2011/12/12(月) - 10:04
最終周回までもつれた辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes)の接戦。極限の場面で仕掛け、10連覇の懸かった王者を引き離した竹之内が勝利した。新チャンピオンは「勝った気がしない。辻浦さんの凄さが身にしみた」と興奮気味に語る。
最終周回までもつれた竹之内悠vs辻浦圭一の攻防
2011年のシクロクロス日本一を決める全日本選手権。滋賀県高島市のマキノ高原スキー場を利用したコースに、76名のエリートライダーが繰り出した。
日本のトップシクロクロスレーサーが集うこの中から、まずは大会9連覇を果たしている辻浦圭一とベルギー帰りで好調の竹之内悠が抜け出す。これを追うのは、本格的にシクロクロスに参戦しているMTB全日本チャンピオンの山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)と小坂光(TeamZENKO/宇都宮ブリッツェン)。
草に覆われ、緩斜面を登っては下るタフなコースを、辻浦&竹之内の先頭パックがハイスピードで駆ける。時折どちらかのミスによって差がつく場面も見られたが、抜きつ抜かれつの攻防がレース序盤、中盤、そして終盤まで続いていく。
先頭2人には山本幸平と小坂光が続き、その後方では小坂正則(スワコレーシング)、丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)、辻善光(TeamZENKO/宇都宮ブリッツェン)、山本和弘(キャノンデール・レーシングチーム)が競り合う。しかし辻浦&竹之内の先頭パックは後続を寄せ付けない速さを見せる。
コースには階段やキャンバー、シケインが設定されているが、大半は抜きどころに乏しい緩斜面のスラローム区間。ゴール地点に向かう舗装路の登りや、山側の斜面を駆け上がる登りで辻浦と竹之内が交互にアタックを仕掛ける。残り3周を切るとラップタイムがグンと縮み、両者のバトルが熱を帯びていく。
そして最終周回。ちょうどゴールまで半周を残した登りで竹之内がアタック。登りをダンシングで踏み抜いた竹之内は20mほどのリードをもって下りのスラロームに入る。
すかさず辻浦は下りで差を詰めにかかるが、左コーナーでバランスを崩してあわや転倒。このミスが決定的となり、その後も踏み続けた竹之内がリードを広げてゴールへ。新チャンピオンが歓声に応えながらゴールに飛び込んだ。
辻浦の連勝記録を9でストップさせた竹之内。「今日は(最後まで接戦だったので)勝った気がしないです。『どこからでも来い』という王者の気持ちを、背中を通じて言われているような気がして、自分のアタックはずっと落ち着いて対処されていた。最後はお互いに気持ちの勝負。負けたくないという気持ちが強かった。最後の数メートルまで勝利を感じなかった」と、苦しい闘いを振り返る。
竹之内23歳、辻浦31歳。新旧王者が交代する大会となったが、竹之内は驕らず、気持ちを絶やさず、辻浦と同じ土俵に立てたことの喜びを語る。「この1週間はコンディショニングがうまくいかず、これを9年間続けた辻浦さんは何者なんだと思った。いろんなところで経験を積んで、尊敬する辻浦さんのような選手になれるように頑張ります。このタイトルを守る気持ちだと性格上負けてしまうので、来年も攻めます」
一方の敗れた辻浦は「これまで9回勝って来たけど、1回1回が厳しい闘いだったんだと改めて感じた」と回想する。9年間背負い続けたプレッシャーから解き放たれた辻浦は「これからはリラックスしてレースに臨めそうです」と柔らかな表情で笑った。
女子、ジュニア、マスターも熱戦が繰り広げられる
今大会には連覇が懸かった選手がもう2人。エリート女子6連覇中の豊岡英子(パナソニックレディース)と、昨年初開催されたジュニアレースで優勝した沢田時(ENDLESS/ProRide)だ。
10名がスタートしたエリート女子は、下馬評通り豊岡英子が序盤からリードする。しかし福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学)や宮内佐季子(CLUBviento)との差が思うように広がらない。
レース中盤には2番手宮内佐季子と先頭の豊岡英子のタイム差が10秒を切り、終盤までレースの行方が分からない闘いに。「テクニックの差がつかない脚勝負のコース。苦しかった」と語る豊岡英子がなんとか先頭を守りきり、最終的に8秒差で勝利した。
表彰台の頂点で全日本チャンピオンジャージを袖を通した豊岡は、安堵の表情を浮かべながらコメントする。「今週水曜日から腹痛に襲われて寝たきり状態だった。プレッシャーの中でも勝つことができてよかった」。豊岡はエリート女子7連覇。これからも日本のシクロクロス女子をリードする。
