自転車界でエージェントとして活躍するアレックス・カレーラ氏によると、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)はチームスカイと年俸250万ユーロ(約2億7000万円)で3年契約を結んだ。比較的長期戦となったカヴの移籍騒動は、結局のところ、イギリスで最も目立つレーサーのイギリス最大チーム入りで収束した。

世界チャンピオンに輝いたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)世界チャンピオンに輝いたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス) photo:Riccardo Scanferla「カヴェンディッシュ」がチームスカイと契約したのは驚きではない。イギリスのスポンサー企業がバックアップするイギリスチームだから当然の話だ。それにチームにはトラックレースで慣れ親しんだイギリス人スタッフが大勢いる。彼はキャリアにおいて最も重要な契約を結んだと言える」と、カレーラ氏。

イタリア人のカレーラ氏は、クリス・フルーム(イギリス)やトル・フースホフト(ノルウェー)のエージェントを務めている。ロード選手の移籍マーケットに精通する同氏は、カヴの移籍発表が遅くなった理由を以下のように説明する。

ツール・ド・フランスでステージ5勝を飾り、ポイント賞に輝いたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)ツール・ド・フランスでステージ5勝を飾り、ポイント賞に輝いたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス) photo:Makoto Ayano「現在のHTC・ハイロードとの契約上、9月1日以前の発表は不可能だった。それに、カヴの契約には沢山の条項が組み込まれていて、単純ではなかった。世界選手権での優勝も契約に大きく影響したと言えるだろう。アルカンシェルはそれだけ大きな意味がある」。

通常、チームと選手の契約の中には、ビッグレースでの勝利に対するボーナスの条項が組み込まれている。例えばツール・ド・フランスのステージ優勝に対して何ユーロのボーナス、チームメイトに何ユーロのボーナスと言った具合に。しかしカヴの場合はよりパーソナルイメージに関わる条項を煮詰めることに時間を費やした。

「彼の影響力は自転車界に留まらない。チームスポンサーと競合しないパーソナルスポンサーを付けたいと彼は望んでいる」。その結果、カヴはパーソナルスポンサーとしてナイキ社とオークリー社と契約。それぞれ年額15万ユーロ(約1600万円)と2万ユーロ(約220万円)のスポンサー収入を得た。

「オークリー社との2万ユーロは決して大きくない数字だ。実際、ヘルメットの義務化によって、レース中のサングラスの存在感は減っている。その一方でカジュアルなサングラスの重要性は上がったと言える。マリオ・チポッリーニがゼロアールエイチプラスと契約した時も、カジュアルウェアの着用を契約に盛り込んだ」。

過去の世界チャンピオンであるトル・フースホフト(ノルウェー)やカデル・エヴァンス(オーストラリア)より、カヴは若く、そして観る者にインパクトを与える走りをする。「間違いなくカヴェンディッシュは世界最高峰のスプリンターだ。若ければ若いほど、世界選手権優勝の価値は高い。何故なら彼はこの先、引退するまでずっと『2011年の世界チャンピオン』を名乗れるのだから」。

契約に関して比較されがちなのは、ツール・ド・フランスで3勝したアルベルト・コンタドール(スペイン)だ。カレーラ氏は「やはりコンタドールの知名度はカヴェンディッシュ以上。現在のロードレース界で、カヴェンディッシュを上回る年俸400万ユーロ(約4億4000万円)を稼ぎ出すのはコンタドールだけなんだ」と話す。

来シーズン、カヴはチームスカイ仕様のアルカンシェルを着て、ピナレロでデビューする。狙うは2年連続ツール・ド・フランスのポイント賞と、母国イギリスで開催されるロンドン五輪ロードレース。カレーラ氏によると、カヴの年俸がさらに倍増する可能性はある。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji