2012/03/14(水) - 03:07
9.3kmの平坦コースで起こった総合逆転で幕を閉じたティレーノ〜アドリアティコ。第47代チャンピオンに輝いたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)は、7月のツール・ド・フランスに目を向ける。「2012年は勝利の波に乗れている」。それが27歳の新チャンピオンの言葉だ。
2年連続最速タイムをマークしたカンチェラーラ
ティレニア海沿いのサンヴィンチェンツォで動き出した第44回ティレーノ〜アドリアティコは、アドリア海に面したサンベネデット・デル・トロントで完結する。
同地はマルケ州指折りのビーチリゾート地であり、真夏のハイシーズンにはヨーロッパ各地からやってきた観光客でごった返す。しかし3月はまだまだオフシーズンであり、多くのホテルがシャッターを下ろし、閑散とした寂しげな雰囲気が漂う。
春らしい暖かな太陽と、まだ冷たさを残す海風に吹かれ、最終日まで残った143名(初日出走176名)が9.3kmコースを駆け抜けた。コースは真っ平らで、コーナーは僅かに6つ。ティレーノ〜アドリアティコの最終日を締めくくる定番コースであり、昨年大会からロードレースが個人タイムトライアルに切り替わった。
「去年より3秒遅かったのは、風が強かったせいだと思う」。そう話すのは、2年連続最速タイムで優勝したファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)。
昨年マークした10分33秒には届かなかったが、余裕の走りでステージ優勝に輝いた。平均スピードは52.641km/h。
ストラーデ・ビアンケに続くRCS SPORT主催レースでの活躍により、自然と週末のミラノ〜サンレモへの期待が高まる。カンチェラーラは2008年にストラーデ・ビアンケ、ティレーノ〜アドリアティコ、そしてミラノ〜サンレモを連続制覇している。
「今週は、チームにとって素晴らしい1週間だった。クラシックシーズンに向けて、チーム全体に大きな自信を与えてくれる。明日からしばらく休んで、ミラノ〜サンレモに備えたい」。カンチェラーラは「北のクラシック」でのタイトル奪回に向けて順調な仕上がりを見せている。
僅差の総合争いは27歳ニーバリに軍配
カンチェラーラのチームメイトであるダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)が12秒差のステージ2位に入り、レディオシャック・ニッサンはワンツー勝利。しかし最終走者クリストファー・ホーナー(アメリカ)にその勢いを繋ぐことは出来なかった。
ホーナーがリーダージャージを着用し、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)が5秒差、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が6秒差で続くという接戦で迎えた最終個人タイムトライアル。
肺塞栓症により約8ヶ月にわかってレースから遠ざかり、このティレーノ〜アドリアティコで復帰したばかりのホーナーは、カンチェラーラから40秒遅れ、ニーバリから22秒遅れのステージ45位。ニーバリに総合首位を奪われたことを悟ったホーナーは、淡い笑みを浮かべながらゴールラインを切った。
「複雑な気持ちなんて何もない。ファンタスティックな1週間を経験し、そして復帰戦のティレーノ〜アドリアティコで総合表彰台に登ったんだ。総合2位という成績に全く後悔はない」。40歳のベテランは明るい表情でインタビューに応えた。
ステージ9位に入る好走でサンベネデット・デル・トロントを沸かせ、総合逆転を果たしたニーバリ。今年はオフシーズンにTTバイクのポジショニングに時間を費やし、ハンドルとサドルを下げるなど空力改善に取り組んだ。
シーズン初戦ツール・ド・サンルイスの個人TTでも、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)に次いで2位。個人TTを強みに変えつつある。
「ティレーノ〜アドリアティコを制することは長年の夢だった。第5ステージで優勝して、そして総合優勝。これほど喜ばしいことはない」。
昨年カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)はティレーノ〜アドリアティコを制し、そしてツール・ド・フランスで総合優勝を果たした。その流れをなぞらえた記者の質問にニーバリは「ティレーノとツールは、個人TTの長さも違うし、全く別物だと思っている」と返す。
「でも今年はコンタドールが出場しないので、多くの選手にチャンスがある。まずまずだった昨シーズンと比べて、今年はシーズン序盤から勢いに乗っている。勝利の波に乗っている感じ」。
リクイガス・キャノンデールはニーバリにツール・ド・フランスのエースを託す。チームメイトのイヴァン・バッソ(イタリア)はジロ・デ・イタリア狙いだ。
その他の写真はフォトギャラリーにて!