女王豊岡の座を最後まで脅かした宮内は「出来る準備はすべてしてきた。でも届かなかった。悔しい」と声を詰まらす。宮内は昨年の全日本選手権で豊岡から2分50秒差の3位。この1年でその差を一気に詰めた感がある。今後も挑戦者としてシクロクロスの頂点を目指す。
1994年と1995年生まれの選手対象のジュニアは、沢田時、横山航太(快レーシング)、中井路雅(瀬田工業高校自転車競技部)の3名が序盤から後続を大きく引き離す。
「他の2人を観察しながら先頭パックで走り、彼らの苦手な箇所を見つけて中盤にアタックした」と話すのは沢田。食らいつく横山と中井を振り切った沢田は「路面がまだ濡れていたので、後続との差を確認しながら、踏めるところは踏んで、丁寧に走りました」と語る。最終的に横山を9秒、中井を44秒引き離し、ジュニア連覇を達成した。
昨シーズン沢田は世界選手権ジュニアで日本人歴代最高位の16位でフィニッシュ。今シーズンの世界選手権の目標は「もちろん優勝です」と言い切る。
「今年はMTBで良いシーズンをこなしたことで体力面もアップし、自信もついた。昨年からのステップアップは、練習データを見ても明らか。昨年は後半のラップタイムが前半と比べて20秒ほど遅かった。でも今シーズンは逆に40分が短く感じ、最後までパワーを出せている」。17歳の新鋭は着実に力を付けている。
AJOCC(日本シクロクロス競技主催者協会)主催のマスター選手権は、普段C1で走るオープン参加の中川隆司(つうばいつう)と、ディフェンディングチャンピオンの三船雅彦がリードする。
痛恨のタイヤトラブルに見舞われた筧太一(イナーメ信濃山形)が追い上げを図るも届かず。最後は中川を振り切った三船が独走し、マスターのタイトル防衛に成功している。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
シクロクロス全日本選手権2011
エリート男子(9周回)
1位 竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes) 1h00'16"
2位 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) +36"
3位 山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) +1'44"
4位 小坂光(TeamZENKO/宇都宮ブリッツェン) +2'06"
5位 小坂正則(スワコレーシング) +2'15"
6位 山本和弘(キャノンデール・レーシングチーム) +2'31"
7位 丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) +3'00"
8位 辻善光(TeamZENKO/宇都宮ブリッツェン) +3'33"
9位 山本聖吾(スワコレーシング) +3'39"
10位 濱由嵩(BRIDLER) +3'40"
エリート女子(5周回)
1位 豊岡英子(パナソニックレディース) 40'18"
2位 宮内佐季子(CLUBviento) +08"
3位 福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学) +1'02"
4位 田近郁美(GOD HILL) +3'45"
5位 上田順子(TEAM884獣遊/シルベスト) +5'35"
6位 中道のぞみ(Salata bianca kobe) +6'02"
7位 相野田静香(clubGROW) +8'26"
8位 紀藤亜美(Teamまんま) +9'40"
9位 綿貫通穂(臼杵レーシング) -1Lap
10位 三井由香(ベロチスタアヴェル) -2Laps
ジュニア(6周回)
1位 沢田時(ENDLESS/ProRide) 41'36"
2位 横山航太(快レーシング) +09"
3位 中井路雅(瀬田工業高校自転車競技部) +44"
4位 前田公平(ENDLESS/ProRide) +3'26"
5位 山田誉史輝(HAPPY RIDE) +3'33"
6位 山川遼(臼杵レーシング) +6'36"
7位 八木悠太(Salata bianca kobe) -1Lap
8位 岩田宗也(広島城北高校) -2Laps
9位 三好正純(大阪産大高校) -2Laps
マスター(5周回)
1位 三船雅彦 38'31"
OPN 中川隆司(つうばいつう) +06"
2位 筧太一(イナーメ信濃山形) +17"
