2012/05/01(火) - 01:48
イスタンブールの周回コースでの最終ステージをマーク・レンショーとの完璧な連係をみせたテオ・ボス(オランダ、ラボバンク)が制し、第1ステージに次ぐスプリント2勝目を挙げた。総合首位はガブロフスキーがキープ。キャリア最大の勝利を手にした。
イスタンブールの中心の観光地から最終ステージがスタート
トルコ最大の都市イスタンブールで開催されたツアー・オブ・ターキー2012最終ステージ。121kmのもっとも短いステージは、イスタンブール観光の中心地、世界一美しいと呼ばれるスルタンアフメトモスク前からスタートした。
昨年までイスタンブールでは第1ステージが開催され、その後空路で地中海沿いに移動し、本格的なラインレースが始まっていたが、「ツール・ド・フランスはパリ、ジロ・ディ・イタリアはミラノでゴールを迎えるのだから…」と、今年は最終ステージをトルコ最大の都市イスタンブール(トルコの首都はアンカラ)で開催することとなったのだ。もっともその背後には、政治的思惑もたくさんあるのだが。
観光客がごった返すスルタンアフメト広場をスタートすると、すぐに大会の象徴的なシーンでもあるヨーロッパ大陸とアジア大陸を結ぶ世界で唯一の橋、第二ボスポラス大橋を通過した。この橋は1988年に建設されたもので、日本の政府開発援助により日系企業が建設に大きく関わっているという。
その橋の上で、第8ステージは動き始めた。1番のゼッケンを付けるロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)がアタックを仕掛け、最初にアジア大陸へと渡ると集団から数選手が追走。結果的に12km地点、サーキットコースでウラディミール・グセフ(ロシア、カチューシャ)、ダミアン・ゴーダン(フランス、ユーロップカー)、マッテオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)、イヴァン・ステヴィッック(セルビア、サルケーノ)の4選手の逃げが決まる。
残り3kmで有力選手が巻き込まれるクラッシュ発生
8周回中の4周目を終える際のタイム差は3分20秒。先頭集団内のグセフは3分46秒差の総合12位に付けていたが、タイム差をそこまで広げることはできず、ゴールスプリントに向けてスプリンターチームがタイム差を詰め始めて、残り6kmで吸収される。その後残り4kmでロメン・バルデが再びアタックをかけるが決まらず、集団スプリントの体制となる。
しかし、残り3km地点で集団の前方で大きな落車が発生。ゴールに向けていい位置をキープしていたポイント賞ジャージを着るマシュー・ゴス(オーストラリア、グリーンエッジ)やマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)、そして宮澤崇史(サクソバンク)らが巻き込まれた。
完璧なリードマンに導かれ、テオ・ボスが2勝目を挙げる
落車を免れた選手たちはさらに加速し、ゴールラインにはテオ・ボス(オランダ、ラボバンク)がマーク・レンショー(オーストラリア、ラボバンク)との息のあった完璧なトレインを披露しながら飛び込んだ。第1ステージに次ぐ2勝目、チームは3勝目を挙げた。
ボスは「マークの最後の牽引は自分にとって完璧だった。クラッシュが自分の前方、右側で起こったが、ブレーキを強くかける必要はなく、そのままスピードを維持することができた。ワールドツアークラスのレースにおいても、200メートルという距離なら、自分は速さは屈指のもの。しかし、ロードレースは200メートルよりももっと長い距離で戦われる。その200メートル以外の部分に残された課題を強化していきたい。
ジロ・ディ・イタリアでは、もちろん勝利を狙っていきたい。しかし、自分にとっては2回目のグランツールということもあり、トップ3に入ることが現実的な目標になると思う。自分の最終的な目標は名だたる世界トップのスプリンターにグランツールで勝つこと。」
ガブロフスキーが総合リーダーを死守
そして、レースリーダーのイヴァイロ・ガブロフスキー(ブルガリア、コンヤ・トルク)も笑顔を見せながら、集団でゴール。山頂ゴールで稼いだタイム差を最終日まで守り、表彰式ではトルコ大統領からリーダージャージを受け取った。
34歳のベテランブルガリア人、ガブロフスキーは言う。「山頂ゴールで勝った第3ステージも厳しかったし、それからの毎日も自分にとって、自分たちチームにとって厳しいレースだった。ようやく、一息つけているんだ。自分の努力、そしてチームに感謝したい。
2007年(当時はクラス2.2)で総合優勝し、また勝つことができたことを嬉しく思うし、キャリア最大の勝利となった。この5年で同じように勝つことめざしているが、周りのプレッシャーはだんだんと大きくなっていった。つまり、今回の勝利の方が、当時よりもより大きな喜びになっているんだ。
今回の勝利はけっしてサプライズ的なものではない。今年だけでなく、去年もその前もたくさんのトレーニングを積み重ね、自分には15年のプロ選手としてのキャリアもある。8歳から自転車に乗り始めて、今や自転車が人生そのものになっている。これまでのたくさんの練習や信念、勇気、そして運も今回の勝利に味方したんだ」。
