2012/02/28(火) - 18:26
サイパンで行われたヘル・オブ・マリアナ。このファン系自転車レースに、ひょんな事から参加することになったレース初心者の野沢安澄さん。なんと3回も表彰台にあがり、賞金(金券)もゲットするという大活躍となった。野沢さん自身の手記でユニークな体験をレポートします。
野沢安澄さん 本職はフォトグラファーだ はじめまして、野沢安澄です。自転車歴は3年目。愛車はホワイトの可愛いアンカーの女性モデルに乗っています。本職はフォトグラファー時々、バドミントンのコーチです。色々な事に挑戦したい24歳・年女です。自転車ポタリングを楽しみますが、レースは初体験です。
ヘル・オブ・マリアナ(通称HOM)とは、サイパン島を一周する100㎞レース。直訳すると、マリアナの地獄、という意味(泣)。サイパン島にはたくさんの上り坂があるため、そう名付けられたようだ。
このレースでは100㎞を1人で挑戦したり、2人、4人で距離を分けて挑戦する事もできる。そしてオープン、年齢別部門に分かれている。
他にも参加賞のウェアを着てその中で順位を競う部門などユニークなものもある。賞金が出るのでもしもに備えて私も着ちゃいます(笑)。
今回このレースに出る事になったきっかけは、1通のメールだった。「サイパンで自転車のレースがあるんだけど、賞金稼ぎにいかない?」と。送り主はシクロワイアードのレポートでおなじみバイシクルトレーナーズジャパン代表/大河原正晴さん。私のバドミントンの師匠だ。
この人にはいつも振り回されているが、そのかわり必ず何かプラスになるものがかえってくる。よく内容は理解していなかったのだが、面白そうだし、賞金ゲットできたらラッキーだなと、軽い気持ちでエントリーさせてもらったのだ。
しかし勢いで「行きます!!」と返事したものの、よく考えてみたら自転車には乗ってはいますが、レースに参加するのは生まれて初めて。昨年参加したのもホノルルのセンチュリーライドであって、間違ってもレースではない。
昨年の9月、私はホノルルセンチュリーライドに参加した。それこそ本当に初めてのロングライドで、160キロを無事完走。どこを走っても絶景で、かんかん照りのホノルルの空気がとても気持ちよく、なんといっても、休憩ポイントのボランティアサービスが最高。バナナ食べ放題。でも今回のは、20キロ地点でのフルーツ補給もきっとできない...。
話はずれましたが、でもまぁとにかくすごく気持ちのいい「あの感じ」をまた味わえるのだと思ったら、ワクワク。不安以上に興奮してしまう。
バドミントンの師匠・大河原正晴さん
美味しい料理をしっかり食べて明日に備えます
前日は楽しい試走会でサイパン観光
サイパン島には日本から飛行機で3時間半ほどで着いた。平均温度が27度の常夏は嬉しい。
到着した12月2日は、レース前の予行走行会。日本人参加者の皆さんと試走に出かけた。
走行の前にはシクロワイアードの編集長・綾野さんとスタッフのかたが個々に自転車の状態を診てくれました。ほとんど自転車の知識がない私はお任せコース。普段ほとんどメンテナンスをしていないのがばれたのか、チェーンに油までさしてもらっちゃいました。
ただ写真を撮るだけでなく、自転車の知識も豊富な綾野さんに感動してしまいました。私、秘かについていきます(笑)。
スーサイドクリフ目指し走る。でもあの崖の上には登りたくない... 走行会ルートは、当日のレースルートを逆走し、バンザイクリフで折り返してくるという、50キロ程度のルート。海沿いの美味しいトコどりのコースだそうです。
編集長をまねて、カメラをぶら下げてついていくのですが、さすが皆さんレースに参加するだけあって、スピードが速く、ついていくのがやっと。走りながら撮るカメラマンの「ばけものさ」には本当に驚きです。私もそんな走れるカメラマン(ばけもの)を目指すべく、必死についていくのでした。
初めてのビンディングペダルにも馴れた頃、見場らしの良い場所に到着。さすがサイパン。眺め最高。
