。
前三角はガッチリと作り、フォークとバックで積極的にショックを吸収する設計だ。普段、荒れた路面を走ることが多い人、長距離を快適に走りたい人、そして下りを積極的に楽しみたい人に、うってつけの乗り味だ。グランフォンドバイクとしても最高。
確かにデビューは少し前だけれど、いまだに前衛的なスタイリングで、乗り味も完成され、熟成されているので、少しも古さを感じない。超お買い得なプライスだから、ロードレーサーの性能を求める人には迷いなくオススメできる。基本性能の良さは色あせない。
「ショック吸収性がよく、滑らかに進んでくれる」(佐藤正一) ガッチリとした印象のバイクだが、不思議と路面からの振動が伝わってこない。「たわむ」という感じではなく、フォークやバックが適度に「しなる」感じだ。剛性感は適度で、荒れた路面でもタイヤが弾かれない。
しっかりしているのに、細かい振動はこなくて、滑らかに進む。振動吸収性は5点満点だ。
ひと踏み目からスーッと前に進み、無駄のない加速感が感じられる。力まかせにグイグイ踏んでも、踏力にフレームが負けることなく、どんどんスピードに乗ってくれる。たわみを生んで伸びやか。このフィーリングは非常に私好みでした。
ナチュラルなハンドリング特性を持っており、思い通りのラインをトレースしていくことができる。ブレーキングもしっかりとしているので、下りで飛ばしても安心だ。ダンシングもしやすい。
一言でこのバイクの乗り味を表現すると、「滑らかに進むバイク」だ。踏力を無駄にすることなく、振動はちゃんと吸収し、スーッと加速して、グッと止まってくれるのだ。
今年、フルモデルチェンジしたダモクレスだが、この09モデルもとても出来が良い。さすがにプロチームに供給されてきただけあって、乗り味が完成させている。滑らかに進む感じなど本当に気持ちが良い。多くの人にオススメできるバイクだ。
スペック
リドレー・ダモクレス
フレーム素材 ハイモジュラスカーボン 30t
フォーク ハイモジュラスカーボン 24t
サイズ XXS / XS / S / M
希望小売価格(税込み) 249,900円(フレームセット)
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
佐藤正一(なるしまフレンド)
東京・原宿にあるロードバイク系プロショップ「なるしまフレンド原宿店」店員。身長170cm、体重62kg。日本一のロードバイク販売量を誇るショップの店員だけに、その情報量の豊富さは右に出る者がいない。実業団チーム「なるしまフレンド」のレーサーとしても活躍しており、2008年は実業団石川大会BR-3で3位に食い込む好成績を収めている。
なるしまフレンドedit:仲沢 隆
photo:綾野 真/cyclowired.jp
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短期間で一流ブランドへと成長した実力
リドレーは1997年に誕生したばかりの新しいブランドだ。母体となったのは、1990年にヨキム・アールツが創業した「レースプロダクションズNV」という会社である。この会社はヨーロッパ各国の自転車店に、ショップオリジナルバイク製作用のノーブランドフレームなどを卸していた。
もちろん、アールツの夢は自分のブランドを持つこと。しかし、堅実な彼はいきなり自分のブランドを発表することはなかった。まずは会社を大きくして、下地を固める必要があると感じていたのだ。
1997年、十分な手応えを感じたアールツは「リドレー」というブランドネームでオリジナルのバイクを発表する。立ち上げ当初から、アマチュアチームを積極的にサポート。あのトム・ボーネンも、アマチュア時代にはリドレーに乗っている。
ロットチームがリドレーを選んだ!
