熱帯の穏やかな雰囲気に包まれてラインレースがスタートし、アンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)がスプリントを制して嬉しい今季1勝目を挙げた。しかしその半面、総合2位のアダム・フェーラン(オーストラリア、ドラパック)は落車し負傷してしまった。

プトラジャヤ名物プトラモスクの前で記念撮影をするファルネーゼヴィーニプトラジャヤ名物プトラモスクの前で記念撮影をするファルネーゼヴィーニ (c)Sonoko.Tanakaリラックスした雰囲気でレーススタートを待つ愛三工業レーシングリラックスした雰囲気でレーススタートを待つ愛三工業レーシング (c)Sonoko.Tanaka

スタート前にカメラサービス? をするデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)スタート前にカメラサービス? をするデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) (c)Sonoko.Tanaka行政新都市プトラジャヤからラインレースがスタート

第1ステージの個人タイムトライアルを終え、いよいよ第2ステージから街から街へ移動するラインレースが始まった。レーススタートは午前10時。1時間ほど前から会場に集まった選手たちに、燦々と熱帯の太陽が照りつける。暑いとはわかっていたものの、やっぱり暑い! 氷を首に当てたり、木陰に避難したりと、思い思いのスタイルで暑さをしのぎながらスタートを待った。

そんな中で、朝から絶好調だったのはリーダージャージを着るデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)。カメラマンや観客たちのリクエストに快く応え、笑顔を振りまいている。

もちろん私にもカメラサービスをしてくれたのだが、サングラスを外して…というリクエストに対して彼のとったポーズは写真のとおり...。

「いや、もっとノーマルなポーズがいいんだけど…」と言う私にすかさず「いや、これがノーマルだから!」と返してくる。レースについては「リーダージャージを守りたいけど、どうかな? チーム一丸となって一つ一つのステージを走っていくよ」と笑顔で語る。

リーダージャージを着て走るデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)リーダージャージを着て走るデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) (c)Sonoko.Tanaka沿道には地元の子どもたちも駆けつけて応援した沿道には地元の子どもたちも駆けつけて応援した (c)Sonoko.Tanaka

一方では、ジャージのパンツをホテル行きのスーツケースの中に入れてしまい、他チームのパンツを借りてレースに出走する選手などもいて、陽気なレースリーダーを中心に、南国マレーシアの大らかな雰囲気のなかでレースは行政新都市(首都機能を移転中)のプトラジャヤをスタートした。

プトラジャヤからツール・ド・ランカウイ第2ステージがスタートプトラジャヤからツール・ド・ランカウイ第2ステージがスタート (c)Sonoko.Tanaka

スタート直後は閉鎖された高速道路で、アタック合戦が繰り広げられたものの、10km地点を過ぎると比較的簡単に2人の逃げが形成された。逃げを容認して集団の緊張感が緩んだところで、目線を外に向けると、コースの両側には、マレーシア名物のアブラヤシのプランテーションが広がっている。

広大なアブラヤシのプランテーションを駆け抜ける選手たち広大なアブラヤシのプランテーションを駆け抜ける選手たち (c)Sonoko.Tanakaリーダージャージを着て走るデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)リーダージャージを着て走るデーヴィット・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) (c)Sonoko.Tanaka

熱帯雨林を開拓して作られたこのプランテーションは、マレーシア全土に約20000平方kmも広がり、世界の生産量を大きく占めている。食用油だけでなく、現在注目されているバイオ燃料の材料にもなっているという。

3つ目の中間スプリントポイントに向かう集団3つ目の中間スプリントポイントに向かう集団 (c)Sonoko.Tanakaクローズされた高速道路を走る選手たちクローズされた高速道路を走る選手たち (c)Sonoko.Tanaka


今季初勝利を飾ったグアルディーニ

その後、逃げている2選手をスプリンター擁するチームやリーダーチームがゴール手前で吸収し、集団スプリントのすえアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)が前評判どおりにステージ“1勝目”を掴んだ。

「今年に入って、ステージレースは今回が4レース目。ここに来るまでまだ勝つことができていなかったから、今日の勝利を待ち望んでいたし、チームメイトに感謝しているよ。ツール・ド・ランカウイには勝つために戻ってきたんだ」とステージ優勝の喜びを語った。

19位でレースを終えた西谷泰治(愛三工業レーシング)19位でレースを終えた西谷泰治(愛三工業レーシング) (c)Sonoko.Tanaka今季初勝利を挙げたアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)今季初勝利を挙げたアンドレア・グアルディーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ) (c)Sonoko.Tanaka

「これまで勝てなかった」という彼の言葉を疑いたくなるが、チームは終盤から徹底的にレースをコントロールし、ゴールスプリントでは3選手が完璧な連係を見せて、余裕を感じるほどの勝利だった。昨年はステージ5勝を挙げた22歳のイタリアンスプリンター。リーダージャージの行方とともに、彼が何勝挙げるのかにも注目が集まっている。

愛三工業レーシングのエーススプリンター、西谷泰治は19位でフィニッシュ。
「残り数キロ地点で落車が起こったり、石畳があったと、前に出るタイミングが難しかった。また今日のレースを見ているとグアルディーニのような選手に真っ向な力勝負で勝つことは難しい。いかにうまく勝つかを考えていきたい。また明日から頑張ります!」と話し、滝のような汗をぬぐいながらホテルへと戻った。

ゴール地点には放水エリアが設けられるゴール地点には放水エリアが設けられる (c)Sonoko.Tanaka19位でレースを終えた西谷泰治(愛三工業レーシング)19位でレースを終えた西谷泰治(愛三工業レーシング) (c)Sonoko.Tanaka

落車し、手当を受けるアダム・フェーラン(オーストラリア、ドラパック)落車し、手当を受けるアダム・フェーラン(オーストラリア、ドラパック) (c)Sonoko.Tanaka総合2位のアダム・フェーランは落車

昨日のタイムトライアルで2位に付けているアダム・フェーラン(オーストラリア、ドラパック)は残り3km地点で落車してしまい、ゴールまで自走したが検査のために病院へ向かった。タイム差はつかないものの明日からの出走は未定。昨年末のチーム合宿で、前後の記憶を失うほどの大落車をし、復帰初戦として、ランカウイのスタートを切ったというバックグラウンドがある。
救急車で応急処置を受ける20歳の若手選手の目にうっすらと涙が浮かんだようにも見えた。昨日の表彰台での笑顔が切なく感じるが、明日また会場で会えることを期待したい。


photo&text:Sonoko.Tanaka

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