目の前のあの絶壁もすごいな。なんて思っていたら、「明日はここ登るんだよ。」とさらっと不思議な言葉が耳に入ってきた。まさか...。
「あの崖の上から眺めたらさぞかし絶景なんだろうな」、と思いながらスーサイドクリフをあとにするのでした。その夜はホテルの美味しい食事を食べて、ぐっすり。
参加賞ジャージを着てその部門の賞金も目指します レース当日 賞金目指して走ります
スタート地点は私たちが泊まった、HOMを主催している、P.I.C(パシフィックアイランドクラブ)
サイパンホテルの目の前。
まだ薄暗い中、いざスタート。参加者が一斉にスタートするため、落車の心配があったのだが、最初、数十メートル先でUターンするため、ゆっくりな走りはじめで、難なく走り出す事ができた。今日は賞金を狙いにいくためカメラはお休み(笑)。
とりあえず先頭集団にくっついてみるが、最初の坂で集団には置いていかれた。想像はしていたが、こんなにも早く坂が現れるとは。賞金狙いのはずだったが、既に心は折れかかっていた。
早々にスタミナ切れ。前についていてくれるはずの大河原さんがどんどん見えなくなってしまいました。果たして100キロ無事に走りきれるのか...。
走り始めて10㎞もしないうちに、あの時の安易な自分を後悔し、賞金の二文字が頭の中でどんどん薄れていった。永遠に続くのではないかと思わせる坂をやっと上り終えたと思ったら、下り。また上り。の繰り返し。この時点で賞金はもう諦めたくなっていました。
坂に苦しむ。大河原さんがアシストしてくれます 「100キロもあるのにこれではいかん」と、自分のペースで呼吸を整えながら走っていくと、やっと私を引っ張ってくれる救世主、大河原さんに追いつく事ができました。やっぱり誰かが前にいるのといないのとでは天と地の差があります。
そこからは私に賞金を取らせてくれるという約束通り、上り以外は大河原トレーナーが引っ張ってくれて、そのおかげで、折れかけた心も徐々に回復し、つらかったはずの上りもなんだか気持ちよく感じられるようになっていた。
辛い表情になりながらも、ただひたすら足を動かしていると、後ろから猛スピードで迫ってくる男女が。編集長の綾野さんと、その後ろについているのは前回優勝者のミエコさんだ。そして、女子の賞金を狙っている私の目の前をあっと
パンクを直すとすごい勢いで抜いていったミエコ・ケリーさん いうまに通り過ぎて行ってしまった。
「あぁ、なぜなぜ」。私の賞金の可能性が無くなっていく...。
後で判ったが、ミエコさんはバーストに見舞われて、修理を手伝った編集長がミエコさんを前に引き上げるためにアシストしてたのだそうだ。
それにしてもコースのアップダウンは激しい。やっと登ったと思ったら、急激な下り。下りは気持ちよくて最高。しかし下りのあとには必ず登りがまっているのです。坂を上りきる度に、次々と坂が現れる。
エイドステーションでは水を手渡してくれるのがありがたい! 一番軽いギアにしているはずなのに足が重く、何度もギアチェンジをしてみるのですが、それ以上は軽くならず。自分との戦い。最初はすれ違う外国人に微笑み、つらいながらも、「ハロー」と言ってみる。
後半になってくるとそんな余裕もなくなり、いつリタイヤしようか、登りの度に考えていました。
しかし、上るたびに現れる絶景が、「ここまで頑張ってきてよかった!」と、ひと時の癒しを与えてくれるのだ。そして、その後の下りは最高に気持ちがいいのだ。
そして進んでいくと、昨日登らずにとっておいた崖が、目の前に現れました。スーサイドクリフです。
これを登ることができれば、あとは昨日走った平坦路を戻るだけ。気合いを入れていざ登りへ。
スーサイドクリフの絶景におもわずピースサインをしてしまった スーサイドクリフの絶景は本当にスゴイ。青い海がどこまでも見渡せた。これを見るためにひたすら登ってきたのかと思って、後ろポケットに入れておいたトイカメラで絶景をパシャリ。持っててよかった。
