2011/09/22(木) - 03:36
新たな世界チャンピオンが誕生した。2011年9月21日に行なわれたロード世界選手権エリート男子タイムトライアル。昨年前人未到の4度目の優勝を達成したファビアン・カンチェラーラ(スイス)が精彩を欠く中、26歳トニ・マルティン(ドイツ)が下位を1分以上引き離す圧勝を果たした。
デンマーク・コペンハーゲンで開催されているロード世界選手権の3日目、「世界最速」を決めるエリート男子タイムトライアルが行なわれた。
コースはコペンハーゲン中心部にある市庁舎前をスタートし、郊外に向かって一路北上。住宅街を抜けた先にあるシャーロテンルン公園で折り返し、再び市内へと向かう。
ゴール地点は市庁舎前。前日まで行なわれていた他カテゴリーのコースを延長した1周23.2km。ほぼ完全にフラットであること、そしてテクニカルなコーナーが連続することに変わりはない。
気温17度前後の曇り空の下、63名が4グループに分かれてスタート。レース中盤にかけて小雨が舞ったが、路面を完全に濡らすような本降りにはならず。安定感のない風がコースに吹き付ける。どの選手もほぼ同じ条件下での出走となった。
レース前半、第2グループのアレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン)が57分03秒という暫定トップタイムを叩き出し、後続の指標となる。第3グループのヨナタン・カストロビエホ(スペイン)がディアチェンコを上回るタイムで1周目を終えるも、2周目に失速してトップタイムには14秒届かず。
そして迎えた最終第4グループ。有力選手が詰め込まれたこのグループのジャック・ボブリッジ(オーストラリア)が、ディアチェンコのタイムを47秒更新して1周目を折り返す。しかし後続のベアト・グラブシュ(ドイツ)、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)、トニ・マルティン(ドイツ)、ファビアン・カンチェラーラ(スイス)が更にその上をいく。
中でも際立ったのが、最後から2番手スタートのマルティンの速さ。マルティンは合計6つある全ての計測地点でトップタイムをマーク。1周目で稼ぎ出したリードを2周目で更に広げる走りを見せ、53分43秒でゴールした。平均スピードは51.813km/h。
一方、最終走者のカンチェラーラは、1周目をマルティンから18秒遅れの2位で終える。カンチェラーラは「後半追い込み型」であり、2周目の挽回に期待が集まったが、マルティンとのタイム差はむしろ広がっていく。
結局カンチェラーラは最後までペースを作れず、5度目の金メダルだけではなく、銀メダルにも届かない3位でゴール。最終的にマルティンとのタイム差は1分21秒まで広がっていた。
カンチェラーラより5秒速い55分フラットでゴールしたウィギンズが2位。ウィギンズの1周目のラップタイムは4位。しかし2周目に追い上げ、2位の座を射止めた。ウィギンズは「今日は無線無しで走った。1周目は抑え気味に走り、2周目に全てをぶつけたんだ。その作戦が功を奏したよ。正直言ってこの結果は予想していなかった」と驚く。
なお、出場した全選手63名のうち、2周目のタイムが1周目のタイムを上回っているのはウィギンズだけ。ウィギンズは1周目27分30秒・2周目27分29秒。マルティンは1周目26分40秒・2周目27分03秒。カンチェラーラに至っては、1周目26分58秒・2周目28分05秒と、2周目で1分以上タイムを落としている。
観客の海となった市庁舎前広場の表彰台で、アルカンシェルを受け取ったマルティン。新世界チャンピオンは「最初の1〜2kmを走った時点で、今日は脚の調子がパーフェクトで、ポジションも良く、スピードに乗れていると感じた。計測地点のタイムを聞いて更に自信を深め、今日は自分の日だと思った」と、大勝を振り返る。
「どのようにスタートし、リズムを掴み、そしてハイスピードで駆け抜けるというタイムトライアルの奥義を心得ている。今年はこの世界選に合わせてブエルタ・ア・エスパーニャに出場したんだ。今はただこのジャージを手にすることが出来て嬉しい」。
マルティンは2009年から2年連続で世界選手権タイムトライアル3位。カンチェラーラを王座から引きずり降ろした形になったが、特にカンチェラーラを意識して走ったわけではないと言う。「別にファビアンからジャージを奪い取ったわけじゃない。これはファビアンを含めたライバルたちとの真剣勝負なんだ。これまで多大なプレッシャーを背負い続けたファビアンには申し訳なく思う。でも3位という結果も悪くない。僕はこれまで2年連続3位だったんだ!2人にとって良い結果だったと思うよ」。
対するカンチェラーラは「他の誰よりも、トニは勝利に値する男だ」と返す。「今日は出だしは良かった。でもリズムを掴めず、全力を出せるような一日ではないと思った。100%のコンディションではないという気負いが自分をダメにしたのかも知れない。ブエルタからトレーニング期間にかけて、これまでずっと調子が良かったのに、今日は別の話だった。集中力を欠いて、宮殿のバリアにぶつかりそうにもなった」。
王者交代。今後もタイムトライアルの世界は、マルティンとカンチェラーラ、そしてウィギンズを中心に回っていく。
その他の選手の走りはフォトギャラリーにて!
