2012/05/10(木) - 07:59
5月9日、ヴェローナで行われたジロ・デ・イタリア第4ステージのチームタイムトライアルを制したのはガーミン・バラクーダ。マリアローザは同チームのラムナス・ナヴァルダスカスへと移った。
第3ステージまでをデンマークで走ったジロはイタリアへと帰り、移動と休息の1日を過ごした後、再び闘いが始まった。チームタイムトライアルは2004年世界選手権ロード開催地でありロミオとジュリエットの物語の街である古都ヴェローナの市街をスタートし、同市街中心部のアレーナ(円形劇場)が建つブラ広場へとゴールする32.2kmの闘いだ。
昨第3ステージでは故ウェイラントを偲ぶセレモニーが行われたが、実際の命日は今日。選手たちは「W108」の合言葉を胸にレースに臨む。チームタイムトライアルにしてはアップダウンの多いテクニカルコースへ、総合成績の低いチームから順に3分おきに飛び出していく。
驚きの37分台の好タイムを出したのは9番目スタートのカチューシャ。下馬評では上位にくるとは誰も予想しなかったチームの出した平均時速53.5km/hの走りが、その後長く暫定1位にとどまることになる。
優勝候補のひとつと目されていたチームスカイが中間計測地点で平凡なタイムを出す一方、カチューシャの中間タイムを9秒も上回る驚異的な走りを見せたのがガーミン・バラクーダだ。2008年のサルデーニャ島でのジロ第1ステージの優勝を彷彿とさせる走りで飛ばし続ける。
別府史之擁するオリカ・グリーンエッジも有力候補の一つ。イタリア国内で生産されるために今回は間に合ったサンティーニ製の日本ナショナルチャンピオンのデザインをあしらったジャージを着たフミが、チームとともにコースへと出ていく。
しかしTTが得意なはずのジャック・ボブリッジとキャメロン・メイヤー(ともにオーストラリア)のふたりが不調で、何度か遅れる気配を見せ、ペースが思うように上がらない。そしてフミがタイトコーナーを曲がる際に路面のギャップにタイヤをとられ、バランスを崩してクラッシュしかけるシーンも。
最終スタートはマリアローザのテイラー・フィニー(アメリカ)擁するBMCレーシング。第3ステージのゴールスプリントでの落車による負傷をおして走るフィニーは、痛めた右足にサポーターを装着しての走りだ。その走りに注目が集まるが、上りで遅れる気配を見せ、やはり本調子でないことが伺える。
そしてチームは下りのタイトコーナーでのオーバースピードで数人がバランスを崩し、フィニーがオーバーランして草地にコースアウト。幸いにも落車は免れたものの、大きくスローダウン。さらにフィニーのディレイラーに草が絡まり、かなりのロスを強いられることに。
優勝候補のチームスカイは6人でゴールするも、結局はカチューシャに25秒遅れの暫定6位の平凡なタイムに終わる。
走りに乱れが目立ったオリカ・グリーンエッジは6人でゴール。レディオシャック・ニッサンやチームスカイを上回るものの、カチューシャに20秒遅れの暫定5位に終わった。
最後まで一糸乱れない素晴らしい走りを披露したのは、優勝予想の筆頭に挙げられていたガーミン・バラクーダだった。カチューシャのタイムを上回る37分04秒の暫定トップタイムでゴール。しかし同チームで最高位の個人総合3位につけていたアレックス・ラスムッセン(デンマーク)は遅れてしまっていた。
やはり怪我の影響が隠せないマリアローザのフィニーを待つ走りに終始したBMCレーシングは、コースアウトの影響が残り最後までスピードに乗れず、8人でゴールするも結果的には10位のタイム。この瞬間、ガーミン・バラクーダの優勝と、ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア)のマリアローザが確定した。
個人総合2位には同チームのタイラー・ファラー(アメリカ)が10秒遅れでつけた。総合3位もガーミンのロバート・ハンター(南アフリカ)、4位も11秒遅れで同チームのライダー・ヘジダル(カナダ)に。ナヴァルダスカスにマリアローザを奪われたテイラー・フィニーは13秒遅れの総合5位まで後退した。
今年はツアー・オブ・カタールで、そして昨2011年のツール・ド・フランスでのチームタイムトライアルでも優勝しているガーミンはチームTTの強さを再び証明した。故ウェイラントの命日に、願わくば親友のファラーがマリアローザを着たかったところだが、それは実現しなかった。しかしファラーには続くスプリントステージでのチャンスが待っている。
チーム2位は驚きのカチューシャ。3位はアスタナ。個人総合上位を狙える選手たちの中では、ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)が総合4位の好位置につけている。そしてカチューシャのホアキン・ロドリゲス(スペイン)は30秒遅れの総合10位につけ、驚きのチーム力とともに総合争いの選手たちのなかでは成功したひとりと言えそうだ。
マリアローザを着たラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)のコメント
今日はちょっと特殊なコースで僕はウォームアップをしている時からナーヴァスになっていた。テクニカルコーナーはあるし、コース中盤に上りはあるし、9人で走り切るのは難しいと思っていた。やさしくないけど、危険すぎはしないこのコースは、チームタイムトライアルにはいいコースだと思った。
