2012/03/17(土) - 20:35
最終ステージはジョナサン・キャントウェル(サクソバンク)が集団スプリントでステージ2勝目を挙げ、リース・ポロックが落車しながらも首位をキープして総合優勝。健闘した日本ナショナルチームはチーム優勝を獲得した。
総合リーダー、ポロックは緊張感に包まれてスタート
台湾の南部に位置する大都市、高雄で開催された第7ステージは、途中2ヶ所にホットスポットがある平坦基調の126.12km。最終ステージにして、ようやく晴天に恵まれて、汗ばむ陽気の中、レースは高雄の名所「愛河(Love River)」のほとりからスタートを迎えた。
最終ステージにして、総合首位につけるリース・ポロック(オーストラリア、ドラパック)から4位の西谷泰治(日本ナショナル)までのタイム差は8秒。平坦基調のステージだが、途中2ヶ所のホットスポット、またゴールの着順によって得られるボーナスタイムで、まだ逆転の可能性は残された状況下でのスタートだった。
ポロックは「すごくナーバスだ……今日は自分たちにできることをするだけだよ」と朝から苦笑いを浮かべる。1級山岳山頂にゴールするクイーンステージ、第3ステージでリーダージャージを獲得すると「自分が守れるとは思っていない。登坂に強いチームメイトのほうが可能性があると思う」とコメントしたポロック。しかし、その後もジャージを守り続け、最後の山頂ゴールであった第6ステージでは、ゴール後に倒れ込むほどの走りを見せた。2位のワン・カンポー(香港、香港ナショナル)までのタイム差はわずか2秒。チームは人通りの少ない木陰で、静かにレーススタートを待った。
ロジャースがポイント賞争いを制す
ポイント賞争いも最終ステージまで持ち越されていた。昨日の第6ステージを終えて、ロジャース・リー(イギリス、RTSレーシング)とフェン・チュンカイ(台湾、アクション)の獲得ポイントは同点。集団で迎えた1つ目のホットスポットでは、40歳のリーと23歳のフェン、17歳差の2人が果敢に責め合う形で、フェンが1位通過し、リーが2位となる。しかし、2つ目のホットスポットを前に、リーを含む4人の逃げが決まり、2つ目のホットスポットはリーが1位通過。フェンは機材トラブルにより、4人を追うことができなかったという。ここでリーのポイント賞が確定した。
レース後の記者会見ではフェンに「リーのことが嫌い?」なんて質問も飛びだしたが、アグレッシブルに走り続けた若い台湾人選手の人気は上がっていく一方。「あくまでもほしいのはイエロージャージ。今年は厳しかったけど、来年、もしくは再来年は確実に獲りたい」と話す。今後の活躍が楽しみな選手だ。
キャントウェル&ポロック、オーストラリア人のW勝利
1分35秒ほどのタイムギャップを稼いだ4人の先頭集団だったが、ゴールを前に集団に吸収され、集団スプリントの体制に入る。カーブが続き、落車も頻発したスプリントだったが、最終ステージを制したのは、ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、サクソバンク)。台中での第4ステージに次ぐ、ステージ2勝目を挙げた。
アシストに徹したチームメイトの宮澤崇史も笑顔でゴールを迎えた。「勝てたことは嬉しいが、ステージ2勝はサクソバンクとしては最低限の結果だと思う。できることなら、チームの誰かが総合上位に入りたかった」と話し、夜の飛行機で拠点となるイタリアへと戻った。
イエロージャージを着るポロックはラスト800mで落車に巻き込まれ、チームメイトとともに集団から遅れてゴールラインを越えた。ゴール前の落車のためタイム差はつかないが、「誰が勝ったのか、総合上位の選手がボーナスタイムを獲得したのか……? イエロージャージを守れたかどうかわからなくて不安だった」と話したが、無事にジャージを守り、オーストラリア人として初めて、ツール・ド・台湾の総合優勝に輝いた。
5人のチームワークで勝ち取ったチーム総合優勝
そして、チーム総合成績首位で最終ステージを迎えた日本ナショナルチーム。彼らは、チーム成績だけで満足することなく、ステージ優勝もめざして最終ステージを走った。結果的に西谷泰治は落車の影響もあり、ステージ13位で終えたが、チームの総合成績は守りきり、プロチーム、プロコンチネンタルチームも参戦するUCI1クラスのレースで、日本ナショナルチームは、チームとして総合優勝を挙げた。
高橋松吉監督は「経験豊富な選手たちでナショナルチームを構成すれば、集団スプリントになってもゴール前でうまく連係ができ、西谷も勝てたと思うが、今回は若手育成を考慮したチーム編成でレースに臨んだ。目標のステージ優勝はできなかったが、若い選手にとっては、とてもいい経験になったと思う。西谷や畑中勇介も非常に良く若手のフォローができていたし、チームとしてまとまっていた。最初はまさかチーム優勝できるとは思わなかったが、優勝できてよかったと思う」とコメント。