ロード世界選手権2011エリート男子タイムトライアル結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ) 53'44"
2位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス) +1'16"
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス) +1'21"
4位 ベアト・グラブシュ(ドイツ) +1'32"
5位 ジャック・ボブリッジ(オーストラリア) +2'14"
6位 リッチー・ポルト(オーストラリア) +2'30"
7位 デーヴィット・ミラー(イギリス) +2'46"
8位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ) +3'19"
9位 アレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン) +3'20"
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク) +3'31"
11位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン) +3'34"
12位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン) +3'35"
13位 スヴェイン・タフト(カナダ) +3'36"
14位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア) +3'45"
15位 テイラー・フィニー(アメリカ) +3'53"
16位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ) +3'58"
17位 ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル) +4'15"
18位 ジェシー・サージェント(ニュージーランド) +4'26"
19位 ジャック・バイアー(ニュージーランド) +4'27"
20位 スタフ・クレメント(オランダ) +4'34"
text&photo:Kei Tsuji in Copenhagen, Denmark
デンマーク・コペンハーゲンで開催されているロード世界選手権の3日目、「世界最速」を決めるエリート男子タイムトライアルが行なわれた。
コースはコペンハーゲン中心部にある市庁舎前をスタートし、郊外に向かって一路北上。住宅街を抜けた先にあるシャーロテンルン公園で折り返し、再び市内へと向かう。
ゴール地点は市庁舎前。前日まで行なわれていた他カテゴリーのコースを延長した1周23.2km。ほぼ完全にフラットであること、そしてテクニカルなコーナーが連続することに変わりはない。
気温17度前後の曇り空の下、63名が4グループに分かれてスタート。レース中盤にかけて小雨が舞ったが、路面を完全に濡らすような本降りにはならず。安定感のない風がコースに吹き付ける。どの選手もほぼ同じ条件下での出走となった。
レース前半、第2グループのアレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン)が57分03秒という暫定トップタイムを叩き出し、後続の指標となる。第3グループのヨナタン・カストロビエホ(スペイン)がディアチェンコを上回るタイムで1周目を終えるも、2周目に失速してトップタイムには14秒届かず。
そして迎えた最終第4グループ。有力選手が詰め込まれたこのグループのジャック・ボブリッジ(オーストラリア)が、ディアチェンコのタイムを47秒更新して1周目を折り返す。しかし後続のベアト・グラブシュ(ドイツ)、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)、トニ・マルティン(ドイツ)、ファビアン・カンチェラーラ(スイス)が更にその上をいく。
中でも際立ったのが、最後から2番手スタートのマルティンの速さ。マルティンは合計6つある全ての計測地点でトップタイムをマーク。1周目で稼ぎ出したリードを2周目で更に広げる走りを見せ、53分43秒でゴールした。平均スピードは51.813km/h。
一方、最終走者のカンチェラーラは、1周目をマルティンから18秒遅れの2位で終える。カンチェラーラは「後半追い込み型」であり、2周目の挽回に期待が集まったが、マルティンとのタイム差はむしろ広がっていく。
結局カンチェラーラは最後までペースを作れず、5度目の金メダルだけではなく、銀メダルにも届かない3位でゴール。最終的にマルティンとのタイム差は1分21秒まで広がっていた。