一つ注意してほしいのは、突発的なスコール。雨でぬれてしまったサイパンの路面はとても滑りやすいため、気をつけなければならない。今回のレース中にも急に降ってきたため、下りはとても危険だった。しかし、まっすぐな平坦道を走っているときは、シャワーのようで気持ちよく感じた。
辛いアップダウンの道のりを抜けると、ゴールまで残りわずか20㎞だけ平坦な道のりが続く。自分の前に何人の女子選手がいるのかがわからなかったため、賞金ゲットの希望を持ち続け、ラストスパートにかけた。すると男3人女1人のマウンテンバイク集団が、私たちを追い抜いていった。
「あそこに勝てれば望みがあるかもしれないから、ついてくよ」と大河原さんが言う。
「すみません。ふとももがつってます。」と私。
「腕のばして太もものばしながら走って!」と大河原さん。
「...はいっ!(涙)」という感じで、さすがトレーナー。言う通りにしたら何とか足の激痛が和らぎ、普通に走る事ができました。
大河原さんに引いてもらいながら走るが、脚は限界だ
その時私の足はもう限界で、左足がしっかりつっていた。心の中では「もう無理です」と言っていたが、
その声は届かず。なんとか大河原トレーナーの誘導で自転車に乗りながらも痛みを和らげる事ができた。
見事である。
バンザイクリフの青い空と海が目にしみます その後何とかその集団を追い抜かすことができ、無事に気持ちよくゴールする事ができた。
何度も途中であきらめかけたが、この辛い道のりを走りきった感動は、涙が出るほどであった。
さて、気になるのは自分の順位。狙っていたのは、ウェアー部門での1位。おそるおそる周りを見渡してみると...残念。自分と同じウェアーを着ている女子が何人か目に入ってしまった。
「あれだけ頑張ったのに」、と撃沈。普通に考えてみたら、自転車にのってまだ1、2年で練習もろくにしていない私が入賞を狙う事すら間違っている。しかし、悔しい。
表彰式で待ってたのは、表彰の連続というサプライズ
シャワーを浴びて、昼過ぎからはホテルの敷地内でパーティー形式の表彰式が行われた。真っ青なビーチの見える開放感のある素敵な場所である。バイキング形式で、食事もドリンクも、デザートも食べ放題である。
表彰式は美味しいバイキングとビールを楽しみながら
世界中の参加者とワイワイ楽しめます
司会は現地のイケメンがすべて英語で進行。おいしい料理を食べながら人ごとのように見物していると、私の名前がコールされた。
何の表彰かわからないまま、そのあと、なんと立て続けに4回も自分の名前が呼ばれた。そしてその中に、オープン部門での予期せぬ3位入賞の栄誉が混ざっていたのだ。
おちゃめなMCさんに賞金をいただきました!
オープンでなぜか3位!びっくり 何もかもが私を引っ張ってくれた大河原トレーナーのおかげである。私はカメラマンなのだが、あんなにカメラに囲まれたのは生まれて初めての体験で、不思議な感覚であった。
ウェアー部門で2位にもなっていた。よくわからないけど、何かの賞でお食事券ももらった。よくわからない賞だけど、賞は賞。嬉しい。
つらかったけど、このレースに参加する事ができて本当に良かったな、と心から思えた。
来年は、少しでも自分の力で入賞できるように。カメラをぶら下げて、撮影しながら行ったり来たりできるように、自分の身体をイチから鍛え直したいと思います。
そして、試練は続いた。大河原さんが表彰式が終わるやいなや、ホテルのコートで地元の人達とバドミントンの試合をしようと言い出した。なんと貪欲なパーソナルトレーナー...。
これだけ走ったのに、断れず。最後までサイパンライフを楽しんでしまった。
頂いたお食事券で皆にご馳走します その夜は、賞品でいただいた高級レストランでのお食事券を手に、ガラパン地区へ皆で出かけて一緒に食事をした。もちろん感謝の気持ちを込めて大盤振る舞いで(食事券ぶん)おごらせていただきましたよ!