OPN 小泉信宏(Team Sakatani) +1'02"
3位 丸畑明彦(PCサイクルクラブ松本) +1'12"
4位 佐野光宏(ストラーダR) +1'25"
5位 大河内二郎(シルクロード) +1'47"
text&photo:Kei Tsuji
最終周回までもつれた竹之内悠vs辻浦圭一の攻防
2011年のシクロクロス日本一を決める全日本選手権。滋賀県高島市のマキノ高原スキー場を利用したコースに、76名のエリートライダーが繰り出した。
日本のトップシクロクロスレーサーが集うこの中から、まずは大会9連覇を果たしている辻浦圭一とベルギー帰りで好調の竹之内悠が抜け出す。これを追うのは、本格的にシクロクロスに参戦しているMTB全日本チャンピオンの山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)と小坂光(TeamZENKO/宇都宮ブリッツェン)。
草に覆われ、緩斜面を登っては下るタフなコースを、辻浦&竹之内の先頭パックがハイスピードで駆ける。時折どちらかのミスによって差がつく場面も見られたが、抜きつ抜かれつの攻防がレース序盤、中盤、そして終盤まで続いていく。
先頭2人には山本幸平と小坂光が続き、その後方では小坂正則(スワコレーシング)、丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B)、辻善光(TeamZENKO/宇都宮ブリッツェン)、山本和弘(キャノンデール・レーシングチーム)が競り合う。しかし辻浦&竹之内の先頭パックは後続を寄せ付けない速さを見せる。
コースには階段やキャンバー、シケインが設定されているが、大半は抜きどころに乏しい緩斜面のスラローム区間。ゴール地点に向かう舗装路の登りや、山側の斜面を駆け上がる登りで辻浦と竹之内が交互にアタックを仕掛ける。残り3周を切るとラップタイムがグンと縮み、両者のバトルが熱を帯びていく。
そして最終周回。ちょうどゴールまで半周を残した登りで竹之内がアタック。登りをダンシングで踏み抜いた竹之内は20mほどのリードをもって下りのスラロームに入る。
すかさず辻浦は下りで差を詰めにかかるが、左コーナーでバランスを崩してあわや転倒。このミスが決定的となり、その後も踏み続けた竹之内がリードを広げてゴールへ。新チャンピオンが歓声に応えながらゴールに飛び込んだ。
辻浦の連勝記録を9でストップさせた竹之内。「今日は(最後まで接戦だったので)勝った気がしないです。『どこからでも来い』という王者の気持ちを、背中を通じて言われているような気がして、自分のアタックはずっと落ち着いて対処されていた。最後はお互いに気持ちの勝負。負けたくないという気持ちが強かった。最後の数メートルまで勝利を感じなかった」と、苦しい闘いを振り返る。
竹之内23歳、辻浦31歳。新旧王者が交代する大会となったが、竹之内は驕らず、気持ちを絶やさず、辻浦と同じ土俵に立てたことの喜びを語る。「この1週間はコンディショニングがうまくいかず、これを9年間続けた辻浦さんは何者なんだと思った。いろんなところで経験を積んで、尊敬する辻浦さんのような選手になれるように頑張ります。このタイトルを守る気持ちだと性格上負けてしまうので、来年も攻めます」
一方の敗れた辻浦は「これまで9回勝って来たけど、1回1回が厳しい闘いだったんだと改めて感じた」と回想する。9年間背負い続けたプレッシャーから解き放たれた辻浦は「これからはリラックスしてレースに臨めそうです」と柔らかな表情で笑った。
女子、ジュニア、マスターも熱戦が繰り広げられる
今大会には連覇が懸かった選手がもう2人。エリート女子6連覇中の豊岡英子(パナソニックレディース)と、昨年初開催されたジュニアレースで優勝した沢田時(ENDLESS/ProRide)だ。
10名がスタートしたエリート女子は、下馬評通り豊岡英子が序盤からリードする。しかし福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学)や宮内佐季子(CLUBviento)との差が思うように広がらない。
レース中盤には2番手宮内佐季子と先頭の豊岡英子のタイム差が10秒を切り、終盤までレースの行方が分からない闘いに。「テクニックの差がつかない脚勝負のコース。苦しかった」と語る豊岡英子がなんとか先頭を守りきり、最終的に8秒差で勝利した。
表彰台の頂点で全日本チャンピオンジャージを袖を通した豊岡は、安堵の表情を浮かべながらコメントする。「今週水曜日から腹痛に襲われて寝たきり状態だった。プレッシャーの中でも勝つことができてよかった」。豊岡はエリート女子7連覇。これからも日本のシクロクロス女子をリードする。