カンチェラーラより5秒速い55分フラットでゴールしたウィギンズが2位。ウィギンズの1周目のラップタイムは4位。しかし2周目に追い上げ、2位の座を射止めた。ウィギンズは「今日は無線無しで走った。1周目は抑え気味に走り、2周目に全てをぶつけたんだ。その作戦が功を奏したよ。正直言ってこの結果は予想していなかった」と驚く。
なお、出場した全選手63名のうち、2周目のタイムが1周目のタイムを上回っているのはウィギンズだけ。ウィギンズは1周目27分30秒・2周目27分29秒。マルティンは1周目26分40秒・2周目27分03秒。カンチェラーラに至っては、1周目26分58秒・2周目28分05秒と、2周目で1分以上タイムを落としている。
観客の海となった市庁舎前広場の表彰台で、アルカンシェルを受け取ったマルティン。新世界チャンピオンは「最初の1〜2kmを走った時点で、今日は脚の調子がパーフェクトで、ポジションも良く、スピードに乗れていると感じた。計測地点のタイムを聞いて更に自信を深め、今日は自分の日だと思った」と、大勝を振り返る。
「どのようにスタートし、リズムを掴み、そしてハイスピードで駆け抜けるというタイムトライアルの奥義を心得ている。今年はこの世界選に合わせてブエルタ・ア・エスパーニャに出場したんだ。今はただこのジャージを手にすることが出来て嬉しい」。
マルティンは2009年から2年連続で世界選手権タイムトライアル3位。カンチェラーラを王座から引きずり降ろした形になったが、特にカンチェラーラを意識して走ったわけではないと言う。「別にファビアンからジャージを奪い取ったわけじゃない。これはファビアンを含めたライバルたちとの真剣勝負なんだ。これまで多大なプレッシャーを背負い続けたファビアンには申し訳なく思う。でも3位という結果も悪くない。僕はこれまで2年連続3位だったんだ!2人にとって良い結果だったと思うよ」。
対するカンチェラーラは「他の誰よりも、トニは勝利に値する男だ」と返す。「今日は出だしは良かった。でもリズムを掴めず、全力を出せるような一日ではないと思った。100%のコンディションではないという気負いが自分をダメにしたのかも知れない。ブエルタからトレーニング期間にかけて、これまでずっと調子が良かったのに、今日は別の話だった。集中力を欠いて、宮殿のバリアにぶつかりそうにもなった」。
王者交代。今後もタイムトライアルの世界は、マルティンとカンチェラーラ、そしてウィギンズを中心に回っていく。
その他の選手の走りはフォトギャラリーにて!
ロード世界選手権2011エリート男子タイムトライアル結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ) 53'44"
2位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス) +1'16"
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス) +1'21"
4位 ベアト・グラブシュ(ドイツ) +1'32"
5位 ジャック・ボブリッジ(オーストラリア) +2'14"
6位 リッチー・ポルト(オーストラリア) +2'30"
7位 デーヴィット・ミラー(イギリス) +2'46"
8位 リエーベ・ヴェストラ(オランダ) +3'19"
9位 アレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン) +3'20"
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク) +3'31"
11位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン) +3'34"
12位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン) +3'35"
13位 スヴェイン・タフト(カナダ) +3'36"
14位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア) +3'45"
15位 テイラー・フィニー(アメリカ) +3'53"
16位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ) +3'58"
17位 ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル) +4'15"
18位 ジェシー・サージェント(ニュージーランド) +4'26"
19位 ジャック・バイアー(ニュージーランド) +4'27"
20位 スタフ・クレメント(オランダ) +4'34"
text&photo:Kei Tsuji in Copenhagen, Denmark
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