2011/09/02(金) - 15:07
土井雪広(スキル・シマノ)はレース序盤からメイン集団を引き続けた。「身体が小さいので集団牽引は本当に辛い」と語りながらも、チームメイトのために長時間にわたって集団先頭に立った土井。しかしポンテベドラの登りゴールは、マルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ)には厳しすぎた。
チームメイトと談笑するヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiゴール地点ポンテベドラはリア・デ・ポンテベドラの奥に位置している。スペイン語(ポルトガル語に近いガリシア語という説もある)で「リア」は入り江の意味。周囲の海岸線は入り組んでいて、湾と岬が交互に現れる。
なお「リア」の複数形は「リアス」。このスペイン北西部のガリシア地方に見られる入り江の多い地形が、リアス式海岸の語源となっている。リアス式海岸は、直訳すると「入り江が多い海岸」だ。
八百屋には立ち寄らない photo:Kei Tsuji海が近いため天候が変わりやすい。大西洋から常に吹く風は雲を作り出し、周囲一帯に雨を降らせる。海洋性気候のため、ポンテベドラは1年365日の半分が雨らしい。と言ってもこの時期は一日中ダラダラ降り続くのではなく、雲の移動に合わせて雨と晴れを繰り返す。
イタリアでは丘の上に旧市街があり、その麓に近代的な新市街が広がるパターンが多い。でもポンテベドラはその逆パターン。川沿いに旧市街が発展し、丘の上に新市街が広がっている。ゴール地点は近代的な建物が並ぶ新市街地の中。川沿いから約1500mほどで高低差45mを駆け上がる。勾配は7%ほど。
スタートを待つトム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)や土井雪広 photo:Kei Tsujiそんなポンテベドラの旧市街にレース当日まで3連泊していたスキル・シマノは、休息日に登りゴールをチェックしていたという。ポンテアレアスーーーポンテ(橋)が付く地名ばっかりだーーーのスタート地点にやってきた土井雪広は「マルセル(キッテル)には厳しいかもしれない」とこぼす。キッテル自身は「たぶん大丈夫」と語っていたが。
ポンテアレアスを発ち、逃げを容認したメイン集団は、マイヨロホを擁するチームが先頭に立ち、やがてスプリンターチームがコントロールを始める。
スプリンターチームが牽引するメイン集団が入り江を進む photo:Kei Tsuji30km地点で撮影していると「タイム差は4分まで拡大。スキル・シマノが集団をコントロール」という競技無線からの一報。チームスカイがメンバーを揃える集団の一番前に土井雪広の姿があった。
山岳ステージに前後を挟まれた所謂“つなぎステージ”と目されていた第12ステージ。だが蓋を開けてみると、コースプロフィールには現れない細かいアップダウンが連続。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)のレース後ツイートによると、累積標高は2000mに達したという。
そんなアップダウンが、キッテルの体力を奪った。登りを得意とするダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)のためにレオパード・トレックがペースを上げ、ライバルスプリンターを苦しめる。
キッテルのためにメイン集団をコントロールする土井雪広(スキル・シマノ) photo:Kei Tsuji
黄色い声援が飛ぶ photo:Kei Tsuji結局スキル・シマノの集団コントロールは功を奏さず、キッテルはゴールに至る登りで失速。集団スプリントに絡むことはできず、苦しい表情を浮かべながら31秒遅れの81位でゴールラインを切った。
キッテルはこの日を最後にブエルタを去ることが決まっている。レース後「自分にとって、ブエルタを第12ステージまで走るのは本当にキツイこと。初めてのグランツールで、疲れ切っている。このブエルタで多くの経験を得た」と語る。キッテルはデンマーク・コペンハーゲンで開催されるロード世界選手権に照準を合わす。
両手を広げてゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsuji集団コントロールに力を使った土井雪広は、トム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)らと並んで9分39秒遅れの集団でゴール。
「ラスト50キロを切ったところで僕の仕事は終了してアレックス(ジェニエ)にスイッチ。最後はラスト15キロを切って最後の登りを越えたところで集団から離れてゴールを目指しました」。ゴール後にコメントを取れなかったのでブログより抜粋。
集団コントロールに力を使った土井雪広(スキル・シマノ)は9分39秒遅れの集団でゴール photo:Kei Tsujiキッテルが去ったスキル・シマノは、逃げによるチャンスを狙うだろう。翌日からブエルタは再び山岳へと入って行く。「明日からの3日間は地獄のようなステージになっていますが、良い集中力で、チャンスをうかがいたいと思います」。
ステージ優勝はペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)。初出場のグランツールでステージ2勝目を挙げた。圧巻と言っていいほどの強さだ。
昨年1月のツアー・ダウンアンダーで初めてサガンと話した時には、イタリア語が分からず、ゴモゴモ話しているだけだった。でも今は、自信をつけてイタリア語を巧みに操っている。まだ21歳。登りスプリントだけではなく、言語の吸収も早いようだ。
text&photo:Kei Tsuji in Pontevedra, Spain
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なお「リア」の複数形は「リアス」。このスペイン北西部のガリシア地方に見られる入り江の多い地形が、リアス式海岸の語源となっている。リアス式海岸は、直訳すると「入り江が多い海岸」だ。
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イタリアでは丘の上に旧市街があり、その麓に近代的な新市街が広がるパターンが多い。でもポンテベドラはその逆パターン。川沿いに旧市街が発展し、丘の上に新市街が広がっている。ゴール地点は近代的な建物が並ぶ新市街地の中。川沿いから約1500mほどで高低差45mを駆け上がる。勾配は7%ほど。
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ポンテアレアスを発ち、逃げを容認したメイン集団は、マイヨロホを擁するチームが先頭に立ち、やがてスプリンターチームがコントロールを始める。
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山岳ステージに前後を挟まれた所謂“つなぎステージ”と目されていた第12ステージ。だが蓋を開けてみると、コースプロフィールには現れない細かいアップダウンが連続。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レオパード・トレック)のレース後ツイートによると、累積標高は2000mに達したという。
そんなアップダウンが、キッテルの体力を奪った。登りを得意とするダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)のためにレオパード・トレックがペースを上げ、ライバルスプリンターを苦しめる。
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キッテルはこの日を最後にブエルタを去ることが決まっている。レース後「自分にとって、ブエルタを第12ステージまで走るのは本当にキツイこと。初めてのグランツールで、疲れ切っている。このブエルタで多くの経験を得た」と語る。キッテルはデンマーク・コペンハーゲンで開催されるロード世界選手権に照準を合わす。
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「ラスト50キロを切ったところで僕の仕事は終了してアレックス(ジェニエ)にスイッチ。最後はラスト15キロを切って最後の登りを越えたところで集団から離れてゴールを目指しました」。ゴール後にコメントを取れなかったのでブログより抜粋。
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ステージ優勝はペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)。初出場のグランツールでステージ2勝目を挙げた。圧巻と言っていいほどの強さだ。
昨年1月のツアー・ダウンアンダーで初めてサガンと話した時には、イタリア語が分からず、ゴモゴモ話しているだけだった。でも今は、自信をつけてイタリア語を巧みに操っている。まだ21歳。登りスプリントだけではなく、言語の吸収も早いようだ。
text&photo:Kei Tsuji in Pontevedra, Spain
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