2009年5月12日、ドロミテ山岳を舞台に行われたジロ・デ・イタリア第5ステージは、山頂ゴールに向かう厳しい上りで絞られた小集団でのスプリントとなり、デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)がステージ優勝を飾った。ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)が遅れる波乱の展開となった。

雪が残るロッレ峠を集団が走る雪が残るロッレ峠を集団が走る photo:CorVosジロ・デ・イタリア第5ステージはサンマルティーノ・ディ・カストロッツァからアルペ・ディ・シウジまでの125km。スタート後いきなりの上りをクリアしたら、いったん標高200m台のアディジェ川沿いまで下り、ラストは再びアルペ・ディ・シウジ(標高1844m)を上っての山頂ゴールとなる。
アルペ・ディ・シウジの上りでペースを上げるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)らアルペ・ディ・シウジの上りでペースを上げるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)ら photo:CorVos24.9kmのアルペ・ディ・シウジの上りは全体を通して見れば平均勾配6.1%とさほど厳しくはないが、平均勾配8.6km(最大11%)と、残り7kmを切ってからの傾斜が厳しい。この上りで個人総合優勝を狙う選手のコンディションが試されることになった。

アルペ・ディ・シウジの上りで遅れたランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)らアルペ・ディ・シウジの上りで遅れたランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)ら photo:CorVosこの日もステージ序盤からアタックが相次いだ。その中からトマ・ヴォクレール(フランス、Bboxブイグテレコム)、エロス・カペッキ(イタリア、フジ・セルヴェット)、フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)、ダニエーレ・ピエトロポッリ(イタリア、LPRブレークス)、ホセ・セルパ(コロンビア、ディキジョヴァンニ)、カルロスホセ・オチョア(ベネズエラ、ディキジョヴァンニ)、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ISD)の7名の逃げが決まる。
アルペ・ディ・シウジの上りでふるい落とされたダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)アルペ・ディ・シウジの上りでふるい落とされたダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) photo:CorVos7名は最大5分近くにまでリードを広げ、100km以上を逃げ続けたが、リクイガスを中心に淡々とペースを刻む後続集団にラスト15㎞を切ったあたりで吸収されることとなった。

ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)の猛追を許さず、デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)が勝利ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)の猛追を許さず、デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)が勝利 photo:CorVos再び1つになった集団の先頭ではイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)のためにシルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス)がペースを上げる。
傾斜がきつくなるにつれ、メイン集団が徐々に絞られていく。

マリアローザはダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)の手にマリアローザはダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)の手に photo:CorVosここで遅れたのがランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)だ。アシスト数名に引かれ坂を上るも、どうしてもペースが上がらない。集団後方へとずるずる下がり、さらには集団からも遅れてしまった。
続いてステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)、ジルベルト・シモーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)が次々と集団からちぎれていく。いずれも前日の山頂ゴールにおいて上位でフィニッシュして好調さをアピールしていた。しかし、この日は2000年(ガルゼッリ)、2004年(クネゴ)、そして2001年と2003年(シモーニ)の3名のジロ覇者には厳しい日となった。

先ほどまで献身的なアシストを見せていたシルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス)が下がり、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)自らがペースを上げる。
これによりグループはさらに絞られ、残り3kmの地点でダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)、トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)、カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)、ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)、クリストファー・ホーナー(アメリカ、アスタナ)、デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)の計8名となった。
ここからダビ・アローヨが遅れ、マリアローザのトーマス・ロヴクヴィストも厳しくなる。一度は遅れたロヴクヴィストだったが、なんとか食らいつき先頭に戻った。

ゴール手前でダビ・アローヨがマイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア)、ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)を連れて再び追いつき10名ほどのグループとなってゴールに向かった。

そして最初に動いたのはカルロス・サストレだった。残り400mの地点で一気にペースを上げ、ダニーロ・ディルーカがこれを追う。
前日のようにディルーカがまくってゴールかと思われたが、爆発的なスプリントを見せたのがデニス・メンショフ。ディルーカ、サストレを背後から一気に抜き去り、そのままの勢いで逃げ切った。
まるで昨日のリプレイを見るかのようなゴールシーンだった。ただし、勝者はディルーカではなくメンショフだったが。

ディルーカは2秒遅れの2位、3位に入ったロヴクヴィストには5秒のタイム差がついたため、マリアローザはディルーカの手に渡った。
比較的無難にまとめたロジャース、ペッリツォッティ、シモーニに対し、クネゴ、アームストロング、ガルゼッリは2分以上の遅れを取り、個人総合優勝争いから一歩退く形となった。

ステージ優勝のデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)は自身のコンディションについて「とてもいいよ。去年よりずっと調子がいい」と語る。「でも、この後第12ステージの長いタイムトライアルが控えている。このステージが非常に重要なステージになることは間違いない。このステージで誰が総合優勝を果たすのかが見えてくるだろう」とコメントしている。

ジロ・デ・イタリア第6ステージは248kmのロングコースだ。山頂ゴールでこそないものの標高1500mオーバーの山岳を2つ越えてゴールを目指す。ラストはおおむね平坦基調。個人総合優勝争いはいったん休息となるだろう。


ジロ・デ・イタリア2009第5ステージ結果
1位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) 3h15'24"
2位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) +2"
3位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア) +5"
4位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +5"
5位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ) +9"
6位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、アスタナ) +9"
7位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +19"
8位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ) +22"
9位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア) +22"
10位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、フジ・セルヴェット) +22"

個人総合成績
個人総合順位
1位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス) 16h20'44"
2位 トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア) +5"
3位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、チームコロンビア) +36"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ) +43"
5位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) +50"
6位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) +1'06"
7位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +1'16"
8位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、アスタナ) +1'17"
9位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) +1'27"
10位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ) +1'41"

ポイント賞 マリアチクラミーノ
アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)

山岳賞 マリアヴェルデ
ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)

新人賞 マリアビアンカ
トーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)

チーム総合成績
アスタナ

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