今回のレースでは、今まで体験した事のない感動を味わう事ができた。自分の力のなさを痛感する事ができた。また、たくさんの人に関われた事にとても感謝している。次は、自分の力で入賞できるように、身体をイチから鍛え直したいと思う。
私みたいな初心者でも最高に楽しめたヘルオブマリアナ。皆がたくさん来ると入賞のチャンスが減っちゃうから教えたくない気持ちもありますが、誰にでも勧められる素晴らしいイベントでした。坂はちょっとキツイけど、キツイからこその感動が待ってます。
文:野沢安澄/Asumi.Nozawa
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ヘル・オブ・マリアナ(通称HOM)とは、サイパン島を一周する100㎞レース。直訳すると、マリアナの地獄、という意味(泣)。サイパン島にはたくさんの上り坂があるため、そう名付けられたようだ。
このレースでは100㎞を1人で挑戦したり、2人、4人で距離を分けて挑戦する事もできる。そしてオープン、年齢別部門に分かれている。
他にも参加賞のウェアを着てその中で順位を競う部門などユニークなものもある。賞金が出るのでもしもに備えて私も着ちゃいます(笑)。
今回このレースに出る事になったきっかけは、1通のメールだった。「サイパンで自転車のレースがあるんだけど、賞金稼ぎにいかない?」と。送り主はシクロワイアードのレポートでおなじみバイシクルトレーナーズジャパン代表/大河原正晴さん。私のバドミントンの師匠だ。
この人にはいつも振り回されているが、そのかわり必ず何かプラスになるものがかえってくる。よく内容は理解していなかったのだが、面白そうだし、賞金ゲットできたらラッキーだなと、軽い気持ちでエントリーさせてもらったのだ。
しかし勢いで「行きます!!」と返事したものの、よく考えてみたら自転車には乗ってはいますが、レースに参加するのは生まれて初めて。昨年参加したのもホノルルのセンチュリーライドであって、間違ってもレースではない。
昨年の9月、私はホノルルセンチュリーライドに参加した。それこそ本当に初めてのロングライドで、160キロを無事完走。どこを走っても絶景で、かんかん照りのホノルルの空気がとても気持ちよく、なんといっても、休憩ポイントのボランティアサービスが最高。バナナ食べ放題。でも今回のは、20キロ地点でのフルーツ補給もきっとできない...。
話はずれましたが、でもまぁとにかくすごく気持ちのいい「あの感じ」をまた味わえるのだと思ったら、ワクワク。不安以上に興奮してしまう。
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前日は楽しい試走会でサイパン観光
サイパン島には日本から飛行機で3時間半ほどで着いた。平均温度が27度の常夏は嬉しい。
到着した12月2日は、レース前の予行走行会。日本人参加者の皆さんと試走に出かけた。
走行の前にはシクロワイアードの編集長・綾野さんとスタッフのかたが個々に自転車の状態を診てくれました。ほとんど自転車の知識がない私はお任せコース。普段ほとんどメンテナンスをしていないのがばれたのか、チェーンに油までさしてもらっちゃいました。
ただ写真を撮るだけでなく、自転車の知識も豊富な綾野さんに感動してしまいました。私、秘かについていきます(笑)。
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編集長をまねて、カメラをぶら下げてついていくのですが、さすが皆さんレースに参加するだけあって、スピードが速く、ついていくのがやっと。走りながら撮るカメラマンの「ばけものさ」には本当に驚きです。私もそんな走れるカメラマン(ばけもの)を目指すべく、必死についていくのでした。
初めてのビンディングペダルにも馴れた頃、見場らしの良い場所に到着。さすがサイパン。眺め最高。
目の前のあの絶壁もすごいな。なんて思っていたら、「明日はここ登るんだよ。」とさらっと不思議な言葉が耳に入ってきた。まさか...。
「あの崖の上から眺めたらさぞかし絶景なんだろうな」、と思いながらスーサイドクリフをあとにするのでした。その夜はホテルの美味しい食事を食べて、ぐっすり。
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スタート地点は私たちが泊まった、HOMを主催している、P.I.C(パシフィックアイランドクラブ)
サイパンホテルの目の前。
まだ薄暗い中、いざスタート。参加者が一斉にスタートするため、落車の心配があったのだが、最初、数十メートル先でUターンするため、ゆっくりな走りはじめで、難なく走り出す事ができた。今日は賞金を狙いにいくためカメラはお休み(笑)。
とりあえず先頭集団にくっついてみるが、最初の坂で集団には置いていかれた。想像はしていたが、こんなにも早く坂が現れるとは。賞金狙いのはずだったが、既に心は折れかかっていた。
早々にスタミナ切れ。前についていてくれるはずの大河原さんがどんどん見えなくなってしまいました。果たして100キロ無事に走りきれるのか...。
走り始めて10㎞もしないうちに、あの時の安易な自分を後悔し、賞金の二文字が頭の中でどんどん薄れていった。永遠に続くのではないかと思わせる坂をやっと上り終えたと思ったら、下り。また上り。の繰り返し。この時点で賞金はもう諦めたくなっていました。
