総合を占う上で重要となるチームTTを終えたジロ第5ステージは、再びスプリンターたちの活躍の場となった。他を圧倒するチーム力に応えるかのごとく、カヴェンディッシュが第2ステージに続くステージ優勝を飾った。

スタートラインの最前列、ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)とテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)スタートラインの最前列、ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)とテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsuji5月10日に開催されたジロ・デ・イタリア第5ステージは、フェラーリの本拠地があることでも有名なモデナをスタートし、アドリア海に面した港湾都市ファーノを目指して南下する209kmだ。

差し入れをつまむセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)差し入れをつまむセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア) photo:CorVosイタリア半島の付け根部分に広がるポー平原を進むコースはほとんどの行程が真っ平らだが、4級山岳ガヴィッチェ・モンテから始まる緩やかなアップダウン区間が後半に控える。ゴールにかけての残り13km区間は再び平坦区間となるため、スプリンターたちが活躍するものと予想された。

この日は序盤からエスケープが決まった。逃げたのはアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)、ピエールパオロ・デネグリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)、ブリアン・ブルギャク(オランダ、ロット・ベリソル)、オリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)の4名。カイセンは第2ステージに続いて逃げに乗り今大会活発な動きを見せる。

逃げるオリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)ら4名逃げるオリヴィエ・カイセン(ベルギー、ロット・ベリソル)ら4名 photo:Kei Tsuji快晴に恵まれた天候の下、逃げ続ける4名に対してはタイラー・ファラー(アメリカ)を勝利へ導きたいガーミン・バラクーダ勢がメイン集団をコントロール。6分ほどついたタイム差を、レースを進めるにつれ徐々に削り取っていく。

残り35kmから始まる丘陵区間手前では波乱が発生。ルーカスセバスティアン・アエド(アルゼンチン)が前を走る選手ともつれてクラッシュ。そのあおりを受けて落車した選手の中には繰り下がりのマリア・ビアンカを着るテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)も。

丘陵地帯を走る集団丘陵地帯を走る集団 photo:CorVos折しも4級ガヴィッチェ・モンテに差し掛かっていたメイン集団前方では、リクイガス・キャノンデールがライバルチームを消耗させるべくフルスロットルの牽きを見せ始めた最中。

再び走りだしたフィニーだったが、ファラーやトル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシング)やアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)が遅れていくほどスピードを上げるメイン集団には最後まで追いつくことが無かった。

集団前方で積極的に動くリクイガス・キャノンデール集団前方で積極的に動くリクイガス・キャノンデール photo:Riccardo Scanferlaこの動きによって逃げる4名とのタイム差は一気に縮まり、山岳ポイント手前でアタックしたデマルキを除く3名は吸収。単独粘りを見せていたデマルキもやがて集団に飲み込まれた。

22kmに渡る丘陵セクションを終えると、残すは13kmの平坦区間。スプリンターチームが激しい戦いを繰り広げるその中で、メイン集団前方で圧倒的なチーム力を見せたのはカヴの2勝目を狙うチームスカイだった。別府史之が牽引するグリーンエッジやカチューシャ、オメガファーマ・クイックステップなどがトレインを組んで並びかけるものの、主導権は渡らない。

ラスト1kmのアーチをくぐってもアシスト3名を残すスカイの優位は変わらず。最後はゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)に発射されたカヴェンディッシュが、ポイント賞ジャージを着るマシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を抑えてガッツポーズを繰り出した。

ファラーやフースホフトらライバルスプリンターが上りで遅れる中勝利を飾ったカヴェンディッシュ。早いタイミングからのロングスプリントをゴスの動きを確認しながらまとめ上げ、第2ステージに続く今大会2勝目を挙げた。この勝利はジロ・デ・イタリア通算9勝目に当たる。カヴは第3ステージではゴールスプリントで激しく落車し、全身に擦過傷と打撲を負ったが、その傷をものともしない勝利だ。

ゴスを振り切ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)がステージ2勝目ゴスを振り切ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)がステージ2勝目 photo:Kei Tsuji

「今日はガールフレンドと娘がレースに来ていたから、ミスはできなかった。結果彼女らに初めて僕の勝利を実際に見てもらえたし、娘を表彰台に連れて上がることができたんだ。素晴らしい一日になったよ。2勝目だけれど、チームはさらなる勝利を狙っていく。日に日に調子も上がっているんだ。」と語るカヴ。

4月に生まれたばかりの娘を抱いて表彰台に上がるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)4月に生まれたばかりの娘を抱いて表彰台に上がるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ) photo:Riccardo Scanferlaマリアローザを守ったラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)マリアローザを守ったラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ) photo:Kei Tsuji


マリア・ローザを着るラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)は、トップから5秒差の25位でゴール。総合首位を守っている。

翌第6ステージは、距離4kmの未舗装路が登場する、210kmにかけて行われる中級山岳ステージ。集団内で脚を貯めていた、登坂力のあるクラシックライダーの活躍の場となるだろう。


ジロ・デ・イタリア2012第5ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ) 4h43'15"
2位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)
4位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・バラクーダ)
5位  サーシャ・モードロ(コルナゴ・CFSイノックスイタリア)
6位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
7位 エリア・ファヴィッリ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
8位 マヌエル・ベレッティ(イタリア、アージェードゥーゼル)
9位 アルノー・デマール(フランス、FDJ・ビッグマット)
10位 ヨナス・ヨルゲンセン(デンマーク、チームサクソバンク)

個人総合成績
1位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ) 14h45'13"
2位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・バラクーダ)+05″
3位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)+11″
4位 マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) +13″
5位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)+14″
6位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)+16″
7位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、チームサクソバンク)+19″
8位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)+26″
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+30″
10位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)

ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 

山岳賞 マリアアッズーラ 
アルフレード・バッローニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)

新人賞 マリアビアンカ
ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)

チーム総合成績
ガーミン・バラクーダ

※速報でジロ・デ・イタリア通算11勝目とお伝えしましたが、正しくは9勝目です。お詫びして訂正します。


text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji,CorVos,Riccardo Scanferla

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