アジア初開催のUCIワールドツアーレース、ツアー・オブ・北京が10月5日に開幕する。UCI(国際自転車競技連合)が推し進める自転車競技のグローバル化における大きなステップだが、その裏には複雑な利害関係が見え隠れする。北京入りしたグレゴー・ブラウンがレポート。

ツール期間中に行なわれた記者会見に出席したアラン・ルンプGCP代表とパット・マックエイドUCI会長ツール期間中に行なわれた記者会見に出席したアラン・ルンプGCP代表とパット・マックエイドUCI会長 photo:Hitoshi Omae「何も不自然な点はない」。UCIのパット・マックエイド会長は記者会見できっぱりと語った。「自転車競技のプロモーションに力を使い、発展の手助けをするのがUCIの役目だ」。

ツアー・オブ・北京は、実質的にUCIがオーガナイズする初めてのレースだ。形式的にGCP(グローバル・サイクリング・プロモーション)が運営を行なっているが、そのGCPはUCIの100%子会社である。さらにGCPの代表を務めているアラン・ルンプ氏は、長年UCIプロツアーのマネジメントに携わり、スイス・エーグルにあるUCI本部の代表を務めた人物。UCIとGCPは密接な関係にある。

UCIの年次報告書によると、UCIはUCIプロツアー積立金から445000ユーロ(約4500万円)もの資金をGCPに捻出している(p.219参照)。その資金の出所は当然UCIプロチームや他レースのライセンス料。それでもマックエイド氏はGCPの初レースに協力することは、UCIにとって有益であると語る。「もし今回のレースでUCIが資金を調達できるとしたら、その資金を自転車競技の発展に活用するまでだ」。

また、マックエイド氏とルンプ氏は、ツアー・オブ・北京が生む副産物についても期待を寄せる。大規模な大会を開催することが中国国内での自転車販売促進に繋がり、中国企業がチームのスポンサー活動に興味を示すのではないかという期待だ。

中国にはすでにツアー・オブ・チンハイレイクというHC(超級)レースが存在するが、GCPは北京でのレース新設にこだわった。その理由についてルンプ氏は以下のように語る。「2008年の五輪以降、北京はメジャースポーツイベント開催に興味を示していた。そしてもう一つの理由は、クリーンで健康的な乗り物として、自転車利用を促進したいと北京の当局が望んでいたからだ。他の大都市と同様、北京は交通システムに問題を抱えている。ロンドンやパリを見習い、自転車の利用を広げることができれば」。

早くも来シーズンの話になるが、2012年はこのツアー・オブ・北京がシーズン最後のUCIワールドツアーレースになる可能性が浮上している。マックエイド氏は現在ジロ・ディ・ロンバルディアの主催者RCSスポルトに接触し、レースの開催をパリ〜トゥール前日の土曜日に移す提案を行なっている。

ツアー・オブ・北京はUCIワールドツアーレースとしての開催が4年間確約されている。

text:Gregor Brown in Beijing, China
translation:Kei Tsuji

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