2012/03/20(火) - 07:08
イタリアのサンレモから、海岸線に沿って約600km西に向かうと、遠浅のビーチが広がる地中海のリゾート地カレーリャにたどり着く。気まぐれな天気を切り抜け、逃げグループから飛び出したミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)が、チームの嬉しいUCIワールドツアーレース連勝をもたらした。
海岸は晴れ、山岳はみぞれ混じりの雨
真っ赤な出走サイン台 photo:Kei Tsujiバルセロナの北部に位置するカレーリャで、第92回ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャが開幕した。
第1ステージのスタート地点は、カレーリャの街のど真ん中。大会スポンサーのコカコーラ社やビール会社エストレーリャ・ダム社のコーポレートカラーである赤が、春らしい太陽に照らされる。
和気あいあいと(お互いのホイールについて)話しながらスタートを待つ土井雪広(プロジェクト1t4i)と別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiしかし天気予報によると天気は下り坂で、地元の人は「雨とは、この時期にしては珍しい」と話す。「クリスマスから昨日まで、ずっと天気が良かったのに」と。「3年前にツール・ド・フランスがこの街を通過した日も珍しく雨だった。30年前(実際は20年前)にバルセロナ五輪の聖火が通った日も、その日だけ雨だった」。
出走サイン時間ぎりぎりでサインを済ませた別府史之(グリーンエッジ)と、出走サイン時間を過ぎてからサインにやってきた土井雪広(プロジェクト1t4i)は、互いのホイールについてコメントしながらスタートの時間を待つ。
レース前半は太陽が照らす photo:Kei Tsuji同じ1983年生まれで、これまで別々のキャリアを歩み、そして現在別々のチームで別々の役割を担う2人。レースで顔を合わせるのは、昨年6月の全日本選手権ロードレース以来となる。
カレーリャをスタートした177名は、一路内陸へと歩を進め、2級山岳ビラロラウ峠、1級山岳コルフォルミク峠、そして3級山岳コルサクレウ峠を越えて海岸沿いのカレーリャに戻ってくる。晴れの海岸に対して、山岳地帯には怪しげな雨雲がかかる。
全日本チャンピオンジャージを着る別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji1時間におよぶアタック合戦の末に、2級山岳ビラロラウ峠の入り口で飛び出したのは、今年HTC・ハイロードから移籍したミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)。これに4名が加わって、5名で山岳地帯へと入って行く。
頂上がダウンヒル区間にあるという斬新な2級山岳ビラロラウ峠や、標高が1140mに達する1級山岳コルフォルミク峠に挑んだアルバジーニら5人は、最大で6分のリードを築く。
集団内で1級山岳に向かう土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsuji暖かな海岸線とは打って変わって、雨雲に覆われた山岳は気温が下がり、時折、みぞれ混じりの雨が選手たちを濡らす。「寒すぎて本当に凍えた」と、レース後の土井は振り返る。
メイン集団は人数を減らすことなく山岳をこなしたが、そもそも出場しているスプリンターの数が少ないことが影響し、積極的に牽くチームを欠いた状態。アスタナやモビスターがメイン集団をコントロールしたが、逃げグループとのタイム差が劇的に縮まることはなかった。
ゴールまで18kmを残した3級山岳コルサクレウ峠でタイム差は3分のまま。ここでアルバジーニが加速し、他の逃げメンバーを振り切って独走に持ち込む。
海岸沿いの平坦路に入ってなおアルバジーニは踏み続け、諦めずに追走するアントニー・ドゥラプラス(フランス、ソール・ソジャサン)を42秒、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)を1分14秒、そしてメイン集団を1分32秒引き離したまま、カレーリャの大通りにゴールした。
逃げグループに入ったミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
観客に見守られてゴールを目指すミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
独走勝利を飾ったミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji
グリーンエッジのUCIワールドツアーレース連勝
リーダージャージに袖を通したミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji昨年アルバジーニはブエルタ・ア・エスパーニャの第13ステージを制している。当時は20人の大きなグループが逃げ切り、そのゴールスプリントでアルバジーニが先着した。
グリーンエッジは同じ地中海沿いの街サンレモで「ラ・プリマヴェーラ」ことミラノ〜サンレモ制したばかり。シーズン勝利数では5位タイの6勝目だが、その戦歴にはツアー・ダウンアンダー総合優勝、ティレーノ〜アドリアティコ初日チームTT制覇、ミラノ〜サンレモ制覇、そしてこのカタルーニャ第1ステージ制覇と、ビッグレースの勝利が並ぶ。
チームメイトの勝利を喜ぶ別府史之(グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji「逃げのメンバーを振り切ることが出来れば、ゴールまで逃げ切るチャンスが生まれると思った。独走に持ち込んだとき、正直、メイン集団から逃げ切れるかどうか不安だった。でもチームカーの監督から逐一情報を得て、励まされながら走ったんだ」。今シーズン初勝利だけでなく、総合リーダージャージと山岳賞ジャージを手にしたアルバジーニはそう話す。
グリーンエッジは翌日からリーダーチームとしてレースをコントロールする使命を負う。
「下りが速かった」と話す土井雪広(プロジェクト1t4i) photo:Kei Tsuji1分32秒遅れのメイン集団でゴールした別府は、チームメイトの逃げ切り勝利を喜ぶとともに「思っていたより走れました」と、高地トレーニング後のモヤモヤ感が晴れたことに笑みを浮かべる。仮にアルバジーニが捕まった場合に備え、チームとして固まってスプリントに備えていたと言う。
同じくメイン集団の後方でゴールした土井は、ゴール後に「下りが速かった。最後の3級山岳でスプリンターのロジェが遅れてしまったので、待って、下りで集団に連れて行った」と話す。「前半に何度かアタックしたけど決まらなかった。平地で60km/h近く出るようなアタックを繰り返すと、やっぱり体力を使ってしまう。いつも熱くなってしまう」。
カタルーニャ第2ステージは、多くのアメリカ人やオーストラリア人選手が居を構えるジローナを発着する。ゴールの13.7km手前には、標高480mの1級山岳アンヘルス峠が登場。天候は回復傾向にある。
その他、レースの模様はフォトギャラリーにて!
