ブエルタ・ア・エスパーニャ第17ステージは山頂ゴールで総合トップ2の直接対決が勃発。抜きつ抜かれつの勝負は最後の50mまで争われ、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が勝利。区間2位のコーボは辛うじてマイヨロホを守った。

先頭で積極的な走りを見せるシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)が逃げグループを生み出す先頭で積極的な走りを見せるシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)が逃げグループを生み出す phot:Cor Vos今ブエルタ最後の山頂ゴールとなる第17ステージは、ファイスティーノV~ペーニャ・カバルガ間の211km。今大会最長のこのステージは実質上、総合を狙う選手にとってタイムを稼ぐ・取り戻す最後のチャンス。中盤に3級山岳、162km地点に2級山岳が控え、その後はずっと下って残り6kmからペーニャ・カバルガへの登りが始まる。

ヴァカンソレイユ勢が積極的に集団をコントロールヴァカンソレイユ勢が積極的に集団をコントロール photo:Tour of Spain/Graham Watson総合成績を争うリーダーのファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)と、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)までは22秒差。総合3位のブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)までは51秒差。チームスカイとしてはこの日に勝負をかけなければ逆転は無い。

ハイスピードダウンヒルをこなしていく集団ハイスピードダウンヒルをこなしていく集団 photo:Tour of Spain/Graham Watson総合上位陣の緊迫とともに、クライマーでステージ優勝を狙いたいチームもこの日はナーバス。ピュアクライマーにとっても、この日は最後のチャンス。とりわけ落車により大きく総合順位を落としたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)は、昨年のペーニャ・カバルガ山頂ゴールの優勝者。注目が集まる。

ペーニャ・カバルガで逃げたマルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)とダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)ペーニャ・カバルガで逃げたマルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)とダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ) photo:Tour of Spain/Graham Watsonプロトンに緊張感が走る中、レースはハイスピードで進行。序盤から繰り返されるアタックが実らない。40km地点で21名の逃げ集団ができるも、これは100km地点までに吸収。カチューシャ、エウスカルテルが引っ張る集団が逃げを容認しない。

先頭で姿を現したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)先頭で姿を現したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiそれでも諦めない選手たちが飛び出しをはかり、ゴールまで90kmを残して6名の選手が逃げグループを形成。序盤の先頭グループで積極的な走りを見せたシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)を筆頭に、オリヴィエ・カイセン(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、エフゲニー・ペトロフ(ロシア、アスタナ)、ギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル)、グレグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)、ヨハネス・フレーリンガー(ドイツ、スキル・シマノ)が逃げる。

マイヨロホのファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)がフルームを追うマイヨロホのファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)がフルームを追う photo:Kei Tsujiこの先頭グループはカイセンのアタックでシャヴァネルが遅れるなど、若干の足並みの乱れはあったものの、集団に1分ほどの差をつけて153km地点から始まる2級山岳へ突入。集団からはこの2級山岳で、マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)、マティアス・フランク(スイス、BMCレーシング)、ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)が飛び出して、前を行く5名に合流。8名の先頭集団を形成する。

山岳ポイント狙いのモンクティエだったがこの2級山岳は、山岳賞争いのライバルであるマッテオ・モンタグーティ(イタリア)のチームメイト、ボナフォンに先頭を獲られる。モンクティエは2位で通過し、辛うじて山岳ポイントを加算。

ジェオックスがコントロールするメイン集団は39秒差で山頂を通過。ここからペーニャ・カバルガまでの40kmに及ぶ長い下りで先頭の8人は吸収。ジェオックスとカチューシャがスピードを上げる集団はひとつのまま、残り6kmのペーニャ・カバルガ登り口へ至る。

ステフェン・クルイシュヴィック(オランダ、ラボバンク)を先頭に登り始めた集団からは、ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)がアタック。残り4kmで集団との差を14秒稼いだマーティンだったが、残り3.5kmでブルセギンに、残り2.5kmでクリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)に追いつかれ、3名の先頭グループを形成する。