西谷は「勝つことは本当に難しい……」とゴール後に悔しさを浮かべたが、5選手すべての走りがチーム優勝に結びついているのは事実。日本ナショナルチームは、弾けそうな満面の笑顔で表彰台へと登った。
ツール・ド・台湾2012第6ステージ結果
1位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、サクソバンク) 2h47'18"
2位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)
3位 アディク・オスマン(マレーシア、チャンピオンシステム)
4位 ルーカスセバスティアン・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
5位 パトリック・シャウ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)
6位 アレックス・カーヴァー(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)
13位 西谷泰治(日本ナショナル)
21位 福島晋一(トレンガヌ)
27位 早川朋宏(日本ナショナル)
31位 畑中勇介(日本ナショナル)
48位 山本元喜(日本ナショナル)
54位 中尾圭祐(日本ナショナル)
71位 宮澤崇史(サクソバンク)
個人総合成績
1位 リース・ポロック(オーストラリア、ドラパック)19h09'44"
2位 ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)+0'02"
3位 デック・ミューラー(ドイツ、ニュートリクション)+0'06"
4位 西谷泰治(日本ナショナル) +0'08"
5位 アンソニー・ジャコーポ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)+0'17"
6位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)+0'26"
9位 畑中勇介(日本ナショナル)+0'38"
17位 山本元喜(日本ナショナル)+1'04"
28位 宮澤崇史(サクソバンク) +2'00"
43位 早川朋宏(日本ナショナル)+5'14"
59位 中尾圭祐(日本ナショナル)+11'19"
66位 福島晋一(トレンガヌ)+12'34"
ポイント賞
ロジャース・リー(イギリス、RTSレーシング)
山岳賞
フェン・チュンカイ(台湾、アクション)
アジアンリーダー
ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)
チーム総合成績
日本ナショナル
photo&text:Sonoko.Tanaka
総合リーダー、ポロックは緊張感に包まれてスタート
台湾の南部に位置する大都市、高雄で開催された第7ステージは、途中2ヶ所にホットスポットがある平坦基調の126.12km。最終ステージにして、ようやく晴天に恵まれて、汗ばむ陽気の中、レースは高雄の名所「愛河(Love River)」のほとりからスタートを迎えた。
最終ステージにして、総合首位につけるリース・ポロック(オーストラリア、ドラパック)から4位の西谷泰治(日本ナショナル)までのタイム差は8秒。平坦基調のステージだが、途中2ヶ所のホットスポット、またゴールの着順によって得られるボーナスタイムで、まだ逆転の可能性は残された状況下でのスタートだった。
ポロックは「すごくナーバスだ……今日は自分たちにできることをするだけだよ」と朝から苦笑いを浮かべる。1級山岳山頂にゴールするクイーンステージ、第3ステージでリーダージャージを獲得すると「自分が守れるとは思っていない。登坂に強いチームメイトのほうが可能性があると思う」とコメントしたポロック。しかし、その後もジャージを守り続け、最後の山頂ゴールであった第6ステージでは、ゴール後に倒れ込むほどの走りを見せた。2位のワン・カンポー(香港、香港ナショナル)までのタイム差はわずか2秒。チームは人通りの少ない木陰で、静かにレーススタートを待った。
ロジャースがポイント賞争いを制す
ポイント賞争いも最終ステージまで持ち越されていた。昨日の第6ステージを終えて、ロジャース・リー(イギリス、RTSレーシング)とフェン・チュンカイ(台湾、アクション)の獲得ポイントは同点。集団で迎えた1つ目のホットスポットでは、40歳のリーと23歳のフェン、17歳差の2人が果敢に責め合う形で、フェンが1位通過し、リーが2位となる。しかし、2つ目のホットスポットを前に、リーを含む4人の逃げが決まり、2つ目のホットスポットはリーが1位通過。フェンは機材トラブルにより、4人を追うことができなかったという。ここでリーのポイント賞が確定した。
レース後の記者会見ではフェンに「リーのことが嫌い?」なんて質問も飛びだしたが、アグレッシブルに走り続けた若い台湾人選手の人気は上がっていく一方。「あくまでもほしいのはイエロージャージ。今年は厳しかったけど、来年、もしくは再来年は確実に獲りたい」と話す。今後の活躍が楽しみな選手だ。
