2012/02/25(土) - 09:50
汗が滝のように流れるクアラルンプール近郊プトラジャヤでの個人TTを終え、日本人選手は世界との差を痛感しながらも、気持ちを明日からのステージ優勝狙いに切り替えている。マレーシア籍のトレンガヌ・プロアジアを率いる福島晋一と愛三工業レーシング。彼らのバックグラウンドを紹介しよう。
スタート前に笑顔を見せる福島晋一(トレンガヌ・プロアジア) photo:Sonoko.Tanaka
レーススタートを待つ盛一大(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko.Tanaka
"ミスターランカウイ" 地元の期待を背負う福島晋一
トレンガヌから熱心なファンが応援に駆けつけた photo:Sonoko.Tanaka17年目を迎えたアジア最高峰の南国レース、ツール・ド・ランカウイ。今でこそ、シーズン開幕を告げる春先のレースは、オーストラリアのツアー・ダウンアンダーやツアー・オブ・カタール、オマーンなどたくさんあるが、ランカウイはその元祖というべき存在だ。17年の歴史やオーガナイズドの良さから、世界中のチームやメディアがもっとも好むアジアのレースとして定着している。
日本人選手にとっても非常に馴染みの深いレースで、地元マレーシアのトレンガヌ・プロアジアを率いる福島晋一は今回で9回目の出場となる。これまで2007年のステージ優勝をはじめ、弟の康司選手とともにレースを盛り上げてきた。
サポートカーに掲示する、選手1人1人のネームボードが用意された photo:Sonoko.Tanaka福島は言う 「ツール・ド・ランカウイとともに強くなってきたようなものです」と。
かつては1人の日本人選手にすぎなかったが、選手としての成長や成功とも合わさり、彼を取り巻く環境は年々変化してきた。
「2007年にステージ優勝をしたとき、シンガポール人が自分のことのように喜んでくれたんです。自分は日本人だけど、同じアジア人として喜んでくれたことが本当に嬉しかった。このときから“アジア”という規模でチームを作りたいという考えを持つようになりました」。
その後、韓国人やタイ人選手も加入したエキップアサダや韓国籍のクムサンジンセン・アジアを経て、昨年は、同じくアジア各国の選手を擁するトレンガヌ・プロアジアサイクリングチームの立ち上げに関わり、現在は同チームを率いるキャプテンとして活躍している。
トレンガヌ・プロアジアは、マレーシア北東部の“自治体”トレンガヌがメインスポンサーを務め、UCIコンチネンタルチーム登録してまもなくアジアのトップチームに成長した。そして今大会はトレンガヌがレースの誘致にも成功し(数千万円規模の金額を大会に協賛したという!)、最終日はトレンガヌにゴールするコース設定となった。なんともリッチな自治体だという印象を受けるが、その自治体が自転車競技を熱心にサポートするというのは興味深い。
レーススタートを待つ福島晋一(トレンガヌ・プロアジア) photo:Sonoko.Tanaka「チームにとってツール・ド・ランカウイが1年で一番重要なレースです。今回はチームの拠点にゴールするので、地元の期待も大きく、楽しい雰囲気の中に勢いがあります。アヌアル・マナンが抜けてしまったことは残念ですが、若いメンバーを中心にステージ優勝を狙いに行きます。調子のいいスプリンターもいて、ゴール前の連係もうまくできるので、勝てるチャンスはあります」と福島は続けた。
地元でのステージ優勝に、マレーシアだけでなくアジア全土からの期待がかかっている。
福島自身の調子や意気込みはこちらのインタビューも参照して欲しい。
ステージ優勝を確実に掴みたい愛三工業レーシング
検車を受ける中島康晴(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko.Tanakaもう一方の日本人出場、愛三工業レーシングチームも3年連続となるステージ優勝を目標に掲げている。チームは大会直前、マレーシアで5日間ほどのトレーニング合宿を行い、コンディションを整えてレースに挑んでいる。
監督となり2年目となる別府監督は「できるだけ多くステージ優勝をしたい。スプリントでのエースは西谷ですが、スプリント以外の勝ち方もできるチームなので、逃げ切りなどいろんな展開に対応していく予定です。チームにとって、シーズン最初のHCのレースとなるので、大きな目標の1つであり、海外チームにアピールできるなど大きなチャンスのある大会だという位置づけです」と話す。
スタートしていく盛一大(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko.Tanaka2010年は西谷泰治がゴールスプリントを、2011年は綾部勇成が超級山岳での少人数スプリントを制して、ステージ優勝を挙げている同チーム。2010年当初は“大金星”とも思われたステージ優勝だったが、アジアツアーのチームランキング首位を目標に、アジア各国のレースで戦い続ける彼らにとって、ステージ優勝はいまや確実に成し遂げたい目標となっている。
初日個人TT、58位に沈んだ西谷泰治
チームのエース、西谷泰治選手は第1ステージ、個人タイムトライアルをトップから3分7秒差の58位でフィニッシュした。日本人最高位となるが、レースを終えて西谷選手の表情には悔しさが滲む。
スタートを待つ伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム) photo:Sonoko.Tanaka
「ベストコンディションだったら、もう1秒は縮められて、20番台でゴールできたと思います。昨年末からトラック・オムニアム種目で世界中を休みなしで転戦しています。今回もアジア選手権からの連戦となり、疲れが蓄積している状態で、タイムトライアルの練習不足が否めません。トラック競技を言い訳にするつもりはありませんが、コンディションの管理が難しいなかでのレースになってしまっています。今日の結果は悔しいですが、気持ちを切り替えて、明日からはステージ優勝を狙って走ります」とコメント。
