2012/06/18(月) - 16:13
ゴールまで45kmを残して、総合2位のフランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)がアタック。「挑戦する他なかった。あれがこの大会で唯一勝つ方法だったから」と回想するフランク。しかしゴールは遠すぎた。ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)が総合リードを守り抜いた。
2つの超級山岳を越え、2級山岳ゼーレンベルクにゴールするツール・ド・スイス第9ステージ。距離216kmのこの難関山岳コースで、イエロージャージ争いは決着を迎える。
前日の第8ステージを終えた時点で、総合首位コスタと総合2位Fシュレクのタイム差は僅かに14秒。以下、総合タイム1分以内に7名がひしめく混戦状態だ。
エスケープを試みたジェレミー・ロワ(フランス、FDJ・ビッグマット)、ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシングチーム)、マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル)、タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)の4名は、最大で12分のリードを得る。
この日だけで山岳ポイントを52ポイントを荒稼ぎしたモンタグーティは、最終日にして山岳賞ジャージを射止めた。
約6時間に及ぶロングステージのうち、レースが活性化したのは最後の1時間。この日2つ目の超級山岳グラウベンベルクで、総合上位陣が動きを見せる。総合5位ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)の動きに乗じて、Fシュレクがアタック。平均勾配が4%に満たない最後の2級山岳ゼーレンベルクでは決定的なタイムを奪えないと判断したFシュレクが、ライバルたちの意表を突き、早めに動いた。
ライバルたちを振るい落とし、急勾配の超級山岳グラウベンベルクを独走で駆け上がるFシュレク。登り区間だけで、イエロージャージのコスタを含むメイングループに対して50秒のリードを稼ぎ出す。
しかし、超級山岳グラウベンベルクからゴールまで40km。Fシュレクは懸命に下りを攻めたが、長時間の独走は得策ではないとしてペースダウン。最後の2級山岳ゼーレンベルクを前に、コスタら20名ほどが追いつき、総合争いはフリダシに戻された。
様々な思惑が交錯するアタック合戦。クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)のアタックを切っ掛けに、総合8位のステフェン・クルイスウィク(オランダ、ラボバンク)を含む4名が飛び出し、メイングループを引き離す。
クルイスウィクを逃がしておけないモビスターのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)が献身的に、そして徹底的にメイングループをハイスピード牽引。クルイスウィクのグループとのタイム差を縮めるとともに、Fシュレクらにアタックの隙を与えない。
先頭ではステージ優勝争いが加熱し、モンタグーティが脱落。最後はロワとカンゲルトの一騎打ちに持ち込まれ、アスタナジャージを着るエストニアライダーが片手を挙げた。
バルベルデが力尽きた後も、コスタは自らメイングループのペースを上げてクルイスウィクを追い、Fシュレクらの動きを封じる。緩斜面でメイングループはばらけずにゴールに到達。ライバルたちのアタックを封じたコスタがガッツポーズでゴールした。
総合優勝を果たしたコスタは、アシストとして働き、総合優勝に大きく貢献したバルベルデを真っ先に讃える。「混沌としたレース終盤に、アレハンドロ(バルベルデ)の存在は大きな助けになった。彼の働きっぷりはインプレッシブだったよ。この勝利は彼のおかげ。彼は偉大なチャンピオンであり、偉大なチームメイトで、素晴らしき友人だ」。
昨年ツール・ド・フランス第8ステージで勝利した25歳のコスタが、キャリア最大の勝利。4度目の出場となるツールでは、バルベルデをアシストする。
最終的に、総合2位Fシュレクとコスタのタイム差は14秒。賭けに出たFシュレクは「総合優勝するためには全力でチャレンジする必要があった。我々に残された選択肢はただ一つだけであり、それを実行したまで。1日の中で、総合逆転のチャンスがあったのはあの場所(超級山岳グラウベンベルク)だけだった。自分たちの走りに満足すべきだと思う。何も後悔していない」と話す。弟アンディのツール欠場が決まった今、兄フランクがレディオシャック・ニッサンのエースとしてマイヨジョーヌを目指す。
選手コメントはモビスターならびにレディオシャック・ニッサンの公式サイトより。
ツール・ド・スイス2012第9ステージ結果
1位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) 5h54'22"
2位 ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ・ビッグマット) +02"
3位 マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル) +31"
4位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ) +1'46"
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ラボバンク)
6位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)
7位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)
8位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン) +1'48"
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)
個人総合成績
1位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) 35h54'49"
2位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン) +14"
3位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ) +21"
4位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +25"
5位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル) +40"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +47"
7位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) +48"
8位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ラボバンク) +59"
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'42"
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +1'52"
ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
山岳賞
マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル)
