2012/04/21(土) - 19:03
開催98回目を迎えるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが、4月22日、ベルギーのワロン地域を舞台に開催される。フレーシュ・ワロンヌに引き続き別府史之(グリーンエッジ)と土井雪広(アルゴス・シマノ)が出場。ワロンを牽引する英雄は、地元最大のタイトルを死守することが出来るだろうか?
今年で110年目の最古参レース ワロン最大のクラシック
歴史あるクラシックレースは数あれど、このリエージュほど長い歴史のあるレースは他に無い。リエージュの第1回大会が開催されたのは、なんと今から110年前の1892年。近代オリンピック(1896年〜)や、日本の箱根駅伝(1920年〜)よりも歴史が長い。「Doyenne(ドワイエンヌ=最古参)」は納得のネーミングだ。
「モニュメント」と呼ばれる世界5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の一つとして数えられており、格式の点ではアルデンヌ3連戦の中で際立って大きい。
ベルギー北部フランデレン地域のロンド・ファン・フラーンデレンに対し、南部ワロン地域のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。レースの舞台となるのは、リエージュの南に広がる丘陵地帯だ。
コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復で、山岳とも呼べるほどスケールの大きな丘陵地帯を逆回りに8の字を描き、リエージュ近郊の街アンスにゴールする。
「アップダウンを繰り返し、最後は短い坂を駆け上がってゴール」というコースの特性は、他のアルデンヌ2戦(アムステルとフレーシュ)と同じ。しかし登り一つ一つの距離が長いのがリエージュの特徴。コース全長も257.5kmと最も長く、難易度、距離、格式においてアルデンヌナンバーワンと呼ばれるのも頷ける。
細かい上りを数え始めるとキリが無いようなアップダウンコース。そのうち、カテゴリーが付けられた上り坂は11カ所。中でも、選手たちが壁をよじ上っているような光景が見られるのが、116.5km地点に登場する「コート・ド・サンロシュ(平均勾配11%)」。この難所を越え、ラスト100kmを切ってからは断続的に上り坂が襲いかかる。
本格的な闘いのゴングが鳴らされるのが、ゴール35km手前の「コート・ド・ラ・ルドゥット(平均8.8%)」。フィリップ・ジルベール(ベルギー)の出身地に近いこのラ・ルドゥットは、最大勾配が17%に達する。
続いてゴール20km手前で「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(平均9.3%)」をクリア。今年もゴールの6km手前で最後の難関「コート・ド・サンニコラ(平均8.6%)」がやってくる。連続するこれらの上りで集団の人数が絞られるのは間違いない。
ゴールに至る登りは「カウベルグ」や「ユイ」ほど厳しくはなく、ラスト2kmから緩斜面がダラダラと続く。連続する登りでアタックを成功させた選手が独走するか、それとも平坦に近い最終ストレートで小集団スプリント勝負に持ち込まれるか。強いものだけが勝負に残るサバイバルレースが繰り広げられるはずだ。
登場する11カ所の登り坂
1 70.0km コート・ド・ロッシュ・アン・アルデンヌ 長さ2.8km・平均勾配6.2%
2 116.5km コート・ド・サンロシュ 長さ1.0km・平均勾配11%
3 160.0km コート・ド・ワンヌ 長さ2.7km・平均勾配7.3%
4 166.5km コート・ド・ストック 長さ1.0km・平均勾配12.2%
5 172.0km コート・ド・ラ・オートルヴェ 長さ3.6km・平均勾配5.7%
6 185.0km コル・ドゥ・ロジェ 長さ4.4km・平均勾配5.9%
7 198.0km コル・ドゥ・マキサール 長さ2.5km・平均勾配5%
8 208.0km モン・トゥー 長さ2.7km・平均勾配5.9%
9 223.0km コート・ド・ラ・ルドゥット 長さ2.0km・平均勾配8.8%
10 238.0km コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン 長さ1.5km・平均勾配9.3%
11 252.0km コート・ド・サンニコラ 長さ1.2km・平均勾配8.6%
ジルベールの連覇なるか?別府と土井がフレーシュから連戦出場
昨年、ワロン出身のフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)は、地元アルデンヌの3連戦で猛威を振るった。アムステル・ゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌで勝ち、そして下馬評通りリエージュで初優勝を飾った。しかもシュレク兄弟2人を相手にしたスプリント勝利で、余裕の3連勝と呼べるほどの好調ぶりだった。
今年はシーズン序盤から低迷し、いまだ0勝(昨年はこの時点で7勝)。しかし、4月に入って徐々に調子を戻し、アムステルで6位に入ると、フレーシュで表彰台(3位)に登っている。
例年リエージュのコースにはジルベール応援団が駆けつけ、路面には無数の「PHIL」ペイントが並ぶ。ワロンの期待を背負うベルギーチャンピオンは、アルデンヌ3連戦を最高の形で締めくくることが出来るだろうか?