そして2005年、リドレーはついにトッププロチームにバイク供給をすることとなった。ベルギーの強豪チーム「ダヴィタモン・ロット(当時、現サイレンス・ロット)」がリドレーをチームバイクとして選んだのだ。
このダモクレスは、そんなアールツの夢が詰まった一台だ。なぜならば、先代(初代)ダモクレスこそ、ダヴィタモン・ロットへ初めて供給されたプロユースバイクであったからだ。
エッジの立った異型チューブデザイン、そして極端に太いヘッドチューブなど、デビュー当時の外観から受ける衝撃は相当のものだった。今、おとなしいカラーリングに身を包んではいるが、そのスタイリングは今でも新鮮だ。
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パヴェでもビクともしないバイク
先代同様、09モデルのダモクレスもヘッドの下側のベアリングには1-1/4"のスーパーオーバーサイズを採用し、どんな悪路を走ってもビクともしない構造となっている。さすが石畳の多いベルギーのバイクだと言えよう。
驚くのはショック吸収性も高いということ。ガチガチのフレームではパヴェ(石畳)は走れないので、ショック吸収性も犠牲にしない絶妙な設計となっているのだ。
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インプレッション
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
「荒れた路面でもバイクが弾かれない」
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ハンドリングはナチュラルで、変なクセはまったくない。急なコーナーでもクイクイと曲がってくれる。ヘッド下側のベアリングが大径になっているので、フルブレーキングでもフォーク根本がしならず、グッと止まれる。下りでとても安心できるバイクだ。
ストレートフォークのオフセットが、視覚的にも逆オフセット(後方に向けて曲がっている)のように見えるが、これが効いているのかは定かでないけれど、コーナリング中のブレーキングでも確実に粘って路面を捉え続けてくれるため、不安感を感じない。
ショック吸収性の高さには、正直驚いてしまった。さすがベルギーのバイク! パヴェでしっかりと走行テストをしているのだろう。しっかりとしたフレームは往々にして路面の凹凸を拾ってしまうものだが、このダモクレスはかなり荒れた路面でも弾かれることがないのだ。乗り味に高級感があると言うか、懐の深さを感じることが出来る。
前三角はガッチリと作り、フォークとバックで積極的にショックを吸収する設計だ。普段、荒れた路面を走ることが多い人、長距離を快適に走りたい人、そして下りを積極的に楽しみたい人に、うってつけの乗り味だ。グランフォンドバイクとしても最高。
確かにデビューは少し前だけれど、いまだに前衛的なスタイリングで、乗り味も完成され、熟成されているので、少しも古さを感じない。超お買い得なプライスだから、ロードレーサーの性能を求める人には迷いなくオススメできる。基本性能の良さは色あせない。
佐藤正一(なるしまフレンド)
「滑らかに、伸びやかに進むバイクだ」
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しっかりしているのに、細かい振動はこなくて、滑らかに進む。振動吸収性は5点満点だ。
ひと踏み目からスーッと前に進み、無駄のない加速感が感じられる。力まかせにグイグイ踏んでも、踏力にフレームが負けることなく、どんどんスピードに乗ってくれる。たわみを生んで伸びやか。このフィーリングは非常に私好みでした。
ナチュラルなハンドリング特性を持っており、思い通りのラインをトレースしていくことができる。ブレーキングもしっかりとしているので、下りで飛ばしても安心だ。ダンシングもしやすい。
一言でこのバイクの乗り味を表現すると、「滑らかに進むバイク」だ。踏力を無駄にすることなく、振動はちゃんと吸収し、スーッと加速して、グッと止まってくれるのだ。
今年、フルモデルチェンジしたダモクレスだが、この09モデルもとても出来が良い。さすがにプロチームに供給されてきただけあって、乗り味が完成させている。滑らかに進む感じなど本当に気持ちが良い。多くの人にオススメできるバイクだ。
スペック
リドレー・ダモクレス
フレーム素材 ハイモジュラスカーボン 30t
フォーク ハイモジュラスカーボン 24t
サイズ XXS / XS / S / M
希望小売価格(税込み) 249,900円(フレームセット)
インプレライダーのプロフィール
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埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。
サイクルハウスMIKAMI
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東京・原宿にあるロードバイク系プロショップ「なるしまフレンド原宿店」店員。身長170cm、体重62kg。日本一のロードバイク販売量を誇るショップの店員だけに、その情報量の豊富さは右に出る者がいない。実業団チーム「なるしまフレンド」のレーサーとしても活躍しており、2008年は実業団石川大会BR-3で3位に食い込む好成績を収めている。
なるしまフレンド
photo:綾野 真/cyclowired.jp