チーム総合成績
アスタナ
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
2つの超級山岳を越え、2級山岳ゼーレンベルクにゴールするツール・ド・スイス第9ステージ。距離216kmのこの難関山岳コースで、イエロージャージ争いは決着を迎える。
前日の第8ステージを終えた時点で、総合首位コスタと総合2位Fシュレクのタイム差は僅かに14秒。以下、総合タイム1分以内に7名がひしめく混戦状態だ。
エスケープを試みたジェレミー・ロワ(フランス、FDJ・ビッグマット)、ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシングチーム)、マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル)、タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)の4名は、最大で12分のリードを得る。
この日だけで山岳ポイントを52ポイントを荒稼ぎしたモンタグーティは、最終日にして山岳賞ジャージを射止めた。
約6時間に及ぶロングステージのうち、レースが活性化したのは最後の1時間。この日2つ目の超級山岳グラウベンベルクで、総合上位陣が動きを見せる。総合5位ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)の動きに乗じて、Fシュレクがアタック。平均勾配が4%に満たない最後の2級山岳ゼーレンベルクでは決定的なタイムを奪えないと判断したFシュレクが、ライバルたちの意表を突き、早めに動いた。
ライバルたちを振るい落とし、急勾配の超級山岳グラウベンベルクを独走で駆け上がるFシュレク。登り区間だけで、イエロージャージのコスタを含むメイングループに対して50秒のリードを稼ぎ出す。
しかし、超級山岳グラウベンベルクからゴールまで40km。Fシュレクは懸命に下りを攻めたが、長時間の独走は得策ではないとしてペースダウン。最後の2級山岳ゼーレンベルクを前に、コスタら20名ほどが追いつき、総合争いはフリダシに戻された。
様々な思惑が交錯するアタック合戦。クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)のアタックを切っ掛けに、総合8位のステフェン・クルイスウィク(オランダ、ラボバンク)を含む4名が飛び出し、メイングループを引き離す。
クルイスウィクを逃がしておけないモビスターのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)が献身的に、そして徹底的にメイングループをハイスピード牽引。クルイスウィクのグループとのタイム差を縮めるとともに、Fシュレクらにアタックの隙を与えない。
先頭ではステージ優勝争いが加熱し、モンタグーティが脱落。最後はロワとカンゲルトの一騎打ちに持ち込まれ、アスタナジャージを着るエストニアライダーが片手を挙げた。
バルベルデが力尽きた後も、コスタは自らメイングループのペースを上げてクルイスウィクを追い、Fシュレクらの動きを封じる。緩斜面でメイングループはばらけずにゴールに到達。ライバルたちのアタックを封じたコスタがガッツポーズでゴールした。
総合優勝を果たしたコスタは、アシストとして働き、総合優勝に大きく貢献したバルベルデを真っ先に讃える。「混沌としたレース終盤に、アレハンドロ(バルベルデ)の存在は大きな助けになった。彼の働きっぷりはインプレッシブだったよ。この勝利は彼のおかげ。彼は偉大なチャンピオンであり、偉大なチームメイトで、素晴らしき友人だ」。
昨年ツール・ド・フランス第8ステージで勝利した25歳のコスタが、キャリア最大の勝利。4度目の出場となるツールでは、バルベルデをアシストする。
最終的に、総合2位Fシュレクとコスタのタイム差は14秒。賭けに出たFシュレクは「総合優勝するためには全力でチャレンジする必要があった。我々に残された選択肢はただ一つだけであり、それを実行したまで。1日の中で、総合逆転のチャンスがあったのはあの場所(超級山岳グラウベンベルク)だけだった。自分たちの走りに満足すべきだと思う。何も後悔していない」と話す。弟アンディのツール欠場が決まった今、兄フランクがレディオシャック・ニッサンのエースとしてマイヨジョーヌを目指す。
選手コメントはモビスターならびにレディオシャック・ニッサンの公式サイトより。
ツール・ド・スイス2012第9ステージ結果
1位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ) 5h54'22"
2位 ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ・ビッグマット) +02"
3位 マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル) +31"
4位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ) +1'46"
5位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ラボバンク)
6位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)
7位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、チームサクソバンク)
8位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン) +1'48"
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)
個人総合成績
1位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター) 35h54'49"
2位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン) +14"
3位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ) +21"
4位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク) +25"
5位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル) +40"
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +47"
7位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) +48"
8位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ラボバンク) +59"
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'42"
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +1'52"
ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
山岳賞
マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル)
チーム総合成績
アスタナ
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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