エーススプリンターのカヴェンディッシュが遅れ、続いてマイヨジョーヌのトーマスが遅れ、最終的に59人に絞られた集団によるゴールスプリント勝負。虎視眈々とツール・ド・フランス制覇を狙うブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)が、ラスト350mを先頭で駆け抜けた。

次期デュラエースを搭載したマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ)のピナレロ・ドグマ2次期デュラエースを搭載したマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ)のピナレロ・ドグマ2 photo:Kei Tsuji4月25日、ツール・ド・ロマンディ2日目の第1ステージは、ローザンヌ近郊の街モルジュをスタートした。

ゴール地点は、北部の山間の街ラ・ショー・ド・フォン。タグ・ホイヤーなどが本社を置き、時計製造業の代表的な都市として知られる同市に至る行程は、今大会最長の184.5km。「スプリンターにもチャンスがあるステージ」と言われるが、実際それほど生易しいものではなく、コースブックによると獲得標高差は2144mにおよぶ。

レマン湖の畔に立つ別府史之(グリーンエッジ)レマン湖の畔に立つ別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji一帯はジュラ山脈はまるで洗濯板のような地形を成している。東西に山脈が走り、その間に流れ込んだ水がレマン湖やヌーシャテル湖といった水たまりを形成する。水たまりを見下ろす標高1000mほどの山脈に、この日の3つのカテゴリー山岳はある。

週末にかけて天候が回復し、気温が上昇するという朗報が伝えられたが、しぶとく冬の空気と冬の風、そして水分を含んだ雲が上空に居座った。

先頭2人を追うジミー・アングルヴァン(フランス、ソール・ソジャサン)とマルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)先頭2人を追うジミー・アングルヴァン(フランス、ソール・ソジャサン)とマルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsuji追い風に後押しされるように集団から飛び出したのは、アンジェロ・テュリク(フランス、ユーロップカー)とケニー・デハース(ベルギー、ロット・ベリソル)の2人。これにジミー・アングルヴァン(フランス、ソール・ソジャサン)とマルティン・コーラー(スイス、BMCレーシングチーム)が追いつくと、レースは平穏を取り戻した。

タイム差が5分を超えると、チームスカイが集団コントロールを開始する。スカイのオブジェクティブは2つ、トーマスのリーダージャージを守ることと、カヴェンディッシュのスプリント勝利だ。

チームスカイのダニー・ペイト(アメリカ)やクリス・フルーム(イギリス)が長時間にわたって大集団を率いる。なお、マイケル・ロジャース(オーストラリア)のバイクには次期デュラエースが搭載されていたが、実戦への投入は見送られている。

ちょうどレースの中間地点に位置する2級山岳レ・ビュヌネを超えてジュラ山脈に脚を踏み入れると、メイン集団はにわかにペースアップ。ここからレースは慌ただしく動き出した。

チームスカイが徹底的にコントロールするメイン集団チームスカイが徹底的にコントロールするメイン集団 photo:Kei Tsuji

集団内で2級山岳を目指す別府史之(グリーンエッジ)集団内で2級山岳を目指す別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiゴールまで25kmを残した2級山岳オー・ドラ・コートで、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)を始めとするスプリンターが相次いで脱落。

リーダージャージのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)も、総合逆転を狙っていたジャコモ・ニッツォロ(イタリア、レディオシャック・ニッサン)も、そして別府史之(グリーンエッジ)もここで脱落する。

集団前方で走るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ら集団前方で走るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ら photo:Kei Tsuji積極的な走りが光るソール・ソジャサンのファブリス・ジャンデボス(フランス)が、2級山岳オー・ドラ・コートを先頭通過。断続的にアタックが掛かる中、パンクでストップしたウィギンズはチームメイトの力を借りて集団に復帰している。

続く急勾配の3級山岳ラ・サーニュでも決定的なアタックは生まれず、70名前後の集団がラ・ショー・ド・フォンのゴールを目指す。短い登りを利用したダニエル・ナバーロ(スペイン、チームサクソバンク)やティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)のアタックも、結局は引き戻された。

ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)を先頭にスプリントが続くブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)を先頭にスプリントが続く photo:Kei Tsuji3kmにわたる長いストレートで繰り広げられるスピード感溢れるポジション争い。ラスト1kmを切ると、2人ずつを揃えたラボバンクとリクイガス・キャノンデールが先頭に立つ。その後ろから、単騎で挑むウィギンズがスプリントを開始した。

ラスト400mで飛び出し、一度後ろを振り返る仕草を見せながらウィギンズはラスト200mで踏み直す。

パリ〜ニースで総合争いを繰り広げたリエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)がゴール寸前で並びかけるも、ウィギンズは最後まで先頭を譲らなかった。

両手を挙げてゴールするブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)両手を挙げてゴールするブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji

マイヨジョーヌに袖を通したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌに袖を通したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiウィギンズはヴォルタ・アン・アルガルヴェ第5ステージ個人タイムトライアル、パリ〜ニース最終ステージ個人タイムトライアル、パリ〜ニース総合成績に続くシーズン4勝目を、自身も驚くスプリントで飾った。

「タイムトライアル以外のステージで、しかもスプリントで勝つなんて珍しい。ラスト25km地点でパンクしたとき、アドレナリンが出るのを感じた。チームメイトたちのおかげで集団に戻ることが出来たんだ。彼らのファンタスティックな走りに感化され、その仕事ぶりに敬意を払ってスプリントした」。

7分22秒遅れの大集団でゴールした別府史之(グリーンエッジ)7分22秒遅れの大集団でゴールした別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji時々ユーモアのあるコメントで笑いを取りながら、ウィギンズは流暢なフランス語を駆使して自分のペースで記者会見を進める。ツール制覇を夢見るイギリスチャンピオンは、ボーナスタイム10秒により一躍総合首位に立っている。「このロマンディで総合優勝したいと思っている」と言い切った。

カヴェンディッシュは11分17秒遅れのグルペットでゴール。この日の獲得標高差は2144mではなく、実際には2700mに達していると選手たちは口を揃える。とてもピュアスプリンターが勝負に残れるような難易度ではない。

リーダージャージを含む7分22秒遅れの大集団でゴールしたフミは「標高差は2600mを超えていた。最後から2つ目の2級山岳で、何も出来ないまま遅れてしまった」と、一日を振り返る。グリーンエッジの中で唯一先頭集団に残ったピーター・ウェーニング(オランダ)はステージ10位。怪我からの復調を印象づけた。


レースの模様はフォトギャラリーにて!

ツール・ド・ロマンディ2012第1ステージ結果
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)           4h50'23"
2位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
3位 パオロ・ティラロンゴ(イタリア、アスタナ)
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)
5位 マチェイ・パテルスキー(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)
6位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、モビスター)
7位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
8位 ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、ランプレ・ISD)
9位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)
10位 ピーター・ウェーニング(オランダ、グリーンエッジ)
130位 別府史之(グリーンエッジ)                     +7'22"

個人総合成績
1位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)           4h53'51"
2位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームスカイ)           +07"
3位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)                  +09"
4位 スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)
5位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)       +11"
6位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ラボバンク)
7位 デーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)       +12"
8位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
9位 ルーベン・プラサ(スペイン、モビスター)
10位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、レディオシャック・ニッサン)      +13"
129位 別府史之(グリーンエッジ)                      +7'41"

スプリント賞
スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)

山岳賞
ファブリス・ジャンデボス(フランス、ソール・ソジャサン)

新人賞
アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)

チーム総合成績
チームスカイ

text&photo:Kei Tsuji in La Chaux-de-Fonds, Switzerland

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