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第1ステージ結果
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 3h20'04"
2位 アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソウル・ソジャサン) +42"
3位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) +1'14"
4位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'32"
5位 ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、アージェードゥーゼル)
6位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、プロジェクト1t4i)
7位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、グリーンエッジ)
8位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
9位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、チームスカイ)
10位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
26位 別府史之(日本、グリーンエッジ)
161位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)
個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 3h20'04"
2位 アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソウル・ソジャサン) +42"
3位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) +1'14"
4位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'32"
5位 ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、アージェードゥーゼル)
6位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、プロジェクト1t4i)
7位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、グリーンエッジ)
8位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
9位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、チームスカイ)
10位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
26位 別府史之(日本、グリーンエッジ)
161位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)
山岳賞
ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)
スプリント賞
アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソール・ソジャサン)
チーム総合成績
グリーンエッジ
text&photo:Kei Tsuji in Calella, Spain
海岸は晴れ、山岳はみぞれ混じりの雨
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第1ステージのスタート地点は、カレーリャの街のど真ん中。大会スポンサーのコカコーラ社やビール会社エストレーリャ・ダム社のコーポレートカラーである赤が、春らしい太陽に照らされる。
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出走サイン時間ぎりぎりでサインを済ませた別府史之(グリーンエッジ)と、出走サイン時間を過ぎてからサインにやってきた土井雪広(プロジェクト1t4i)は、互いのホイールについてコメントしながらスタートの時間を待つ。
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カレーリャをスタートした177名は、一路内陸へと歩を進め、2級山岳ビラロラウ峠、1級山岳コルフォルミク峠、そして3級山岳コルサクレウ峠を越えて海岸沿いのカレーリャに戻ってくる。晴れの海岸に対して、山岳地帯には怪しげな雨雲がかかる。
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頂上がダウンヒル区間にあるという斬新な2級山岳ビラロラウ峠や、標高が1140mに達する1級山岳コルフォルミク峠に挑んだアルバジーニら5人は、最大で6分のリードを築く。
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メイン集団は人数を減らすことなく山岳をこなしたが、そもそも出場しているスプリンターの数が少ないことが影響し、積極的に牽くチームを欠いた状態。アスタナやモビスターがメイン集団をコントロールしたが、逃げグループとのタイム差が劇的に縮まることはなかった。
ゴールまで18kmを残した3級山岳コルサクレウ峠でタイム差は3分のまま。ここでアルバジーニが加速し、他の逃げメンバーを振り切って独走に持ち込む。
海岸沿いの平坦路に入ってなおアルバジーニは踏み続け、諦めずに追走するアントニー・ドゥラプラス(フランス、ソール・ソジャサン)を42秒、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)を1分14秒、そしてメイン集団を1分32秒引き離したまま、カレーリャの大通りにゴールした。
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グリーンエッジのUCIワールドツアーレース連勝
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グリーンエッジは同じ地中海沿いの街サンレモで「ラ・プリマヴェーラ」ことミラノ〜サンレモ制したばかり。シーズン勝利数では5位タイの6勝目だが、その戦歴にはツアー・ダウンアンダー総合優勝、ティレーノ〜アドリアティコ初日チームTT制覇、ミラノ〜サンレモ制覇、そしてこのカタルーニャ第1ステージ制覇と、ビッグレースの勝利が並ぶ。
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グリーンエッジは翌日からリーダーチームとしてレースをコントロールする使命を負う。
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同じくメイン集団の後方でゴールした土井は、ゴール後に「下りが速かった。最後の3級山岳でスプリンターのロジェが遅れてしまったので、待って、下りで集団に連れて行った」と話す。「前半に何度かアタックしたけど決まらなかった。平地で60km/h近く出るようなアタックを繰り返すと、やっぱり体力を使ってしまう。いつも熱くなってしまう」。
カタルーニャ第2ステージは、多くのアメリカ人やオーストラリア人選手が居を構えるジローナを発着する。ゴールの13.7km手前には、標高480mの1級山岳アンヘルス峠が登場。天候は回復傾向にある。
その他、レースの模様はフォトギャラリーにて!
ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2012第1ステージ結果
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 3h20'04"
2位 アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソウル・ソジャサン) +42"
3位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) +1'14"
4位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'32"
5位 ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、アージェードゥーゼル)
6位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、プロジェクト1t4i)
7位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、グリーンエッジ)
8位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
9位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、チームスカイ)
10位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
26位 別府史之(日本、グリーンエッジ)
161位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)
個人総合成績
1位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ) 3h20'04"
2位 アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソウル・ソジャサン) +42"
3位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) +1'14"
4位 ケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'32"
5位 ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、アージェードゥーゼル)
6位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、プロジェクト1t4i)
7位 アラン・デーヴィス(オーストラリア、グリーンエッジ)
8位 ファビオ・サバティーニ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
9位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、チームスカイ)
10位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、アスタナ)
26位 別府史之(日本、グリーンエッジ)
161位 土井雪広(日本、プロジェクト1t4i)
山岳賞
ミハエル・アルバジーニ(スイス、グリーンエッジ)
スプリント賞
アントニー・ドゥラプラス(フランス、ソール・ソジャサン)
チーム総合成績
グリーンエッジ
text&photo:Kei Tsuji in Calella, Spain
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