西谷と盛一大、チームの核となる2人がともにトラック競技にも参戦しているため(盛選手はワールドカップ、ロンドン大会を終えて、成田近くのホテルで1泊し、翌日マレーシアに向かっている)、彼らはベストコンディションと言えないのが事実ではあるが、そのぶん、ツール・ド・インドネシアでのステージ優勝経験がある伊藤雅和選手や、昨季はアジアツアーで多くのステージ優勝を挙げた中島康晴選手など、フレッシュな若手や中堅選手に期待がかかっている。
「“若手の躍進と、ベテランの価値への執着心”がキーワードです」と別府監督。これまで築いてきたチームワークの良さを武器にして、いよいよ明日から、ステージ優勝をめざす彼らの戦いが始まっていく。
58位でゴールした西谷泰治(愛三工業レーシング) photo:Sonoko.Tanaka
79位でゴールした盛一大(愛三工業レーシング) photo:Sonoko.Tanaka
復帰戦のスタート前に十字を切るアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) photo:Sonoko.Tanaka
photo&text:Sonoko.Tanaka
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"ミスターランカウイ" 地元の期待を背負う福島晋一
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日本人選手にとっても非常に馴染みの深いレースで、地元マレーシアのトレンガヌ・プロアジアを率いる福島晋一は今回で9回目の出場となる。これまで2007年のステージ優勝をはじめ、弟の康司選手とともにレースを盛り上げてきた。
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「2007年にステージ優勝をしたとき、シンガポール人が自分のことのように喜んでくれたんです。自分は日本人だけど、同じアジア人として喜んでくれたことが本当に嬉しかった。このときから“アジア”という規模でチームを作りたいという考えを持つようになりました」。
その後、韓国人やタイ人選手も加入したエキップアサダや韓国籍のクムサンジンセン・アジアを経て、昨年は、同じくアジア各国の選手を擁するトレンガヌ・プロアジアサイクリングチームの立ち上げに関わり、現在は同チームを率いるキャプテンとして活躍している。
トレンガヌ・プロアジアは、マレーシア北東部の“自治体”トレンガヌがメインスポンサーを務め、UCIコンチネンタルチーム登録してまもなくアジアのトップチームに成長した。そして今大会はトレンガヌがレースの誘致にも成功し(数千万円規模の金額を大会に協賛したという!)、最終日はトレンガヌにゴールするコース設定となった。なんともリッチな自治体だという印象を受けるが、その自治体が自転車競技を熱心にサポートするというのは興味深い。
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地元でのステージ優勝に、マレーシアだけでなくアジア全土からの期待がかかっている。
福島自身の調子や意気込みはこちらのインタビューも参照して欲しい。
ステージ優勝を確実に掴みたい愛三工業レーシング
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監督となり2年目となる別府監督は「できるだけ多くステージ優勝をしたい。スプリントでのエースは西谷ですが、スプリント以外の勝ち方もできるチームなので、逃げ切りなどいろんな展開に対応していく予定です。チームにとって、シーズン最初のHCのレースとなるので、大きな目標の1つであり、海外チームにアピールできるなど大きなチャンスのある大会だという位置づけです」と話す。
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初日個人TT、58位に沈んだ西谷泰治
チームのエース、西谷泰治選手は第1ステージ、個人タイムトライアルをトップから3分7秒差の58位でフィニッシュした。日本人最高位となるが、レースを終えて西谷選手の表情には悔しさが滲む。
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「ベストコンディションだったら、もう1秒は縮められて、20番台でゴールできたと思います。昨年末からトラック・オムニアム種目で世界中を休みなしで転戦しています。今回もアジア選手権からの連戦となり、疲れが蓄積している状態で、タイムトライアルの練習不足が否めません。トラック競技を言い訳にするつもりはありませんが、コンディションの管理が難しいなかでのレースになってしまっています。今日の結果は悔しいですが、気持ちを切り替えて、明日からはステージ優勝を狙って走ります」とコメント。
西谷と盛一大、チームの核となる2人がともにトラック競技にも参戦しているため(盛選手はワールドカップ、ロンドン大会を終えて、成田近くのホテルで1泊し、翌日マレーシアに向かっている)、彼らはベストコンディションと言えないのが事実ではあるが、そのぶん、ツール・ド・インドネシアでのステージ優勝経験がある伊藤雅和選手や、昨季はアジアツアーで多くのステージ優勝を挙げた中島康晴選手など、フレッシュな若手や中堅選手に期待がかかっている。
「“若手の躍進と、ベテランの価値への執着心”がキーワードです」と別府監督。これまで築いてきたチームワークの良さを武器にして、いよいよ明日から、ステージ優勝をめざす彼らの戦いが始まっていく。
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photo&text:Sonoko.Tanaka
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