昨年、2人揃って先頭グループに残りながら、ジルベールに敗れたシュレク兄弟(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)は、雪辱を果たすためにリエージュに戻ってくる。弟アンディは2009年大会に独走勝利、兄フランクは2007年から2年連続3位、そして昨年2位。
調子が上がらないアンディではなく、フランクがエースを担うと目されている。クリストファー・ホーナー(アメリカ)らが加わり、その登坂力を活かしてタフな展開に持ち込みたいところ。スプリント力で劣るため、早め早めに仕掛ける必要がある。
フレーシュ・ワロンヌを制したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)は、2009年、独走したアンディの後続グループ先頭でゴールしている。4日前に喜びの初タイトルを獲得した「プリート」は、スプリント力も兼ね備える。登れるスプリンターとして知られるオスカル・フレイレ(スペイン)とタッグを組む。
スペインからは他にも、リエージュに集中するためにフレーシュをパスしたサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)や、2006年と2008年大会の覇者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)らが出場する。
アムステルの覇者エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)や、フレーシュを欠場して挑んだジロ・デル・トレンティーノでステージ優勝したダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)、そしてヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ら、イタリア勢にも注目したい。
好調グリーンエッジは、サイモン・ジェランス(オーストラリア)とミハエル・アルバジーニ(スイス)のコンビを送り込む。110年の長い歴史の中で、リエージュを制したオーストラリア人選手はまだいない。
他にも、地元の声援を受けるイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)やトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)、ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)らが勝負に絡んでくるだろう。
そしてフレーシュに引き続き、別府史之と土井雪広が出場する。ともに3回目の出場。別府は2008年に完走している。両名ともエースのアシストとして難コースに挑む。
現地は雨と晴れを交互に繰り返す天候が続いており、日曜日も雨混じりの天気が予想される。標高500mを超える山岳地帯も通過するため、雨が降ればかなりタフなコンディションになるだろう。
text&photo:Kei Tsuji in Liege, Belgium
今年で110年目の最古参レース ワロン最大のクラシック
歴史あるクラシックレースは数あれど、このリエージュほど長い歴史のあるレースは他に無い。リエージュの第1回大会が開催されたのは、なんと今から110年前の1892年。近代オリンピック(1896年〜)や、日本の箱根駅伝(1920年〜)よりも歴史が長い。「Doyenne(ドワイエンヌ=最古参)」は納得のネーミングだ。
「モニュメント」と呼ばれる世界5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の一つとして数えられており、格式の点ではアルデンヌ3連戦の中で際立って大きい。
ベルギー北部フランデレン地域のロンド・ファン・フラーンデレンに対し、南部ワロン地域のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。レースの舞台となるのは、リエージュの南に広がる丘陵地帯だ。
コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復で、山岳とも呼べるほどスケールの大きな丘陵地帯を逆回りに8の字を描き、リエージュ近郊の街アンスにゴールする。
「アップダウンを繰り返し、最後は短い坂を駆け上がってゴール」というコースの特性は、他のアルデンヌ2戦(アムステルとフレーシュ)と同じ。しかし登り一つ一つの距離が長いのがリエージュの特徴。コース全長も257.5kmと最も長く、難易度、距離、格式においてアルデンヌナンバーワンと呼ばれるのも頷ける。
細かい上りを数え始めるとキリが無いようなアップダウンコース。そのうち、カテゴリーが付けられた上り坂は11カ所。中でも、選手たちが壁をよじ上っているような光景が見られるのが、116.5km地点に登場する「コート・ド・サンロシュ(平均勾配11%)」。この難所を越え、ラスト100kmを切ってからは断続的に上り坂が襲いかかる。
本格的な闘いのゴングが鳴らされるのが、ゴール35km手前の「コート・ド・ラ・ルドゥット(平均8.8%)」。フィリップ・ジルベール(ベルギー)の出身地に近いこのラ・ルドゥットは、最大勾配が17%に達する。
続いてゴール20km手前で「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(平均9.3%)」をクリア。今年もゴールの6km手前で最後の難関「コート・ド・サンニコラ(平均8.6%)」がやってくる。連続するこれらの上りで集団の人数が絞られるのは間違いない。