後続のメイン集団からはユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)がアタック。残り2kmを超えて先頭の3名をパスする勢いの良さを見せたものの、残り1.5km地点の急勾配地点で失速。集団に飲み込まれる。お互いに選手が睨みをきかせる集団から、再度ヴァンデンブロックが残り1.2km地点でアタック。

このアタックをチェックしたマイヨロホのコーボが残り1kmで先頭に出ると、その後ろにぴったりとつけた総合2位のフルーム。そしてフルームが全身全霊のアタックで飛び出す。力強いダンシングを刻むそのアタックに、コーボがたまらず千切れるとフルームが単独先頭でゴールを目指す。

一気に差を開いたかに思われたフルームだが、急勾配の区間でやや失速。そしてゴールに向けて立て直したコーボが必死の追い上げを見せる。残り100mでコーボがフルームを捕らえ、そして抜き去る。しかし勾配のきついこの100mで、追いつかれたフルームが再度踏み直し、残り50mで抜き返す。

ファンデンブロックのアタックをチェックし、先頭に躍り出るファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)ファンデンブロックのアタックをチェックし、先頭に躍り出るファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC) photo:Tour of Spain/Graham Watson最後の最後でコーボを抜き去り、ステージ勝利を飾ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)最後の最後でコーボを抜き去り、ステージ勝利を飾ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tour of Spain/Graham Watsonステージ3位のバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)がゴール後倒れ込むステージ3位のバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)がゴール後倒れ込む photo:Cor Vos


17分53秒遅れの集団先頭でゴールに向かう土井雪広(スキル・シマノ)17分53秒遅れの集団先頭でゴールに向かう土井雪広(スキル・シマノ) photo:Kei Tsuji体力の限界まで追い込んだフルームがハンドルを投げ込んでゴール。最後に抜かされたコーボは辛うじて1秒遅れでゴールに入った。出し尽くした両者は、ゴール後に立っていられないほどの困憊ぶりを見せる。総合1位と2位の直接対決はフルームが制し、ボーナスタイムを獲得したが、粘ったコーボは13秒差でマイヨロホを死守している。

土井雪広(日本、スキル・シマノ)はステージ序盤からのハイスピードな展開に「今大会で一番疲れた一日」とツイートしながらも、17分53秒遅れの集団の先頭89位でゴール。翌日以降のステージで逃げを狙う土井が、マドリッドまでにどんな動きを見せるか、変わらず注目だ。

総合3位のウィギンズがこの日39秒遅れたため、総合争いはコーボとフルームに絞られた。13秒という差は、ボーナスタイムのあるブエルタではまだ決定的な差ではない。ジェオックスTMCとチームスカイの戦略が、これからの3ステージを激しいものにするだろう。


ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第17ステージ結果
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)           4h52'38"
2位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)        +01"          
3位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)              +21"    
4位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)    +24"           
5位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)          +27"           
6位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)                 
7位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)          +29"  
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +31"   
9位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックスTMC)           
10位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)         +35" 
11位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)        
12位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)        +39"        
15位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)+42"  
17位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)     +1'02"  
18位 ワウテル・ポーエルズ(オランダ、ヴァカンソレイユ)        +1'14" 
89位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                 +17'53" 


個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)              69h31'41"
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                   +13"
3位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)               +1'41"
4位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)                     +2'05"
5位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)                +3'48"
6位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)            +4'13"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)       +4'31"
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)        +4'45"
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                  +5'20"
10位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)                  +5'33"
11位 ワウテル・ポーエルズ(オランダ、ヴァカンソレイユ)              +5'43"
12位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)           +5'50"  
13位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)            +7'06"
14位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)          +7'22"
15位 セルゲイ・ラグディン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ)           +8'57"
16位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)                +9'58"
17位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)           +10'31"
18位 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)          +10'50"
19位 カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC)               +16'00"
20位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)           +17'15"  
156位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                      +4h01'49"

ポイント賞(プントス)
1位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)              92pts
2位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)        90pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)          88pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)         63pts
2位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)       41pts
3位 マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル)   41pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)        6pts
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)           13pts
3位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)             14pts

チーム総合成績
1位 ジェオックスTMC       208h08'58"
2位 レオパード・トレック       +10'19"
3位 エウスカルテル          +25'10"


text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Cor Vos, Unipublic
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