落車しながらも無事にゴールした宮澤崇史
落車に巻き込まれた宮澤崇史(サクソバンク)は遅れながらも、火傷のような擦り傷の痛みとともに自走でフィニッシュラインに戻ってきた。悔しいレースとなったが、レース前に「今回だけではなく、この先もレースは続く。だから勝ち急ぐことはない。チームに走れる選手だということを認めていってもらいたい。丘陵地帯で集団が大きく分かれたときに前に残れたこと、集団スプリントで位置取りができることなどで、チーム内の評価は高まっていると感じている」と話す。
宮澤の次のレースは、5月4日から5日間の日程で開催される4日間のキャトルジュール・ド・ダンケルク(フランス、2.HC)の予定だ。
ツアー・オブ・ターキー2012 第8ステージ結果
1位 テオ・ボス(オランダ、ラボバンク)2h32'35"
2位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ステファン・ファンダイク(オランダ・アクセントジョブス)
4位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
5位 マッテオ・ペルッキ(イタリア、ユーロップカー)
6位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
142位 宮澤崇史(サクソバンク)
個人総合成績
1位 イヴァイロ・ガブロフスキー(ブルガリア、コンヤ・トルク)28h48'10"
2位 アレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン、アスタナ) +01'33"
3位 ダニエル・アンドロフ(ブルガリア、カハルラル) +01'38"
4位 エイドリアン・パロマルス(スペイン、アンダルシア) +01'44"
5位 ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル) +02'01"
6位 アレクサンドル・エフィムキン(ロシア、タイプ1) +02'23"
118位 宮澤崇史(サクソバンク)+52'57"
ポイント賞
マシュー・ゴス(オーストラリア、グリーンエッジ)
山岳賞
マルコ・バンディエラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
ターキッシュビューティ賞
マキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ)
チーム総合成績
アスタナ
photo & text : Sonoko.Tanaka
イスタンブールの中心の観光地から最終ステージがスタート
トルコ最大の都市イスタンブールで開催されたツアー・オブ・ターキー2012最終ステージ。121kmのもっとも短いステージは、イスタンブール観光の中心地、世界一美しいと呼ばれるスルタンアフメトモスク前からスタートした。
昨年までイスタンブールでは第1ステージが開催され、その後空路で地中海沿いに移動し、本格的なラインレースが始まっていたが、「ツール・ド・フランスはパリ、ジロ・ディ・イタリアはミラノでゴールを迎えるのだから…」と、今年は最終ステージをトルコ最大の都市イスタンブール(トルコの首都はアンカラ)で開催することとなったのだ。もっともその背後には、政治的思惑もたくさんあるのだが。
観光客がごった返すスルタンアフメト広場をスタートすると、すぐに大会の象徴的なシーンでもあるヨーロッパ大陸とアジア大陸を結ぶ世界で唯一の橋、第二ボスポラス大橋を通過した。この橋は1988年に建設されたもので、日本の政府開発援助により日系企業が建設に大きく関わっているという。
その橋の上で、第8ステージは動き始めた。1番のゼッケンを付けるロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)がアタックを仕掛け、最初にアジア大陸へと渡ると集団から数選手が追走。結果的に12km地点、サーキットコースでウラディミール・グセフ(ロシア、カチューシャ)、ダミアン・ゴーダン(フランス、ユーロップカー)、マッテオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)、イヴァン・ステヴィッック(セルビア、サルケーノ)の4選手の逃げが決まる。
残り3kmで有力選手が巻き込まれるクラッシュ発生
8周回中の4周目を終える際のタイム差は3分20秒。先頭集団内のグセフは3分46秒差の総合12位に付けていたが、タイム差をそこまで広げることはできず、ゴールスプリントに向けてスプリンターチームがタイム差を詰め始めて、残り6kmで吸収される。その後残り4kmでロメン・バルデが再びアタックをかけるが決まらず、集団スプリントの体制となる。
しかし、残り3km地点で集団の前方で大きな落車が発生。ゴールに向けていい位置をキープしていたポイント賞ジャージを着るマシュー・ゴス(オーストラリア、グリーンエッジ)やマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)、そして宮澤崇史(サクソバンク)らが巻き込まれた。