チームは完璧なライディングを見せた。僕はチームタイムトライアルのためにチームメンバーに抜擢されたんだ。だからチームのために全てを尽くした。それが良かったと思う。
ジロ・デ・イタリア2012第4ステージ結果
1位 ガーミン・バラクーダ 37'04"
2位 カチューシャ +05"
3位 アスタナ +22"
4位 サクソバンク
5位 オメガファーマ・クイックステップ +24"
6位 オリカ・グリーンエッジ +25"
7位 リクイガス・キャノンデール +26"
8位 レディオシャック・ニッサン +28"
9位 チームスカイ +30"
10位 BMCレーシング +31"
個人総合成績 マリアローザ
1位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)10h01'33"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)+10″
3位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・バラクーダ)+10″
4位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)+11″
5位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)+13″
6位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク)+19″
7位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)+21″
8位 セバスティアン・ロセレル(ベルギー、ガーミン・バラクーダ)+25″
9位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)+26″
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+30″
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞 マリアアッズーラ
アルフレード・バッローニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)
新人賞 マリアビアンカ
ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)
チーム総合成績
ガーミン・バラクーダ
photo:Kei.TSUJI,CorVos,Riccardo Scanferla
text:Makoto.AYANO
第3ステージまでをデンマークで走ったジロはイタリアへと帰り、移動と休息の1日を過ごした後、再び闘いが始まった。チームタイムトライアルは2004年世界選手権ロード開催地でありロミオとジュリエットの物語の街である古都ヴェローナの市街をスタートし、同市街中心部のアレーナ(円形劇場)が建つブラ広場へとゴールする32.2kmの闘いだ。
昨第3ステージでは故ウェイラントを偲ぶセレモニーが行われたが、実際の命日は今日。選手たちは「W108」の合言葉を胸にレースに臨む。チームタイムトライアルにしてはアップダウンの多いテクニカルコースへ、総合成績の低いチームから順に3分おきに飛び出していく。
驚きの37分台の好タイムを出したのは9番目スタートのカチューシャ。下馬評では上位にくるとは誰も予想しなかったチームの出した平均時速53.5km/hの走りが、その後長く暫定1位にとどまることになる。
優勝候補のひとつと目されていたチームスカイが中間計測地点で平凡なタイムを出す一方、カチューシャの中間タイムを9秒も上回る驚異的な走りを見せたのがガーミン・バラクーダだ。2008年のサルデーニャ島でのジロ第1ステージの優勝を彷彿とさせる走りで飛ばし続ける。
別府史之擁するオリカ・グリーンエッジも有力候補の一つ。イタリア国内で生産されるために今回は間に合ったサンティーニ製の日本ナショナルチャンピオンのデザインをあしらったジャージを着たフミが、チームとともにコースへと出ていく。
しかしTTが得意なはずのジャック・ボブリッジとキャメロン・メイヤー(ともにオーストラリア)のふたりが不調で、何度か遅れる気配を見せ、ペースが思うように上がらない。そしてフミがタイトコーナーを曲がる際に路面のギャップにタイヤをとられ、バランスを崩してクラッシュしかけるシーンも。
最終スタートはマリアローザのテイラー・フィニー(アメリカ)擁するBMCレーシング。第3ステージのゴールスプリントでの落車による負傷をおして走るフィニーは、痛めた右足にサポーターを装着しての走りだ。その走りに注目が集まるが、上りで遅れる気配を見せ、やはり本調子でないことが伺える。
そしてチームは下りのタイトコーナーでのオーバースピードで数人がバランスを崩し、フィニーがオーバーランして草地にコースアウト。幸いにも落車は免れたものの、大きくスローダウン。さらにフィニーのディレイラーに草が絡まり、かなりのロスを強いられることに。
優勝候補のチームスカイは6人でゴールするも、結局はカチューシャに25秒遅れの暫定6位の平凡なタイムに終わる。
走りに乱れが目立ったオリカ・グリーンエッジは6人でゴール。レディオシャック・ニッサンやチームスカイを上回るものの、カチューシャに20秒遅れの暫定5位に終わった。