キャントウェル&ポロック、オーストラリア人のW勝利
1分35秒ほどのタイムギャップを稼いだ4人の先頭集団だったが、ゴールを前に集団に吸収され、集団スプリントの体制に入る。カーブが続き、落車も頻発したスプリントだったが、最終ステージを制したのは、ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、サクソバンク)。台中での第4ステージに次ぐ、ステージ2勝目を挙げた。
アシストに徹したチームメイトの宮澤崇史も笑顔でゴールを迎えた。「勝てたことは嬉しいが、ステージ2勝はサクソバンクとしては最低限の結果だと思う。できることなら、チームの誰かが総合上位に入りたかった」と話し、夜の飛行機で拠点となるイタリアへと戻った。
イエロージャージを着るポロックはラスト800mで落車に巻き込まれ、チームメイトとともに集団から遅れてゴールラインを越えた。ゴール前の落車のためタイム差はつかないが、「誰が勝ったのか、総合上位の選手がボーナスタイムを獲得したのか……? イエロージャージを守れたかどうかわからなくて不安だった」と話したが、無事にジャージを守り、オーストラリア人として初めて、ツール・ド・台湾の総合優勝に輝いた。
5人のチームワークで勝ち取ったチーム総合優勝
そして、チーム総合成績首位で最終ステージを迎えた日本ナショナルチーム。彼らは、チーム成績だけで満足することなく、ステージ優勝もめざして最終ステージを走った。結果的に西谷泰治は落車の影響もあり、ステージ13位で終えたが、チームの総合成績は守りきり、プロチーム、プロコンチネンタルチームも参戦するUCI1クラスのレースで、日本ナショナルチームは、チームとして総合優勝を挙げた。
高橋松吉監督は「経験豊富な選手たちでナショナルチームを構成すれば、集団スプリントになってもゴール前でうまく連係ができ、西谷も勝てたと思うが、今回は若手育成を考慮したチーム編成でレースに臨んだ。目標のステージ優勝はできなかったが、若い選手にとっては、とてもいい経験になったと思う。西谷や畑中勇介も非常に良く若手のフォローができていたし、チームとしてまとまっていた。最初はまさかチーム優勝できるとは思わなかったが、優勝できてよかったと思う」とコメント。
西谷は「勝つことは本当に難しい……」とゴール後に悔しさを浮かべたが、5選手すべての走りがチーム優勝に結びついているのは事実。日本ナショナルチームは、弾けそうな満面の笑顔で表彰台へと登った。
ツール・ド・台湾2012第6ステージ結果
1位 ジョナサン・キャントウェル(オーストラリア、サクソバンク) 2h47'18"
2位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)
3位 アディク・オスマン(マレーシア、チャンピオンシステム)
4位 ルーカスセバスティアン・アエド(アルゼンチン、サクソバンク)
5位 パトリック・シャウ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)
6位 アレックス・カーヴァー(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)
13位 西谷泰治(日本ナショナル)
21位 福島晋一(トレンガヌ)
27位 早川朋宏(日本ナショナル)
31位 畑中勇介(日本ナショナル)
48位 山本元喜(日本ナショナル)
54位 中尾圭祐(日本ナショナル)
71位 宮澤崇史(サクソバンク)
個人総合成績
1位 リース・ポロック(オーストラリア、ドラパック)19h09'44"
2位 ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)+0'02"
3位 デック・ミューラー(ドイツ、ニュートリクション)+0'06"
4位 西谷泰治(日本ナショナル) +0'08"
5位 アンソニー・ジャコーポ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)+0'17"
6位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)+0'26"
9位 畑中勇介(日本ナショナル)+0'38"
17位 山本元喜(日本ナショナル)+1'04"
28位 宮澤崇史(サクソバンク) +2'00"
43位 早川朋宏(日本ナショナル)+5'14"
59位 中尾圭祐(日本ナショナル)+11'19"
66位 福島晋一(トレンガヌ)+12'34"
ポイント賞
ロジャース・リー(イギリス、RTSレーシング)
山岳賞
フェン・チュンカイ(台湾、アクション)
アジアンリーダー
ワン・カンポー(香港、香港ナショナル)
チーム総合成績
日本ナショナル
photo&text:Sonoko.Tanaka
フォトギャラリー
Amazon.co.jp