ティレーノ~アドリアティコ2012第7ステージ結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) 10'36"
2位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン) +12"
3位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、グリーンエッジ) +16"
4位 スヴェイン・タフト(カナダ、グリーンエッジ) +16"
5位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、チームサクソバンク) +16"
6位 ヘイデン・ロールストン(ニュージーランド、レディオシャック・ニッサン) +17"
7位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) +18"
8位 ピーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ) +20"
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +20"
10位 マルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム) +21"
22位 ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +27"
34位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +34"
42位 ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +38"
45位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン) +40"
48位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル) +42"
49位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +44"
53位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +47"
68位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +55"
個人総合成績
1位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)29h38'08"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン) +14"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +26"
4位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +53"
5位 ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'00"
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +1'16"
7位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +1'16"
8位 ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'25"
9位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル) +1'31"
10位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、グリーンエッジ) +1'33"
山岳賞
ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
ポイント賞
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
新人賞
ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
チーム総合成績
アージェードゥーゼル
text&photo:Kei Tsuji in San Benedetto del Tronto, Italy
2年連続最速タイムをマークしたカンチェラーラ
ティレニア海沿いのサンヴィンチェンツォで動き出した第44回ティレーノ〜アドリアティコは、アドリア海に面したサンベネデット・デル・トロントで完結する。
同地はマルケ州指折りのビーチリゾート地であり、真夏のハイシーズンにはヨーロッパ各地からやってきた観光客でごった返す。しかし3月はまだまだオフシーズンであり、多くのホテルがシャッターを下ろし、閑散とした寂しげな雰囲気が漂う。
春らしい暖かな太陽と、まだ冷たさを残す海風に吹かれ、最終日まで残った143名(初日出走176名)が9.3kmコースを駆け抜けた。コースは真っ平らで、コーナーは僅かに6つ。ティレーノ〜アドリアティコの最終日を締めくくる定番コースであり、昨年大会からロードレースが個人タイムトライアルに切り替わった。
「去年より3秒遅かったのは、風が強かったせいだと思う」。そう話すのは、2年連続最速タイムで優勝したファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン)。
昨年マークした10分33秒には届かなかったが、余裕の走りでステージ優勝に輝いた。平均スピードは52.641km/h。
ストラーデ・ビアンケに続くRCS SPORT主催レースでの活躍により、自然と週末のミラノ〜サンレモへの期待が高まる。カンチェラーラは2008年にストラーデ・ビアンケ、ティレーノ〜アドリアティコ、そしてミラノ〜サンレモを連続制覇している。
「今週は、チームにとって素晴らしい1週間だった。クラシックシーズンに向けて、チーム全体に大きな自信を与えてくれる。明日からしばらく休んで、ミラノ〜サンレモに備えたい」。カンチェラーラは「北のクラシック」でのタイトル奪回に向けて順調な仕上がりを見せている。
僅差の総合争いは27歳ニーバリに軍配
カンチェラーラのチームメイトであるダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)が12秒差のステージ2位に入り、レディオシャック・ニッサンはワンツー勝利。しかし最終走者クリストファー・ホーナー(アメリカ)にその勢いを繋ぐことは出来なかった。
ホーナーがリーダージャージを着用し、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)が5秒差、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が6秒差で続くという接戦で迎えた最終個人タイムトライアル。
肺塞栓症により約8ヶ月にわかってレースから遠ざかり、このティレーノ〜アドリアティコで復帰したばかりのホーナーは、カンチェラーラから40秒遅れ、ニーバリから22秒遅れのステージ45位。ニーバリに総合首位を奪われたことを悟ったホーナーは、淡い笑みを浮かべながらゴールラインを切った。
「複雑な気持ちなんて何もない。ファンタスティックな1週間を経験し、そして復帰戦のティレーノ〜アドリアティコで総合表彰台に登ったんだ。総合2位という成績に全く後悔はない」。40歳のベテランは明るい表情でインタビューに応えた。
ステージ9位に入る好走でサンベネデット・デル・トロントを沸かせ、総合逆転を果たしたニーバリ。今年はオフシーズンにTTバイクのポジショニングに時間を費やし、ハンドルとサドルを下げるなど空力改善に取り組んだ。
シーズン初戦ツール・ド・サンルイスの個人TTでも、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、オメガファーマ・クイックステップ)に次いで2位。個人TTを強みに変えつつある。
「ティレーノ〜アドリアティコを制することは長年の夢だった。第5ステージで優勝して、そして総合優勝。これほど喜ばしいことはない」。
昨年カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)はティレーノ〜アドリアティコを制し、そしてツール・ド・フランスで総合優勝を果たした。その流れをなぞらえた記者の質問にニーバリは「ティレーノとツールは、個人TTの長さも違うし、全く別物だと思っている」と返す。
「でも今年はコンタドールが出場しないので、多くの選手にチャンスがある。まずまずだった昨シーズンと比べて、今年はシーズン序盤から勢いに乗っている。勝利の波に乗っている感じ」。
リクイガス・キャノンデールはニーバリにツール・ド・フランスのエースを託す。チームメイトのイヴァン・バッソ(イタリア)はジロ・デ・イタリア狙いだ。
その他の写真はフォトギャラリーにて!
ティレーノ~アドリアティコ2012第7ステージ結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・ニッサン) 10'36"
2位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レディオシャック・ニッサン) +12"
3位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、グリーンエッジ) +16"
4位 スヴェイン・タフト(カナダ、グリーンエッジ) +16"
5位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、チームサクソバンク) +16"
6位 ヘイデン・ロールストン(ニュージーランド、レディオシャック・ニッサン) +17"
7位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) +18"
8位 ピーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ) +20"
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +20"
10位 マルコ・ピノッティ(イタリア、BMCレーシングチーム) +21"
22位 ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +27"
34位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +34"
42位 ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +38"
45位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン) +40"
48位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル) +42"
49位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) +44"
53位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +47"
68位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +55"
個人総合成績
1位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)29h38'08"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン) +14"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) +26"
4位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) +53"
5位 ジョニー・フーガーランド(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'00"
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +1'16"
7位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +1'16"
8位 ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'25"
9位 クリストフ・リブロン(フランス、アージェードゥーゼル) +1'31"
10位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、グリーンエッジ) +1'33"
山岳賞
ステファノ・ピラッツィ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)
ポイント賞
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
新人賞
ワウテル・ポエルス(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
チーム総合成績
アージェードゥーゼル
text&photo:Kei Tsuji in San Benedetto del Tronto, Italy
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