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そこからは私に賞金を取らせてくれるという約束通り、上り以外は大河原トレーナーが引っ張ってくれて、そのおかげで、折れかけた心も徐々に回復し、つらかったはずの上りもなんだか気持ちよく感じられるようになっていた。
辛い表情になりながらも、ただひたすら足を動かしていると、後ろから猛スピードで迫ってくる男女が。編集長の綾野さんと、その後ろについているのは前回優勝者のミエコさんだ。そして、女子の賞金を狙っている私の目の前をあっと
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「あぁ、なぜなぜ」。私の賞金の可能性が無くなっていく...。
後で判ったが、ミエコさんはバーストに見舞われて、修理を手伝った編集長がミエコさんを前に引き上げるためにアシストしてたのだそうだ。
それにしてもコースのアップダウンは激しい。やっと登ったと思ったら、急激な下り。下りは気持ちよくて最高。しかし下りのあとには必ず登りがまっているのです。坂を上りきる度に、次々と坂が現れる。
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後半になってくるとそんな余裕もなくなり、いつリタイヤしようか、登りの度に考えていました。
しかし、上るたびに現れる絶景が、「ここまで頑張ってきてよかった!」と、ひと時の癒しを与えてくれるのだ。そして、その後の下りは最高に気持ちがいいのだ。
そして進んでいくと、昨日登らずにとっておいた崖が、目の前に現れました。スーサイドクリフです。
これを登ることができれば、あとは昨日走った平坦路を戻るだけ。気合いを入れていざ登りへ。
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一つ注意してほしいのは、突発的なスコール。雨でぬれてしまったサイパンの路面はとても滑りやすいため、気をつけなければならない。今回のレース中にも急に降ってきたため、下りはとても危険だった。しかし、まっすぐな平坦道を走っているときは、シャワーのようで気持ちよく感じた。
辛いアップダウンの道のりを抜けると、ゴールまで残りわずか20㎞だけ平坦な道のりが続く。自分の前に何人の女子選手がいるのかがわからなかったため、賞金ゲットの希望を持ち続け、ラストスパートにかけた。すると男3人女1人のマウンテンバイク集団が、私たちを追い抜いていった。
「あそこに勝てれば望みがあるかもしれないから、ついてくよ」と大河原さんが言う。
「すみません。ふとももがつってます。」と私。
「腕のばして太もものばしながら走って!」と大河原さん。
「...はいっ!(涙)」という感じで、さすがトレーナー。言う通りにしたら何とか足の激痛が和らぎ、普通に走る事ができました。
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その時私の足はもう限界で、左足がしっかりつっていた。心の中では「もう無理です」と言っていたが、
その声は届かず。なんとか大河原トレーナーの誘導で自転車に乗りながらも痛みを和らげる事ができた。
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何度も途中であきらめかけたが、この辛い道のりを走りきった感動は、涙が出るほどであった。
さて、気になるのは自分の順位。狙っていたのは、ウェアー部門での1位。おそるおそる周りを見渡してみると...残念。自分と同じウェアーを着ている女子が何人か目に入ってしまった。
「あれだけ頑張ったのに」、と撃沈。普通に考えてみたら、自転車にのってまだ1、2年で練習もろくにしていない私が入賞を狙う事すら間違っている。しかし、悔しい。
表彰式で待ってたのは、表彰の連続というサプライズ
シャワーを浴びて、昼過ぎからはホテルの敷地内でパーティー形式の表彰式が行われた。真っ青なビーチの見える開放感のある素敵な場所である。バイキング形式で、食事もドリンクも、デザートも食べ放題である。
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つらかったけど、このレースに参加する事ができて本当に良かったな、と心から思えた。
来年は、少しでも自分の力で入賞できるように。カメラをぶら下げて、撮影しながら行ったり来たりできるように、自分の身体をイチから鍛え直したいと思います。
そして、試練は続いた。大河原さんが表彰式が終わるやいなや、ホテルのコートで地元の人達とバドミントンの試合をしようと言い出した。なんと貪欲なパーソナルトレーナー...。
これだけ走ったのに、断れず。最後までサイパンライフを楽しんでしまった。
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今回のレースでは、今まで体験した事のない感動を味わう事ができた。自分の力のなさを痛感する事ができた。また、たくさんの人に関われた事にとても感謝している。次は、自分の力で入賞できるように、身体をイチから鍛え直したいと思う。
私みたいな初心者でも最高に楽しめたヘルオブマリアナ。皆がたくさん来ると入賞のチャンスが減っちゃうから教えたくない気持ちもありますが、誰にでも勧められる素晴らしいイベントでした。坂はちょっとキツイけど、キツイからこその感動が待ってます。
文:野沢安澄/Asumi.Nozawa
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