最後まで一糸乱れない素晴らしい走りを披露したのは、優勝予想の筆頭に挙げられていたガーミン・バラクーダだった。カチューシャのタイムを上回る37分04秒の暫定トップタイムでゴール。しかし同チームで最高位の個人総合3位につけていたアレックス・ラスムッセン(デンマーク)は遅れてしまっていた。
やはり怪我の影響が隠せないマリアローザのフィニーを待つ走りに終始したBMCレーシングは、コースアウトの影響が残り最後までスピードに乗れず、8人でゴールするも結果的には10位のタイム。この瞬間、ガーミン・バラクーダの優勝と、ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア)のマリアローザが確定した。
個人総合2位には同チームのタイラー・ファラー(アメリカ)が10秒遅れでつけた。総合3位もガーミンのロバート・ハンター(南アフリカ)、4位も11秒遅れで同チームのライダー・ヘジダル(カナダ)に。ナヴァルダスカスにマリアローザを奪われたテイラー・フィニーは13秒遅れの総合5位まで後退した。
今年はツアー・オブ・カタールで、そして昨2011年のツール・ド・フランスでのチームタイムトライアルでも優勝しているガーミンはチームTTの強さを再び証明した。故ウェイラントの命日に、願わくば親友のファラーがマリアローザを着たかったところだが、それは実現しなかった。しかしファラーには続くスプリントステージでのチャンスが待っている。
チーム2位は驚きのカチューシャ。3位はアスタナ。個人総合上位を狙える選手たちの中では、ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)が総合4位の好位置につけている。そしてカチューシャのホアキン・ロドリゲス(スペイン)は30秒遅れの総合10位につけ、驚きのチーム力とともに総合争いの選手たちのなかでは成功したひとりと言えそうだ。
マリアローザを着たラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)のコメント
今日はちょっと特殊なコースで僕はウォームアップをしている時からナーヴァスになっていた。テクニカルコーナーはあるし、コース中盤に上りはあるし、9人で走り切るのは難しいと思っていた。やさしくないけど、危険すぎはしないこのコースは、チームタイムトライアルにはいいコースだと思った。
チームは完璧なライディングを見せた。僕はチームタイムトライアルのためにチームメンバーに抜擢されたんだ。だからチームのために全てを尽くした。それが良かったと思う。
ジロ・デ・イタリア2012第4ステージ結果
1位 ガーミン・バラクーダ 37'04"
2位 カチューシャ +05"
3位 アスタナ +22"
4位 サクソバンク
5位 オメガファーマ・クイックステップ +24"
6位 オリカ・グリーンエッジ +25"
7位 リクイガス・キャノンデール +26"
8位 レディオシャック・ニッサン +28"
9位 チームスカイ +30"
10位 BMCレーシング +31"
個人総合成績 マリアローザ
1位 ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)10h01'33"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)+10″
3位 ロバート・ハンター(南アフリカ、ガーミン・バラクーダ)+10″
4位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)+11″
5位 テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)+13″
6位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク)+19″
7位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)+21″
8位 セバスティアン・ロセレル(ベルギー、ガーミン・バラクーダ)+25″
9位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)+26″
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+30″
ポイント賞 マリアロッサ・パッシオーネ
マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
山岳賞 マリアアッズーラ
アルフレード・バッローニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ・セッレイタリア)
新人賞 マリアビアンカ
ラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、ガーミン・バラクーダ)
チーム総合成績
ガーミン・バラクーダ
photo:Kei.TSUJI,CorVos,Riccardo Scanferla
text:Makoto.AYANO
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