女王豊岡の座を最後まで脅かした宮内は「出来る準備はすべてしてきた。でも届かなかった。悔しい」と声を詰まらす。宮内は昨年の全日本選手権で豊岡から2分50秒差の3位。この1年でその差を一気に詰めた感がある。今後も挑戦者としてシクロクロスの頂点を目指す。
1994年と1995年生まれの選手対象のジュニアは、沢田時、横山航太(快レーシング)、中井路雅(瀬田工業高校自転車競技部)の3名が序盤から後続を大きく引き離す。
「他の2人を観察しながら先頭パックで走り、彼らの苦手な箇所を見つけて中盤にアタックした」と話すのは沢田。食らいつく横山と中井を振り切った沢田は「路面がまだ濡れていたので、後続との差を確認しながら、踏めるところは踏んで、丁寧に走りました」と語る。最終的に横山を9秒、中井を44秒引き離し、ジュニア連覇を達成した。
昨シーズン沢田は世界選手権ジュニアで日本人歴代最高位の16位でフィニッシュ。今シーズンの世界選手権の目標は「もちろん優勝です」と言い切る。
「今年はMTBで良いシーズンをこなしたことで体力面もアップし、自信もついた。昨年からのステップアップは、練習データを見ても明らか。昨年は後半のラップタイムが前半と比べて20秒ほど遅かった。でも今シーズンは逆に40分が短く感じ、最後までパワーを出せている」。17歳の新鋭は着実に力を付けている。
AJOCC(日本シクロクロス競技主催者協会)主催のマスター選手権は、普段C1で走るオープン参加の中川隆司(つうばいつう)と、ディフェンディングチャンピオンの三船雅彦がリードする。
痛恨のタイヤトラブルに見舞われた筧太一(イナーメ信濃山形)が追い上げを図るも届かず。最後は中川を振り切った三船が独走し、マスターのタイトル防衛に成功している。
レースの模様はフォトギャラリーにて!
シクロクロス全日本選手権2011
エリート男子(9周回)
1位 竹之内悠(Team Eurasia-Fondriest bikes) 1h00'16"
2位 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) +36"
3位 山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) +1'44"
4位 小坂光(TeamZENKO/宇都宮ブリッツェン) +2'06"
5位 小坂正則(スワコレーシング) +2'15"
6位 山本和弘(キャノンデール・レーシングチーム) +2'31"
7位 丸山厚(MASSA-FOCUS-SUPER B) +3'00"
8位 辻善光(TeamZENKO/宇都宮ブリッツェン) +3'33"
9位 山本聖吾(スワコレーシング) +3'39"
10位 濱由嵩(BRIDLER) +3'40"
エリート女子(5周回)
1位 豊岡英子(パナソニックレディース) 40'18"
2位 宮内佐季子(CLUBviento) +08"
3位 福本千佳(クラブシルベスト/同志社大学) +1'02"
4位 田近郁美(GOD HILL) +3'45"
5位 上田順子(TEAM884獣遊/シルベスト) +5'35"
6位 中道のぞみ(Salata bianca kobe) +6'02"
7位 相野田静香(clubGROW) +8'26"
8位 紀藤亜美(Teamまんま) +9'40"
9位 綿貫通穂(臼杵レーシング) -1Lap
10位 三井由香(ベロチスタアヴェル) -2Laps
ジュニア(6周回)
1位 沢田時(ENDLESS/ProRide) 41'36"
2位 横山航太(快レーシング) +09"
3位 中井路雅(瀬田工業高校自転車競技部) +44"
4位 前田公平(ENDLESS/ProRide) +3'26"
5位 山田誉史輝(HAPPY RIDE) +3'33"
6位 山川遼(臼杵レーシング) +6'36"
7位 八木悠太(Salata bianca kobe) -1Lap
8位 岩田宗也(広島城北高校) -2Laps
9位 三好正純(大阪産大高校) -2Laps
マスター(5周回)
1位 三船雅彦 38'31"
OPN 中川隆司(つうばいつう) +06"
2位 筧太一(イナーメ信濃山形) +17"
OPN 小泉信宏(Team Sakatani) +1'02"
3位 丸畑明彦(PCサイクルクラブ松本) +1'12"
4位 佐野光宏(ストラーダR) +1'25"
5位 大河内二郎(シルクロード) +1'47"
text&photo:Kei Tsuji
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