完璧なリードマンに導かれ、テオ・ボスが2勝目を挙げる
落車を免れた選手たちはさらに加速し、ゴールラインにはテオ・ボス(オランダ、ラボバンク)がマーク・レンショー(オーストラリア、ラボバンク)との息のあった完璧なトレインを披露しながら飛び込んだ。第1ステージに次ぐ2勝目、チームは3勝目を挙げた。
ボスは「マークの最後の牽引は自分にとって完璧だった。クラッシュが自分の前方、右側で起こったが、ブレーキを強くかける必要はなく、そのままスピードを維持することができた。ワールドツアークラスのレースにおいても、200メートルという距離なら、自分は速さは屈指のもの。しかし、ロードレースは200メートルよりももっと長い距離で戦われる。その200メートル以外の部分に残された課題を強化していきたい。
ジロ・ディ・イタリアでは、もちろん勝利を狙っていきたい。しかし、自分にとっては2回目のグランツールということもあり、トップ3に入ることが現実的な目標になると思う。自分の最終的な目標は名だたる世界トップのスプリンターにグランツールで勝つこと。」
ガブロフスキーが総合リーダーを死守
そして、レースリーダーのイヴァイロ・ガブロフスキー(ブルガリア、コンヤ・トルク)も笑顔を見せながら、集団でゴール。山頂ゴールで稼いだタイム差を最終日まで守り、表彰式ではトルコ大統領からリーダージャージを受け取った。
34歳のベテランブルガリア人、ガブロフスキーは言う。「山頂ゴールで勝った第3ステージも厳しかったし、それからの毎日も自分にとって、自分たちチームにとって厳しいレースだった。ようやく、一息つけているんだ。自分の努力、そしてチームに感謝したい。
2007年(当時はクラス2.2)で総合優勝し、また勝つことができたことを嬉しく思うし、キャリア最大の勝利となった。この5年で同じように勝つことめざしているが、周りのプレッシャーはだんだんと大きくなっていった。つまり、今回の勝利の方が、当時よりもより大きな喜びになっているんだ。
今回の勝利はけっしてサプライズ的なものではない。今年だけでなく、去年もその前もたくさんのトレーニングを積み重ね、自分には15年のプロ選手としてのキャリアもある。8歳から自転車に乗り始めて、今や自転車が人生そのものになっている。これまでのたくさんの練習や信念、勇気、そして運も今回の勝利に味方したんだ」。
落車しながらも無事にゴールした宮澤崇史
落車に巻き込まれた宮澤崇史(サクソバンク)は遅れながらも、火傷のような擦り傷の痛みとともに自走でフィニッシュラインに戻ってきた。悔しいレースとなったが、レース前に「今回だけではなく、この先もレースは続く。だから勝ち急ぐことはない。チームに走れる選手だということを認めていってもらいたい。丘陵地帯で集団が大きく分かれたときに前に残れたこと、集団スプリントで位置取りができることなどで、チーム内の評価は高まっていると感じている」と話す。
宮澤の次のレースは、5月4日から5日間の日程で開催される4日間のキャトルジュール・ド・ダンケルク(フランス、2.HC)の予定だ。
ツアー・オブ・ターキー2012 第8ステージ結果
1位 テオ・ボス(オランダ、ラボバンク)2h32'35"
2位 アンドリュー・フェン(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ステファン・ファンダイク(オランダ・アクセントジョブス)
4位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)
5位 マッテオ・ペルッキ(イタリア、ユーロップカー)
6位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
142位 宮澤崇史(サクソバンク)
個人総合成績
1位 イヴァイロ・ガブロフスキー(ブルガリア、コンヤ・トルク)28h48'10"
2位 アレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン、アスタナ) +01'33"
3位 ダニエル・アンドロフ(ブルガリア、カハルラル) +01'38"
4位 エイドリアン・パロマルス(スペイン、アンダルシア) +01'44"
5位 ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル) +02'01"
6位 アレクサンドル・エフィムキン(ロシア、タイプ1) +02'23"
118位 宮澤崇史(サクソバンク)+52'57"
ポイント賞
マシュー・ゴス(オーストラリア、グリーンエッジ)
山岳賞
マルコ・バンディエラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
ターキッシュビューティ賞
マキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ)
チーム総合成績
アスタナ
photo & text : Sonoko.Tanaka
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