ゴールに至る登りは「カウベルグ」や「ユイ」ほど厳しくはなく、ラスト2kmから緩斜面がダラダラと続く。連続する登りでアタックを成功させた選手が独走するか、それとも平坦に近い最終ストレートで小集団スプリント勝負に持ち込まれるか。強いものだけが勝負に残るサバイバルレースが繰り広げられるはずだ。
登場する11カ所の登り坂
1 70.0km コート・ド・ロッシュ・アン・アルデンヌ 長さ2.8km・平均勾配6.2%
2 116.5km コート・ド・サンロシュ 長さ1.0km・平均勾配11%
3 160.0km コート・ド・ワンヌ 長さ2.7km・平均勾配7.3%
4 166.5km コート・ド・ストック 長さ1.0km・平均勾配12.2%
5 172.0km コート・ド・ラ・オートルヴェ 長さ3.6km・平均勾配5.7%
6 185.0km コル・ドゥ・ロジェ 長さ4.4km・平均勾配5.9%
7 198.0km コル・ドゥ・マキサール 長さ2.5km・平均勾配5%
8 208.0km モン・トゥー 長さ2.7km・平均勾配5.9%
9 223.0km コート・ド・ラ・ルドゥット 長さ2.0km・平均勾配8.8%
10 238.0km コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン 長さ1.5km・平均勾配9.3%
11 252.0km コート・ド・サンニコラ 長さ1.2km・平均勾配8.6%
ジルベールの連覇なるか?別府と土井がフレーシュから連戦出場
昨年、ワロン出身のフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)は、地元アルデンヌの3連戦で猛威を振るった。アムステル・ゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌで勝ち、そして下馬評通りリエージュで初優勝を飾った。しかもシュレク兄弟2人を相手にしたスプリント勝利で、余裕の3連勝と呼べるほどの好調ぶりだった。
今年はシーズン序盤から低迷し、いまだ0勝(昨年はこの時点で7勝)。しかし、4月に入って徐々に調子を戻し、アムステルで6位に入ると、フレーシュで表彰台(3位)に登っている。
例年リエージュのコースにはジルベール応援団が駆けつけ、路面には無数の「PHIL」ペイントが並ぶ。ワロンの期待を背負うベルギーチャンピオンは、アルデンヌ3連戦を最高の形で締めくくることが出来るだろうか?
昨年、2人揃って先頭グループに残りながら、ジルベールに敗れたシュレク兄弟(ルクセンブルク、レディオシャック・ニッサン)は、雪辱を果たすためにリエージュに戻ってくる。弟アンディは2009年大会に独走勝利、兄フランクは2007年から2年連続3位、そして昨年2位。
調子が上がらないアンディではなく、フランクがエースを担うと目されている。クリストファー・ホーナー(アメリカ)らが加わり、その登坂力を活かしてタフな展開に持ち込みたいところ。スプリント力で劣るため、早め早めに仕掛ける必要がある。
フレーシュ・ワロンヌを制したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)は、2009年、独走したアンディの後続グループ先頭でゴールしている。4日前に喜びの初タイトルを獲得した「プリート」は、スプリント力も兼ね備える。登れるスプリンターとして知られるオスカル・フレイレ(スペイン)とタッグを組む。
スペインからは他にも、リエージュに集中するためにフレーシュをパスしたサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)や、2006年と2008年大会の覇者アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)らが出場する。
アムステルの覇者エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)や、フレーシュを欠場して挑んだジロ・デル・トレンティーノでステージ優勝したダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)、そしてヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)ら、イタリア勢にも注目したい。
好調グリーンエッジは、サイモン・ジェランス(オーストラリア)とミハエル・アルバジーニ(スイス)のコンビを送り込む。110年の長い歴史の中で、リエージュを制したオーストラリア人選手はまだいない。
他にも、地元の声援を受けるイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)やトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)、ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・バラクーダ)らが勝負に絡んでくるだろう。
そしてフレーシュに引き続き、別府史之と土井雪広が出場する。ともに3回目の出場。別府は2008年に完走している。両名ともエースのアシストとして難コースに挑む。
現地は雨と晴れを交互に繰り返す天候が続いており、日曜日も雨混じりの天気が予想される。標高500mを超える山岳地帯も通過するため、雨が降ればかなりタフなコンディションになるだろう。
text&photo:Kei Tsuji in Liege, Belgium
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